週が明け材木座は旅行カバン片手に山形へと旅立つ。
留美と京華は朝早くから行ったが、結局材木座の方は仕事や手続きの都合上一旦会社に顔を出したり客先に挨拶に行かなくてはならなかっため比企谷邸につく頃は大分遅い時間になっていた。
「頼もう!八幡はおるかー」
「いらっしゃい、お部屋の用意は出来てるわ、晩御飯はどうしますか?」
応対に出たのは雪乃
「お久しぶりであるな、せっかくだからいただこうか、しかし雪乃殿はどんどん美人になってくるから八幡が羨ましいぞ」
「あら、お世辞を言っても何も出ませんよ、うふふ」
そう言うと材木座は土産のピーナッツ詰め合わせセットを渡して宿泊する部屋へと案内される。
「毎度すまんのう、子供もいるというのに今回は長期滞在になる我に部屋を貸してもらって」
「あら、千葉産のピーナッツね、八幡が喜ぶわ、でもこんな気を使わなくていいのよ、あなたはいつ来ても大歓迎ですもの」
実は何だかんだで長期連休の時はたまに遊びに来ており、その度に比企谷邸へ泊っていたのだった。
材木座は雪乃の用意してくれた食事をとることにしたのだが何故か比企谷がいない、結衣もいない
「雪乃殿、八幡と結衣殿はまだお仕事中なのか?」
「そうね、今色々と大変で・・・あなたを呼び出したのもそのせいよ」
「我に期待されてもな、我にできることといったらせいぜい八幡の会社をヨイショする記事を書く程度だが」
「そういうのは間に合ってるの、そこじゃないのよ・・・明日になればわかるわ」
「何やらよくわからぬな、我にできることなら協力するが」
不安な気持ちになるが、これでしばらく締切と無縁の生活だと思うと気持ちが安らぎ部屋に戻ると疲れもあって早々に寝ることにした。
次の日、材木座が起きると結衣が朝ごはんを用意していた
「やっはろー中二」
「んあ、おはようでござる、つかまだその挨拶続けておったのか?」
「うちの部署じゃみんなこの挨拶だよ!」
「大丈夫なのその部署?」
「んもーいいじゃん!それより中二!起こしたのになんで全然起きないの?もう時間無くなったじゃん!」
遊びに来てた時は常に雪乃や比企谷がいたため、二人きりというのは今回が初めてだということもあり、ぷりぷりと怒る結衣を見ながらふと彼女と結婚していたら毎日こんな調子だったんだろうかと頭をよぎる、
「・・・結衣殿は今幸せか?」
「中二?・・・うん、とっても幸せだよ、中二のおかげだよ、ほんと感謝してるよ・・・」
結衣は何かを感じ取ったのかじっと材木座を見る
「・・・もし・・・あの時・・・」
材木座も結衣を見つめるが
「いや今更何も言うまい!さて朝ごはんをごちそうになるかの!料理の方は大丈夫か?」
高校の頃を思い出してしまいあの頃もしと考えが浮かんでしまったが、今更馬鹿げた質問をするのをやめて朝食をとることにする
「ところで八幡と雪乃殿はいかがなされた?」
「二人とももう出社したよ、あたしは中二を送るからまだいるんだよ!だから早く食べろし!」
「左様か、すまぬな、つか平日に来たこと無かったので知らぬのだが子供はどうするんだ?」
「うちの子まだ小さいでしょ、みんなもまだ幼稚園に入れない子供もたくさんいるから今会社に託児所作ろうかって話になっててね、それまでうちが託児所みたくなってるの、みんなで交代で子供の面倒みてるんだよ、今日の当番はかおりんとみなみんとだったかな?」
そうこうしているとかおりと南がやってきて子供を預ける人も続々やってきた。
皆材木座を見ると驚いていたがすぐに何故か一様に納得した表情になっていた。
ただ沙希だけは殺気のこもった目で睨みつけていた。
「なんか沙希殿がものすごく怖かったのだが、つか何故皆我を見てよろしくとか言ってるのだ?そんなに歓迎されてるの?何をされるの?」
