戦姫絶唱シンフォギア Never Ending Odyssey   作:パイシー

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第5話「悲しみのメロディー」

 レギュラン星人トゥエルノ達が根城にしている宇宙船にて、バルキー星人ジークは回収してきたスパークドールズを差し出した。

「リーダー、待たせたな。頼まれてきたものだぜ」

「ご苦労だったな。ゆっくり休んでくれ」

 ジークはトゥエルノにスペースビーストのスパークドールズを渡すと、ペットのサメクジラ、マリーの様子を見に行こうとした。しかし、ジークは何か違和感を感じた。

「あれ?スズチェンコはどこいった?」

 いつもなら部屋の片隅でミジー星人スズチェンコが機械のメンテナンスをしたり、メンバーの装備を作っている。

「ああ、ボスからの指令が丁度来てな。そっちに出向いてる」

「指令?」

「この前の怪獣使い共の話をしたら、アイツラを捕まえて戦力にできないか実験してこいって言われたんだ」

 ジークはそこまで言われて、納得した。確かに、怪獣を声一つで召喚、使役できる存在がいるとしたら、さぞ強力な戦力として使えるだろう。

「で、その作戦にはスズチェンコだけが行ったのか?」

「いや、デイトナも一緒だ」

 レイビーク星人デイトナ、この手の任務にはうってつけのメンバーだ。

 ジークはスズチェンコ達なら大丈夫だと安心し、マリーの世話に戻ることにした。

 

 

 私が切ちゃんとの間に距離を感じるようになったのは、いつだっただろうか。

 魔法少女事変が終わってからというものの、私達は基本的には学生として過ごしている。たまに並行世界に行ったりしてたけど、そう頻繁に行ってたわけじゃない。

 夏休みのある日、ゲームセンターに遊びに行った時、たまたま未来さんから逃げてきた響さんと会った。

「いやさぁ、最近面白いゲーム見つけたんだよー。このゲームなんだけどさ……」

 それが大怪獣バトルだった。

 あのゲームを始めてから、切ちゃんは怪獣の話を持ち出してくることが多くなった。クリス先輩を上手くかわして、ゲームセンターにコッソリ遊びに行くことも増えたし、いつの間にか逃げる切ちゃんとクリス先輩みたいな構図が普通になっていた。

 私は宿題をこなして、早く片付いてる時はたまに切ちゃんに付いていったりして、クリス先輩に追いかけられたりした。でもクリス先輩は切ちゃんだけを叱る場合がほとんどで、切ちゃんは響さんと遊ぶ機会も増えていって、いつからか、私だけが蚊帳の外に置いてかれてるような気がした。

 切ちゃんの口から出る話も、ゲームのことばかり。一度、切ちゃんに勧められて一作品だけ、怪獣が出てくるドラマを見た。切ちゃんの解説のお陰で何とか最後まで見たけど、どうも私には合わなかった。

 それを境に、切ちゃんとはどこか話が合わなくなった。切ちゃんと一緒にゲームセンターに行ったりして、一緒にいる時間は変わらないように努力はした。

 けれど、私が一緒にいようと近づく度に、切ちゃんがドンドン遠い所に行ってしまうような気がして、結局余計に距離感を感じてしまう結果に終わってしまった。

 この世界に来て、切ちゃんと離れ離れになってかなり不安だったけど、再会した切ちゃんは私に会えたことより、怪獣がいっぱいいることの方が嬉しそうだった。

 切ちゃんにとって、私より怪獣のほうが大事なんだろうか。

 

 

 今日は元気になった響さんと切ちゃんの特訓の日。戦力増強も兼ねて、試しに怪獣を召喚してみるということらしい。響さん達は怪獣に襲われたその場で怪獣を召喚していたが、今回は怪獣を召喚できるかどうかテストしてから実戦配備されるらしい。

 私は切ちゃんに置いてかれないようにと思い、一番手に名乗り出たが、結果は不発。ギアが展開されなかったし、なんの怪獣も召喚できなかった。

 2番手は響さんの指名で、未来さんがやることになった。未来さんが聖詠を唱えると、見事に怪獣を召喚できた。けれど、召喚できたのは一瞬だけ、すぐに未来さんは息を切らしてへたり込んでしまった。

