戦姫絶唱シンフォギア Never Ending Odyssey   作:パイシー

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最終章:響き渡るは小夜曲の調べ
第27話「沈む夕陽」


 ある日、食堂で食事をしていたクリスは遠目に机を囲んでいるセレナ、シラベ、キリカの3人を眺めていた。3人の雰囲気こそ険悪だが、ちょうどいい具合に調和しかえってチームの平穏は保たれているようだった。

「どうしたのクリス。気になるの?」

 小夜に押されて、車椅子に乗ったマリアが声をかけてきた。もうマリアの体は歩ける程度にまで回復しているが、体力面での不安などもあって車椅子での移動が勧められているのだ。

「いや。別に。顔は同じでも、やっぱり別人なんだなってな」

「本当よね。あの2人も世界が違うとここまで違うなんて」

 バックアップチームと命名された3人は、崩れそうで崩れない絶妙なバランスを取っている。シラベが隊長として任命されたらしいが、キリカが実質的な隊長としてチームを回しているように見える。

「最初はセレナをさらって来た娘と同じチームっていうのは不安しかなかったけど、杞憂だったみたいね」

 マリアはシラベの存在を不安に思っていたようだったが、キリカが彼女の防波堤としてうまく作用している。お蔭でセレナもチームに対する不安感が多少拭えているように見えて、マリアも安堵の笑みが漏れた。

 

 

(これからどうしよう……)

 並行世界からやってきたセレナにも、当然S.O.N.Gの寄宿舎の部屋が割り当てられている。他の2人は代理の装者として並行世界に挨拶に出かけていった。セレナは疲れを癒やすためにも自分の部屋で休んでいた。希望通り、マリアが使っていた部屋が割り当てられたものの肝心のマリアは病室にいるので2人っきりの時間とは言えない。並行世界の自分である小夜に対する対抗心は消えていないものの、その具体的な対抗策も思いついていない。確かに年上である小夜のほうが力は強いし経験も豊富、いざというときに頼れる存在なのは確かだが、マリアの隣に彼女がいることが許せなかった。

(マリア姉さん、私のことを忘れないといいけど、うーん……)

 ツバサに頼み込んでこの世界に残れるようになったのは嬉しい。ただ、小夜に対抗することで頭が一杯でそれ以外の時間を何に使うかということについては全く考えていなかった。つまるところ、彼女がS.O.N.G本部から帰ってしまえばやることがなく暇なのである。部屋のものを好きに使っていいという許可は得ているので、マリアが読んでいた本や、映画のDVDとかが見つかるかもしれない。

(なにか面白そうな映画とかないかな。あれ?なんだろうこのダンボール)

 ベッドの奥の方に、こっそり隠すようにしてダンボールが置かれていた。中を開けてみると、DVDといくつかのおもちゃが入っていて、DVDにはパッケージの上から英語で書かれたラベルが貼られた。

「ウルトラ、マン……ゲード?ジード?」

 どうしてこのような物があるかわからないが、ちょうど部屋にはパソコンも備え付けられている。セレナは不思議に思いながらも1巻目のディスクをパソコンに入れて再生を始めた。

 

 

 翌朝、クリスが食事をとっていると、妙な光景が目に入った。

(あいつの妹がいねえ……)

