戦姫絶唱シンフォギア Never Ending Odyssey   作:パイシー

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S.O.N.Gデータベース
レイオニクス
 ストルム星人フィーネが人類という概念に仕込んだ呪い。太古の昔に行われたレイオニクスバトルで敗退したフィーネが、レイブラッド星人に会いたい一心で施したものである。
 フィーネは地球上に大量のレイオニクスを覚醒させ、蟲毒の要領で最強のレイオニクスを作り出そうと目論んでいた。
 シンフォギアの派生の一つであるレイオニクスギアとは相性が悪く、バトルナイザーを用いなければ怪獣を召喚、使役ができない。その代わりにシンフォギアと組み合わせることで、レイオニクスギアで召喚された怪獣を強化したりできるという利点がある。
 この世界ではレイオニクスギアを用いるのが一般的な戦い方の為、レイオニクスの有無は戦況を左右する要素になる。


第11話「レイオニクスの力」

 ボスから貰ったスパークドールの改造が終わり、出撃しようとした時、レギュラン星人トゥエルノは町の異変に気付いた。

 侵攻開始地点を探っていた偵察機がガギと、ガルベロス、そして巨大化したジークを捉えたのだ。

「あいつ!?何やってんだ!?」

 トゥエルノは完成したゼルガノイドのスパークドールズと、実体化用の装置を手に取り、急いで出かける。

「悪い、ジークを止めてくる。後は頼んだぞ」

 ミジー星人スズチェンコに後を任せて、トゥエルノはジークを止めるために出撃した。

 

 

 レイキュバスがガギのバリアを破壊したことで、SONG本部のモニターに今の状況が映し出されていた。

「3対2か。シュルシャガナを回収して一度撤退しろ。怪獣が出せるようになった以上、レイオニクスを失うわけにはいかない」

『はあ!?町は見捨てるのかよ!?今ここで倒さなきゃ被害が出るだけだぜ?』

 命令を聞いて、通信越しでもクリスが戸惑っているのが伝わってくる。

「そうだ。この戦いでレイオニクスは切り札になる。そう簡単に手放してたまるか」

『ふざけんなよ!これじゃ街の人たちがみご―――』

『分かったわ。調を回収して戻るわ』

 クリスの言葉を遮るかのようにマリアが答えた。クリスはキャロルに抗議をしようとしていたが、向こうから通信を切った。

「シュルシャガナを保管する。各自準備を始めろ」

 キャロルは周辺のスタッフに指示を飛ばして、何かを始めた。調がレイオニクスだと発覚した時の出来事が切歌の脳裏をよぎる。

「調を、どうするつもりデスか……?」

「言わなかったか?レイオニクスの持つバトルナイザーは、お前らのシンフォギアとはわけが違う。レイオニクスとして覚醒したなら、貴重な戦力として役立ってもらうまでだ」

 切歌の思った通りだった。調の意思を奪い、自動人形として戦わせる。それがキャロルの狙いだった。以前はまだレイオニクスと判明しただけだったので、キャロルも引き下がったが、今回もそう行くとは限らない。

 切歌は調を守ろうと飛び出していこうとするが、すぐに響に引き留められた。

「切歌ちゃん、どこ行くの?」

「あたしが先に調を捕まえれば、調は戦わされずに済むデス」

「待ってよ!キャロルちゃんだって何か考えがあるはずだよ!話し合えば、きっと……」

「調を兵器としてしか見てない人に、調を任せろっていうんデスか!?」

 切歌の言葉に響は黙ってしまった。当然だ、キャロルの目的を知っているのは切歌だけなのだ。マリアがそれを知っているのかは不明だが、きっとこのまま和解を求めても、キャロルにはどうせ届かない。

