戦姫絶唱シンフォギア Never Ending Odyssey   作:パイシー

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S.O.N.Gデータベース
項目名:レイオニクス
 レイブラッド星人の末裔の総称。バトルナイザーを使うことで、怪獣を召喚、使役は勿論、強化も可能である。
 この世界ではフィーネがストルム星人のレイオニクスであり、彼女が携わったシンフォギアシステムにも当然この技術が組み込まれている。
 対侵略者用の装備として用いられているレイオニクスギアは、フィーネの手持ちだったブルトンを介し、怪獣墓場からその聖遺物に引き寄せられる怪獣を一体召喚できる。その為、レイオニクスギアで召喚された怪獣は、外部からの補助がなければ強化できない。
 バトルナイザーを使って怪獣を使役するレイオニクスは、怪獣を使役しながらシンフォギアで戦うこともできる上に、歌うことでレイオニクスギアで召喚された怪獣を強化させられる。
 フィーネの魂を宿した人間であれば、この世界出身でなくても、レイオニクスとしての力を帯びる。だが数が非常に限られている為、レイオニクスの数が戦況の優劣を左右するといっても過言ではない。


第10話「覚醒する力」

 調はメディカルチェックを終えて、その結果を見ていた。体調に異常はない。特に普段通りだ。

「調!大丈夫デスか!?怪しい薬とか機械とか渡されてないデスか!?」

 検査を終えるや否や、切歌が飛び込んできた。調の体をペタペタ触って異常がないかを確かめる。

「うん、大丈夫だよ。切ちゃん。検査の内容も私たちの世界と同じだよ」

「本当デスか?キャロルが実は怪しい薬を仕込んでたとか……」

 調は切歌を引きはがして、乱れた服を整える。切歌は意外な顔をした。

「いい加減にして。切ちゃん、最近しつこいよ?」

「でもあたしは調の事が心配で……!」

「心配なのはわかるよ、でもしつこいよ」

 調は救護室を飛び出して、走り出す。当然切歌もそれを急いで追おうとした。

「ついて来ないで!」

 呆然とする切歌を尻目に、調はその場名から逃げ出した。

 

 

 走ること10分弱、調は市街地まで来ていた。

(本当、最近の切ちゃんはしつこいんだから……)

 以前と比べて、切歌が傍にいてくれる時間が増えたのは単純に嬉しい。しかし、今度は過保護すぎるのだ。こうも束縛が激しすぎると、逆に一人の時間が恋しくなってしまう。

 一応、出口付近にいた翼と奏に出かけるとだけ伝えてあるので、切歌に要らない心配をかけるようなことはないはずだ。

「どうして私がそんなに心配なんだろう」

 以前、切歌とキャロルが言い争いをしているのを見たことがある。自分がレイオニクスという特殊な体質であることについて言い争いをしているようだった。自分の特別さが全く分からないが、とにかく2人にとってはかなり重要なことのようだった。

 切歌がついてきていないことを確認すると、調は一安心した。今日は特別何をするわけではないが、散歩をしたり、食べ歩きをするつもりなのだ。ちゃんと誰もついてきてないことぐらいは確認したい。 調が影から出ると、前から走ってきたセレナとぶつかりそうになった。

「セレナ?」

「ごめんなさい!って月読さんじゃないですか!すいません、匿ってください!」

「え?」

 調はどうしていいかわからなかったが、偶々コンビニがあるのが目に入った。マリアがここに乗り込んでこなければ、やり過ごすことは容易だろう。

「えっと、じゃあこっち」

 近くにあったコンビニにセレナと入ることにした。そこで雑誌を立ち読みするふりをして、マリアをやり過ごす。しばらくして、マリアが走ってきて、周囲を見渡してセレナがいないことを確認するとどこかへ走っていった。

 遠目から見てもマリアが血眼になってセレナを探しているのが分かった。

「それで、どうしたの?」

「えっとですね、お昼を食べて服屋さんに入ったところ、雪音さんとマリア姉さんとでケンカを始めちゃって……」

 なんとなくその光景が目に浮かぶ。ただでさえマリアはセレナに対して過保護気味だというのに、倒れたとなれば尚更だろう。一方のクリスは機能性重視で服を選んでいるようで、オシャレな服は肌に合わないと言っていた。

