話は先日の晩に戻る
相談メールを出した後、何度もやりとりを繰り返し由比ヶ浜へ自分たちが健在であること、そのうち呼び寄せるから心配しないでと伝えた場合、由比ヶ浜の態度が急変することは間違いなく、それをごまかすには由比ヶ浜自信が演技をする必要がありそれは当人とっては無理だろうという結論になった、やはり第三者の演技によってカバー出来る案が必要になった為だ。その為材木座が
「期間限定で彼氏でも作って慰められたことにすればよかろう、葉山殿あたりに全部話をすればきっと協力してくれるのでは?」
そう返事をしたとたん、圧倒的な文章量で猛烈な抗議のメールが来た、曰くあいつは信用ならないや、葉山の精神ではだれもすくわれない、そもそもなんでそんな提案をするのか、馬鹿なのか、死にたいのか等、葉山は相当あの二人から嫌われてるようだった。
「これはまたずいぶんな物の言いようだな、我も正直好かぬがここまでではないのだが」
一通り罵倒のメールが来た後しばらく他の案を考えてみるが思いつかないので風呂に入ったりして小一時間過ごしていると、着信があったようだ、相手は雪ノ下、かけなおすと比企谷が出た。
「八幡!おぬしの声を聴くのは久しぶりだ!携帯はどうしたんだ?」
『この身分で使えるわけないだろ、つかこのうざさは久しぶりだな』
「そういうな八幡!おぬしの無事な声を聴けただけで感涙ものだ!しかしおぬし本当に雪ノ下殿と、その・・・』
『そうだ、俺は雪乃と駆け落ちした、察しているかもしれんが材木座、お前のラノベを参考にさせてもらった、本当に助かったありがとう材木座』
こやつにきちんと礼を言われる日が来るとはな、しかし今はっきりと駆け落ちと言ったな、いつのまに雪ノ下殿とそんな関係になっているとは、それに名前呼びとはいろいろ想像してしまうではないか
「・・・いきなり礼を言われてもな、我とヌシらの仲であろう、しかし何故今回のようなことをしたのだ?」
『本当は色々込み入っているんだが簡単に言うと雪乃が無理やり嫁がされそうになったからだ』
「なんと!それで駆け落ちか、さすが八幡!我にできないことをやってのける、そこにしびれる憧れるぅー」
『茶化すなよ、俺も雪乃も本当は逃げ出さず正面から戦おうとしたんだがな、どうしても無理だった。だからお互い運命を受け入れるか、もしくは由比ヶ浜には悪いが本当に一緒にこの世から消えるしかないと思っていた』
「・・・そんな考えが出てくるなんて貴様らしくもないな、諦めるかすべてを捧げるかという意味であるなら貴様らしいとも言えるが」
『おれも雪乃も相当追い詰められていたんでな、そしたらそこにお前のラノベだ。逃走経路から逃走後の生活手段の確保まで書かれていた。状況が似ているけどいつものお前の荒唐無稽な設定だと思っていたから読むのが本当にきつかった、こんなことありえないってな、だからあの時ついお前につらく当たってしまった。すまなかった。』
「・・・それはいいがあんな我の浅知恵でよくも行動する気になれたな」
『それは俺と雪乃で後でいろいろ付け加えたからな、移動もフェリーを使わせてもらった、でもどっからばれるかわからないからお前には悪いがあらかじめデータを消去させてもらったわけだ』
「確かに八幡達の足取りはまるでつかめていないようだ、先生達はもうあきらめているようだし、全く行方に検討がつかないから雪ノ下殿の姉上と母上がわざわざ学校まで来たようだし、しかも雪ノ下殿の姉上から我の携帯を奪われて中身を見られたからな、あの時ラノベのデータが残っていたらと思うとぞっとする」
『そうだったのか・・・すまん、お前には沢山迷惑をかけてしまっているようだ』
「何を言う!おぬしと我は魂でつながっている言わば盟友というべきものではないか!それにお主の役に立てて我は逆にうれしくあるぞ!」
『そっか、そういってくれると助かる、それでだ、迷惑ついでに由比ヶ浜のことなんだが』
「うむ、なにかいい案でもあるのか?我にはとんと思いつかん」
『雪乃と話し合ったんだが、もうこれしか案が考えれらないんだ、材木座、本当にすまないと思っているし本当はこんなこと言いたくないんだが』
「なんだもったいぶって、早く話せ」
