次の日の放課後。相談のメールの結果を由比ヶ浜へ伝えるため材木座は奉仕部の部室に来ていた。
部室には由比ヶ浜が以前雪ノ下が座っていたところに一人で座り本を読んでいた。
「あー失礼する」
ぱっと顔を上げる由比ヶ浜
「なんだ中二かぁ、なんか用?あ!またラノベでしょ!中二のラノベはもう読まないよ、あたしは今ぶんがくしょうせつっての読むのに忙しいんだからね!」
ここぞとばかりにドヤ顔になる由比ヶ浜
「もう読まないって言われてもいつも読んでくれていないであろう・・・」
材木座はやれやれといった態度を取る
「そ、そんなことないし!中二は難しい漢字沢山知ってるってあたし言ってるじゃん!」
「・・・難しい漢字がたくさんあるっていうのは感想にはならぬがな。それはそうと一体何を読んでおるのだ?」
人間失格とか読んでたらちょっと不安だなと思い表紙を見せてもらう
「なるほど、銀河鉄道の夜か、いいチョイスであるな」
「へっへーそうでしょ、ママに勧められたんだ、これなら結衣でも読めるでしょって」
あーそういうことか、材木座は納得する、つかその本は小学生でも普通に読むレベルのものだろう、思わず苦笑してしまう。
「ちょっと何笑ってんだし!あたしが本を読むのってそんなにおかしい?優美子にも笑われたし」
とだいぶご立腹のようだ、
「いやそうではないのだが」
苦笑しながら答える材木座
「ところで中二はこれ読んだことある?」
「そのぐらいは昔に読んだことあるぞ、」
「あたしまだこの話少ししか読んでないんだけど、ひょっとしてこの二人って死んでるのかな?」
由比ヶ浜が突然暗い表情になるので材木座も苦笑をやめまじめに答える
「・・・それは読んでいけばわかるであろう」
「そっか・・・もしかしてヒッキーとゆきのんも・・・」
由比ヶ浜が落ち込んでいくのが分かった為強引に話題を変える
「マテ、それはただの小説であって八幡達とは関係なかろう、それにそういうことは絶対にない、ところで由比ヶ浜殿はこれからどうされるおつもりだ?」
「わかんない・・・でもゆきのんも一年生のときは毎日ここでこうやって本を読んでいたって言ってたから、あたしもこうやって本を読んでいればさ、きっとそのうちそこの扉から「うーっす」って言いながらヒッキーが帰ってきて・・・今度はゆきのんがあたしみたいに依頼を持ってくるの、そしてきっと前の奉仕部みたいに・・・だから・・・」
由比ヶ浜は下を向いてしまう、声が震えている
「あ、いやすまなんだ、別に我はそんなつもりじゃ・・・」
事態が悪化してしまい材木座は焦って言い訳をするが由比ヶ浜は泣き出してしまう。
泣いている由比ヶ浜を見ながら今日来た目的を思い出す。
「実は由比ヶ浜殿に相談がある、落ち着いたらでいいから話を聞いて下さらぬか?」
「うん、ごめんね、中二は悪くないよ・・・」
由比ヶ浜は下を向きながらうなずく
しばらくしてようやく由比ヶ浜が落ち着いたところで材木座は話を始める
「落ち着かれたようだな、ふむ、では話を・・・」
ここまで言いかけたときに部室の扉がガラッと空き
「ひゃっはろー」
聞き覚えのある声が後ろからする、この声は雪ノ下姉の陽乃だ
「あれー?ガハマちゃん今日は一人じゃないんだー」
「ヒッキーとゆきのんから連絡なんてきてないよ、帰ってくれませんか?」
冷たくあしらおうとする由比ヶ浜だが
「んもーつれないなー」
としつこく食い下がる陽乃
あれから材木座は全く来ていなかったが案の定陽乃は来ていたようである。
あの二人にとって由比ヶ浜は大切な友人である為連絡があるだろうと思ってこうやって来るのかもしれない
「君は?たしかこの間もいたよね?」
「・・・八幡の友人です」
「あーこの間は勝手に携帯みてゴメンねー、あの時は気が立っててさー」
という陽乃は口では謝罪してるが目が全く笑ってない、何なんだろうこの人と思う材木座
「っていうかさー二人とも仲よさそうに話してたじゃん、なーにー?付き合ってんの?」
そういながら由比ヶ浜になれなれしくまとわりつく、由比ヶ浜は嫌がるように体をよじるが効果は無いようだ。
