比企谷の説明を聞いても良くわからず材木座は首をひねる
「意味が分からん、何故我のラノベとみんなを安心させるがつながるんだ?」
「お前のラノベには不思議な力があると皆思っているふしがあるからだ」
「んなバカな、あれはきっかけにすぎぬだろう、成功させたのはおぬしらの力だ」
「俺たちの件もあるが・・・おまえ留美にラノベ書いてやっただろ」
「何故それを知っておるのだ?」
「いきなり読まされて不倫しようなどと言われたんだよ、んでその内容何一つできてないから出直せと言ったんだ、その時に一応コピーは取ったんで雪乃や結衣にも見せたんだが、あれはいいアイディアだ、さすが材木座だな、俺も留美の対人関係については不安だった、雪乃も自分に似てるからと色々気にかけていたんだよ、お前のラノベを信じたおかげで留美は対人関係を改善するように努力していい方に変わった。おまえには感謝してもしきれん」
「いやあんなの自己啓発やらマナーの本とか見れば普通に載ってることだろう、我の会社からもいくつか出してるぞ?お勧めは我が編集した『ニートでも大丈夫!ネットで社会人ぶれる世間の常識非常識』タイトルはアレだが学生や訳あって引きこもってた人向けに分かりやすく社会人としてのマナーや一般常識なんかを書いている、無論レスバトルにも役に立つ、これを読めば都内85階タワマン住みなんて恥さらしのようなことは言わずに済むぞ、我の好きなラノベの絵師に頼んでイラストも豊富に入れている、一冊1500円だ」
「そんな趣味全開すぎるのよく出版できたな・・・つかそんなもん箱でいくらでも買ってやる、今回のはそうではなくて、お前のラノベってことが重要だったんだってば」
「そんな宗教じみたこと言われてもな」
「でも、留美はお前を信頼してるだろ?東京にほぼ常駐する人材が必要ってなったとき真っ先に手を挙げたのが留美だ」
どきっとなり材木座は声が上ずる
「で、でもだぞ?そんなこと八幡達しか知らんのだろう?」
「でだ、ここから問題だが、留美が持ってきたラノベはデータで持ってきていてな、俺は雪乃と結衣に見せるため共有フォルダに突っ込んだまま忘れちゃってたんだ・・・」
「まさか・・・」
「そう!社員全員に流出しちゃった、おかげでお前が留美に書いたラノベが本当になってるのでは?と噂になってな」
「しちゃったじゃないだろ・・・おぬし、わざとであろう・・・」
材木座は呆れ顔になる
「まあ、わざとかどうかは置いておいて、読んだ連中は留美が変わったのはお前のラノベが関与しているからってことを知っているからな」
「しかしだ、別に留美と我はラノベのような深い仲になっているわけではないぞ?別に付き合ってるわけではないし」
「おまえがそう言う事は想定済みだ、俺も留美が東京に行ってお前と接触しているってことは聞いていた、話しっぷりからかなり親しい間柄になっているってのいうのもな、ただどの程度まではしらなくてな、お前に聞いてもそんなことは言わないのは知っている、それにこういうのは客観的に見ないとわからん、俺が奉仕部にいたときのようにな、だから悪いと思ったが調べさせてもらった」
「いったいどうやって?」
「そこは私たちが調べたんだよ」
と先ほどから座っていた女性が声を上げる、
「ふむ、失礼ながらお聞きしますがどこぞでお会いしましたか?」
「ひっどーい!いろはちゃんの前の生徒会長なのに!文化祭でもステージで挨拶したじゃん!」
「ま、まあ材木座はほとんど接点無かったし、あのころは女性は苦手だったからな、めぐり先輩、いやめぐりさん勘弁してやってくれ」
比企谷がフォローに入る
「んでだ、このめぐりさんの説明をするとだ今営業部営業二課に所属してもらっている、ちなみに二課の課長は陽乃さんだ」
「八幡、なんかその二課って猛烈に嫌な予感しかしない部署なのだが・・・」
「ああ、表向きは海外や特殊な案件を扱う部署なんだが、実はスパイ活動やら表だって言えないようなこともやってもらってる」
「・・・マジデ?」
