戦姫絶唱シンフォギア Never Ending Odyssey   作:パイシー

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第3話「吠えろ!怪獣地獄」

 並行世界に飛ばされたクリスは、早速絶対絶命の危機に陥っていた。目を覚ましていきなり得体の知れない怪物に取り囲まれ、目の前で人が捕食されている所を目にしてしまったのだ。

「なんでペドレオンがいるデス!?ネクサスの世界にでも迷い込んだデスか!?」

 後ろで切歌と未来を守りながら、シンフォギアを装着して目の前の怪物と戦っている。幸い、面で攻撃できるクリスと相性がよく、何とか耐えられている。しかし怪物は際限なく襲ってくるので、いつまで持ちこたえられるか分からない。

(一刻も早くコイツらを逃さねえと……)

 イチイバルのシンフォギアが問題なく動いたのはクリスにとって幸運だった。今の所胸のコンバーターユニットが青くなっただけで、使える技、歌に変化はない。ならば、火力によるゴリ押しでこの群れをとっぱできるかもしれない。

 しかし、クリスの体力がいつまで持つか分からない。集中力が少しでも途切れれば2人は怪物の餌食になってしまう。

 クリスは一か八か、ある賭けに出ることにした。スカートアーマーから、ミサイルを展開し、あたりも付けずに無茶苦茶に乱射した。

「行くぞお前ら!舌、噛むなよ!」

 クリスはすぐに切歌を背負い、未来の手を引いて駆け出す。そして思いっきり跳び上がり、群れのどれにも当たらずに飛んでいくミサイルに跳び乗った。普段より人数が多いので、バランスを取るのに苦労するが、ある程度高度が出てしまえばあの怪物も追ってこない。

「ふぅ……危なかったぜ」

 クリスは何とか怪物の群れから脱出できて安心できた。

「クリス、大丈夫?ずっと戦いっぱなしだったみたいだけど」

「何とか、な。後少し決断が遅かったら、ダメだっただろうな」

 どういうわけか、普段シンフォギアで戦うより、体に疲れが溜まっているような気がする。あそこで思い切った決断ができなければ、ジリ貧になった全滅してしまっただろう。

 そしてミサイルに乗って移動し始めて1分程経った頃、いきなりクリス胸のコンバーターユニットが赤く点滅を始めた。それと同時にクリスの指先から少しずつ力が抜けていく感覚に襲われた。

「な、なんだよこれ!?力が、抜けていく……!」

「カラータイマーみたいなものデスかね?3分経つと自動的に変身が解除される機能なんて聞いたこと無いデスが」

「いつの間にシンフォギアはラーメンタイマーになったんだよ!」

「クリス!?本当に大丈夫なの!?」

 突然シンフォギアに起きた異変で、一行はパニック状態に陥った。原因は切歌が余計な一言を言ったせいのもあるが、クリス自身異変を感じていたので余計に説得力を持ってしまった。

 クリスは力が抜けていく感覚に抗えず、イチイバルの変身も解除されてしまった。足場になっていたミサイルも消滅してしまい、3人は地上めがけて真っ逆さまに落ちていく。

「―――ッ!―――ッ!クソ!聖詠ができなくなってるし、何がどうなってるんだ!」

「いつの間にイチイバルにカラータイマーが……?それともクリス先輩はウルトラ族……?」

「ちょっとー!どうなってるのー!?」

 怪物の群れから少しでも遠くに離れようとかなり急角度でミサイルを打ち出したせいで、ここから地上に落ちれば、間違いなく命はない。

 結局全滅する運命だったのかとクリスが半ば諦めた時、突然何かがクリス達をに覆い被さり、ものすごい速度で近くのビル群へと減速しながら着地した。クリスはそれが誰なのか確認しようとしたが、減速した時の衝撃で意識は闇の中へと消えていった。

 