「・・・行けばわかるよ、だから早くご飯食べろし」
せかされて目を白黒させながら昔よりかなりマシになった料理を口に突っ込む、その後結衣の荒い運転で会社へと向かうのだった。
会社につくと結衣は用事があるからと材木座に社長室へ行くように言う。
「ふむ、いつも休日にしか来てなかったからこういうのは初めてだの、よしここは一つ」
と一考し扉をバーンと開け
「クックックまさかこんなところで出会うとは驚いたな!待ちわびたぞ八幡よ!」
と奉仕部で会った時のセリフを叫んでみたが中にいたのは比企谷だけではなかった
「な、なんだと!?そっちから来たのに驚いて待ちわびたとはどういうことだって・・・ってかすまんがそういうのは今はやめてくれ、恥ずかしい」
「あ・・・はい」
材木座と比企谷は恥ずかしさで互いに顔を赤くする
中にいたのは比企谷、雪乃、あと女性と黒い服を着た男女数名だった。
「あなたたち、ご自分の年齢を考えろとは言わないまでもTPOはわきまえていただけるかしら?」
雪乃が呆れ顔で言う
「あーごほん、こ、これは失礼した、で、では我を出張させてまで呼びつけた理由を聞かせてもらおうか?」
気を取り直して材木座は比企谷と雪乃に向かって聞く
「・・・実はだな、会社の業績が最近思わしくないんだよ」
「なんと!では我の会社の雑誌に総出で八幡のことをでかでかと猛プッシュする提灯記事を書かねばならぬな!そのつもりで呼び出したのか?でもそんなもんは電話で済む話だろう?」
「そういうのは間に合ってると昨日行ったはずよ?そこではないのよ」
雪乃はため息を吐く
「まあ、この程度は想定内なんだが皆無駄に危機感を持っていてな、勝手にサービス残業を始めやがって俺が言っても聞かないんだよ!なに?この会社ブラック企業にしたいの?外から見ると日が変わってもずっと明かりがついてるんだよ?ご近所から『あの会社深夜まで社員を働かせて社長は定時で帰って愛人とよろしくやってるらしいわよやーねー』なんて噂されたらどうするんだ!おかげで俺も残ってないと示しがつかんだろ!俺は早く帰りたいんだよ!」
「全くもってお主らしい、しかし半分は本当であろう・・・愛人の下りは、つか叔父さんにも聞いたがおぬしの会社は地域の祭りとかボランティアに積極的に参加してるしお主らも礼儀正しいとかで評判は上々らしいが」
「人のうわさなんて信用できねぇ、いつひっくり返るかわからん、大体俺が早く帰っても結衣も雪乃も残っているからよろしくなんてできないし・・・そもそもあいつらが倒れられでもしたらその・・・困るんだ」
そういや高校の時は皆噂に翻弄されてたなとふと思い出す。
「そりゃ従業員が倒れたら色々困るであろう、我の所も36協定だのなんだのと・・・」
「ちがう!そういう意味ではなくて、その・・・皆と仕事ができるここが本物なのかもなんて・・・いや!今のなし!忘れろ!」
本物?なんか昔そんな話を聞いたような?材木座が首をひねっていると
「ん、んん、八幡のひねくれっぷりはまず置いておいてちょうだい、結論から言うとあなたにはまたラノベを書いてほしいのよ」
「え?なんで?」
「みんな無駄に危機感を持ちすぎるんだよ、実はこの不況のさなか逆転を狙って陽乃さんが海外で大口の交渉に行っているんだ、詳しいことはわからないんだが上手くいけば相当な受注が見込まれるそうなんだ、でもあっちこっちの国をまたいでの交渉になるから長期にわたっていて終わる気配がなくてね、正直皆諦めているってのもあるし、売り上げが毎年減っているのもあるしで不安がっててな、安心させてほしいんだよ、今回お前を呼び出したのはそういうことなんだ」
比企谷は材木座にそう告げた。