いったいこの人は何を考えているのだろうか、妹が心配なのかもしれんがそれにしては周囲に対する配慮というものが全く欠けているように見える、二人がいなくなって一番つらいのは由比ヶ浜だろう、材木座は頭の中で憤慨するが怖くて何も言えない。
「ねーねーガハマちゃんそこんとこどうなのー?」
なれなれしいとはこのことだろう、肩に手を置いていかにも親しい中ですよみたいな感じで話をするその態度は見ていて激しく不快になる、しかもこの質問は由比ヶ浜を不快にさせるだけの意味が全く無い質問だ、材木座はだんだんイラついてくる。
しかも材木座の今日の目的は雪ノ下から言われた計画を由比ヶ浜へ伝えることだが、陽乃がいてはきちんと伝えることができない。
この調子だと陽乃はずっと居座るかもしれない、平塚先生もいない今、陽乃の行動を止める人がいなくなっているからだ。
その為材木座は由比ヶ浜に説明する前に勝手に計画を実行することにした。
「中二とはそんなん「そうだ、我と由比ヶ浜殿は付き合ってる!」」
由比ヶ浜は観念したのかようやく口を開くが材木座も相当イラついてたので高らかに宣言する。
陽乃は目を丸くして言う
「はぁ?冗談のつもりだったのに、本気で?ガハマちゃんってこんなのが趣味だったんだ?」
由比ヶ浜は今の状況がつかめずオロオロしている。
「ゆ、由比ヶ浜殿が一人辛そうにしていたのでな、わ、我が色々相手しているうちに付き合うことになったのだ」
「へーだからこの間も静ちゃんと一緒にここにいたんだ。傷心の女の子に優しくして付け入るなんてね、ガハマちゃんってこんなデブが趣味だったんだね、気持ち悪い」
いいぞうまい具合に勘違いしてくれたようだ、しかしこの人超怖い
「わ、我のことは構わないが由比ヶ浜殿のことを悪く言うのはやめていただきたいでしゅ・・・」
そういうと材木座は陽乃と由比ヶ浜の間に割って入る。
陽乃は明らかに不機嫌になり材木座は気迫に押されてどんどん気持ちがしぼんでいくのがわかる
「もしかしてさー雪乃ちゃんの部屋に有った気持ちの悪い自作の小説って君が書いたの?前あった時小説書いてるみたいなこと言ってたよね?」
まさか、今回の引き金になったラノベのことだろうか?雪ノ下は自分で処分するとかいってたがまさか家に置きっぱなしにしてたのでは?だとしたらまずいかも、材木座の背筋に冷たい物が流れる、
「た、たぶん、そ、そうだと思うが」
するとだんだん陽乃の顔が恐ろしいものになっていく
「あんな気持ち悪いもの二度と雪乃ちゃんに見せないでね、漢字に無茶苦茶なルビが振ってあったり、女の子が無駄に脱いでいたり、今回の事件と関係あるかと思って我慢して最後まで読んだけど人生の時間を無駄にしたって感想しかないわ」
あーそっちの方か、つか捨てずに取っていてくれたのか、律儀なものだ、安堵する材木座
「あとさー傷心のところをちょっと優しくされたからと言って比企谷くんの友だちとはいえこんな妄想ばかりたくましい男になびくなんてガハマちゃんの比企谷くんや雪乃ちゃんに対する思いもその程度だったんだ、これって裏切りだよね」
由比ヶ浜はまた泣きそうな顔をしている
「それと君ねぇ傷心のところに付け入るなんてずいぶんと卑怯な男だよね、ま、君みたいな人はそうでもしないと彼女なんて作れないか」
陽乃は材木座を睨みつける。
「そ、その辺で勘弁してくれぬか、も、もう我々にかかわらないでいただきたいのでしゅが・・・」
材木座はなんとか声を振り絞って言った。
「もういいよ、ガハマちゃんがこんな下らない人だと思わなかった、こんな人に雪乃ちゃんが連絡するなんてとても思えないからもういいわ、仮に連絡取れてもあなたには教えないし、もう二度と話しかけないでね、もちろん君もね」
そう陽乃は宣言し部室から出て行った。
「ふー怖かった」
材木座は倒れるように椅子に座る
「中二どういうこと?説明してくれるよね?」
由比ヶ浜は困惑した表情で材木座を見る
「その前に雪ノ下の姉上が聞き耳たててたりしてないか確認してくれぬか?我は疲れてもう立てぬ」
由比ヶ浜は部室から確認の為出ていく、しばらくした後戻ってきて
「うん、もう外に出たみたい、窓から見えたよ」
「では話そう、雪ノ下殿と八幡の計画を」