 クリスが目を覚ますと、マンションの一室で寝かされていた。隣では切歌と未来も寝かされ、眼の前で、鼻歌を歌いながら誰かが料理をしていた。

「目が覚めましたが?」

 料理を作っていたのは、セレナだった。彼女のイメージとは違い、味噌汁や焼魚といった和食を作っているようだった。

「お久しぶりです。丁度危ない所だったみたいですので、助けてここまで連れてきたんですよ」

「ああ、ありがとう」

 セレナは4人分の食事を机に並べて、切歌や未来を起こす。クリスが部屋の様子を確認すると、かなり生活感のある部屋で、実際に人が住んでいるようにさえ見えた。

「なあ、この部屋って」

「はい?ああ、ここは私の部屋ですよ。こっちの世界で戦うにあたって、ここで暮らしてるんです」

 セレナに起こされ、残りの2人も目を覚まし始めた。

「ん……あれ?セレナ、大きくなったデスか?」

 切歌はセレナの姿を見ると、いきなりそう聞いた。クリスはセレナとあまり遭ったことがないので、気付かなかった。しかし言われてみれば、13歳という年齢にしては大きすぎるような気がしてきた。雰囲気や見た目から言って、15~6歳ぐらいがちょうど良いだろうか。

「え?ああ、私は皆さんより未来の時間から呼ばれたので、その分成長してます。私からすれば、2~3年ぶりにお会いした感じです」

「成る程ねえ……」 

 確かに、13歳ほどの精神的に未熟なセレナより、ある程度成長した状態のセレナを招集した方が戦力になる。目的のためには自害すら厭わないキャロルなら考えそうなことだ。

「さてと、とりあえずご飯の支度ができてるので、食べましょう。話はそれからです」

 クリスが時計を見ると、既に7時を回っている。時間的にはちょうど良い上に、断る理由はなかった。

 セレナが点けたテレビではちょうどニュース番組をやっていた。ニュースの内容は、怪獣災害の規模、被害状況や街頭インタビュー等、怪獣の話題でいっぱいだった。

「怪獣は何故現れるのか、ねえ。信じられねえけどなあ」

 一応、怪獣が頻繁に出没するエリアとそうでないエリアがあるらしく、一般人は安全地帯で暮らせているらしい。怪獣の被害に遭う人間は、安全地帯が攻め落とされた時か、仕事の都合で危険地帯を通らなければならない時にしか現れないという。

 4人が食事を終えると、セレナは手際よく片付けを終えて、クリスたちに資料とシンフォギアのコンバーターユニットに似た結晶体を3つ差し出した。

「怪獣災害の機密資料と、怪獣を召喚できるようにするコンソールユニットです。私のスペアで申し訳ないですが、これがあれば怪獣に襲われても対抗できます」

 クリスは怪獣を召喚できるという機能に耳を疑ったが、ここまで手の込んだドッキリはあり得ない。戦うために必要だと判断して装着した。切歌と未来もセレナを信頼して、コンソールユニットを装着した。

「おお!かっこいいデス!レイブラッド星人の頭みたいデスよ!」

 またしてもよくわからない名前を口にしながら大興奮する切歌、心ここにあらずといった感じでどこか遠い目をしている未来と反応はそれぞれだった。

「怪獣とうまく適合できれば、すぐにで怪獣を召喚できるんですけど、まだ適合してないのでとりあえず今はお守り程度に思ってくださいね」

「了解。ちょっとこの資料に目を通させてもらうぜ」

 クリスは適当に資料を取って中身をめくる。内容は、この世界に攻めてきているものの正体、怪獣災害の現状について詳細な検証を元に、分かりやすくまとめられていた。

 この世界を攻めてきているものは、宇宙人のギャングというのがその正体だった。現状その下部組織であるスペクトルが日本で暴れまわっており、東京を中心にあちこちで破壊活動をしているらしい。幹部は、リーダーのメトロン星人トゥエルノ、参謀のバルキー星人ジーク、技術者のミジー星人スズチェンコの3人らしい。

 そして、怪獣についてはトゥエルノが捕獲した地球怪獣が戦力の大多数として暴れまわっており、それ以外にスズチェンコの開発したロボット怪獣が確認されている。それ以外にも、彼らに支給された宇宙生物スペースビーストが斥候や尖兵として使役されているらしい。