「マジなんだなこれが、例えばちょっと前にうちの会社にちょっかいかけてきた所があってな、まあ俺も若いから甘く見られてたんだろうな、会社を乗っ取られそうになったんだ、俺に金やら土地やら女やらを絡ませてきてあることないことスキャンダルを煽って俺たちを追い出そうとしてきてね」
「それは怖いな、それでどうした?」
「金やら土地やらは突っ返したんだが、女のあたりで俺も切れてな、雪乃や結衣を上回る女なんているわけないだろう?、それでわざと負けたふりをしてな、負けた証としてうちの優秀な美女をそちらに献上しますと陽乃さんとめぐりさんを送り込んでな・・・」
「・・・なんか予想がつくな」
「ああ、内部崩壊させてやったよ、あの狒々爺どもは雪乃や結衣まで要求してきたもんだから陽乃さんぶちぎれてな、経営陣のお偉方は陽乃さんとめぐりさんに骨抜きにされて勝手に熱を上げて経営がガタガタになってな、はめられたと気が付いて色々喚いてたらしいが自業自得だ、ガタガタになったところでめぐりさんの部下を送り込んで情報をごっそりといただいた後、逆にのっとりかけてやって下らないことを考えた連中を軒並み首切ってやった、ついでに内部情報から連中個人のいろいろ面白い事実が出てきたのでな、葉山に関係者焚き付けさせて訴訟を起こしてがっつり吸い取ってやった、奴ら別な会社に運よく入れたとしてもこっちに二度と反抗する気は起きないだろうな」
「おぬし、ずいぶんと過激になってるな」
「俺達の居場所を奪うやつは絶対に許さん、奉仕部の時もいろいろあって崩壊しかけた時があったしな、同じ轍は踏まん」
「・・・んではそのさっきからめぐり殿の後ろに立っている黒服達は一体?」
真っ黒なスーツを来た男女がずらっと並んでいる、さながらSPやMIBやカイジに出てくるあの人達のようである
「この人たちはねー私が会長だったときに生徒会の役員だったんだ、さっき話に有った私の部下、みんな優秀なんだよ?」
「この人たちは通常は受付やら保全やら社内のあちこちで働いてもらってるんだが必要な時にはこうやって出てきてもらっている、彼らの行動はめぐりさんに一任しているんだ」
「そうなんだよー、んで今回は材木座くん、比企谷社長の命令でここ一か月ばかりの君を調査させてもらったんだよー」
「マジデ?」
「マジだ」
比企谷は真剣な顔で返す
「報告によるとねー、この色男!留美ちゃんほぼ毎日アパートに行ってるね!」
「はい、会社で借りた賃貸に行っているのは材木座さんが日をまたぐぐらいの深夜残業で遅くなっているときだけです、それ以外は材木座さんを待っていて泊まっています」
黒服が付け加える
「マテ、勘違いされては困るが我は留美には手を出してないぞ?」
「ただ一度だけわりと早い時間に鶴見さんを部屋から追い出すようにしていたことがありました。鶴見さんは気にしてないからなどとドアの前で言っていたようですがドアは開かれることはなく、そのまま鶴見さんは帰宅しました」
「あ・・・それは・・・」
恐らくそれは自分が留美を襲いそうになったときのことだろう、あの時なんとか自分を押さえ込んだがそのままだと我慢できそうに無かったため留美を追い出したのだ。
青い顔をした材木座を見て比企谷は察したが雪乃とめぐりは首をかしげる
「追い出すなんて留美さんが何かそそうをしたのかしら?でも報告書の内容からすると材木座くんが何かしたように見えるのだけれど?」
「止めてくれぬか、これ以上は留美も傷つけてしまいかねん」
追求しようとする雪乃に材木座は止めるようにいう
「まあ留美の態度がこの後変わってるわけでもないし喧嘩でもしたんだろ、よくあることだ・・・しかしそうか・・・『留美』ね」
いまいち納得してない雪乃とめぐりを尻目にニヤッとする比企谷
「んでー?週末はー川崎京華ちゃんとも遊んでるみたいだねー、その光景援交のごとしって書いてあるね!」
「はい、実際は鶴見さんも一緒にいるのですが、部活帰り等で制服姿の時に一緒に歩いている場合などはむしろ通報されないか心配でしたので警戒しなくてはならず大変でした。本当に通報しそうな人がいましたのであの人は親戚同士だとさりげなく側で会話したり話しかけたりして阻止してました。」
