こんな駄文にありがとうございます。
今回もグダグダです。すいません。
「・・・朝か」
持っていた携帯の目覚ましが作動し、いつもの起きる時間帯だと悟る。
室内は光源が無いので暗いままだ。地下に作られている迷宮のため日の光は無く、目覚ましが鳴らなければ朝だと気づかなかっただろう。
(目を覚ましたら全てが夢だった・・・、なんて無いか)
迷宮の中の一室。そこは客間になっており、岬はそこで眠っていた。
協力を決心したものの、短時間で濃密過ぎる体験をした岬はとにかく眠りたかった。
「フム、確かに本日はお疲れでしょう。能力の継承や仕事内容についてはまた次の日という事で」
オルディからも昨日は休むように言われ、案内された客間で眠りについた。
そして、1晩経って目が覚めベッドから這い出てきたのだ。
「アレ、部屋の明かりってどうつけるんだ?」
科学が発達した故郷とは違い、リモコンのワンタッチで明かりがつくわけも無く。
とりあえず手探りでテーブルまで歩こうとしたその時、ギィっと扉が開く音がした。
「あ、あの、み、岬様、すいません。さ、先程なにか音のようなものが聞こえたんですが」
「あぁ、おはよう、フェア。大丈夫、ただの目覚まし時計の音」
欠伸を堪えながら問題ないことを伝える。それと明かりが無いかを尋ねようと岬は扉に向けて進路を変えた。
「フェア、明かりは無いかな?暗くてよく見えないんだ」
「え?あ!すす、すみません!明かりを持ってきてませんでした!」
オルディもシャルも蝋燭や明かりの類が無くても暗闇を見渡せるため忘れていたそうだ。
姿は見えないがフェアが謝る声が聞こえてくる。
「ごめんなさい!ごめんなさいぃ!」
「い、いや、そんなに謝らなくて良いから。あ!ならオルディさんの所まで連れてってくれない?俺1人じゃ前もよく見えなくて」
「か、かしこまりました!でででわ、私のて、手をお掴みください!」
こちらに歩み寄る足音が聞こえる。フェアには岬の姿が見えていて、岬の手を引こうと近づいてくる。
岬は手を前に出した方がフェアが掴みやすいだろうと、歩きながら両手を前に出した。
が、その瞬間。
「ふぇ?」
「んぁ?」
岬の両手は柔らかくも弾力のある物体を鷲掴みにしていた。
どうやら岬が思っていた以上にフェアは近くまで来ていたようだ。
時が止まったのではないかと錯覚するほど室内は静寂に満ちている。
互いがどう反応して良いのか分からないようだ。
「「・・・・・・・・・・・」」
岬もフェアも何も言わない。が、次第に時が動き始め、フェアが小刻みに震え始める。
その振動を今だ掴んで離さない所から感知し、岬は今更ながら謝ろうとした。
「あ、あの、フェア、ごめ」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」
しかし、謝罪を言い切る前に部屋全体を揺るがすほどの悲鳴が響き渡った。
~ 先日の応接室 ~
「ははは、それは災難でしたな」
「ごめんなさい!ごめんなさい!」
「いや、全面的に俺が悪いんだから・・・」
起きた騒動の経緯をオルディに説明したら朗らかに笑いだした。フェアはまだ岬に謝り続け、岬はそれを宥め続けている。
ちなみに宥める岬の左頬にはくっきりと手形が残っていた。
「さてさて、和やかなのも良いのですが、今後のことを岬様にご説明せねばなりませんな」
「あ、はい。宜しくお願いします」
「まずは今後の方針なのですが、エスペルトの領地は大陸の北側。にあまり大きな街は無く、この付近の王国からは少々距離があります。そのため、すぐに国を相手取っての戦いになることは無いでしょう。幸いにしてデボレー様が討たれた事で王国からの監視の目は緩いですし、この付近の冒険者は強くても2階級の上位者が関の山といったレベルです」
2階級の冒険者がどの位の強さを持った連中なのか、基準が分からないがきっと自分なんかより強いだろう。