「響の言うとおりだよ。調ちゃんの意思も確かめないと……」

「うるさいデス!」

 切歌を説得しようとしていた未来も黙らせ、切歌は指令室を飛び出した。もうだれも信用できない、立ち去る寸前の切歌の目はそう告げていた。

「追うな。すぐにこちらでも迎撃態勢を整える。レッドキング、デマーガで迎撃、追ってきた敵をバキシムで挟み撃ちにする」

 指令室を出ていった切歌を響たちが追おうとしたが、指令室の扉が閉まってロックがかかった。

 キャロルは完全に切歌の事を見捨てるつもりのようで、淡々と作戦の説明を続けている。しかし、装者の中では誰もその説明に耳を傾ける者はいない。

「イガリマの事など放っておけ。後で別の世界から、新しいイガリマを招集すればいい」

「ふざけるな!」

 キャロルの放った一言が、翼の逆鱗に触れた。翼はキャロルの胸ぐらを掴み掛り、そのまま殴りかかろうとして、奏と響に止められた。

「暁は私たちの大切な仲間だ!今までは必要だからと指示に従ってきたが、仲間を侮辱するようなら……!」

「いいのか?この世界のギャラルホルンを動かせるのは俺だけだ。俺をここで切れば、お前たちは帰れなくなるんだぞ?」

 奏や響きに押し止められていたというのもあり、翼はこの場だけは矛を納めた。そして出撃準備をするために指令室を後にしたのだが、翼はキャロルを睨み付け、響は不安そうな顔をしていた。

 これから迎撃作戦に当たるのに、SONGの結束はあまりにもお粗末なものだった。

 

 

 キャロルから通信が来たとき、マリアはクリスから通信機を奪い取り、勝手に撤退するという形で話をつけてしまった。

「おいどうすんだよ!これじゃ街に被害が……」

「ええ。だからよ」

 マリアはクリスの言葉を遮るように答えた。現在、巨大化したジーク、弱体化したガギを相手に、凍結した状態のガルベロスを解凍させないように守りながら戦っている状況だ。何とか2対2の状況に持ち込めているので、それほど苦戦してはいない。

「街の外まで連れ出すのよ。ここじゃ戦いづらいでしょ?」

 マリアの指摘はもっともだった。2人は苦戦をしているわけではない。だが、町への被害が気になってイマイチ勝負を決めることができない。

「なるほどな……。おい!作戦変更だ!」

 クリスは調に作戦の内容を伝えて、レイキュバスを引っ込めた。クリスは氷漬けのガルベロスを撃破して、スパークドールを回収した。

「あら?調はシンフォギアで怪獣を出してたんじゃないの?」

「うん。私はちょっと特別だから、ギアは使わないの」

 マリアは懐から、2本目のLiNKERを取り出して調に渡した。

「予備のLiNKERよ。セレナはギアを持ってないみたいだし、疲れるかもしれないけど、セレナを担いでくれる?」

「うん、わかった」

 調は渡されたLiNKERを使い、シュルシャガナを纏う。マリアもクリスを担いで移動する。ジークはガルベロスのスパークドールを奪われたとみると、予想通りにマリア達を追ってきた。

 マリアたちは市街地を抜けて、SONG本部の方角へと向かう。機動力の高い調は、先行してセレナを比較的安全な場所で降ろした。

「それじゃ、行ってくるね」

「はい、頑張ってください」

 調はセレナと別れると、すぐにマリアたちの方へと向かおうとしたが、調の背後から一体の怪獣が追ってくるジーク達に向かっていった。

「切ちゃん……?」

 向かっていった怪獣はコッヴだった。コッヴはジーク達を足止めし、ここまでの時間稼ぎをしているようだった。調が戸惑っていると、後ろから装甲車が走ってきて、切歌が降りてきた。

「調!一緒に来るデス!」

 装甲車から降りてきた切歌は調の手を掴んで、装甲車の中に引きずり込もうとしたが、調は慌てて切歌の手を振りほどく。

「いきなりどうしたの!?」

「キャロルはもう信用できないデス。戻ったら何されるかわからないデスよ」

「でも、マリアたちを放っておけないし」

 調はバトルナイザーを構えて、立ち向かおうとする。切歌は舌打ちをして、調からバトルナイザーを奪い取り、調の腕を強く掴んだ。

「ダメデス!調はあたしと来るデスよ!」

「でも、クリス先輩だけじゃ2対1は……」

 間もなくして、クリスのバキシムが現れて、コッヴと共にジーク達と交戦を始めた。そして合流しないのを不審に思ったのか、マリアがこちらに向かってきた。

「切歌!?こんなところで何やってるの?」

 マリアは切歌に駆け寄り、問いただそうとするが、切歌は黙って装甲車に調を引きずり込む形で乗り込んだ。同時に交戦していたコッヴも消えて、調を乗せたまま装甲車は走り去っていった。