 未来さんが怪獣を召喚できたのは、真っ黒なカミキリムシみたいな怪獣。ゼットン、と自己主張するような鳴き声が不気味だ。

「すごいよ未来!ゼットンを召喚するなんて!」

「ウルトラマンも倒した強豪を引き当てるなんて、さすがデス!」

 ゼットンという怪獣は、かなり人気なのか、響さんも切ちゃんも大はしゃぎだ。未来さんも少し戸惑っている。

「あたしも負けてられないデスね!」

 そして最後の切ちゃん。切ちゃんはやる気満々だった。未来さんが怪獣を召喚できたのを見て、元々みなぎっていたやる気が一層みなぎっている。

「行くデスよ……。『Zeios igalima raizen tron 』」

  聖詠に合わせて、切ちゃんのレイオニクスギアから一体の怪獣が召喚された。

「おぉ!コッヴが出たデス!」

 コップ?コンブ?名前がよく聞き取れない。とにかく、発音が難しい怪獣らしい。両手の鋭い鎌が特徴の、凶暴そうな怪獣だ。

「おめでとう切歌ちゃん!やっぱりかっこいいなあ。よし、私も!」

 響さんも怪獣をすぐに召喚した。響さんの怪獣の名前はレッドキング、体が赤くないのにそんな名前なのか分からないけど。

 ここは地下深くの怪獣専用の演習場として開発されたものらしい。錬金術の技術でも使ってるのか、外と勘違いするほど広い。立体映像で山や宇宙空間といった風に背景も変えられるらしい。

「さあて、行くデスよ!」

 切ちゃんはすごい嬉しそうに響さんの怪獣と演習を始めた。目の前の2人は怪獣の対戦に夢中で、私の方を見ていない。私は嬉しそうな切ちゃんを尻目に、コッソリと演習場を後にした。2人の邪魔をしてしまうような気がして、そこ場に留まることなんできなかった。

 この世界のSONG本部は、私達の世界と同じ潜水艦と、今私のいる、私達の世界にない兵舎から成り立っている。遠目に見れば、亀のように見えるかもしれない。そんな独特なデザインをしている。

 地下からエレベーターで上がると、トレーニングルームから何かを遊んでいる音が聞こえる。大怪獣バトルでも遊んでいるのだろうか。聞く所によれば、奏さんやセレナなどが主体で、怪獣に関するイメージを掴んでもらうために設置したらしい。

 確かに、あんな広い演習場ができてしまえば、普通のトレーニングルームはこんな風に使うのが効率的だ。

 トレーニングルームでは、マリアとクリス先輩が奏さんに教えられながら大怪獣バトルを遊んでいる。2人とも、慣れないゲームだが、使っている怪獣はそれぞれが召喚したものを使っている。

「成る程、体力ゲージが少なければその分、パワーアップも早くなるのね。たかが怪獣ゲームってバカにしてたけど、結構面白いわね」

「へっ!そんなの、一気に焼き払ってやるぜ!」

 クリス先輩もマリアも、慣れないなりに頑張っているようで、かなり楽しそうだ。すっかり大怪獣バトルに夢中になっている2人は、私が入り口に立っていることには気づいていない。

 このまま資料室に行って、切ちゃんの怪獣を調べても3人は気づかないだろう。でも、盛り上がってい3人に水を差してしまうように思えて、入る気にはなれない。

 結局、私は資料室に入る勇気が出せず、エレベーターに戻ってきた。切ちゃんがいない。ただそれだけなのに世界が変わってしまったみたいだ。ただでさえ広いエレベーターが余計に広く感じる。

 私は、切ちゃんみたいに明るく笑ったり、自分から誰かと仲良くしたりなんてできない。学校に行っても、私は切ちゃんといつも一緒で、切ちゃんがいないとひとりぼっち。

 この前の作戦の時も、マリアが戦ってるって聞いて切ちゃんはすぐに飛び出していって、マリアをサポートしていた。不慣れなマリアも帰ってきて、切ちゃんに感謝をしていた。

 一方の私はただ見ていることしかできなかった。 怪獣のいるこの世界で、怪獣に詳しくて戦える切ちゃんと、何も知らなくて、怪獣も召喚できない私。居場所があるのかどうかなんて、一目瞭然だ。

 それでも、自分の居場所が無くなったのを認めたくない一心で、私はSONG本部を飛び出していた。視界も潤んでいて、よく見えない。自分でも自分が何をしているのか分からない。