 不機嫌そうに食事をとっているシラベ、ハンバーガーを口にするキリカの中に、セレナがいない。代わりにシラベが小夜の隣で食事をっている。

「ねえ小夜、セレナちゃん知らない?今朝から見かけないんだけど」

「私も知らないな。昨日は一緒に訓練してたんだよね?」

「うん。まだ説明の段階だけど、これから3人で連携と分断された時の訓練が入るってつーちゃんが言ってた」

 小夜達もセレナの居場所は知らないようだった。食事を終えたクリスは口元を拭くと、セレナが使っているらしい部屋に向かう。

「おーい。いるかー?」

 クリスが声をかけても中から返事が帰ってこない。ドアを開けようとしても、鍵がかかっていて開かなかった。

「おーい。起きてるか?」

 クリスがドアをノックしてみても、反応がない。一応、ツバサに頼めば鍵を外してもらえるが、わざわざそこまでする必要もない。

「おーい!もう朝だぞー!」

 もう一度呼びかけをして、少し強く扉を叩いてみる。これで何もなければ他を当たるしかない。

 そう思っていた時、部屋の中から何かが擦れる音が聞こえ、部屋の鍵が空いた。

「姉さん……?おはよう……」

 中から出てきたのは髪も乱れ、寝ぼけたセレナだった。昨夜は夜更かしでもしていたのか、目の下には少しだけ隈ができている。

「どうしたんだ、お前。昨夜は遅かったのか?」

「え?雪音さん……?ちょっと待っててください!すぐに支度しますので!」

 セレナはすぐに自分が寝ぼけていたことに気づき、部屋の中に戻って行った。乱れた髪や服を直しているのだろうが、少しして寝息が聞こえてきた。

「はぁ……」

 クリスは頭を掻きながら半開きになった扉を開けて中に入ると、中でセレナがクシを片手に眠っていた。乱れた髪は少し粗雑ながらも整えられており、どうやらそこで力尽きてしまったらしい。

「仕方ねえな」

 クリスはセレナの手からクシを取ると、髪を整え直す。マリアたちには負けるが、クリスだってセレナと戦っていたのだ。多少なりとも髪型は整えられる。

「よし。こんな所か」

 セレナの髪を整えて、服のシワを伸ばすと、机の上でパソコンが置かれているのに気付いた。

「ウルトラマンなんか見てたのかよ……。別に後でも見られるんだから、さっさと寝ろよ……」

 パソコンを閉じて、寝ているセレナを背負う。今の時間からしてもう一度寝かせておくわけにはいかない。とりあえず食堂に連れて行って朝食をとらせるつもりである。

 背負って少し歩いてみたものの、背中のセレナが目を覚ます様子はない。せっかくなので、クリスは少しだけ遠回りすることにした。

 食堂へ向かう前に、集中治療室のあるフロアに降りた。ガラスの向こうでは、切歌が時折苦しそうな声を上げている。切歌の容態は少しずつ回復しているそうだが、予断を許さない状況であることに変わりはないらしい。

 そして集中治療室の前では、調が切歌の様子をうかがっており、すぐにこちらに気がついた。

「クリス先輩。おはようございます」

「あぁ。お前はずっとこいつを見てたのか?」

「はい。切ちゃんが目を覚ました時、誰もいないと寂しいと思うので」

 あの作戦までは、誰もが切歌と調が無事に戻ってくると信じていた。でも結果は、瀕死の切歌と落ち込んだ調が戻ってきた。ここまで作戦が失敗したのは装者達の間でもはじめての事かもしれない。

「クリス先輩。どうして私が助かったんでしょうか?私にそこまでの価値なんて……」

「バカじゃねえの」

 未だに気持ちの整理がついていない調に対して、クリスは真っ直ぐな気持ちをぶつけた。調も予想していない答えが帰ってきて、驚いているようだ。

「命に価値があるとかないとか、そういう事じゃねえよ。人間なんてすぐに死んじまうんだ。コイツは、お前を命がけでも守りたかっただけ。お前が考えることじゃねえよ」

 両親を喪い、戦地を渡り歩いたクリスは知っていた。命というものは良くも悪くも等価値であると。故にかつてはそれが踏みにじられない世界を作ろうとフィーネに手を貸していたのだから。

「それにコイツはまだ死んじゃいない。だからお前は自分が助かったかで悩むんじゃねえよ。お前は助かったんだから、いつも通りにしてりゃいい。それだけだ」

「……ありがとう、ございます。少しだけ気が楽になった気がします」

 クリスは言葉を返さずにその場を去っていった。背中のセレナはまだ目を覚ます様子はない。少し回り道をしてしまったが、このまま食堂で起こすつもりだ。

(ガラにもねえこと言っちまったな……。クソッ、あのバカがいねえと調子が狂う) 

