戦姫絶唱シンフォギア Never Ending Odyssey 作:パイシー
S.O.N.G本部に帰還したクリス達は今回の戦闘で起こった事とキャロルが手に入れたサンプルの解析結果を照らし合わせていた。
「事態は最悪だな……。サンプルを解析したところ、立花響と同じDNAが確認された。アレが立花響自身と呼んで差し支えないだろうな」
モニターには様々な角度から撮られたスカルゴモラの映像と、響の模擬戦の映像が流れている。キャロルは一時停止やスロー再生を繰り返し、スカルゴモラと響の比較を続けている。そしてそれぞれの動きを比較して、類似点を探しているようだった。
「やはり、どちらも動きの癖が似ている。ここまでしないと分からないが……」
キャロルが指摘したのは、拳の握り方や立ち方、戦闘中の立ち回りが響のものと酷似していた。
「自体は想像以上に厄介だ。これまでの怪獣と違って、ただ倒すだけでは駄目だ。その後スパークドールズを回収しなければ意味がない。撃破しても敵宇宙人との争奪戦に勝たなければこちらが消耗するだけになる。バックアップチームを編成したのは正解だったな。その分の人員が回せる」
「あの……」
キャロルが作戦を考えていた時、小夜が手を上げた。スカルゴモラの対策として、なにか考えがあるようだった。
「月読さんの時みたいに、私のシンクロゲイザーで、響さんだけを分離させることはできないんですか?」
「無理だ。むしろお前はこの作戦には参加できん」
キャロルは小夜の考えを却下した。
「レイオニクスの暴走で偶発的に生まれたファイブキングとは違う。スカルゴモラは遺伝子レベルで融合してしまっているからな。装者の心を分離させた場合、魂の抜けたスカルゴモラの身体と、肉体を持たない立花響の魂に分かれてしまうだろうな」
キャロルは補足事項として、ファイブキングとスカルゴモラの熱源探知結果を表示させる。ファイブキングが調を含めた6つの生体反応があるのに対し、スカルゴモラは1つしかない。ツギハギの怪獣に過ぎないファイブキングと、新しい生命として生まれたスカルゴモラの違いがハッキリと映された瞬間である。
「それに、お前の変身したキングジョーはバトルナイザーから召喚された個体と同じく、撃破した怪獣がスパークドールズに戻らない。撃破した場合、間違いなく貴重な装者を失うことに繋がる」
小夜はキャロルに言われて、押し黙った。レイオニクスギアが使えない調も自分がこの作戦に参加できないと悟り、手元のバトルナイザーを握りしめた。
「いいか。スカルゴモラについては撃破しても敵の戦力を削ぐことには繋がらない。むしろこちらの戦力が削られるだけだ。故に、立花響はなんとしても奪還しなければならないだろう」
キャロルの発言でスカルゴモラと戦えるのは、翼、クリス、未来、奏の4名しかいないことが確定してしまった。スカルゴモラが響と同じ力を持っているとなれば、パワータイプの未来かクリスが相手するに妥当ではあるか、響を撃破しなければならないというのはある意味残酷な選択を強いてしまうことになるだろう。
「バックアップチームの面々と連携し、迅速なドールズの回収の訓練を開始する。幸い、立花響のデータは腐るほどある。前回のように敵にドールズを使われても戦えるように備えておく」
キャロルはモニターに訓練のスケジュールを表示して去っていった。響が敵の手に堕ちた、という事実は全員の胸に重くのしかかった。
キャロルの作戦が発表された数日後、小夜とセレナは偶然にも昼休憩のタイミングが重なってしまい、シャワー室で鉢合わせしてしまった。だが両者ともにどう接していいのかわからず、ただただ見つめ合ったままで硬直してしまっている。
「え、えっと、一緒にお昼とか、食べる?」
沈黙を破ったのは、小夜だった。自分に対して意地を張っているセレナとも打ち解けたいと思い、考え出した策だった。
「……いいですよ。できれば、あなたの家で」
意外にもセレナは小夜の話に乗ってきた。自分の家を指定されたのは予想外だったが、小夜は仲を深めるきっかけを掴めて、気を引き締めた。
外出届を出し、停めてあった車に乗り込んでエンジンをかける。
「あれ?免許持ってたんですか?」
「うん。家との往復限定で、だけどね」
セレナは助手席に乗り、車は走り出す。外に出ると、セレナは外の景色に目を奪われたようだった。大分復興が進んでるとはいえ、S.O.N.G本部周辺が瓦礫の山から荒れ地に変わった程度でしかないのだから。
「なんですか、これ……」
