戦姫絶唱シンフォギア Never Ending Odyssey 作:パイシー
風鳴翼
並行世界から渡ってきた装者の1人。天羽々斬の適合者で、一騎当千の近接戦闘を得意としている。
デマーガを召喚できるも、怪獣の事はまったく分からないので怪獣の操作技術は全装者中でも最低レベルである。シュミレータとして大怪獣バトルの筐体が用意されているが、ゲームが苦手なので生かし切れていない。なので、響か奏と演習場でひたすら模擬戦を繰り返して特訓をしている。
まじめな性格故に物事の白黒をハッキリさせたがる節があり、ギャラルホルンで渡ってきていないセレナに対しては懐疑心を抱いている。
レギュラン星人トゥエルノは、ボスがいる宇宙船に来ていた。ボスがいる部屋では、ボスが重用しているギルドのリーダー、テンペラー星人ビエント、ボスの右腕であるメフィラス星人ジュピアが控えている。
ビエントは最近入ったという新人のイカルス星人とポーカーに興じており、ジュピアは黙ってボスの隣に佇んでいる。
「トゥエルノ、随分と苦戦してるそうじゃないか」
程なくして、部屋の奥からボスが姿を現した。チブル星人に作らせたパワーアーマーが与える威圧感は、何度見ても慣れない。
「ボス聞いてくれよ。あんなの聞いてないぜ?スズチェンコも今は怪我しちまってるし、俺たちはどうすりゃいいんだよ?」
「こちらも怪獣使いには手を焼かせられている。パヴァリア光明結社だったか、3人の錬金術師共が邪魔なのだ」
ボスはそう言って、ジュリアに一体のスパークドールをトゥエルノに差し出した。
「貴重なウルトラマンのスパークドールズだ。これを試してみろ」
「ボス!いいんですか?こんな良いものを……」
ボスは黙ってうなずき、トゥエルノは大喜びで部屋を出ていった。
「よろしいのですか?」
傍らで一連の流れを見ていた、ジュピアがボスに耳打ちをした。トゥエルノは組織の中でも、下に位置する存在である。そんな人物に新しい戦力を授けて良いのだろうか。
「構わないさ。まだウルトラマンのスパークドールズはある。デモンストレーションとしても最高じゃないか」
ボスはただ、不敵な笑みを浮かべていた。
地下の演習場で翼と奏は特訓をしていた。翼は大怪獣バトルが苦手なので、怪獣の操作技術を向上させるには、直接戦わせるのが最適なのだ。
「それじゃ、行くぜ」
「ええ、お願い」
奏はLiNKERを打って、聖詠を唱える。奏のギアから怪獣が召喚された。青白い体に日本の角を備えた怪獣だ。
「エレキング、これがあたしの相棒さ」
翼もデマーガを召喚する。2体の怪獣は己の存在を示すかの如く大きく吠え、ぶつかり合う。典型的なパワータイプであるデマーガはエレキングは掴み掛るも、すぐにデマーガは痙攣したように震えながら手を放してしまった。
「電撃!?」
「そう、エレキングは電気に特化した怪獣なんだ。パワーはちょっと低いけどね」
デマーガが後退したのを追うようにエレキングの長いしっぽが絡みつき、デマーガを電撃で苦しめる。
「パワーがなくても、こんな風にも戦える。力押しだけが戦いじゃないだろ?」
「なるほど、じゃあ!」
デマーガは苦しみながら熱戦を吐き出し、エレキングを引き離す。全力の時にはなったものと比べればあまりにも弱弱しいものだったが、拘束を解除する
「そうそう、怪獣はあたしらと違って肉弾戦以外もできる。この先戦ってくなら、覚えておいた方がいい」
翼がエレキングに攻勢を仕掛けようとした時、響が演習場に駆け込んできた。
「翼さん!奏さん!大変です!セレナちゃんが倒れたんです!」
緊急事態を聞かされた翼たちは急いで怪獣を撤退させ、響と共にセレナの所へ向かう。
医務室の前に着くと、マリアが疲れた様子で項垂れていた。
「マリア?大丈夫か?」
「翼?ええ、セレナはキャロルが診ているわ。技術は本物だから、信用していいと思わ」
直後、医務室の扉が開き、中からキャロルが出てきた。
「治療は完了した。しばらくすれば―――」
マリアは話も聞かずに医務室の中に駆け込んでいった。翼も続いて中に入ると、ベッドの上でセレナが寝かされていた。マリアはセレナの体に傷がついてないことを確認すると、一安心したようだった。
「人の話を聞け。しばらくは安静だ。この状態のセレナを戦わせれば、命に係わるだろうしな」