「ちょっと待ちなさい切歌!一体どうしちゃったの!ねえ!」

 マリアの言葉も聞かず、装甲車は走り出した。装甲車の中は完全に密閉されており、窓越しにマリアが叫んでいるのが見える。

「切ちゃん!なにやってるの!引き返して!」

 切歌は黙り込んだままパネルを操作しており、この装甲車の行先を決めているようだった。

 調は必死に扉を開けようとするが、厳重にロックがかかっており、びくともしない。外に出ようと必死に扉をたたいて外に出ようとするが、扉が動くことはない。

「ねえ切ちゃん!どうしちゃったの!?マリアたちが心配して―――」

「うるさいデス」

 調の言葉を遮るように切歌が調を引き倒した。さらに、調の首に枷をはめて装甲車の柱に括り付けた。

「調は黙ってあたしに従ってればいいデスよ」

 恐怖に囚われた切歌の手には黒く濁ったLiNKERが握られていた。

 

 

 切歌に逃げられたマリアはすぐに通信機を取り出して、キャロルに回線を繋ぐ。

「キャロル!どういうことなの!切歌が乗ってる装甲車はだれが運転してるの!?」

「はぁ!?待ってろ……。クソっやられた……。この世界の立花響だ。あいつの仲間がイガリマの脱走に手を貸したようだ……。その装甲車も奴らがあらかじめ用意してたものだ」

「なんですって!?この世界にも響がいるの!?」

S.O.N.G(こちら)側ではないがな。話はあとだ。お前はさっさと敵を仕留めろ!」

 キャロルの断片的な話を聞いて、マリアは一つの疑問が浮かぶ。この世界で響の代わりにルナアタック事件やフロンティア事変を解決したのは一体誰なのか、と。

 当たり前の光景すぎて気が付かなかったし、誰も指摘しなかったが、この世界の月はマリアたちのいる世界と同じく欠けていたのだ。ならば、フィーネによるルナアタック事件は起こっている上に、それを原因とするフロンティア事変も起こっているはずなのだ。

 詳しい話はキャロルから聞くことにして、マリアはセレナを探して走り出す。調がセレナを逃がす前に切歌に連れ去られたとしたら、セレナは安全な場所へ避難できていないのかもしれない。シンフォギアを持っていないセレナがこんな所にいるのは危ない。

(セレナ、どこなの……?)

 マリアは心配になってセレナに通信をしているが、セレナからの応答はない。周囲のがれきの山を掘り返し、セレナがいないか探すが見つからない。

(いた……!)

 少し離れた地点で、セレナの姿が見えた。まだ辛うじて建物の残骸が残っている場所で、そこの影に隠れているようだった。

 だがどこか落ち着きがなく、周囲の様子をうかがっているようだった。マリアは不審に思い、姿を隠してセレナを見守る。

 セレナの手にペンダントが握られている様子はないし、身に着けているようにも見えない。セレナはゆっくりと胸に手を当てて、深呼吸をした。

『B――― ――― g――― tron』

(え……?)

 セレナの聖詠は明らかにアガートラームのものではなかった。直後、セレナが光となってクリスたちが戦っている方へと向かう。

 そして光となったセレナは、一体の怪獣を形作る。響たちも知らないと言っていたが、何故かS.O.N.Gのデータベースに情報があった怪獣。キングジョーブラックカスタム、それがセレナが変身した怪獣の名前だった。

 キングジョーはバルキー星人に掴みかかると、その怪力でもって投げ飛ばした。そして次に片腕をランチャーに変形させて、バルキー星人を狙い撃つ。

 バルキー星人も負けじと武器を召喚し、手甲で銃撃を防いだ。バルキー星人の手甲からの大鋸が飛び出し、キングジョーに切りかかった。キングジョーはそれをガードすることなく体で受け止め、機体から火花が飛び散る。キングジョーはそのまま鋸の根元を掴み、力任せに引きちぎった。

 キングジョーはそこから追撃をしようと構えたが、急によろけ始め、脱力したかのようにフラフラとし始めた。少しでもバルキー星人から距離を取ろうと突然戦線を離脱し始め、そのまま倒れ込むようにして消滅してしまった。

 同じく戦っていたクリスのバキシムは、突然の乱入者に何もできず終始見守ることしかできなかった。

(セレナ……)

 あのキングジョーが本当にセレナが変身したものなのなら、あの様子ではすぐにでも助けに行かなければならない。マリアはキングジョーが倒れた方向へと駆け出した。

 

 

 レギュラン星人トゥエルノがジークの戦いを見ながら焦りを感じていた。ムザンX。ムザン星で採掘される魔石を加工した身体強化用の薬品である。組織に属する者であれば、ほぼ全員に支給されているものだ。