岬は今後の方針について、真剣に耳を傾ける。少しでも生存率を上げる為、助言を聞き逃さないように。
「ですので、迷宮の整備をしつつ、シャルを相手に戦闘訓練を積んでいただきます。彼女と対等に戦えるならそこらの弱小冒険者など物の数ではなくなります」
当然といえば当然の方針である。
素質や適正があったとしても戦闘未経験者をいきなり実戦に放り投げても死ぬ可能性の方が高い。
「迷宮の整備等については私とフェアが、戦闘についてはシャルが担当いたします。ああ、その前に継承と武具を選ばなければなりませんな。継承が済み次第武器を幾つか見繕っておきます」
とりあえずここまでにして食事にしましょうと、テーブルに食べ物が並べられていく。
食パンにスープ、ゆで卵とサラダといった喫茶店のモーニングセットの様なメニューだった。
魔族の食事なのだからもっとグロイ物を想像していたので一安心である。
(うん、普通に美味しいや)
異世界に召喚されるような不思議体験をしているが体は正直なものでかなり空腹だった。
岬は残らず平らげ、フェアに美味しかったとお礼を言う。---と。
「それはありがとうございます。作り甲斐があるというものですなぁ」
オルディが作ったものだった。なんでもフェアは料理だけは超が付くほど下手らしい。
今朝の出来事で微妙にギクシャクしている空気を何とかしようとした岬だったが、見事に自爆してしまった。
まさかメイドが作らず、上司の執事が作るなんて誰が思うだろう。
フェアは気にしているのか涙目になり、岬は上手い言い訳が思いつかずひたすら謝り続けた。
~ 30分経過 ~
何とか泣き止んでくれたフェアは岬を召喚した姫様のお世話をしに席をはずした。
泣く子には勝てないとは言うが、本当である。
(なんか昨日よりも疲れた気がする)
岬はもはや精魂尽き果てたようにぐったりとしている。
その様子をオルディは楽しげに見つめていた。
「・・・・・見てないで助けてくれても良かったと思うんですけど?」
「いやいや、若者同士の触れ合いを邪魔するような野暮はいたしません。それに、これを機にあの子の人見知りが少しは改善していけばと思いまして」
理由を聞くと尤もな理由だが、取って付けたようにも聞こえてくる。
ジト目でオルディを見つめると、彼は苦笑しながら継承石の箱を持ってきた。
「さて、早く能力の継承を行いませんとな」
「あの、誤魔化そうとしてません?」
とんでもございませんと笑顔で否定し、継承石を箱から出し岬に渡す。
いよいよ能力の継承が行われると感じ、岬は自然と姿勢を正す。
「では、ぐいっと一気に飲み込んでください」
「・・・・・・は?」
言われた意味が分からなかった。
飲む?この宝石を?この人の拳ほどもありそうな大きさの石を?
「魔族であれば握るだけで継承することも可能なのですが、人間である岬様にはそういった機能、器官はないでしょう。そういった場合、飲み込んで馴染むまで待つ他ありませんので・・・」
さあ、どうぞといった感じで勧めてくる。
しかし、口に含むだけでも精一杯でとても飲み込めそうなサイズじゃない。
おまけに、飲み込む物とは思っていなかった。中の脈動している血の塊が目に入り、口に入れるのを躊躇してしまう。
(いろんな意味で無理だっ!)
「まぁ、人間の口はそう大きくありませんからなぁ」
オルディは仕方ないといった感じで継承石を手に取る。
そして、片手で岬の顎を掴む。
「飲み込まねば話が進みませんので、無理矢理にでも」
「ふががががっ!」
ジタバタと暴れるがまるでビクともしない。
継承石を口に捻じ込まれ、痛みと共に嚥下した。
「あとは体に魔力が馴染んでいきます。身体能力も魔族に近いものになっていくでしょう。ただし馴染まぬ内は無理をなさりません様に」
失礼しましたと水を差し出し、背中をさすってくる。
基本的に優しい人の様だが、笑顔で怖い事する人だと岬はオルディのプロフィールに付け足した。