『由比ヶ浜と付き合ってくれないか?』
「は?」
『詳しく言うとだ、卒業までの期間限定で付き合いをするってことだ、いや、その間お前と本物の仲になってしまうんだったらそれはそれでいいんだ』
「なんで?我が?」
『事情を知ってるのがお前しかいないからだ、雪乃と話し合った結果これしかなかった、由比ヶ浜は修学旅行の件もあってたぶん拒絶するかもしれないしお前にとっても嫌な思いをさせてしまうことになるかもしれない、本当にすまないと思っている、もしおまえが嫌というなら別な手段をまた考える』
「なんのことやらわからぬが、我は別にかまわんよ?」
『本当か?』
「本当も何もおぬしら公認であのような女子と期間限定で嘘とはいえ付き合えるなんて我からしたら夢のような申し出だ、もっとも由比ヶ浜殿がどう答えるかだが」
『そういってくれると助かる、本当にすまない』
「なんかいつものお主らしくないな、頼むときはいつもスパッと頼んでるであろう、大体偽物のカップルなんぞそれこそラノベにありがちなシチュエーションだし、ラノベ好きの我からすれば飛びつきたくなる設定なのだが」
『いや、それはあの、俺の黒歴史が関係していてだな・・・』
「??まあヌシの黒歴史なぞはこの際どうでもよい、まあ任せられよ。しかし八幡よ、ヌシと雪ノ下殿がこういう仲になっているとはしらなんだ」
『雪乃から嫁がされそうになっているという話を聞いたあたりに告白したからつい最近の話だ。俺も雪乃ももっと早くからお互いの気持ちに正直になっていればよかった。ずっと気が付かないふりをしていたからな、由比ヶ浜のこともそうだ』
「・・・本当に我のラノベのような結末を目指すのか?」
『ああ、ここまできちまったんだ、やるしかねぇ、由比ヶ浜もそれを望むのならな』
「・・・望むに決まっておるだろう、貴殿らがいなくなって由比ヶ浜殿がどれだけ辛い思いをしているか、我は目の当たりにしているのだぞ」
『すまん、では由比ヶ浜のことをくれぐれも頼む』
『そういうわけだから』
返事をしようとしたら突然電話の声が変わる、雪ノ下に変わったようだ
『あなた、由比ヶ浜さんになにか卑猥なことやいかがわしいことをしてごらんなさい、ちょうど新しい工作機械を買うことが来たのよ?1/1000ミリ単位であなたの余分な肉をそぎ落として理想的な体型に削ってあげるから覚悟しなさい、それとあとで計画の詳細をメールするからしっかり読んでね?』
この女こえー、やはりこれは血筋なのだと実感する
「ひゃ、ひゃい、わかりましゅた」
なぜこのような女子を八幡は気に入ったのだろうか。
それからまた比企谷に変わる
『雪乃が失礼なこと言ってすまんな材木座、あんなこと言ってるがお前には足を向けて眠れないって言って感謝してるんだぜ?』
「別に気にしてはおらぬ、しかし我に足を向けたら北枕だからじゃないのか?」
『ふ、そんな理由じゃないよ、本当に感謝してるんだって、昨日の夜だって『あなたとこうしてここにいることができるなんて彼のおかげね、感謝してもしきれないわ、いずれ正式にお礼をしないと』なんて言ってこう顔を俺の胸に埋めてきてなぁ・・・イデデデちょっと雪乃なに」
突然会話が途切れる
「なんだ?どうした八幡?」
『ん、んんん、材木座くん、今の会話忘れてくれるかしら?』
雪ノ下の声に変わる、焦っているのか微妙に声が上ずっている
「・・・ツンデレ乙とでも言えばいいのか?というか今更恥ずかしがられてもな、こんな状況なのだ、どうせヌシと八幡は毎晩愛し合ってるとかそんなのだろう、そんなこと聞かされても今更驚かぬわ」
さっきは怖かったが雪ノ下の焦りまくった声に緊張感が無くなってしまう材木座
『ちょ!あなた!』
「ハー、やれやれだぜ、もういいから八幡に代わってくれぬか?」
またまた比企谷に代わってもらう
『いやすまんな、これでも雪乃は結構変わったんだぜ?学校にいる時みたいな固い感じは結構無くなって工場に来る客にきちんと応対しているしな・・・というか雪乃、今後どうなるかわからんのだ、今のうちにちゃんとお礼は言っておくべきだろう、ちょっと待てよ、今スピーカーにするからな』
