戦姫絶唱シンフォギア Never Ending Odyssey   作:パイシー

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S.O.N.G人事ファイル
立花 小夜

年齢:16歳
誕生日:7月17日
血液型:AB型

 この世界の響の妹。リディアン学院高等部1年生。
 立花洸の連れ子だったとされており、それ故にヒビキの義妹にあたる。妾の子と冷たく扱われた為、彼女自身は非常に気弱な性格に成長してしまった。
 昔から自分を守ってくれた、義姉であるヒビキの存在が彼女の心の支えとなっている。
 かつて事故に遭った際、外科医だったこの世界の櫻井了子に救われた経験から、医者を志していた。
 特異災害対策機動部二課にも[編集済]として加入しており、ルナ・アタック事件、フロンティア事変の対処に尽力した。
 その為、『天羽奏の遺志を継がなかった響』と解釈することもできる。


第12話「怪獣三重奏」

(逃げなきゃ……)

 セレナは朦朧とする意識の中、建物の陰に隠れながら少しでも遠くに行こうとしていた。

 キングジョーに変身した時、誰にも見られない場所で変身したつもりだったが、肝心なところでマリアに見られてしまった。今の状態の自分をマリアに見せるわけにはいかない。見られてしまえば、きっと知られてしまうだろう。マリアにだけは絶対に知られたくなかった自分の正体が。

 セレナはポケットに忍ばせていた薬を打って、意識を持たせる。これで多少はマシになるだろう。

 既に左半身の感覚はなく、走ることすらままならない。ここで一息でもついて、症状が治まるのを待った方が賢明な判断ではある。しかしこの場所がマリアに見つからないという保証はない。少しでも遠くに、少しでも目立たない場所に逃げなければならない。

 セレナは、マリアに自分の素性を知られるわけにはいかなかった。その為には『マリアの妹』を演じ続けなければいけないのだ。他はいくらでも誤魔化しが利くが、今の自分の姿を見られれば、確実に自分がマリアの知っているセレナではない、と看破されてしまう。

 少しでも遠くを目指して歩き続ける。絶対に捕まってはいけない。その思いだけがセレナを突き動かしていた。

 

 

 コッヴ、謎のロボットの介入で、クリスの戦況は少しだけ有利になっていた。しかしそれらがいなくなった今、バキシムとバルキー星人の1対1で決着をつけなければならない。

 バルキー星人はロボットの介入以後、こちらの増援を警戒しているのか、アーマーを召喚してこちらを全力で叩き潰すつもりのようだった。

 アーマーを纏ったバルキー星人は、脚部の車輪を展開して一気にバキシムとの距離を詰める。バキシムはバルカン連射で迎撃するが、いともたやすく回避されてしまう。

 バルキー星人は破壊されていない方の腕からチェーンソーを展開し、バキシムに襲い掛かる。バキシムは体をズラして急所を避けるが、その代償として左腕が吹き飛んだ。

 断面から光の粒子を放出しながら、バキシムが苦悶の声を上げた。バキシムは最後の悪あがきとして、頭の角を発射するが、それがバルキー星人の装甲を貫くことはなかった。

 バキシムはバルカンで抵抗をつづけたが、結局それが届くことはなく、バルキー星人によって無残にバラバラにされて消滅してしまった。

 クリス再度召喚を試みたが、何故か聖詠が出ない。召喚できるはずのバキシムが先ほど倒されてしまったので、当然と言えば当然の顛末だ。

(クソ、ここまでかよ……)