思い返してみれば、セレナが本部の外に出たのは初めてかもしれない。こちらに来てからは、各種データの収集や施設の説明など外の景色を気にする時間は本当にわずかしかなかった。
「こっちの世界はこうなってるの。何割かは前の戦いで、半分ぐらいは宇宙人が放った怪獣、残りは私が壊しちゃったかな」
小夜はお茶を濁すためにも空笑いをするも、セレナは何を言われているのかよく分かっていないようだった。
「さて、着いたよ。ここが私の家」
走り慣れた道を通り、自分が住んでいるマンションに到着した。フィーネの戦いの時に学生寮は半壊してしまったので、それ以来ここに住んでいる。
エレベーターを登り、自分の部屋まで案内する。エレベーターから少し距離があるので、少しの無言が気まずい。
(食材まだあったかな……。カップ麺とかを出すのも悪いし……)
「あの」
用意する料理を考えていた時、小夜の部屋の前でセレナが口を開いた。小夜が顔を上げると、セレナが口を開いた理由がわかった。
「名前、間違ってますよ」
セレナが指を指したのは、小夜が想像で書いたセレナの名前が書かれたでたらめなスペルの表札だった。
「あっ!ごめん!私セレナのスペル知らなかったからさ!適当に書いてそのままになってたみたい!あはは……」
大慌てで表札を外し、下から『立花』と書かれた表札が現れた。小夜はポケットから鍵を取り出して、扉を開けた。元々物が少ないこともあって中は片付いていたので、これ以上セレナに情けないところを見せずには済んだ。
「ここが小夜さんの家ですか……。随分と片付いているんですね」
セレナは早速小夜の部屋に入り、部屋を物色して回る。部屋に飾ってある写真、小物、かけてあるリディアンの制服などを手に取り、小夜の生活を感じ取っているようだった。
「あれ、マリア姉さんとの写真じゃ……?」
セレナが手にとったのは、1枚の写真だった。自分と同じぐらいの小夜が、響とその家族と写っている写真。そしていろいろと部屋を探してみるが、マリアの痕跡が全く無いことに違和感を感じているようだった。
「あれ?この写真……?」
セレナがいろいろと探し回って、ある違和感にたどり着いた。シラベと写った写真や、ヒビキとシラベと遊んでいる時の写真など、数多くの写真が家にはあるが、マリアが写っている写真だけがなかった。実の姉であるはずのマリアの写真だけがこの家のどこにもなかったのだ。
「ごめんね。こっちのマリア姉さんとは、私全然会ったことなかったから」
冷蔵庫にあった食材で簡単な調理を終えた小夜が2人分の食事並べた。
「私、小さい時にこっちの響さんのお父さんに助けてもらって、それからは立花小夜として生きてきたの。マリア姉さんと会えたのだってつい最近になってから」
皿の上に盛られた食事を食べながら、セレナは話を聞いていた。
「あなたの世界の姉さんのことは知らないけど、この世界の姉さんは、アメリカで人体実験の材料にされてたの。日本に引き取られた私も同じ目に会ってるって考えてたみたいで、私を助けるために、私達の敵としてやってきたの」
「じゃあ、この世界のマリア姉さんは……」
そこから先は、小夜が一番語りたくない話ではあった。だがセレナに下手な隠し事をすれば距離を縮めることは出来ない。他の装者には既に言ったことでもあるので、小夜は告げる。この世界のマリアと起こった出来事の末路を。
「私が、殺したんだよ」
その一言でセレナの手が止まった。何を言っているのか理解できないというのが見て取れ、明らかに困惑している。
「殺したって……。姉さんはこのことを?」
「最初は隠してたんだけどね。でも私嘘を付くのが下手だから、すぐにバレちゃって……。でも並行世界から来た姉さんはそれでも良いって、言ってくれたんだ」
セレナは小夜の話を聞いて、
「だからね、ちょっとだけ羨ましいんだ。ずっと姉さんと一緒で、肩を並べて戦えるっていうのがね」
「……違いますよ」
小夜は少しぎこちないながらも、笑ってみせたがセレナはそれを否定した。
「私の世界のマリア姉さんは、私を庇って亡くなったんです。だからあの姉さんは違う世界の姉さんなんです。知り合ったのも、つい最近のことです」
セレナとて、自分の世界のマリアと過ごせた時間はあまり多くはない。小夜もセレナとマリアの関係を告げられて、驚いているようだった。
「だから、私とあなたは、ちょっとだけ似てるのかもしれませんね。別世界の自分同士ですけど」