「なあ、この宇宙ギャングってのを倒せば今回のあたし達の作戦は終わりってことでいいのか?」

「はい。現状ボスが誰なのかは不明ですので、その3人を倒すのが最優先目標ですね」

 他にはクリスにはわからない内容が多く、クリスはとりあえず大体の目標を理解するだけにした。

「あの、セレナさん。響は今どうなってるの?私達はぐれちゃって不安で」

 どこかうわの空だった未来がどこか口を開いた。よそよそしい口調ではあったが、コンソールユニットを装着したシンフォギアを握りしめてすぐにでも飛び出して行こうとしているような雰囲気さえ見える。

「響さん達は今SONG本部で保護されているようです。ここからそう遠くないので、明日行きましょう。危険地帯を挟む以上、夜中行くのは危険ですから」

 セレナに説明されて、未来は少し安心したようだった。親友の響と離れ離れになって、不安を覚えていた未来とは対象的に切歌は興奮していた。

「すごいデス!迷子になったザンドリアスとか記事になってるデス!こっちは動物図鑑にピグモンとか載ってるデス!」

 セレナが整理していた新聞を読み散らかし、怪獣の名前をスラスラ言いながら読み漁っていた。クリス達が横になっていた布団も、すっかり新聞で散らかってしまった。

「おいおいお前少しは緊張感を持てよ……。一応作戦中だぜ?」

 クリスは散らかった新聞を片付けながら、切歌をなだめる。明日から忙しくなるのは目に見えている上に、シンフォギア装着の疲れも抜けきっていないので、早く休みたかったのだ。

「でも先輩。情報収集は大切デスよ。こういう何気ない新聞に重要な情報が載ってたりするデスよ」

「はいはい。そういうのはSONGの仕事だろ。あたし達はあたし達にできることをすればいいだんだからよ」

 新聞を片付け終えると、クリスは布団で横になって眠りについた。

 

 

 翌朝、朝食を終えたクリス達は、セレナの運転するジープでSONG本部へと向かっていた。

「にしても、運転なんてできたんだな」

「安全地帯ではできませんが、移動用に練習したんですよ。一応、公務上必要な措置として限定の免許証だって発行してもらったんですよ?」

 SONG本部まではそこまでかからないならしく、瓦礫に埋もれて遠目に街が見えてきた。

 セレナは何かを感じ取ると、いきなりブレーキを掛けて、ジープを止めた。

「どうした!?」

「敵です。完全に待ち伏せされてました」

 セレナが止まるのに合わせて、昨日の怪物、ペドレオンの群れが現れた。

「セレナ、あたしがイチイバルで道を開く。すぐに走らせろ」

「そうはいかないんだなあ、これが」

 ペドレオンの群れの中から、異形が姿を現した。昨日の資料にあった、バルキー星人ジークである。

「昨日はミサイルに乗ってくなんてイキな真似するじゃねえか。こっちのペドレオン養殖計画が少しずれちまったけどな」

 ジークはペドレオンの一頭を撫でて、何かの合図を送る。するとペドレオン達が一斉に一箇所に集まりだし、巨大な一頭のペドレオンへと変化した。

「今度は逃さねえ。お前らまとめて、こいつらの餌になってもらうぜ!せっかく作った養殖場なんだからな!」

 ペドレオンはゆっくりな動きでこちらに向かってきた。ジークはそれだけ言うと何処かへと姿を消した。

「あれがペドレオン本来の大きさデス。ああ見えて頭もそこそこいいので、厄介デス」

「解説はいい!早く走らせろ!」

 セレナはすぐにアクセルを踏んで、ジープを走らせる。SONG本部まで逃げられれば、そこにいる戦力で迎撃ができると踏んでのことだった。

 しかし、ペドレオンの触手がジープを捉えるのが早かった。一行はジープの上から転がり落ちて地面を滑る。着地には成功したので大きな怪我はない。

 セレナはすぐに無線機で連絡を取り、回収要請を出しているようだった。しかし回収部隊が来るまで時間がかかる上に来た場合はこの場で討伐をしなければならない。

(仕方ねえ、一か八かだ……!)