 いつまでも、私は切ちゃんと一緒だと思ってた。ずっと一緒に勉強して、戦って、2人でこれからも頑張っていくと私は思っていた。しかし、現実は残酷だった。私はシュルシャガナのギアすら纏えず、テストの結果は虚しいものに終わってしまった。切ちゃんが怪獣を召喚した時、私も見たことがないくらい喜んでいた。切ちゃんは私がいなくなってもいいのだろう。

 もうSONGに私の居場所はない。皆は優しいから、きっとそれでもいいって言ってくれる。でも、皆はきっと気を使うかもしれないし、無理をさせてしまう。

 この世界にはノイズはいないから、シンフォギア装者がいる必要はない。私がいなくなっても、未来さんが私の代わりに戦ってくれる。1人ぐらいいなくなった所で、何も変わらない。

 このまま皆の前から消えればそれでいい。さようなら、皆。どうせ足手まといになるから、これが最善なのに、どうして私は泣きそうになってるんだろう。

 走り疲れて、こらえられなくなって、私の目から涙が溢れ出てきた。私は、1人になりたくて、路地裏に入り込んだ。しかし、路地裏に入り込むと、人間ではない何かと鉢合わせしてしまった。カラスのような頭をした『ソレ』は黄色い瞳でこちらを舐めるようにじっくりと見つめ、持っていた銃をこちらに向けた。

『Various shul shagana tron』

 目の前のカラス人間が引き金を引くより早く、私はシュルシャガナのギアを装備して鋸でもって切り刻む。シュルシャガナの刃は、いとも簡単にカラス人間を真っ二つに切り裂いた。

 仲間の死を嗅ぎつけたのだろうか、次々とカラス人間が集まってくる。シンフォギアを纏った私を、敵とみなしたのか次々と襲いかかってくる。しかし、相手を選ばないシュルシャガナの刃がカラス人間を次々と葬り去る。

 よくよく考えれば、当然の結論だった。敵が宇宙人なら、怪獣を召喚する前に倒してしまえばいい。こうやって敵を全部切り刻めば、切ちゃんの役に立てるかな。そんな事を考えながら、敵をなぎ倒していく。

 気がつけば、私の体は血に染まっていた。それがカラス人間達の返り血なのか、LiNKER無しで戦い続けた私の血なのかは分からない。でも、悪くない気分だった。むしろ、切り刻めば切り刻む程、私のこの気持ちが晴れるような気がした。

 こんな状況では、私には戦場(いくさば)で戦う人形としての価値しか無い。カラス人間達がこちらに銃を向けているが、私は構わず突っ込む。別にココで果てても構わない。

 だって、もう私の居場所なんてないのだから。

 

 

 調がいない。その事実に気づいたのは、あまりにも遅すぎた。切歌はSONG内を駆け回り、調の姿を探すが、影も形もない。

「どうしたの?」

 切歌がバタバタと走り回ってる姿を見たのか、心配そうな顔でマリア達がやってきた。

「調が、調がいないんデス!」

「はぁ?お前、喧嘩でもしたのか?」

「してないデスよ!さっきまで、地下の訓練所にいたと思ったんデスけど、気がついたらいなくなってて、どの部屋にもいないんデスよ!」

 切歌の焦りを見て、マリア達はただ事ではないと察したのか、顔立ちがすぐに変わった。お互いの顔を見て、何かを合図し合ったようだった。

「……わかったわ。すぐにでも探しましょう。敵に襲われてたら大変よ」

「ああ」

 マリア達はすぐに走り出した。切歌は、調がいない不安から、SONGを飛び出した。

 調は自分から不満を口にすることは少ない。嫌なことがあれば自分の中で抱え込んでしまう悪い癖がある。もしかしたら、怪獣について何も分からないことに引け目を感じていたのかもしれない。

 切歌がこうして好き放題に遊んでいられるのも、調の存在が大きかった。彼女がしっかりしてくれているから、多少の無茶もできたのだ。調がいない、それだけのことで切歌は内心かなり焦っていた。

『ごめん、ちょっと私には合わないかも……』

 前、一緒にウルトラマンを見た時、調は申し訳なさそうにそう答えた。切歌も少しがっつきすぎたと反省しているのだが、アレ以来、どこか調との間に溝ができてしまったような気がしていた。調が切歌に気を使っているような、少しずつ調の方から離れていっているような、そんな風に思えた。

