就職は異世界で魔王!?   作:羊頭狗肉

5 / 12
1話1話が短くなると思います。


第4話 回想と癇癪と陰謀の香り

~40年前 魔界 魔王城の一室~

 

 「デボレー様、…納得のいく説明をして頂けますか」

 

 魔王城の一室でオルディはデボレーを問い詰める。

顔は無表情だが、口から紡がれた声は怒りを抑えていることを十分に感じさせている。

しかし、デボレーは意に介することは無く。しれっと聞き返す。

 

 「何を説明しろというのだ?突然部屋に入ってきたと思ったら詰問のような問いかけ、それが栄えあるエスペルト家の執事の振る舞いか!?」

 

 「臣下として礼を欠いている事は承知しております。処罰も甘んじて受けましょう。しかしその前に説明して頂きたい。エスペルト家の財産を売り払い、領地を買ったとはどういうことですか」

 

 「なんだそんなことか、貴様も魔王様のお考えを知らぬわけではあるまい」

 

 「お考え・・・まさか迷宮王国計画のことを!?」

 

 迷宮王国政策、魔王が考案した人間界侵略計画をそう呼ぶ。

現在人間界において、人口の少ない土地や人間が住むには困難な土地を拠点としてその周辺の国々を相手に戦うというもの。

武功、計略、経済に秀でている魔界の各家々の者を頂点とし、支配地域を拡げつつ人間の戦力分散を狙い、ゆくゆくは地上を制圧する。

 

 獲得した支配領域は魔王に献上されるが、統治は支配する魔族に委ねられる。

つまり、1つの国を落とせば、王になれるのだ。また拠点を設け、迷宮を作成することで人間の強みである数の有利性を減らすことができる。

 

 参加希望者は大勢居るが、人間界の大陸は魔界に比べて広くない。その為参加の人数(家)には制限があり魔界上層部が選考を行うのだ。

 

 そして先日、その選考に選ばれ拠点となる領地への競りが行われたらしい。

 

 しかし武功はフォルドが立てていたので分からないでもない。だが現当主に知略は無いし以前の誘拐事件のせいで賠償金を払った為、経済的にも明るいものではない。オルディはなぜエスペルトが選ばれたのか疑問を抱いた。

 

 「今までの様に戦争をするだけでは人間の戦力を集めるだけよ。最近は我等魔族に対抗できる人間や武具、魔法すら開発している。だがこの計画を行えば、それらが完成し集まる前に潰せば良い!おまけに支配地域は、陛下に献上する日までどう扱おうが迷宮の主に一任されている。つまり、献上の際に陛下に捧げるにより相応しい環境にすれば我がエスペルトも再び返り咲けるといものよ!」

 

 自信満々に演説をしている主を執事は冷ややかな目で見ている。

確かに、人間は各国が魔法、武技、魔道技術に秀でた国があり、それらの技術が集結する戦場は魔族側も被害が大きい。

この政策をとれば各国がそれぞれの迷宮へと対応を追われている間に1つ1つ国を潰していける。

 

 「しかしそれは、逆に此方も各個撃破される可能性があるということです。軍に対して戦いに強いものが必ず個に対して強いわけではございません。まして、今や我等エスペルトは以前の勢力はございません」

 

 「むっ…」

 

  自身が行った行為の結果が今のエスペルトの状態を表している。

今まで集い慕ってきた部下たちは今や他の家の傘下に入っていて現在のエスペルトには非戦闘員を除けば100を越えない。

むしろこの計画に参加した場合、他所の者が居ないだけに被害は如実に表れる。そしてオルディは知っている。自分の主にはそこを何とかするだけの知略は無いことを。

 

 「そんなもの、傭兵を雇えばいい。今はエスペルトが周囲から認められるかの方が大事だ」 

 

 「仮に計画に参加し領地を支配できたとして、今後はそれを献上するまで守り続けなければなりません。敵は国だけではございません。冒険者や他家の妨害もあるでしょう。それよりは今までの様に戦に参戦するという形の方が希望が」 

 

 あると言おうとして言葉を止める。

デボレーは怒り、不満、疑心に満ちた目でオルディを睨み付けた。

 

 「だまれ、私は周囲が私を認める。私への認識を改めるという結果がスグにでも欲しいのだ!貴様や父上には解るまい!文武の才に溢れその才を発揮できる場にも恵まれ周囲から尊敬と賞賛を浴びてきた者には!!」

 

 それは怒声というより咆哮のようだった。

 期待の視線が落胆の視線に変わるのをデボレーは何度となく目にしてきた。

フォルドが家督を譲らず、450年の間ずっと日陰者だった。家臣はおろか使用人でさえも同情と蔑みの視線をよこす。

 

 「必死だった!父の名に泥を塗らぬよう、エスペルトの名に恥じぬように!知略も練武も寝食を惜しんで励んだ!だがどんなに知識を学ぼうと、腕が上がらぬほど剣を振るおうと結果が出なければ滑稽にしか映らん。父は家督を譲らず、同情の視線は増すばかり!父が死にようやく私が当主にってみたらどうだ?家臣達は早く世継ぎを作れとほざき女を送りつけてくるだけ。私は今まで当主としての仕事をしたことなど無い!!」

 

 父よりは劣るのは自他共に周知の事実。家臣達からは頼り無く見えるだろう。

しかしあまりにフォルドを大きく、そしてデボレーを小さく見すぎていた。

 

 「私は何だ?子供を作るだけの種馬か!?馬に当主の座は不要か!」

 

 「デボレー様、どうか落ち着れませ。家臣一同その様な事は・・・」

 

 「五月蠅いわ!そちらが不要だというのなら、私もこのような家は要らん!」

 

 「デボレー様!」

 

 懸命に説こうとするが、デボレーは聞こうとしない。

幼い頃から蓄えられた鬱屈した感情が父に対しての劣等感も手伝って周囲全ての者が敵に見えているのだ。

 

 「どの道、私は選ばれて領地はもう買った!後は迷宮を作り、徐々に支配範囲を拡げ、私を虐げた者供を後悔させてやる!」

 

 「お気づきになりませんか!?なぜエスペルトが選ばれたか疑問に思われませんか?」

 

 オルディが抱いた疑問。

 迷宮王国政策の当選条件は武功を立てており、知略・計略に長け、迷宮を維持できるだけの財を有している事。

しかし、エスペルト家はこれらを満たしていると言い難い。では何故選ばれた?

 

 選考決定権を持つのは魔界の上層部、彼らの中には1代で高い地位に上り詰めたエスペルトを煙たがっていた。裏があるように思えてならない。

 

 オルディは必死に説得を繰り返すが、デボレーは最後まで聞き入れることは無かった。

 

 

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