 そんな2人がセレナの服選びをするとなれば、ケンカは避けられないだろう。セレナが怖がって逃げ出したというのが意外だが、それほど2人の言い争いがすごかったのかもしれない。

「本当、2人の気迫は怖かったです。どっちも決められなくて、見ての通り逃げてきちゃいましたけど……」

 調はそこまで聞いて、セレナに同情した。2人とも悪気があったわけではないのは分かるのだが、マリアの心配性が祟ったと言えるだろう。この世界に来てからというものの、マリアはセレナのことを心配しすぎているような気さえする。

「そういえば、暁さんはどうしたんですか?いつも一緒にいますけど?」

「うん、今日は一人。最近の切ちゃんは結構しつこいから、たまには一人になりたかったの」

 一度、どういうゲームか勉強してみようと大怪獣バトルの入門書を資料室で見つけた時には、切歌がかなり情熱的に教えてくれたものの、その量が多すぎて結局覚えきれていない。

「お互い、大切な人で苦労してるんですね……」

「うん……」

 要するに、切歌もマリアも相手との距離の取り方が苦手なだけなのだが、そのせいで二人はかなり苦しめられていた。

 

 

 SONG本部にて、未来は怪獣を召喚する訓練を続けていた。あれから響と一緒に勉強した結果、ゼットンがいかに強い怪獣であるかがハッキリとわかったので、未来は自主練のつもりで励んでいた。

 最初に召喚ができたのは、ほんの数秒、何度か試した今では、3分弱がせいぜいだった。響のレッドキングと何度か戦ってはいるものの、代名詞と言える一兆度の火球も、テレポーテーションも使えない。

 唯一使えるのは、ゼットンシャッターだけで、死なないだけマシ、というような状況だった。

 コンソールユニットのおかげで、召喚した時のバックファイアは抑えられてはいるが、それでも体力の消耗が激しい。

 今日も特訓を終えて、汗を流すためシャワーを浴びていた。シャワールームを後にして、ふと食堂に立ち寄ると、切歌が一人でうなだれていた。響に負けず劣らずの元気さを見せている彼女にしては珍しい。

「どうしたの?」

 放っておけなかった未来は、2人分のドリンクを用意して切歌に話しかけた。

「調に嫌われたデス……」

 遠くからではわからなかったが、切歌はこの世の終わりのような顔をしていた。確かに、いつも一緒にいる調の姿が見えない。

「調にハッキリと拒絶されたデス……。もうダメデス……」

「そんなに落ち込まなくていいじゃない。一応、どこにいるかは分かってるんでしょ?」

「翼さんがさっき伝えに来たデスよ……」

 それなら、一安心だと未来は思ったが、なぜか切歌は落ち込んだままである。

「調はレイオニクスなんデス……。怪獣を持ってないのに、宇宙人に狙われたら一発デスよ……」 

 切歌の言っている意味は未来にはわからなかったが、何となく、以前の自分と重なって見えた。響が融合症例だった頃、響のことを心配しすぎてかえって迷惑をかけてしまったあの時の自分に。

「大丈夫だよ。調ちゃんなら、きっと平気だって」

「そんな楽観的なものじゃないデス!前だって、調は1人で外に出た時に捕まったんデスよ!?こうしてる間にも、また狙われてるかもしれないデス!キャロルだっていつ調を捕まえに来るか分からないんデスよ!?こうなったら、あたしが調を捕まえて……」