 バルキー星人はクリスを見つけるや否や、クリスめがけて拳を振り下ろした。

 覚悟はしてきたつもりだった。戦場に立つ以上、必ず生還できるとは限らない。ましてやこんな非常識な世界での生還率なぞたかがしれいている。

 主戦力となる怪獣が召喚できなくなった以上、このまま敵に潰されて死ぬのがオチだ。クリスは誰にも看取られる事なく無様に死ぬ自分を笑った。

「クリスちゃん!」

 バルキー星人がクリスを潰そうとした時、レッドキングがバルキー星人を殴り飛ばした。それに合わせてヘリが降りてきて、響と翼が降りてきた。

「ごめんね、ちょっと遅れちゃった。あれ?クリスちゃん泣いてる?」

「う、うるせえ!」

 クリスはこぼれそうになっていた涙を拭いて、改めて戦況を確認する。レッドキングはバルキー星人に掴みかかり、残っていた方のチェーンソーを引きちぎっていた。

 装備が破壊されたことで優勢になると思われたが、バルキー星人は破壊された装備を捨てた。身軽になったバルキー星人はスピード勝負に出て、レッドキングに襲いかかる。

「嘘!?バルキー星人ってこんな強かったっけ……?」

 響は余裕そうに言うが、その表情は戸惑いと焦りが隠しきれておらず、怪獣の操作に集中しているのがすぐにわかる。

 対するバルキー星人はこちらが不利だと知っているのか、レッドキングの急所を的確に突きながらシャドーボクシングをするなどして完全にこちらを挑発していた。

 響は一撃でも多く攻撃を叩き込もうとバルキー星人に近づくも、それが余計な隙を作ってしまう。響が攻撃しようとする度にレッドキングは追い込まれていた。

「立花、絶唱を使ってみないか?」

 苦戦する響きを見かねたのか、翼が意外過ぎる提案をした。

「絶唱?無茶言うんじゃねえよ!生身で絶唱なんてできるわけないだろ!?」

「いや、立花のギアはあそこにある」

 翼が指さしたのは、レッドキングだった。

「我々が使っているのは、レイオニクス『ギア』なのだろう?ならば、絶唱が使えるのではないか?」

「でもあのバカはもう―――」

「やろう」

 クリスの言葉を遮るように、響が絶唱を使う案に乗った。マリアがいない以上、絶唱のバックファイアを軽減できないのにも関わらず、である。

「このままじゃきっと勝てないよ。だから、やろう」

 一見すると、響の決心は堅いように見える。しかし、マリア抜きでの絶唱という今までにない事態に恐怖も感じているのか、少し手が震えていた。

 クリスはやれやれと思いながら、震えている響の右手をとった。

「しょうがねえ、付き合ってやるよ。後で奢りだからな?」

 一度決心を決めた響は言ってきかない。ならば、クリスにできることは響の背中を押す事だけだ。

「クリスちゃん!」

「決まったようだな。見せてやろう、私たちの誓いのフォーメーションを」

「翼さん!」

 クリスと翼がギアを纏い、3人はS2CAの準備を整える。信頼できる仲間と繋がったお陰で、響の顔から不安はなくなっていた。

「2人の力、お借りします!セット!ハーモニクス!レイオニックバースト!」

『Gatrandis babel ziggurat edenal』

『Emustolronzen fine el baral zizzl』

『Gatrandis babel ziggurat edenal』

『Emustolronzen fine el zizzl』

 3人分の絶唱が響に集中する。絶唱自体の発動は成功した。だがやはり生身で絶唱の力に耐えるのは辛く、響の顔が苦悶の色で染まる。

 だが響は折れることなく溢れ出る力に抗う。そして、胸のペンダントから一条の光が放たれ、苦戦していたレッドキングに注がれた。

 すべての力がレッドキングに注がれると、レッドキングの体が黒く染まった。そして溶岩のように赤い光を発しながら胎動していた。両腕も肥大化し、強化されたレッドキングは大きく雄たけびを上げた。

「やった……!EXレッドキングに進化したよ!」

「ふぅ……つっかれたあ」

 絶唱の膨大なエネルギーをその身に受けた反動で、全員がその場にへたり込む。もうこれ以上戦うことはできない。よって、この戦いのすべてはEXレッドキングに委ねられた。

 EXレッドキングは響の気持ちを代弁するかのようにその両腕を地面に叩きつけた。直後、バルキー星人の足元からマグマが吹き出して地割れに呑まれる。これでは自慢のスピードも意味をなさない。

 EXレッドキングはバルキー星人の頭を殴り飛ばし、バルキー星人の体が打ち上げられる。

拳から炎が噴き出し、EXレッドキングは静かに腰を落として力を込める。そしてバルキー星人の体が落ちてきたところで全力の一撃を叩き込んだ。

 逃げ場のないエネルギーがバルキー星人の体を駆け巡り、体中から炎が噴き出しながら爆発四散した。そしてその衝撃で響達の足元にバルキー星人のスパークドールが落ちてきた。