翼が周囲を見渡すと、奇妙なものが目に入った。どこかで見覚えがあるような、黄色い結晶だった。
「離れろ、これから病室に移す」
キャロルはマリアを押しのけて、セレナのベッドを押して部屋を出て行った。
「そうだ、それには触れるな。なんてことない、LiNKERの材料だからな」
部屋を出ていく直前、キャロルは翼にそう言い残していった。翼はキャロルの言葉に疑問が残ったものの、それ以上の追及のしようがないと判断して、その場を後にした
セレナが目を覚ますと、ベッドの上だった。ゆっくりと起き上がり、自分の体に異常がない事を確認する。
(そっか。私、また倒れたんだ……)
キャロルからは無茶をするなと釘を刺されてはいるが、それでもセレナはこうして前線に近いところで戦っているのだ。どうせ、自分は死んでもかまわない人間なのだから。
セレナは前髪に違和感を感じて触れる。無い、大切にしていた髪飾りがなくなっている。治療の邪魔と判断されて、キャロルが外したのかもしれないが、周囲を探しても見当たらない。布団の中、周囲の机の上、服の中、どこを探しても見当たらない。
「探しているのはこれか?」
病室の入り口から、翼が入ってきた。その手にはセレナが探している髪飾りが握られていた。
「返してください!それは大切なものなんです!」
「そんなに大切なものか?
翼の言葉にセレナは言い淀んでしまった。この場で笑い飛ばすようなら、翼はすんなりこれを返すつもりだった。だが、それを聞いて自分の中の疑いが確信に変わった。
「やはりか。マリアの目に留まる前に拾っておいて正解だったな。やはり、お前はセレナではないな?」
セレナの呼吸が早くなり、冷や汗が出る。この場で自分が隠していることを話すべきか、しかし、それで翼は本当に信じてくれるのか。下手に答えれば、敵とみなされて殺されるのではないか。セレナの中で不安と恐怖が溢れてくる。
「答えろ、お前はだれだ?」
殺気を出しながら迫ってくる翼に、セレナは怖くなってその場から逃げ出した。病室を飛び出してS.O.N.G.本部からも逃げ出そうとするが、すぐに息が上がってせき込みながらその場にへたり込んでしまう。
「おい!?大丈夫か?」
偶然近くを通りかかったのか、クリスがやってきてセレナに駆け寄ってきた。
「雪音!そのセレナを押さえていろ!やはり
すぐに翼が追いかけてきた。翼は今にもセレナに切りかかりそうな勢いで、完全にセレナを敵として見ている。
「おいおい、落ち着けよセンパイ。完全におびえてるじゃねえか」
「落ち着いていられるか!仲間の名を騙る偽物がいたのだぞ!?奏は恐らく、これを伝えようとしたのだ!」
翼は完全に興奮しきっており、このままでは間違いなくセレナに切りかかるだろう。翼の気迫を受け、セレナは完全に怯えきっており、今にも泣きそうだ。
「あー、しょうがねえ。ちょっと食堂で話そうぜ?それからでも悪くはないだろ?」
クリスはこの場を穏便に収めるため、2人を食堂まで連れていき、そこで話をすることにした。とにかく、セレナが結局誰なのかをハッキリさせなければ、翼は矛を収めてくれないだろう。
食堂にてクリスは翼の隣に座り、その向かいにセレナを座らせた。
「それで、お前は結局誰なんだ?ギャラルホルンで連れてこられた奴じゃないんだって?」
翼ではセレナを怖がらせてしまうと思い、クリスが主導権を握ることにした。翼もとりあえずは落ち着いている。
「えっと、この世界の、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ、です……」
セレナは思いの外あっさりと正体を告白した。言葉の節々に若干の嗚咽が混じっているので、まるで恐喝しているようでいい気分ではないのだが。
「それで、その髪飾りは?」
「この世界の、響さんから、頂いたお守り、みたいなものです」
「そうだったのか……。この世界にも、立花がいるのだな」
セレナの正体がはっきりして、翼も先程までの気迫を収めたようだった。だが冷静になってさっきまでの行いを反省しているのか、目が泳ぎ始めている。
「本当、すまないことをしたな。謝罪させてほしい」
