俺のラノベは間違っている’   作:もよぶ

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陽乃さんはいつでも自由な人だと思いますがいろいろと辛い立場なのかもしれません。
たぶんこの作品でも別な仮面をつけていると思います。
あとガハマさんは裏方なので出番はほとんどありません、内助の功ってやつです。


俺のラノベは間違っている 後日談 6

次の日

「皆を安心させる話とか言われてもだな・・・」

思案しつつキーボードに指を走らせる、ふと良い匂いが漂ってきたので顔を上げると鶴見が紅茶を淹れてくれていた

「留美、それは?」

「雪乃さんに教えてもらった、義輝どうぞ」

そういうと湯呑に入れた紅茶を渡す

「湯呑に紅茶か・・・昔の八幡を思い出すな・・・」

 

「そう言えばはーちゃん社長って学校ではどういう感じだったの?」

「私も聞きたいな、義輝、教えて?」

「うむ、ちょうど休憩したかったしな、では教えようか、我と八幡との熱い戦いの歴史を!」

材木座は高校時代の思い出を二人に語る、

 

「・・・とまあ我と八幡との出会いは体育の『二人組作って』だったわけだ!」

「やっぱり八幡は友達いなかったんだ」

「それで初めて奉仕部に行ったときは・・・」

材木座は奉仕部に初めてラノベを読んでもらいに行ったことを話す

 

「ざいちゃん雪乃さんと結衣さんと話せなかったってどういこと?」

「だってあの時は二人とも恐かったんだもん」

「義輝、ポイント低い」

材木座は高校時代の女性への免疫の無さについて二人にダメだしを食らう

 

「それで文化祭の時は・・・」

「南さんって酷い!最低じゃん!でもはーちゃんはすごいね、みんなはーちゃんの手の上みたいじゃん」

「まあ、やり方は誉められないが奴の考え方の方向性自体は間違ってなかったのかもしれぬ、でも奴がそこまでやったのは恐らく雪乃殿の為であろうな」

 

「八幡、雪乃さんといい感じだったもんね、夏に会ったときそう思った」

「フム、夏とはキャンプの話しか?我は某イベントの為執筆中で断ったので詳しいことは知らぬのだよ」

 

「じゃあ教えるね、私が八幡に助けられた話」

留美はキャンプであった時のことを話す。

それから体育祭やクリスマスイベントなど奉仕部に持ちかけられた依頼を材木座は語り続ける。

 

留美も京華も比企谷やその周囲の人たちの意外な顔に驚いたり憤慨したりと話を聞くのに没頭する

「意外だね、葉山さんなんてかっこいいし頭もいいしとっても優しいのに高校の時はなんか嫌味みたいな感じだったんだね」

「それは我の主観だからな、八幡も似たように思っていたと思うがな、最もあのころは自分の考えてることが正義みたいに各々が思っていたからな、我も中二病全開だったし、まあ若かったということよ」

 

「でも何で八幡に嫌な目に会わされたのにみんなここにいるんだろ?葉山さんだって南さんだって顔もみたくないって思ってると思うんだけど」

 

「嫌な目に会わされたとか八幡は最悪なやつという感覚こそが八幡の術中にはまったという事だからな。しかもそう思って八幡を踏み台にすることによって問題が解決出来てしまうわけだ。初めは気が付かんが後からそれに気がついた時の後味の悪さや罪悪感は半端ないだろう。実際さっき南殿に会ってな。熱心な顔で『あいつを助けてやって、うちも今あいつに借りを返してるところだから』と頼まれたからな、お主がサービス残業やめてくれればいいとか言えなかった」

 

「葉山さんもそうなのかな?」

「結婚式の時に償いがどうとか言ってたしな、奴らはなにやら因縁がるようだし葉山殿はそれについて負い目があるのであろう、その辺は深くは追及しない方がいいと思う、奴らの中で既に折り合いがついているだろうからほじくりだすのは良くないことだ」

 

「あといろはさんは一年生で生徒会長になったんだって自慢してましたけど初めは嫌がってたんですね」

「うむ、八幡と我のツイッター大作戦によっていろは殿は説得されて生徒会長になったのだ、だが実の所その辺はよく知らぬ・・・そう言えばあの時八幡達はなんかおかしかったな、雪乃殿と結衣殿が立候補するとか言ってて、なんか八幡はそれを応援するどころか阻止しようと我に協力を求めたような物だからな、あの時二人のどちらかが当選したら我に優しくない学校になるとかで説得されたようだが、なんかはぐらかされたような気もするし」

 

