就職は異世界で魔王!?   作:羊頭狗肉

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すいません。第3話の方を先に投稿してしまいました。
挿入投稿させてもらいます。



第2話 召喚と勧誘と誤認識

 (…あれ、痛くない?)

 

 画面にぶつかる寸前で目を閉じたが、衝撃が無い、岬は不思議に思いゆっくり目を開けた。

そこには見慣れた筈の自分の部屋ではなく、薄暗い洞窟だった。

 

 (何だ此処?洞窟、何かの儀式場?……にしては)

 

 石版のある祭壇にそれを中心に四方に方尖塔(オベリスク)が聳えている。

入口らしき扉から自分のいる場所まで等間隔で蝋燭の火が灯されている。

 

 たしかに儀式場といった風景だが、自然のままの洞窟に床面と扉だけ体裁を整えたような印象を受ける。端的にいえば中途半端なのだ。まるで作りかけの映画の舞台セットといった感じだろうか。

 

 岬は周囲を見回していると扉が開き、誰かが入ってきた。

入ってきたのは3人。全員が異様な格好だった。

 

 1人目は初老の執事服を着た男性。

肩まで届きそうな髪をオールバックにして紐で後ろに結わっている。

全体はほっそりとしているが、どこか力強く、年月を経た大樹を思わせる。

顔は口周りに髭を蓄え、左目は黒い眼帯をつけている。

 

 2人目はメイド服を着たまだあどけなさが残る少女だった。

ボブカットで切り揃えられた黒髪にその幼げな顔とは不釣合いなほどに女性の象徴(むね)がデカイ。

そして、胸よりも目が向いてしまうのは下半身。フリルのついたスカートから見える足は人間の足ではなく、蜘蛛の足だった。

洞窟が薄暗いため分かりづらいが彼女の背後は確かに蜘蛛の胴体がある。

 

 3人目は特に異様だ。漆黒の鎧に身を包み、腰には片手剣と盾をつけている。

だが、視線を上に移動するとあるべき筈の顔が無い。首なし騎士という言葉がピッタリの姿だ。

 

 3人は岬をジッと見る。視線には値踏み、期待、不安が込められていた。

しかし、岬も岬で3人の人間とはかけ離れた容姿と先程の異常現象に理解が追いつかず頭がフリーズしていた。

 

 (えーと、此処って映画の撮影現場?でもさっきまで俺の部屋だったし)

 

 

 現代日本でこんな人達が居そうなのは撮影スタジオかコスプレ会場くらいしか思いつかなかった。しかし、先程まで確かに自宅に居た。でも洞窟も3人の容姿、服装は特殊メイクや作り物には見えない。

 

頭に浮かぶ疑問に納得できる回答が出てこない。しかし、3人が岬に近づき話すことで岬の疑問は解消されていく。

 

 「まずは、そちらの意思を無視して召喚してしまった事をお詫びしたく思います。本当に申し訳ございません。」

 

 「あ、えっと、これはご丁寧にどうも?」

 

 執事が謝罪の言葉とともに頭を下げ、それに追従するように他の2人も頭を下げた。

未だ困惑している岬に事情を説明しようと話が続けられる。

 

 「単刀直入に申しますと、貴方様には我等の危機を救って頂きたく此処に召喚させていただきました」

 

 「え、あの…召喚?よくゲームや漫画で使う魔法の?」

 

 「どのような遊戯(ゲーム)で行われるのか、マンガというものが何かは存じませんが、おそらく思い描かれているもので間違いは無いと思われます」

 

 現在進行形で現実離れした事が起きているが、それに拍車をかけるような単語が飛び出してきた。確かに召喚されたのであれば、自宅での黒い手も、此処にこうして居る事も魔法が存在するものと仮定すれば説明はつく。百歩譲ってそれは認める。話が進まないし。

 

 しかし、なぜ自分が召喚されるのか理解できない。自分よりずば抜けた運動神経を持った者や優れた知識を持っている者を選べば良い。

 

 ふと、ライトノベルが大好きな友人が愛読していた小説を思い出す。

平凡に生きていた少年が異世界に召喚され、チートでハーレムな勇者となって魔王を倒してハッピーエンドとなるご都合主義万歳のテンプレ小説。

 

 いやいや、そんな現実という言葉にケンカを売るような展開ある訳が無いと岬はかぶりを振る。

しかし、今起きている状況が頭の中で否定した考えを更に否定する。背中に嫌な汗をかきながら、そうであって欲しいという願いを込めて聞いてみた。

 

 「は はは、まさか強大な敵と戦って平和を勝ち取ってくれとか?」

 