「いいえ……。こちらも皆さんを騙すようなことをして申し訳ありませんでした……。いつかはちゃんと話すつもりだったのですが、その、中々言い出せなくて」
セレナは嗚咽交じりで、黙っていたことを謝った。そして泣くのを堪えながら自分の事について語り始めた。
「私は、現状S.O.N.Gたった一人のこちらの世界側の装者です……。前は3人でチームを組んで戦っていましたが、その、お……1人はS.O.N.Gに変わるときに辞めてフリーで活動してて、もう1人はこの前の事件の時に負傷して、今は療養中だったはず、です……。この世界のマリア姉さんも、装者でした……」
セレナはそれから何かを言おうとしていたが、あまりに見るに堪えないありさまだったので、そこで止めた。
「いや、もういい。その、寂しい思いをしていたのだな?私たちもできる限りフォローをしよう、そうだな……雪音、少しフォローしてやってくれないか?」
「はあ!?何であたしが!?」
クリスは翼に抗議しようとしたが、即座に翼に肩をつかまれて耳打ちをされた。
「私は年下の後輩というものと縁遠くてな。これ以上怖がらせてしまっては申し訳ない。だから、セレナが我々に馴染めるように手伝ってはくれないか?」
思い返してみれば、至極当然の発想だった。学生時代、トップアーティストとシンフォギア装者の二足わらじで生活してきた翼は年上の人間と接することは多くても、年下の人間との関わりは少ない。
そして初めてできた後輩と言える存在があの響なのだ。確かに、翼には年下の後輩を導くという経験が圧倒的に足りていない。
それに比べて切歌や調の面倒を見ているクリスの方が、セレナの面倒を見るのに適任だろう。
「そ、そうか!分かった!あたしがバッチリフォローしてやるぜ!」
少しぎこちない笑顔になってしまったが、クリスの言葉に少し元気づけられたようでセレナの顔が少し明るくなる。それを見て、思わず安堵のため息が漏れる。
「さて、それじゃ私はここで退散するとしよう。雪音、後は頼んだぞ」
翼は席を立ち、食堂を後にする。セレナを追い詰めてしまった罪悪感に耐え切れず、足早に食堂を後にした。
「翼ー、見てたよ?」
食堂を出ると、奏が一部始終を見ていたようで、からかうような笑みを浮かべて待っていた。
「奏……。セレナの事、知ってたんでしょ?どうして直接言ってくれないのよ?お陰で恥かいちゃったわ」
「まあ、セレナの口から言わせたかったんだよ。大事なことだしな」
奏はセレナについては何か思う所があるようで、彼女の事を考えての事だったらしい。
「なんかさ、妹と重なって見えるんだよな。放っておけないっていうかさ。たまに寝言でお姉ちゃんって言ってるのが聞こえるし。あたしらほとんど初対面だけど、セレナには幸せになってほしいんだよ」
翼たちの世界では、奏は翼を妹分のように可愛がっていた。しかし、今目の前の奏は逆に翼を喪った奏なのだ。だからこそ、年下の人間に対する情は厚いのかもしれないと翼は感じ取った。
「ま、一応あたしの狙い通りにはなったんだ。それじゃ、お休み」
奏は自分の部屋の前に到着すると、翼と別れて自分の部屋に帰っていった。翼はセレナの正体がハッキリしてスッキリした気分と、無理やりセレナの事を聞き出してしまったという罪悪感とが入り混じり、複雑な気分だった。
翌日、クリスはセレナと共に彼女の家を訪れていた。キャロルに外出許可を求めたところ、渋い顔をされたがシンフォギアを使わないことを条件に許可が下りた。無茶はできないが、少し遊ぶ程度なら問題ないらしい。
「にしてもきれいな部屋だよな……。ん?」
部屋に飾られた写真がクリスの目に留まった。大きな屋敷の前で、響とセレナが写っている写真だ。もちろん映っているのはこの世界の響であり、クリスの知っている響と比べて若干髪が長い。
2人は幼馴染なのか、写っている写真では二人とも幼く、セレナの様子がどこかよそよそしい。他には響の両親も写っているが、セレナの両親の姿が見当たらない。
「あっ!ちょっとその写真は恥ずかしいので、あまり見ないでもらえますか?」
クリスが写真を眺めていると、セレナが慌てて写真を伏せた。クリスは軽く謝罪をして写真から離れた。
「そうだ!ちょっと散歩に出かけませんか!?この町、雪音さんの世界との違いとかあったらよ聞かせてくださいよ!」