「・・・義輝、たぶんそのこと姫菜さんが言ってたよ『私のせいであの三人に亀裂をいれちゃったことがあるの、だから今度はしっかりくっつけておかないと、それが私の使命かな?』とかって、だから八幡がそんなことをやった理由って居場所を守ろうとしたんだと思う」

「居場所?」

材木座は首をひねる

「わたしにもなんとなくわかります、はーちゃん社長って奉仕部でこうやって三人でお茶しながら一緒に過ごすのが好きだったんだと思います、好きな人とは一緒に居たいじゃないですか!生徒会に入っちゃったら忙しくてそんなことできなくなりますもん」

 

「左様か、なるほどそれで八幡の奴あんなに一生懸命だったのか、あやつめあの時点でハーレム王の素質が芽生えたというわけだな?」

「義輝、人のこと言えない」

「そうですよ、ざいちゃん」

 

それから毎日材木座は二人と色々な話をしつつ執筆を続ける。

ある日比企谷と雪乃が様子を見に来た。

 

「材木座どんな調子だ?」

 

「経営のことなんてさっぱりだからサラリーマン金太郎とか島耕作とかの漫画パクって書いてる、なろう系のラノベも参考にしてるな、知り合い集めて会社立ち上げて、皆で猛烈に苦労してとりあえず軌道に乗れたけど一回潰そうなぐらいまで落ち込んだってあたりまで書いたんだがどうやって復活させたらいいかわからん、安易に商品が爆売れしたとか書いてもな」

 

「無理言って頼んでる立場からこういうのは何だがあんまり露骨なパクリはやめてくれよ、説得力が無くなってしまう」

「そこは大丈夫だ、こっちは文章だからな、雰囲気なんぞどうとでも変えられる、しかしどういう方向性で行くかだな・・・ふむ、そういえば陽乃殿は今海外とか言っておったな?」

 

「ああ、ただ詳しい所はなんにもわからないんだ、陽乃さんには特になにも指示も出さないしなんの拘束も制約も無い、自由にやってもらっている、そのほうがあの人は動きやすいしな、いつのまにかでかい案件決めてくるってのもあるんだがわかるのは大体終わったころだ、実際今海外で航空宇宙関連の部品の大口交渉をやってるんだが正直どうなってるのやら把握できてない」

 

「それは大丈夫なのか?つか陽乃殿も旦那がいるのでは?ご家族だって心配だろう」

 

「それが、結衣さんが以前皆を結婚させるために頑張ったのだけれど姉さんだけ相手が決まらなくて、でも姉さんに合う男なんているのかしら?それに姉さんは『好きな人と一夜を共にできたからもういいわ』と言ってたし、その人と結婚すればと言ったら『その人は私の手の届かない遠い所にいっちゃったの、だからもういいの、忘れないといけないの』って、もしかして死んでしまったのか遠くに行って消息が途絶えたのか、どっちにしろあまり深く追求できなかったわ」

 

「左様か・・・それは悪いことを聞いてしまったな・・・」

と材木座がふと比企谷の方を見ると何故か目が泳いでいて落ち着かないようだ。

何かを察した材木座は

「・・・・・スマヌがちょっとアイディアが浮かんだのだが男同士で話をしたいのでな、八幡と二人っきりにしてほしい」

そう言って女性たちを追い出す。廊下の向こうに女性たちが消えたのを確認すると

 

「さて八幡、貴殿の態度がおかしいのは察するに結婚式後の二次会が終わって皆が寝た後の話ではないか?」

「・・・よくわかったな」

「あの時、実は我は起きていた、おぬしが陽乃殿と外に行ったのも知っている、この間沙希殿との一件の際雪乃殿に言った話、あれについて我は覚えがあってな」

「・・・・・」

 

「たしかお主らが出て行ったのは午前二時ぐらいだったと思うが二人で外に出て行ってしばらくした後車が出ていく音が聞こえた、そして朝になるまで帰ってこなかったな、皆気が付かなくて当然だろう、全員雑魚寝でどこに誰が寝ているか全くわからなかったし、起きるのも遅くて10時ぐらいまで寝てたしな、起きていても二日酔いで前後不覚な者が大半だ」

「そこまで知っているとはな・・・」

「我の仕事は徹夜なんて当たり前にあるからな・・・・おぬし陽乃殿と寝たな?」

 

「・・・ああ、雪乃のことを頼むと言われた後告白された、実は好きだったと、でも俺と雪乃と結衣の関係にこれ以上誰も入る隙間なんてないのはわかっているから忘れなくてはいけないと、だから忘れる前に最後に抱いてくれと、これっきりにするからと、そう言っている時の陽乃さんの顔は今まで見たことが無かった、んで俺は結婚式したばかりなのに嫁の姉と寝るなんて最低なことをしちまった。正直次の日は雪乃とも結衣とも顔を合わせられなかった」