 「概ねその通りです。後この地の整備もお願いしたく……」

 

 「土地整備!?」

 

 自分のやるべき仕事内容を聞けば聞くほどハードルが高いように思える。

自分自身が戦力になるとは到底思えない。そもそもなんで土地整備まで。

 

 異世界、言葉は知れど、例言や本の中でしか知らないもの。岬は大いに惹かれたが、力にはなれそうも無いと思った。戦闘面は格闘技を少々習い事と体育の授業で学んだ程度。学業にいたっては可もなく不可もなく、高校も特徴的なものが一切無い普通の高校だ。

断ろうと口を開きかけたが、執事が膝を折り頭を下げる。謝罪と懇願の為に。

 

 「お恥ずかしい話ですが、現在の我々の状況は最悪といっても過言ではありません。先代、先々代の当主は既に逝去なされており、跡を継がれるのは年若い姫様ただ1人。しかし、姫様は戦いに向かぬ性格。家臣の中には見限り離反する者が出るばかりか、こちらの内情や財宝と引き換えに敵方へ寝返る者まで居る始末」

 

 今まで無表情だった執事が初めて感情を表した。不甲斐無い自分と離反していく者達への怒り、まさに苦虫を噛み潰したようにゆがめていた。視線をずらすとメイドは目に涙を溜め、首なし騎士は拳を握り締め小刻みに震えている。

 

 「本来、我等と何の関係の無い貴方様に頼るのは筋違いであるのは重々承知しております。しかし、家臣も残り少ない上に、他国の者が姫様を欲しているのです。伏してお願い申します。どうか我等を、いいえ、姫様をこの窮地よりお救いください」

 

 相手が自身の非を認め且つ誠意を持って話していることは分かる。ここまで言われて断るほど岬は割り切りの良い人間じゃない。

戸惑いはあるがこの願いを受けようと思い最後に念を押した。

 

 「…初めに言っておきますけど、俺は戦闘も内政もからっきしですよ?」

 

 「全てを押し付けるつもりはございません。我等が指導させて頂きます。また知識についても問題ありません」

 

 「わ、私達も微力ではありますが力になれるようがんばります!」

 

 「我等とて、魔王軍の一翼を担っていた者、全力で支えよう」

 

 他の2人も同意の上のようだ。岬達4人は、今後具体的にどうするのかを話すことにした。

が、ここで岬は自分の勘違いに気づいてしまう。

 

 「では、場所を移しましょう。応接室へ御案内いたします」

 

 「宜しくお願いします。・・・・・・あの」

 

 「なにか?」

 

 「さっき、聞き間違いじゃなければ、魔王軍って聞こえたんですけど?」

 

 歩き出した執事を呼び止め、首なし騎士の言っていた言葉を確認する。

 姫様・召喚・執事・メイド・騎士・他国・敵・窮地。

今まで聞いてきた単語からどこかの国に召喚されたのだとばかり思っていた。

 

 「聞き間違いではございません。我等がお仕えしている。エスペルト家は、魔王軍の1軍を任されていた家系です」

 

 どうやら聞き間違いではなかったらしい。

つっと冷や汗が顔を伝い落ちる。魔王側に召喚された、つまり岬が戦うのは。

 

 「……じ、じゃあ。敵って言うのは、…人間?」

 

 「………その通りでございます。」

 

 その言葉を聞いて、まるで自分が深い穴に落ちていくような感覚に襲われた。

薄暗い洞窟の暗さがより一層増したような錯覚を覚える。

 

 「ち、ちょっと待って!俺は」

 

 「どうか落ち着いてください。何も人間を殺して欲しいというのではありません。エスペルトの再興が目的であり、必ずしも命を奪えと言っているのでは無いのです」

 

 お家の再興というと土地、領土の整備、それに伴う経済交渉や政治交渉。

確かにこれだけを聞けば戦い命のやり取りをする内容には見えない。が、それは平和的且つ公正に行われる場合だ。

 

相手がグレーな交渉をしてきた場合。こちらもグレーな手段を取らざる得ないこともあるのだ。

つまり内政のみに従事しても直接か間接かの違いで犠牲は出る。

 

 「確かに今の言葉は綺麗事です。命を奪わなくても良いとは言いましたが、傷つけなくても良いとは言ってないのですから卑怯といっても良い。場所を変えて全てお話いたします」

 

 言い終わると再び扉に向けて歩き出した。自信の今後について不安がよぎる。

まずは話をすべて聞こうと、岬は心を落ち着かせようと息を深く吐き。歩き出した。

 

 




見直して修正したのに、ほかにも誤字脱字があったりします。
気づいた時って地味にへこみます。
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