 今この場にいない響もきっと無事であるとただひたすら祈っていた。

 

 

 食堂に到着すると、セレナを席に座らせてから軽い食事を注文した。食堂にはあまり人はおらず、朝の喧騒に比べれば静かだった。

「ん……」

 料理を持ってくると、セレナが目を覚まして目をこすりながら起き上がった。

「よう、目は覚めたか?」

「あれ……?私、寝ちゃって……」

「よう。モノ食えるか?」

 セレナは目をこすりながあくびをして、クリスが差し出したおにぎりを手にとった。だがまだ半分寝ぼけていたのか一口食べた瞬間に咳き込んだ。

「あーあーあー。ほら、お茶飲めよ」

「すいません……。パンだと思ったら違ったので……」

 セレナはクリスが出したお茶を飲んで深呼吸をして落ち着いたようだった。寝ぼけ気味だったセレナもやっと落ち着いたようだった。

「ったく……。遅くまでウルトラマンなんて見てるからそうなんだよ。もっと早く寝ろよ?」

 クリスの一言で落ち着いて食べていたセレナが何かを言い出そうとしてまたしてもむせた。すぐにお茶を飲んで落ち着いたが、クリスの何気ない一言がセレナの気に障ったらしい。

「ウルトラマンなんか、じゃないですよ!すごい作りこんであって面白いんですから!」

「はいはい。面白いのはわかったから、そういうのは程々にしろよ。それで体壊したら、余計な心配かけるだけじゃねえか」

 セレナもクリスの言葉でマリアに余計な心配がかかるだけだとわかったようで、大人しくなっておにぎりを食べだした。

 セレナの食事が終わった時、敵襲を告げるアラートが鳴り響いた。それまでゆったりとしていたS.O.N.G本部の空気が、一変して緊張したものへと変化する。

 クリスとセレナも食べ終わった食器を片付けて、司令室に向かう。

 司令室に到着すると、装者達も集まっており、ツバサが各スタッフに指示を飛ばしている。

「集まったか。先程、新種の怪獣発見された。怪獣は動かないのだが、不審な点が多くてな。いつでも出撃できるようにしてもらいたい」

 ツバサがスタッフに指示を飛ばしてモニターに怪獣の映像を表示させると、その映像に全員が目を疑った。

「場所は東京湾近海。S.O.N.G本部と結んで一直線の場所だ」

 そこに写っていたのは、ゴモラとレッドキングを混ぜ合わせたような怪獣だった。だがそれ以外にも、ところどころに赤い結晶体が爪のように指先から飛び出しており、胸のところにはシンフォギアのコンバータを思わせるような結晶体が付けられている。

「対象の怪獣は中々該当する怪獣が見つからず、特定も難航している。だが、コイツの胸を見るに、我々への挑戦状ととって間違いないだろう」

「……スカルゴモラ?」

 セレナが思わず発した一言で、全員の注目がセレナに集まった。ツバサはすぐにスタッフに調査させて検索結果を表示させた。映像の横に、『ベリアル融合獣 スカルゴモラ』の画像、データが表示される。

「確かに、胸のマーク以外はほぼ同じだ……。おそらくこちらの世界では制作されていない作品の怪獣だろうな……」

 モニターに表示された詳細には、身長、体重、そして『レッドキングとゴモラを融合させた怪獣』という概要が表示されており、メンバーに動揺が走った。

「レッドキングか……。とにかく、あの怪獣についてのデータが必要だ。すぐに現地に向かってもらう。先遣隊として、並行世界の私、雪音、奏の3名に向かってもらう。そして状況次第では小日向、小夜、月読の3名を派遣して討伐に当たる。ヒビキや他の侵略者の襲撃にも警戒してほしい」

『待て』

 作戦の内容が決定した時、キャロルが回線を通じて割り込んできた。

『ガリィが奴の体組織の採集に成功した。奴の体細胞は自律型聖遺物のソレに近い。微量ながらフォニックゲインも観測済みだ。以後、こいつは融合獣型聖遺物、とでもカテゴライズするのが妥当だろうな』