 

「左様か・・・そういえば陽乃殿はしきりと皆に酒を飲ませていたな、なんか皆潰れるのも早かった気がする、午前二時程度で皆が倒れるというのもおかしげな話だ、もしかしたら八幡との逢瀬の為我らは一服盛られたのかもな」

「いやまさか・・・そんな・・・」

「恐らく絶対にばれない最初で最後のチャンスだと思ったのであろう、関係者一同が全員一か所に集まって外出しても見つかる心配が無い機会なんてほとんどないからな、その後はどうだ?今まで似たようなことは?」

 

「いや全くないな、たまに家に来て飲むときはあるしふざけて絡んでくることはあるが、ちゃんと節度は保ってるな、まるでなにも無かったかのようだ」

「んでは雪乃殿に話したことは本当で、もういいのだろう・・・もしかして陽乃殿を抱いた時におぬし雪乃殿や結衣殿のことを考えていたのでは?」

「・・・もうその辺で勘弁してくれないか?」

 

「ふん、大方陽乃殿が結婚しないのはお主と寝た罪悪感からかもな、それに海外出張に行っているというのもおそらくおぬしのそばに居ずらいからではないのか?これから先お主や雪乃殿の為に色々やりすぎてしまうかもな、以前奉仕部にいた時のお主のようにな。いや既にそうかもな、会社を乗っ取り返した話もお主が提案したように話していたが、実のところ陽乃殿が提案したのではないか?お主が仲間を危険に晒すような事などするはず無いしな。失いたくなければ手綱をしっかり握っておけよ」

 

「すまん材木座・・・何でもお見通しなんだな、お前には頭が上がらん」

「毎日物書きの仕事をしているからな、無駄な洞察力だけはついたわい、さて湿っぽい話はここまでにしてだ、どうやって会社が立ち直るかなのだが、八幡はこうなったらいいなとかなんかないか?」

 

「うーん、メインでやってる航空宇宙分野は受注の波が激しくてな、某重工ですら丸一年受注が無いときもあるそうだ、しかも受注があっても少量多品種だ、標準化共通化して同じ部品を供給できるようになれば楽に一定の収益を上げることができるんだが、国際的にそうなってくれれば言うことなしだな」

 

「我も良くわからんがどういったところを見ればそういうのがわかるのだ?」

「こういうところだ」

そういうと比企谷は英文だらけのサイトを表示させる

「まるで読めぬがなんだこれ?」

「簡単に言うと技術関係ニュースサイトだ、うちは海外にも納めているからな」

「というか八幡英語読めたのか」

「必死だったからな・・・」

 

「しかしこういうのを毎日見てるのか?なんかインテリっぽいな」

「いや?たまにしか見てないな、そもそも他に目を通さなきゃならんところがたくさんあるしな、なになに?航空宇宙関係のエンジン部品について各国の技術者間で論争しているとあるな」

「・・・うーむそういう話は難しくてな、まあ我も読めぬしこれはいいのでは?いちいちおぬしを呼ぶわけにもいかぬしな」

「まあそれもそうだな」

そう言って比企谷はサイトを閉じる

 

「まあ先ほどおぬしが言った部品が規格化してしかもそれはおぬしの会社が持っている特許の製法でしかできないものだったとかどうだろう?」

「お!それいいね!特許に関しては力をいれているところでもあるからな、そういうのがあるとモチベーションが違うと思う」

「んではそんな感じで書くか、八幡、引きとめて悪かった」

 

「いや、俺も誰にも言えない話をできて少し胸のつかえが取れた感じだ、・・・なあやっぱりおまえこっちに来てくれないか?広報関係を今姫菜さんが仕切ってるんだが社報や社内ポスターがBL寄りでな、企業展なんかだとブースの裏手で本をこっそり販売しているみたいなんだよ、部下もそっち方面だからなのかなんも言わないし皆仕事の方もちゃんとまじめにやっているからあまり強く言えなくてな、誰かが止めてくれないとちょっと困る」

「・・・考えておく、留美と京華を連れてきてくれ」

 

そして材木座は比企谷の会社のサクセスストーリーを書き上げる、書き上げた物は留美、京華により校正され比企谷へ提出され社内へ展開された。

書き上がったラノベを見た者たちは一様に「こうなったらいいけど」と口では言っていたがやはりどこかでは信じているらしく次第にサービス残業をやめるようになり、オーバーワークは目に見えて減っていった。

 

材木座の方は書き上げてこれで終わりかと思ったが、比企谷たっての希望で京華の夏休み終わりまで出張も延長されることになった。


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