小夜ははじめ、セレナを打ち解けられるか不安でしかなかったが、互いの身の上を明かしたことで少しだけ打ち解けられた気がした。
小夜とセレナが食事をしている中、向かいのマンションの一室で双眼鏡を覗いている人物がいた。
「はぁ、はぁっ……。んっ……セレナちゃんもかわいいなぁ……」
シラベはの家は、小夜が住んでいるマンションの向かいのマンションの一室だった。元々の学生寮では小夜とは隣同士だったのだが、リディアンの校舎が移るのに合わせてこちらに引っ越したのだ。理由は単純明快で、この部屋が一番小夜の部屋を覗くのに最適な位置なのだ。
「犯罪デス!」
日課の
シラベが頭を抱えながら振り返ると、そこにはキリカが立っていた。合鍵を渡した覚えはないのに、何故かこの場にいる。
「ちょっと!これ高かったんだから、壊れたら危ないじゃない!それに、どこから入ってきたの!」
「風鳴司令からもらってきましタ。シラベがセレナをこれ以上怯えさせないようにとの命令デスヨ」
シラベは完全に失念していた。アメリカから来たこの装者は、てっきりハンバーガーを食べているだけの能天気な人間だと思っていたが、完全にツバサ側に立ってしまった以上、シラベにとっては敵も同然である。
「聞きましたヨ?別の世界から装者を拉致してくるなんて、出るとこに出たら、一発でアウトデスヨ」
シラベは小さく舌打ちをして、玄関へ向かう。ここが最適のポイントであることに変わりはない。だが、他にも場所は押さえてある。ここ以外でもセレナ達を見られればそれでいいのだ。
「ハーイ、ちょっと失礼しマスネ~」
キリカがそれを見逃すはずがなく、シラベの腕に手錠をかけて、片方を自分の腕にかけた。手錠の間を結ぶ鎖は1メートルは少なくともあるので、そこまで動きを制限するものでもないが、シラベは完全にキリカに繋がれる形になった。
「え?なにこれ。これじゃ小夜のところに行けないんだけど」
「そう言えば、前にあたしをこんな風に縛ったのは、どこの誰だったかしラ?」
キリカは自分が捕縛されたときの意趣返しと言わんばかりに、シラベを引っ張って意地の悪い笑顔を浮かべた。
「やっぱりあの時、見捨てておけばよかった……」
彼女が今この場にいるのは、シラベが庇ったせいなのだが、この時ばかりは命令どおりに彼女を逮捕した自分を恨んだ。
「どうして年中ハンバーガー食べてるようなのと一緒にいなきゃいけないのよ……」
「それは聞き捨てなりまセン。せっかくですし、今からランチタイムと行きまショウ!」
シラベがこぼした愚痴をキリカはバッチリ聞いており、シラベを引きずって台所へと入っていった。キリカは冷蔵庫を物色し始め、使えそうな材料を取り出していく。
「さてと、片手は使えないので、ちょっとお願いネ?」
「はいはい……」
シラベは渋々キリカの指示通りに調理をしていく。互いに片手が不自由な中で、不器用ながらも料理を続けていく。しかしながらシラベの家には最低限の食材しか無かったこともあり、結果として出来上がったものはかなり簡素なものだった。
「パスタ……?」
2人での調理は苦戦することが多く、調理は難航したが最終的に見た目だけなら普通のナポリタンが完成した。
「マムとの研究の末に完成させた、特製ナポリタンデース!」
完成したパスタをテーブルに並べ、フォークを用意してシラベはパスタを口にした。
「悔しいけど、美味しい……」
「当たり前デス!あの日日本料理のレストランで食べた味に近づけるために、決死の努力を重ねましたカラ!」
キリカが自慢気に胸を張った時にシラベの体が引っ張られ、すぐに引っ張り返したことでキリカがよろめいた。
「仕方ないから、ちょっとだけあなたの側で大人しくしてあげるわ。セレナちゃんの前でも大人しくしてるわ」
「分かればいいのですヨ。分かれば」
シラベは不本意ではあったものの、キリカに邪魔をされないようにするためにも、彼女と共にいることを選択した。互いが互いを見張り合うという奇妙な関係であったものの、2人は共同生活をスタートさせた。
翌日、演習室では半ば日課のようになった模擬戦を行う小夜とセレナの姿があった。だが今まではセレナがガムシャラに突っ込んで、小夜がそれをさばくという光景が見られたが、セレナの攻め手に少しだけ落ち着きが見られるようになっていた。
セレナも冷静に攻められるようになったことで小夜の隙を突いた戦い方ができるようになり、小夜もセレナの実力が上がったと実感できるようになった。感情に任せた戦い方をセレナがしなくなったことが、ここまで大きく影響してくるとは小夜も思っていなかった。小夜は剣を握り直し、向かってくるセレナと向かい合う。