 クリスは怪獣を召喚できる可能性にかけて、イチイバルを使う決心をした。

『Killter Ichaival tron』

 聖詠を唱えると、何も起きなかった。イチイバルのシンフォギアを纏うのでもなく、怪獣が出てくるのでもなかった。ペドレオンの触手が切歌や未来をこの場で失ってしまえば、調や響に合わせる顔がない。

「クソッ!なんでだよ!?」

「適合係数が足りない……?でもシンフォギアが纏えるなら怪獣を呼び出せるはずじゃ、でもなんで……?」

 怪獣召喚に比較的詳しいはずのセレナもこの状況について理解が出てきなかったようだ。ペドレオンは、その触角で敵を探し、切歌へ向けて触手を伸ばす。

「この状況を何とかできるなら、どんな弱い怪獣だった構わねえ。なんでも良いから、出てきやがれええええ!」

 クリスが力いっぱい叫ぶと、突然『空が割れた』。その向こうには赤い空間が広がっていて、一体の怪獣が佇んでいた。

「そっか。召喚できていたんだ!隠れてただけで、失敗はしていなかったんだ!」

 その怪獣は空を叩き割って現れると、ペドレオンを殴り飛ばした。

「アレが、私の怪獣……」

「クリス先輩、あれ怪獣じゃないデス。超獣デス。一角超獣バキシムデス!」

 バキシムは雄叫びを上げてペドレオンを威嚇する。クリスは、それが自分の怪獣だと分かると、繰り出せる技、できることが次々と頭の中にインプットされていく。

「成る程、じゃあ、慣らし運転と行こうじゃねえか!」

 バキシムは腕に取り付けられたバルカンでペドレオンを乱れ撃つ。肉の塊でしかないペドレオンに対してバルカンは肉を削ぐ以上の効果を上げられなかったが、ペドレオンを転倒させるには十分だった。

 バキシムの攻撃の手が止むことはなく、次はミサイルを発射してペドレオンの触角を破壊した。感覚器を失ったペドレオンはうまく立ち上がる事ができず、なんとか立ち上がったかと思えば、手当たり次第に触手を振り回す事しかしなくなった。

「このまま一気に畳み掛けてやる」

 ペドレオンの触手がバキシムの両腕を捉え、バキシムの攻撃を封じた。しかしバキシムの奥の手は、腕から出るのではなかった。

 バキシムの特徴的な一本角が肥大化し、ブーメランのような形状へと変化し射出される。バキシムの角は、ペドレオンの体を貫いて、バキシムの頭へと帰る。体に大きな穴を開けられたペドレオンは光の粒子となって消滅していった。

「ふう、いっちょ上がり、だな」

 バキシムも戦闘が終わると役目が終わったと判断したのか、自分が出てきた空の割れ目へと帰っていった。バキシムがいなくなると、空の割れ目も逆再生されたかのように直った。

「先輩すごいデス!超獣を引き当てるなんてすごいデスよ!」

 目の前で怪獣のファイトが見られて、切歌は大興奮の様子でクリスにじゃれついてくる。未来は目の前の戦いを見て、圧倒されたのか何か考え込んでいた。

「お疲れ様です。とりあえず、本部についたらメディカルチェックですね……」

 愛用のジープが壊されたからなのか、セレナはどこか浮かない様子で、乾いた笑いを浮かべていた。

 怪獣を使い、初めての勝利を得たクリスは、ふと空を見上げる。空の向こうからは、回収部隊のヘリが飛んでくるのが見えた。




SONG怪獣図鑑
一角超獣 バキシム
体長:65メートル
体重:7万8千トン
ステータス
力:★★★☆☆
技:★★★★☆
知:★★★★☆
 ヤプールによって製造された超獣。芋虫と宇宙生物を合成して生み出され、全身に装備された重火器を駆使して戦う。
 また、空間を叩き割って出現するため、奇襲を仕掛ける事もでき、その巨躯に見合わず器用な戦い方を得意とする。
 クリスと共鳴することで発動する必殺技は、『CRIMSON HORN』。その一本角を肥大化させて相手を貫く。発射した角はブーメランのように戻ってくるので、クリスさえ平気なら何度でも発射できる。

装者のコメント
クリス:最初は出てこなくてヒヤヒヤしたが、何とか召喚できて良かったぜ。技もイチイバルと似てるから、戦いやすかったしな。
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