 キャロルは遠隔でツバサの手元のモニターに検査結果を表示し、ツバサは手早くソレに目を通していく。

『これがこの世界のヒビキが持ち出した聖遺物かは不明だが、どの道このサイズとなれば相当なフォニックゲインが必要になるはずだ。しかも短期間で起動させたとなれば、行方不明の装者は既に死亡したものと考えていいだろう』

「だが、まだ行方不明の響が死んだと決まったわけではない。対象が聖遺物であるというのなら、収容も検討しなければならないしな。装者を中心に調査班を派遣する」

『了解した。これからも融合獣タイプが出てこないと決まったわけじゃない。調査用のサンプルをできるだけ確保してくれ』

 キャロルはそう言い残して通信を終了した。ツバサは改めて奏者たちの方を向き直り、出撃を言い渡したのだった。

 

 

 クリスたちはヘリに乗り込み、スカルゴモラの存在する地域まで向かっていた。敵が聖遺物であると判明した以上、元々先遣隊として出撃するメンバーに小夜が加わっている。

「どうしたクリス?元気ないじゃん」

 出発してから考え事をしているクリスを見かねてか、奏が肩をたたいた。

「いや、世界が違うとこうも別人になるんだなってな」

 補足事項としてツバサから渡された資料には、2人に面識はないと記されており、それだけで2人が別人であると思うと、少し複雑な思いがある。

「ま、同じセレナでもこうも違うんだ。違うなら違う。それでいいじゃないか」

 奏は小夜の体を叩いて笑ってみせた。幾多の並行世界の装者と出会ってきた彼女だからこそ、言えることだったのかもしれない。

「ま、あたしもこのセレナに会った時はビックリしたもんさ。何せ雰囲気とか全部違うんだからさ。こっちの装者は曲者ぞろいであたしだってまだ全部受け入れられたわけじゃない。でも時間ならあるんだ。仲良くやっていこうじゃないか」

「だと良いんだけどな……」

 クリスは奏の言っていることが頭では理解できていたが、どうしても腑に落ちない部分があった。

 

 

 胸にモヤモヤしたものを抱えながら現場に到着し、ヘリから降りる。既に日が暮れ始めており、夕日をスカルゴモラが照らしている。動かないとはいえ、その迫力は本物で遠目に見ても威圧感が伝わってくる。

「これが、聖遺物か。怪獣にしか見えないがな」

「基本的にはあたしらは研究員の護衛が仕事なんだ。ノンビリ構えてりゃいいさ」

 奏は持参したキャンプ用の椅子に座り、小夜は何故か竹刀でもって翼と特訓をしていた。クリス達に続いて、多くのヘリや車両が到着し始め、研究員が続々と降りてきてスカルゴモラの調査を始めた。

 クリスは何かをすることもなく、スカルゴモラに近寄ってみる。研究員達がライトでスカルゴモラを照らしたり、数多くの機材を取り付けたりしている。遠目にはガリィが研究員から受け取ったデータをキャロルに転送している姿も見える。