また黒服が一言付け加える
「え・・・我知らぬ間にガードされてたの・・・?」
「当然です、めぐりさんの大事な人の一人である比企谷社長のご友人ですので」
「そうだったのか・・・んじゃもっと京華を外に連れて行けばよかったな・・・」
「ほう・・・『京華』か・・・」
またもニヤリとする比企谷
「んで、この日は一緒に海に行ってるね!」
「はい、お二人の水着姿にずっとデレデレしっぱなしのようでした、鶴見さんも川崎さんも美人で人目を引くためナンパ野郎の撃退と、ここでも材木座さんがトラブルに巻き込まれないか心配でしたのでアレは親戚だとかあの男は武道の達人だとかとさりげなく噂をばらまいてました。鶴見さんも川崎さんも材木座さんのことを『剣豪将軍さま』とからかっていたのも功を奏して変なのはあんまり寄り付きませんでした」
なんかこの人たちすごいんだけど、忍者か何かなの?驚くより呆れてしまう材木座
「ありがとう、下がっていいよ」
比企谷がそういうと
「うん!みんなありがとう!もういいからね!」
「御意」
音もなくすーっと全員が出ていく
「え?なに?ホントに忍者?忍者なんで?」
「驚くのもの無理はないな、彼らは総武高校からああなんだ、めぐりさんを引き抜いた時に全員一緒に連れてきたんだ」
それよりと比企谷は話を続ける
「お前に対してものすごく失礼なことをしてしまったのは自覚があるし悪いと思っている、ぶん殴られても文句は言えないから好きにしてくれてかまわん、でもさっきも言ったようにお前に聞いても本当のことは教えてくれないだろ?」
「いやまあ、別になんか逆にガードしてくれたみたいだし、悪い気はしないのだが・・・部屋に盗聴器とか隠しカメラとかないよね?」
「重ね重ねすまない、あと部屋に何か仕掛けたりはしていない、あくまで周囲から見た状況を調査しただけだ、でだなおまえが留美に書いたラノベな、よく読むと別に不倫をするって話じゃないだろこれ」
「当たり前だろう、不倫とか寝取られとかは我は好かんのでのう」
「しかもこれって読み方によっては同じ会社の人でもないよな?」
「そこの描写は適当だからな、主たる目的は留美の人格改造が故その辺はどうとでもとれる」
「あとお前つながりでけーちゃんとも親友レベルまで仲良しになってるよな?雪乃と結衣のように」
「・・・そこはほれ、まあ知ってる人つながりだし・・・何が言いたい?」
「さっきの報告と併せて考えると、留美に書いたラノベが実現していて現在進行形なんじゃないのか?」
「んなこと言われても、我困るよ・・・」
腕組みをして困った顔になる材木座
「それに実はさっきの報告は書類にまとめて幹部連中に読んでもらっている。読んだ奴のほとんどは俺と同意見だ」
「んな勝手な・・・」
「勝手なことは重々承知だ、でもこのままじゃそのうち誰か過労で倒れちまう、それにこれだけ証拠があるんだオカルト嫌いな奴も皆ジンクスみたいなものかもということで信じている、雪乃ですらな、頼む書いてくれないか?今回無理言って来てもらったのはこのためなんだ、一ヶ月もあれば書けるだろ?」
「いや、だってここは八幡の会社であろう、我がどうこうする問題ではあるまい・・・」
留美の為にと気軽に書いたラノベがかなりの大事になっているので二の足を踏んでしまう
「たのむ!この通り土下座でも何でもする!」
と床に膝を突く比企谷
「私からもお願いするわ、何か欲しい物はある?ご希望に添える物はなんでもそろえるわ」
と雪乃まで膝を突いたので
「わー!やめてくれ!わかった!わかったから!二人ともやめてくれぬか!正直そんなことされてもいい気持ちはせぬぞ!」
「本当にすまん。別にご都合主義でいいんだ、お前のラノベを読めばきっと皆安心する、赤字の部分は俺と雪乃と結衣でなんとかする」
「責任はとれんぞ?我のストーリー通りに進まないとクレーム入れられても困るからな?」
「今のおかしげな状況が正常になるだけでいい、文句が出たら俺が抑える、本当に恩に着る」
またも頭を下げる比企谷と雪乃、この二人に頭を下げられるとどうも弱い、材木座は諦めることにした。