 しかしトゥエルノのような末端のメンバーに渡されるのは、質の悪いものばかりで命の保証すらない。トゥエルノ達にとって、ムザンXというのは文字通り最期の手段なのだ。

 ジークには絶対に使うなと釘を刺していたのに、彼はムザンXを使ってしまった。そして追い打ちをかけるように、以前ユメノカタマリを撃破した黒いキングジョーまで現れたのだ。もうなりふり構っている余裕などない。

「ジークの馬鹿野郎……。あれほど使うなって言ってたのに……!」

 トゥエルノはゼルガノイドのスパークドールを取り出して、ボスから貰ったダミースパークを使おうと構える。

「待ってろ、すぐに助けに行ってやるからな!」

 ゼルガノイドのスパークドールを使おうとしたその瞬間、トゥエルノの体を巨大な刃が貫いた。トゥエルノは何が起こったのか理解できずにその場に崩れ落ち、ゼルガノイドのスパークドールも、ダミースパークもその場に落ちた。

「そして、背後からの不意打ちに気づけなかったというワケダ」

 その人物はゼルガノイドのスパークドールを拾い上げて、うんざりしたようなセリフを吐いた。

「こちらプレラーティ。対象の始末を完了した、回収を要求するワケダ」

 トゥエルノは最後の力を振り絞って、ゼルガノイドのスパークドールを取り返そうとプレラーティに襲い掛かるが、その肩に担いでいた巨大なけん玉を振り回して叩き伏せた。

 プレラーティの背後から、潰れたような音がして、それ以後トゥエルノが抵抗してくることはなかった。

「了解、回収ポイントに向かう」

 プレラーティはファウストローブを解除して、カエルのポシェットの中にスパークドールをしまった。

「プレラーティ、ご苦労だった」

 回収ポイントへ向かう道中、同じ命を受けていたサンジェルマンと合流した。今回の任務は、不審な動きがみられたトゥエルノの監視と、S.O.N.Gの援護だった。

「カリオストロは?」

「別件ですでに出動している。S.O.N.Gから脱走した装者の護衛だそうだ」

「無限へのパスポートに騙されたな。結局私たちは体のいいパシリにされたというわけだ」

「そういうな。例え世界が違えども、人類を救うということに変わりはない。報酬だって悪くない」

「その通りなわけだが……」

 プレラーティは本来の目的から外れたこの仕事には多少の不満を感じてはいた。しかし、自分の石では帰れないので今は彼女の雇い主に従うしかない。

 街はずれの回収ポイントに到着すると、一台のヘリが下りてきた。そこには彼女の雇い主も乗っていた。

「お疲れ~。何か収穫あった?」

「敵がこれを持っていた。やっぱり何かあったわけだ」

 プレラーティは回収したスパークドールを雇い主に投げ渡す。

「うへぇ。なにこれ。ゼルガノイドっぽいけど、素体はダイナかぁ。後で直さないと……。じゃ、私は小夜(サヨ)に会ってくるから、じゃあね!」

 雇い主と入れ替わりになるようにして、プレラーティ達はヘリに乗り込む。

「あれがこの世界の立花ヒビキか。やはり聞いていた話とは違うな」

「それだけ、妹の存在が大きいというワケダ」

 彼女たちを雇い、何かを企んでいるこの世界の立花響と、その妹小夜。プレラーティ達は会ったことはないが、ヒビキが彼女のために行動しているのは間違いない。

 S.O.N.Gから要注意団体と目されている最悪のシンフォギア装者、それがこの世界の立花ヒビキという少女だった。




S.O.N.G怪獣図鑑
 キングジョーブラックカスタム
身長:55メートル
体重:5万トン
ステータス
力:★★★★★
技:★★★☆☆
知:☆☆☆☆☆

 セレナが変身した怪獣。外見こそキングジョーブラックと大きな違いはないが、唯一、片腕の武器がペダニウムランチャーだけではなく、ペダニウムランサーや素手から一種を選択するという違いがある。ただし、好き放題に付けられるというわけではなく、素手とどちらか一方しか使用できない。
 変身者であるセレナが万全の体調ではないので活動時間こそ短いが、経験豊富なのでその戦闘力は群を抜いて高い。

装者たちのコメント
マリア:セレナ、あなたは一体、何者なの……?本当に私の知ってるセレナなの?
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