セレナはやや強引気味にクリスの腕を引いて外に出ようとした。元々、部屋でゆっくちする予定だったが、特別断る理由もなかったのでクリスはセレナの意見に従うことにした。
「セレナ!外に出て大丈夫なの!?」
買い物に行こうとしたその時、マリアが突然セレナの家にやってきた。ここまで走ってきたのか、若干息が上がっている。
「ダメじゃないセレナ!外はどんな宇宙人が歩いてるかわからないわ。私が守ってあげるわ」
「マ、マリア姉さん!そうだ!一緒に買い物に行かない?ちょっと最近の仕事の話とか聞きたいなあって……」
セレナはマリアを家に上げたくない理由でもあるのか、玄関口でマリアが入ってこないようにしながら、提案をしていた。
「え?別にいいけど……。とにかく、早く帰るわよ。あんまり無茶ができないんだから」
マリアはセレナの意見を飲み、3人で買い物に出かけることにした。何を買うのかは決まっていないが、セレナにとっては出かけるということ自体が重要だったようで、うれしそうな笑顔を浮かべている。
「あ、そうそう。セレナ、表札のスペル、間違ってるわよ」
「えぇ!?」
セレナが家の鍵を閉めたとき、マリアが表札を指摘した。クリスが改めてみてみると、確かにスペルが違っていた。これでは『サレナ・カデンツァヴナ・エヴァ』である。
「アハハ……。こっちの響さんに作ってもらったからかなぁ……。後で注意しておくね……」
セレナは今の今まで気づいていなかったようで、顔が引きつっていた。こちらの世界でも、響はおっちょこちょいらしい。
「いいわ。後で私がちゃんとしたスペルのやつをつけてあげるわ。行きましょう」
マリアが先導し、3人は買い物へと出かける。セレナは今まで間違った名前を掲げていたことが恥ずかしくなったのか乾いた笑みを浮かべていた。
クリスはどこか違和感のようなものを覚えていたが、気のせいだと思い、特に気にすることなくその場を後にした。
ボスからウルトラマンのスパークドールを預かってきたトゥエルノは、スズチェンコに渡した。前回の作戦でスズチェンコは救出できたものの、車いすでの生活を余儀なくされていた。
「スズチェンコ、ボスからこれを預かってきた。何かできそうか?」
トゥエルノは、スズチェンコにリベンジの機会を与えてやりたいと思いスズチェンコにスパークドールを渡した。
「うん。普通に使っても、これならどんな怪獣にも勝てると思う。この前のユメノカタマリは失敗したけど、あれとこれを組み合わせれば、もっと強くなれるはず」
スズチェンコは手元のパソコンを操作して、ウルトラマンのスパークドールのシルエットを映し出す。そこに、次々と鎧を装備させていき、全く別の姿を作り出す。
「ウルトラマンのスパークドールズは、性能が高い代わりに実体化させるのに制限時間があるから、それを他から吸い上げたエネルギーでカバーすれば、もっと長時間活動できるはず」
スズチェンコが作り上げた怪獣には、『Zelganoid』と表示させた。
「おぉすげえ!さっすがはスズチェンコだ!早速で悪いが、改造に取り掛かってくれるか?」
「うん。いつでも行けるようにしておく」
これまで負け続きだった、トゥエルノは一抹の希望が見えて、端から見ても大げさに見える程大喜びしていた。
「よし、完成次第、ウルトラ作戦第一号始動だぁ!」
宇宙船の中に、トゥエルノの叫びが響き渡った。
SONG怪獣図鑑
放電竜 エレキング
体長:26センチメートル~56メートル
体重:1.3キログラム~4万2千トン
ステータス
力:★★☆☆☆
技:★★★★☆
知:★★★☆☆
ピット星に生息している宇宙生物。電撃を操る能力を持ち、放電攻撃だけではなく、電気を吸収する能力も兼ね備えている。
また伸縮自在で、電子機器に対しては無類の強さを発揮するため、現代においては強力な戦力になる。奏が
必殺技は自らを電撃に変えて突進する『MOTEORITE∞STRIKE』
装者たちのコメント
奏:他と比べるとどうしてもパワー負けしちまうが、結構データ集めとかで重宝するんだよなあ。
マリア:レッドキング、ブラックキング、エレキング、ガングニールで呼び出される怪獣はキングが付く怪獣が多いわね
響:じゃあ、この世界にガングニールの装者がいれば、キングジョーとかが出てくるかもしれないってことですね!