 切歌が無我夢中で走り回っていると、おぞましい光景に遭遇した。辺り一面にレイビーク星人と思しき死体と、乾いた血が転がっていたのだ。倒れているレイビーク星人達は、何か鋸のようなもので肉を抉られたような跡がある。誰が戦っていたのかは、ある程度想像がつく。

 戦っていた跡から、その人物がどちらに向かったのかは分かる。切歌はすぐにでも追いかけようとしたが、一旦落ち着くためにも通信機を取り出して、マリアへ連絡を入れる。

「マリア、誰かが戦った跡を見つけたデス。血痕があるので、追いかけるデス」

『オッケイ。気をつけてね。キャロルがさっきスペースビーストがその辺に出たって言ってたわ。気をつけてね』

「了解デス」

 切歌は通信を終えると、すぐに血痕を追って走り出した。ただ、調の無事だけを祈って。

 

 

 切歌が血痕を追って辿り着いた場所は、いかにもな廃工場だった。巣に迷い込んだ獲物を狙うかのように、カラスのような頭をした謎の集団が姿を現した。レイビーク星人、ここに来るまで死体が転がっていたことを考えれば、やはり調を襲った犯人は彼らで間違いないだろう。

 切歌はコンソールを外して、イガリマのシンフォギアをまとう。ここに到着する直前、LiNKERを使ったので、ある程度は戦える。あまり時間はないが、追手をまきながら調を探すのは難しいだろう。ここで殲滅するしかない。 

『当たりね、すぐにクリスもそっちに到着するわ。できるだけ、持ちこたえて』

「言われなくても、分かってるデスよ!」

 レイビーク星人自体はそれほど戦闘力のある種族ではない。このままクリスの援護がなくとも調救出に向かうことができる。

 切歌が最後に一体を撃破した時、廃工場から人影が出てきた。

「見つけた、敵……」

 その人物はシンフォギアを身にまとい、いきなり切歌に飛びかかってきた。切歌は思わずイガリマの鎌でその人物を弾き飛ばす。

「えっ……?」

 切歌に襲いかかってきたのは、いなくなった調だった。その様子は明らかにおかしく、おぼつかない足取りで立ち上がると、またしても切歌に襲いかかってきた。

(まさか、敵に操られてるデスか?)

 切歌は調の様子を探るつもりで、調の攻撃を次々といなす。調は普段からは想像できないような笑みを浮かべており、明らかに正気ではなかった。一刻も早く、敵の支配から解放してあげたい一心で、切歌は調にイガリマを向ける。

 調は咄嗟に回避したが、少しだけ反応が送れて刃が頬をかすめた。切歌はしまった、と思ったものの調の顔にはヒビが入っていた。

 そのヒビは、少しずつ大きくなり、ガラス細工のように表面が崩れ落ちていく。崩れていく調の顔の下には、デスマスクを思わせる無機質な別の顔が見え隠れする。

 調のヒビはものすごい速度で調の体全体に回り、殻を破るようにして調の中の異形が完全に姿を現した。

「そんな、嘘デス……」

 調の変貌した姿は、どこかウルトラマンに似たフォルムでありながら、仮面をかぶった道化師にも見える姿だった。切歌は知っている、ソレの名前がなんなのか、どういう存在なのかを。

「ダーク、ファウスト……」

 ダークファウスト、光の巨人(ウルトラマン)と対を成す闇の巨人(ウルティノイド)。それが調の変わり果てた姿だった。

『切歌、どうしたの?ねえ、切歌?切歌!』

 敵に回った調を前に、切歌はショックのあまり呆然としていた。ただ、無線機からマリアの声が虚しくこだましていた。




SONG怪獣図鑑
宇宙戦闘獣 コッヴ
体長:77メートル
体重:8万8千トン
ステータス
力:★★★☆☆
技:★★★★☆
知:★★★☆☆
 M91恒星系に生息しているとされる宇宙怪獣。「Cosmic Organism-Vangard」の頭文字を取ってコッヴと呼称される。
 最大の特徴はその両手の鎌であり、敵対するものを容赦なく切り刻む。
 一応、切歌と共鳴して放つ、『斬裂・廃Ka舞ゥ裏イ』があるが、まだ実戦を経験していないので未使用。

装者のコメント
切歌:コッヴは中々強い怪獣デス!これなら、調も皆も守れるデスよ!
響:切歌ちゃんゲームでもたまに使ってるもんね!相性も文句なしだよ!
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