これまでは、小夜を敵視するセレナとそれに戸惑うセレナという構図がこの場には存在した。だが、今は違う。小夜を乗り越えたいと思う、ある種の向上心を持って立ち向かえるようになったこと、そして小夜もセレナの意思を汲み、自分が出せる実力を出し切ろうとしている。並行世界の自分同士という関係にある2人だが、意図せず互いが互いを高め合うという関係へと変化していた。
「お疲れ様。精が出るわね」
手合わせが一段落したところで、マリアが差し入れを持ってやってきた。ちょうど時刻も昼頃であり、昼食にちょうどいい時間帯だった。
「姉さん、歩いて大丈夫なの?」
「ええ。本部の中なら、っていう条件付きでね」
問いかけてきた小夜に対し、マリアはコンビニの袋を見せた。中には二人分の弁当が入っているのが見える。
「本当はしっかりしたお弁当を作りたかったんだけど、まだそこまでは無理って言われちゃった。こんなものでごめんなさいね」
「そんなこと無いよ。持ってきてくれただけで嬉しいよ。そうだ、私も姉さんと食べようと思っておにぎり作ってきたんだ。一緒に食べよう?」
マリアの差し入れを受け取ろうとした時、いつの間にか荷物を持ってきていたセレナがマリアにおにぎりを差し出した。
「この前ね、暁さん達が教えてくれたんだけど、おにぎりを作ってきたの。ちょっと形は変だけど」
セレナが荷物から取り出したのは、小さなカゴだった。中には不揃いなオニギリが6つ入っており、マリアはそれを一つ手にとった。
「ありがとう。いただくわ」
おにぎりを一つ手に取り、口に運ぶ。
「美味しい?」
「ええ。形はともかく、味はしっかりしてるわ」
マリアはおにぎりを完食し、次のおにぎりに手を出す。セレナは小夜を一瞥すると、マリアには気付かれないように笑ってみせた。
(えぇ……)
確かにセレナと小夜の関係は、一方的な敵対関係ではなく互いを高めあえるライバル関係とまでになったものの、セレナの対抗心が消えたわけではなかった。マリアの妹という立場に関しても、小夜の上を行こうとしているようだった。
(やりにくいなぁ……)
小夜は未だ自分に対して対抗心を燃やし続けるセレナに対し、どう接すればよいのか未だにわからない部分も多かった。
昼食後、装者達に招集がかかり、司令室に全員が集まっていた。今回は回復したマリアも消臭されたメンバーに含まれている。司令室ではツバサとキャロルが作戦の方針について話し合っている最中のようだった。
「……揃ったな」
キャロルが機材を操作すると、モニターにはゆっくりと歩いている最中のスカルゴモラが映し出された。
「今回は前回と違い、始めから活性化している。前回と同じ方法で再生成されたと見て間違いないだろう。やはりこちらに向けて直進している。当然敵侵略者の妨害もそうていされるだろう」
今度はツバサがS.O.N.G本部周辺の地図を映し出し、とあるポイントを指し示した。
「今回の作戦は旧リディアン跡地を使う。アレぐらい開けた場所であれば、多少の被害が出ても構わないし、装者の増援も送りやすい。なんとしても立花響を連れ戻す。異論はないな?」
ツバサの言葉に、異を唱えるものはいなかった。響を連れ戻すという目的の下、装者の心は一つになった。
「出撃メンバーは、小日向、雪音、月読を中心にして、バックアップチームを派遣する。万が一の場合は、スカルゴモラを月読のバトルナイザーに収納し、本部で分離作業を行う」
ツバサの合図で作戦が発動され、響を助け出す為の作戦が始まった。
S.O.N.G怪獣図鑑
無双鬼神インペライザー
体長:60メートル
体重:6万トン
ステータス
力:★★★★☆
技:★★★☆☆
知:無し
キャロルの手により修復された、クリスのレイオニクスギアから召喚された怪獣。
豊富な武装と高い火力を両立している半面、急ピッチで修復したため、AIが搭載されておらず直接クリスが操縦する。
再生機能も完備しており、上半身を破壊されても再生し、戦闘を続行することが可能である。(ただし中のクリスは再生しない)
装者のコメント
小夜:雪音さんの怪獣も、私と同じロボット怪獣なんですね!いつか、ロボット怪獣について一緒に話をしませんか?
クリス:いや、あたしは全然知らねえよ。敵を倒して、世界を守れればいいだろ?
小夜:そんな、勿体無いですよ!ちょうどS.O.N.Gの資料は充実してるんです!ついでに勉強もしておきましょう!