 バルキー星人ジークを撃破し、レッドキングは光の粒となって消えていった。同時に響はせき込み始め、思わず押さえた手が血に濡れた。

「大丈夫か?立花?」

「はい。何とか」

 響は無事を取り繕うが、顔色から言って明らかに無事ではない。翼はすぐに通信機を取り出してキャロルに連絡を取る。

「こちら翼。敵の撃滅を完了した。回収用のヘリを要請する」

『分かった。詳しい経緯は帰還してから聞こう』

 キャロルは必死に怒りを堪えているようだったが、翼は構わず通信を切った。無理もない。いくら装者は他の世界から補充できるとはいえ、その度に練度がリセットされるのだ。無駄に消耗するわけにはいかない。

 

 

 セレナを追ってきたマリアは、キングジョーが消滅した地点までやってきていた。しかし、肝心のセレナの姿が見えない。

「セレナ!どこなの!?」

 マリアはセレナの姿を探して周囲を探すが、セレナがいたという痕跡が見当たらない。マリアはセレナが行きそうな場所を考える。キングジョーの消え方から言って、セレナはかなり弱っているはずだ。ならば、そう遠くへとはいけないはず。

 周囲を走りながら、セレナの姿を探す。建物の影、中、セレナの影がないかを探すが、全く見当たらない。

 マリアはセレナに会って、どうしてもその正体について聞いておきたかった。どうしてアガートラームを持っていないのか、そもそもセレナは何者なのか。

 周囲を探索するうちに、一軒の廃墟にたどり着いた。趣のある建物で、もしこの建物が使われていたのなら、街のシンボルになっていたかもしれない。中に入ろうとしたとき、マリアの足元にプレートが引っかかった。

「リディアン、学院……?」

 文字の一部が欠けてしまっていて読めなくなっているが、読める文字を拾っていくとそう読めた。ここはリディアン跡地、元の世界でカ・ディンギル跡地とされている場所だったのだ。

 だが、マリアの知っているカ・ディンギル跡地とはかなり違い、建物の一部は残っている上に、肝心のカ・ディンギルが見つからない。

「セレナ-!いるー?」

 マリアは一つ一つ教室を確認していくが、セレナの姿は見えない。職員室があったであろう管理棟は完全に倒壊しており、残っている教室棟も一部が崩れている。いつ崩れるのか分からない以上、事態は一刻も争う。

「マリア姉さん」

 背後から声をかけられて、振り返ると弱弱しい笑顔を浮かべていた。本人は必死に取り繕っているようだが、すぐにでも倒れてしまいそうだ。

「セレナ!大丈夫なの!?」

 マリアが駆け寄ると、セレナはマリアに倒れ込んできた。セレナは自分の力で立とうとするが、うまく力が入らないのか立ち上がることができない。

「騙すようなマネをしてごめんなさい。私はマリア姉さんの知ってる私じゃないかもしれない。でも今は、全部を話すことはできないの。でも、いつか絶対、話すから。待ってて」

 セレナは肩で息をしながら、マリアに告げてきた。マリアもセレナの意思を汲んで、追及するようなことはしなかった。

「別にいいわよ、セレナ。無理をしなくても、世界が違ってもあなたは私の妹なんだから」

 マリアは優しくセレナを抱きしめた。世界が違ってもセレナはセレナに変わりはない。だからこそ、彼女の正体が何であれ、自分だけは味方でいよう。マリアは心にそう誓うのだった。




S.O.N.G
溶岩剛腕獣 EXレッドキング
身長:49メートル
体重:2万4千トン
ステータス
力:★★★★★
技:★★☆☆☆
知:★★★☆☆

 3人の絶唱により響のレッドキングが進化を遂げた姿。大きく発達した両腕が特徴で、力任せに戦うその姿は、偶然か否か暴走時の響と似ている。
 その怪力は地面に亀裂を走らせるほど強力な反面、絶唱のフォニックゲインを調節するマリアと、それを生身で受ける響に多大な負荷がかかっている。その為持続時間は1分と非常に短い。

装者のコメント
響:いやぁ、まさか本当に絶唱で怪獣が進化するなんて思わなかったよ。成せば大抵何とかなるもんだね!
未来:確かに強い怪獣なんだろうけど、でもちょっと怖いかも……。
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