 未来はそこまで聞いて、切歌に軽い手刀を浴びせた。

「何をするデス!」

「それじゃ、本当に調ちゃんに嫌われちゃうよ?」

 切歌も未来の指摘をわかっているのか、黙り込んで俯いてしまった。

「調ちゃんだって、1人の人間なんだよ?やっぱり踏み込んでほしくないところとか、やっぱりあるんじゃないかな」

「でも未来さんは、不安じゃないんデスか?響さんがいつもいろんな国や世界に行って、その、命を落とすかもしれないのに……」

「不安だよ」

 きっぱりと言い放った未来の答えを切歌は予想してないのか、意外そうな顔をした。

「響だって、遊びで戦ってるんじゃないんだもん。いつか死んじゃうかもしれない。でも、私は信じてるもん。響は帰ってくるって」

 未来は懐から、神獣鏡を取り出す。あの時使っていたものとは違うとはいえ、見るたびに思い出してしまう。響を救おうとして、響に襲い掛かったあの時のことを。

「だって、私にはそれしかできないから。神獣鏡(これ)の力を使えば、響を助けられると思ってた。でも、逆に響を傷つけるだけだったし、何もできなかった」

 結果的に、融合症例の症状に苦しんでいた響を救うことはできた。しかし、それは未来が望んだものではなかった。

「だからね、思うんだ。大切な人っていうのは、一緒にいるだけが全部じゃないって」

「未来さん……」

「私の場合は、響が帰ってこられる場所を守ること。響が迷っても私のところに帰ってこられるようにって。だからね、切歌ちゃんも切歌ちゃんなりの調ちゃんとの付き合い方、探してみるといいともうよ」

 未来に諭されて、切歌は思う所があったようで、少し考え込む。未来の言い分には一理ある。しかし、調の事を考えれば考える程、ダークファウストの影が切歌の脳裏をよぎる。

 幻影だったとはいえ、調が敵に回って襲い掛かってくる恐怖は間違いなく本物だった。キャロルに捕まっても、敵に捕まっても、調が辿る道に相違はないに違いない。

 調が敵になるという恐怖が、切歌の正常な判断を鈍らせる。

「でも、キャロルがどこまで信用できるかわからないデスよ……」

 切歌は未来には聞こえないようにこっそりと呟いた。もしかすると、キャロルに味方する必要なんてどこにもなく、調を連れてどこかに逃げ出した方が良いのかもしれない。切歌の中にそんな考えが浮かんできた。

 その時、サイレンが鳴り響き場の雰囲気が一変した。未来たちも慌てて指令室に向かう。指令室は緊迫した雰囲気に包まれている。

「市街地に謎のエネルギー場が出現!通信、進入共にできません!」

「早く解析を急げ!なんでもいい、アレの材質を確かめろ!」

 キャロルがほかのスタッフに指示を飛ばし、事態の究明を行っていた。少し遅れて、指令室に響達がやってきた。

「来たか。見ての通りだ。イチイバル、アガートラームとは連絡がついている。だがシュルシャガナ、そして……セレナとは連絡がつかない。恐らくはあの中だ」

 切歌はそれを聞いて、すぐに飛び出していこうと思ったが、少し考える。恐らく、がむしゃらに向かっても、何もできない。ならば、自分にできるのが何かを考える。

「ガギ……」

 切歌の言葉に、全員が一斉に振り向いた。

「何か思い当たる節があるようだな?」

「怪獣が原因なら、ガギが使われてるかもしれないデス。ガギは、強力なバリアを張って、その中で繁殖活動をする習性があるデスよ……」

「なるほどな。よし、アーカイブを開け!ガギのデータを集めろ!」

 キャロルの指示で、次から次へとガギのデータが集められていく。そして、そのバリヤーを破壊する条件が次々とリストアップされていく。

(調……)

 ガギがどういう怪獣かよく知っている切歌は、ただ調の無事だけを祈っていた。

 

 

 調とセレナは、バルキー星人ジークと遭遇し、逃げている最中だった。

(こんな時にLiNKERを忘れるなんて……)

 調はLiNKERを忘れた自分を恨んだ。ジークは、いきなり調を引き渡せば穏便にこの場を済ませると言ってきたのだ。調はどうして自分が狙われているのかはわからなかったが、セレナはそれを知っているようで、すぐに調の手を引いて走り出した。

「セレナ、一つ聞いていい?」

「なんですか?」

 ジークが追ってこないことを確認した時、調は口を開いた。セレナはシンフォギアを首から下げてはいないようだが、、いつ襲われてもいいように備えているようだった。

「どうして、私が狙われるの?」

「もしかして、知らないんですか?」

 調の質問に対して、セレナは意外そうな顔をした。むしろ、知っていることが当然ともいえるような顔だ。

「いいですか?月読さんは、レイオニクス……最強の怪獣使いの素質があることが分かったんです。だから、あなたがいるといないとでは、戦力に大きな違いが生まれてしまうんですよ」

 調はそれを聞いて、一つ合点がいった。敵に捕らわれたあの日、調が切歌の怪獣を強化できたのは、それが理由だったのだと。

「もしかしたら、ですけど暁さんはキャロルさんからあなたを守りたかったんだと思いますよ」

 セレナは軽く笑って見せた。調はそれを聞いて、なんとなく合点がいった。切歌に不要な心配をかけてしまったこと謝らなければならない。その上、これからの事について話し合わなくてはならないのかもしれないと思った。