 日も暮れて辺りが暗くなった頃には、スカルゴモラも正体不明の聖遺物として収容されることが決まったようだった。

 そしてスカルゴモラに拘束用のロープが接続された時だった。突如としてスカルゴモラが吠えたのだ。研究員たちはすぐに逃げ出し、クリスも身構える。

 スカルゴモラは咆哮とともに歩き出し、研究員達も急いで撤収を始めている。

『動き出したか……。分かってると思うが、そいつの進行ルートにはS.O.N.G本部がある。ルートを変えるか、止めるかしろ!収容は無理だ!』

 キャロルからの通信が入り、研究員が載っているであろうヘリや車が走り出していく。

『雪音下がれ!デマーガの熱線でやつを止める!』

 スカルゴモラの異変に気付いたようで、すぐに怪獣を出撃させようとしていた。だがクリスには

「いや、センパイ。あたしがなんとかする。センパイの怪獣だってスタミナがあるだろ?ならパワーとかもっと上の奴を出したほうがいいだろ?」

『だがセレナのキングジョーはリスクが……』

「あたしがやるよ」

 クリスはペンダントを握りしめ、覚悟を決める。

「レイオニクスギアの調整は終わってんだ。センパイ達は逃げ遅れたやつとかいないか探してくれ」

『……分かった。任せていいんだな?』

「あぁ!任せとけ!」

『Killter Ichaival tron』

 聖詠に合わせてレイオニクスギアが起動し、クリスのギアから光が放たれて一体の怪獣を召喚した。その怪獣は、両腕にガトリングを備え、その顔にもレーザー砲が取り付けられている。そのあまりにも生物らしさからかけ離れすぎた姿は、怪獣というより兵器と呼んだほうが妥当であろう。

 無双機神インペライザー。ソレがクリスの新しい怪獣の名である。

 インペライザーの体からタラップが降りてきて、クリスはスカルゴモラがやってくるより早く駆け上がる。中の操縦席に座ると、操縦桿を握りしめてスカルゴモラに立ち向かう。

『それが雪音の新しい怪獣か……。なぜすぐに動かない?』

「そりゃあたしが中に入って動かすからだよ!何しろ急ごしらえなんでな。中のAIまでは間に合わなかったってわけだ!」

 インペライザーでスカルゴモラを殴り飛ばし、向かってくるスカルゴモラを押さえる。まだインペライザーのポテンシャルをすべて引き出せたわけではないが、訓練を積んだ結果最低限の実力は出せている。

(コイツ、なんて馬鹿力だ……。センパイの怪獣の一撃でどうにかるレベルじゃねえ……)

 インペライザーの馬力と重量に物を言わせ、なんとかスカルゴモラを押さえているが、スカルゴモラが疲れているようには見えない。インペライザーのほうが押し切られるのは時間の問題だった。

 頭部のガトリングやレーザー砲でスカルゴモラを押し止めるも、互角に持ち込めるのがようやくといったところだろう。全火力を出せば撃破は可能かもしれないが、周囲への影響が脳裏をよぎりどうしても踏みとどまってしまう。

『雪音さん!援護します!』

 クリスを援護するためにキングジョーが駆けつけ、スカルゴモラを殴り飛ばした。

『周辺の避難は完了した!思う存分やれ!雪音!』

 翼からの通信に後押しされ、クリスは引き金を握りしめる。

「おい。最大火力でぶちかますには時間が必要だ。時間を稼げるか?」

『はい!任せてください!力勝負には自信がありますから!』

 クリスはインペライザーの火力をすべて砲門に集め、一点に集中させる。キングジョーもスカルゴモラに向かっていき、取り押さえて動きを止めさせる。パワーだけで言えばキングジョーのほうが勝っているようで、スカルゴモラを上手いこと抑えている。

 インペライザーのエネルギー充填率は滞りなく溜まっていて、最大火力まではもうまもなくである。

「よし溜まった!離れろ!」

 クリスの合図でキングジョーはスカルゴモラをクリスがいる方へ投げ飛ばし、同時にインペライザーの砲門全てから圧倒的な量の弾丸、レーザーが放たれた。インペライザーの全エネルギーを使って放たれたそれは、スカルゴモラの胴体を貫き、わずかに逃げ遅れたキングジョーの方をかすめた。

 心臓を貫かれたスカルゴモラは崩れ落ちながら爆発四散し、エネルギーを使い果たしたインペライザーも同時に消滅した。同時に翼と奏も駆けつけ、クリスは落ちているはずのスカルゴモラのスパークドールを回収に向かう。そしてスカルゴモラが爆発した地点にたどり着いた時に、空間が歪みテンペラー星人ビエントが姿を現した。