「見つけたぜ」

 ほんの一瞬、油断した時、ジークに見つかった。セレナ達は急いで物影から出て、ジークと距離を離す。しかし、それを阻むかのように透明な壁に激突した。

「探すのに苦労したが、ガギのスパークドールが見つかってよかったぜ。ターゲットを逃がさずに済むからなあ」

 それと同時に、地面が大きく揺れ、2体の怪獣が現れた。1体は、長い触手を持った怪獣、そしてもう1体は以前、切歌に倒されたはずのガルベロスだった。

「スズチェンコがな、最後の最後で幻を使わせて、地下に逃がしてたんだ。頼れる仲間だろ?」

 絶体絶命の危機だった。セレナが怪獣を召喚できるかは不明な上に、調はシステムからして違うので怪獣の召喚は絶望的である。セレナが怪獣を召喚できても、2対1では多勢に無勢で押し切られてしまうかもしれない。

 緊張からか、自然と鼓動が早くなり、体が熱くなってくる。それに合わせ、息も上がっていき、立ちくらみに襲われる。

(私にも、怪獣がいれば……!)

 朦朧とした意識の中から、調の意思に応えるかのように『何か』がせり出してくる。初めて知るような、でもどこかで知っているような感覚。調はそれに手を伸ばし、『何か』をつかみ取った。

『BATTLENIZER MONSROAD』

 その音声とともに調の意識が明瞭になり、『何か』の正体が分かった。ガルベロスを撃退した時に調の手元に現れた白い機械、それが『何か』の正体だった。

 バトルナイザーが開いて、一枚のカードが飛び出した。調はそれを手に取ってバトルナイザーに読み込ませる。すると、バトルナイザーから光が放たれて、一体の怪獣が姿を現した。

 その怪獣は登場と同時に冷気を放ち、調の背後にあった壁を打ち砕いた。

「これが、月読さんの怪獣……」

 宇宙海獣レイキュバス、それが調の召喚した怪獣だった。レイキュバスは両腕の鋭利なハサミで、ガギに切りかかる。

レイキュバスのハサミはガギの触手を切り落とし、背後に迫っていたガルベロスを振り向きざまの冷気ガスで一瞬にして氷漬けにした。

「おいおいマジかよ……」

 2対1という状況なのに、押されている状況を見て、ジークに焦りが見えた。そして追い打ちをかけるかのように、虚空叩き割ってバキシムが現れた。

「セレナ!大丈夫!?」

 クリスを抱え、アガートラームを纏ったマリアがやってきた。

「うん。一応、大丈夫だけど、月読さんが怪獣を召喚できたおかげで」

「じゃあ、あれが調の怪獣なのね?」

 レイキュバスを指したマリアの問いに、セレナは無言で答えた。クリスは今までのメンバーの怪獣とは毛色が違うので、戸惑っているようだった。

「ええい!こうなったら、最後の手段だ!」

 ジークは黒いLiNKERのようなものを取り出し、自分に打ち込んだ。すると、ジークの体が巨大化し、レイキュバスとほぼ同じ体格になった。

「魔法の石の力、見せてやるぜ!」

 巨大化したジークは、調たちを見下ろして高らかに宣言した。




S.O.N.G怪獣ファイル
宇宙海獣 レイキュバス
身長:65メートル
体重:7万5千トン 
ステータス
力:★★★☆☆+★
技:★★★★☆+★★
知:★★☆☆☆+★
 調がバトルナイザーで召喚した怪獣。鋭利なハサミ、冷凍ガス、火炎放射といくつも武器を持っており、多種多様な戦術が取れる。
 加えて、バトルナイザーを介しての召喚であるため、若干ステータスが向上している。
 また、敵がウルトラマンのスパークドールズを使用した場合でも、ウルトラ族の弱点である冷気を操れるため、有利に立ち回る事ができる。

装者たちのコメント
調:これが、私の怪獣……。これで切ちゃんの隣に立てる……!
響:調ちゃんはレイキュバスかあ……。ゲームだとコンボが複雑だから、あんまり使わないんだよなあ。切歌ちゃんがタマに使ってるの見るぐらいだし……。
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