「お勤めご苦労さまです。お陰でこれが回収できた」

 ビエントが足元から拾い上げたのは、ゴモラ、レッドキング、そして行方不明になっていた響のスパークドールズだった。

「立花のスパークドール……?貴様、立花に何をした!」

「私は何もしていません。フリッドと一緒に本拠地に転送されてきた時は焦りましたけどね。フリッドと相打ちになって二人仲良くスパークドールズとして私達の手元においてあるだけです」

 ビエントは懐からイカルス星人のスパークドールを取り出して翼たちに見せた。

「地球人のスパークドールズなんてはじめてのことでしたからね。解析をしていたら、レッドキングのスパークドールが偶然生成できてしまったんですよ。そこでゴモラ、レッドキング、そしてこの少女を融合させたらどうなるか?と実験して、生まれた怪獣を地球に放った。後はあなた方の知るとおりです」

 スカルゴモラは、響の変わり果てた姿。そう告げられて全員に戦慄が走る。つまり、今まで自分たちはずっと探していた人物と戦わされていたのだ。

「恐らく彼女は自分が怪獣になったことにも気づかないで、どこかに帰ろうとしていたのではないですか?大切な仲間のいる場所へ」

 ビエントの嘲笑が周囲に響き渡る。響が怪獣として利用されていた事実を認められず、翼が天羽々斬でもってビエントに斬りかかるも、易々と受け止められた。

「今すぐ立花を返せ!」

「商談ですか?残念ですがこれは売り物ではないんですよ。それに彼女にはまだまだ働いてもらわなければならないのですよ。それに彼女は貴重な地球人のメスとして展示用にしてもいいかもしれませんね」

 ビエントは翼の体を軽々しく投げ飛ばし、続く奏を片手でいなした。クリスは自分が屠った相手が探していた相手だという事実を受け入れられず、ただ呆然とそれを眺めることしかできなかった。

「フリッドがいなくなったのは本当に惜しいですね。護身という面倒な『手間』が増えてしまった」

 懐から短剣状のアイテムを取り出し、ビエントは響のスパークドールに突き刺した。ビエントの姿が響のものとなり、一瞬足が止まった翼を殴り飛ばした。

「それとも、この体を他の惑星に売り飛ばしてもいいかもしれませんね。これほどに強い体なら買い手も付くことでしょう」

 ビエントは響の声で高笑いをしながら空間の歪みに消えていった。後には何も残らず、ただただ響が敵の手に堕ちたという絶望感だけがその場に残された。




S.O.N.G怪獣図鑑

融合獣型聖遺物 スカルゴモラ
体長:55メートル
体重:5万7千トン
ステータス
力:★★★★★+★★★★☆
技:★★★☆☆+★★☆☆☆
知:★★☆☆☆+★★☆☆☆

 テンペラー星人ビエントがスパークドールズ化した響とレッドキング、ゴモラを融合させたことで誕生した怪獣。ベリアル融合獣ではない為、胸部がベリアルのカラータイマーではなく、シンフォギアのコンバータユニットのモノ、もっと言えばイグナイトモジュール起動中の状態のものと同じ模様になっている。また体組織は怪獣というより、ネフィリムのような自立型聖遺物に近い構造をしている。
 性能実験のために地球に解き放たれ、響の意識が回復したことで動き出した。
 ビエントが言った通り、彼女はただS.O.N.G本部に帰ろうとしただけであり、侵略者勢力では唯一S.O.N.Gに敵意を持っていない存在である。
 ただ響は自身が怪獣化していることに気づいておらず、わけも分からずに味方であるはずのキングジョーに攻撃を受けて、インペライザーに倒された。クリスの乗ったインペライザーだと知らずに倒されたのは不幸中の幸いだったのかもしれない。
 またスパークドールズが健在な限り、何度でも生産可能でもあるため、倒してスパークドールズを回収する必要性の高い敵でもある。

装者達のコメント
クリス:嘘だろ……。あたしが、アイツを……。
翼:おのれ侵略者め……。立花の体まで悪用するとは許せん!必ず討ち取ってやる!
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