『・・・そうね、先程はごめんなさい、材木座くん、ありがとう、本当はこんな電話ではなくきちんと顔を合わせて言いたいし、こんな言葉だけでは足りないのだけれど』
「いやまさか貴女そのようなこと言われるとはな、我はラノベを書いただけだ」
『本当よ、それにそのラノベに救われたわけだし、姉にも誰にも私たちのこと言わなかったあなたをもっと信頼すべきだったわね、本当にごめんなさい』
「いや、あのその」
しおらしく発言する雪ノ下相手にすることなんて全くなかったため戸惑ってしまう
『俺からも頼む許してくれ、雪乃の話にもあったように工作機械を買ったんだがこれが一千万以上もする奴でな、いろんな助成金の申請書類やらプレゼンをようやく通せて購入できたんだよ。だからちょっと浮かれぎみでな』
「さっきもいったであろう、お主らと我の仲だ許すもなにも無いであろう」
『ありがとう、あと由比ヶ浜さんのことお願いね、さっきはああいったけどあなたの今までのラノベに出てくる女の子は、その・・・毎度性的なアピールが多かったものだから・・・』
「あれはああ言うのがトレンドだったからであって、いくらなんでも虚構と現実の区別ぐらいはつくわい、酷いことなぞ絶対しないと誓うぞ」
『それなら安心ね・・・由比ヶ浜さんは、毎日メールをくれるのよ?今日はこんなことがあったとか、元気にしてるかって、こちらは返信したいのだけれど返信してしまうと姉さんや母に気が付かれた時由比ヶ浜さんはきっとひどい目に会わされてしまうでしょう、だからずっと返信できなくて・・・でもちゃんとメールは読んでいるわ・・・だから本当に・・・由比ヶ浜さんのこと・・・うっううっ』
『雪乃・・・すまん材木座ちょっと外す、待ってくれ』
電話の向こうでは泣いている雪ノ下を比企谷が慰めてるようだった。
雪ノ下と由比ヶ浜がとても仲が良かったのは材木座でも知っている、そんな相手からのメールを返信できないというのは相当つらいことだろう
電話口に戻った比企谷と今度は近況や他愛のない話をお互い伝える、どうも材木座の書いたラノベの筋書き通りに事が進んでいるようだ。
工場の方は受注がどんどん舞い込んできてるし、開発の為の助成金の申請も通っている為、叔父さんと協力して毎晩遅くまで工場で働いており、メーカーの人も遠くからわざわざ来てくれて協力してくれている為見通しは大分明るいとのことだった。
『なあ材木座、落ち着いたらお前もこっちに来ないか?もともとここはお前の叔父さんの工場だろう』
「ふん、我が工業系に向いていると思うか?我はラノベ作家かそれに準ずる仕事に就きたいのでな」
『そうか、そうだよな、やっぱりお前はお前だな』
またしばらく会話を続けているとインターホンの音が聞こえる
「誰か来たようだぞ?八幡」
『ん?ああたぶん平塚さんじゃないかな?同じアパートにいるからな、ちょくちょく一緒に晩御飯食べてるんだよ』
電話口からはどうやら雪ノ下が応対していてるような声がするがどうも様子がおかしい
『八幡!平塚さんとっても酔ってるみたい、私では抑えられないわ!』
『またか・・・ちょっと平塚さん!』
『おう!比企谷?相変わらず雪ノ下とはラブラブかぁ~この野郎!邪魔してやるぞ!ここで寝るぞ!』
『ちょ!今材木座と電話中なんですから!静かにしてください』
『あ?材木座?ちょっと貸せ!』
とたんに平塚の声の調子が変わる
『おい!材木座!貴様よくも騙してくれたな!』
電話越しとはいえ激しい怒気を感じ声が上ずる
「ひゃ!ひゃひ!」
『貴様は無関係だと思っていたのに!思いっきり関係してるではないか!なにがラーメン店を立ち上げる予定の若夫婦だ!いるのは雪ノ下と雪ノ下をかどわかしたアホウではないか!』
『ちょっと平塚さん!落ち着いて下さい!』
『落ち着いてられるか!何故お前は私にもっと早く相談せんのだ!比企谷!雪ノ下!貴様らもだ!クソ!千葉にいる間に貴様らにシェルブリッドバーストをかましておくべきだった・・・貴様らのせいで・・・・・・・・・・Zzzzz』
『・・・あー寝ちゃったか』
「は、八幡、平塚先生にもラノベのこと話したのか?つか全部話したのか?」
『まあな、ラノベのことも話したさ、でも平塚さんもおまえに感謝してると思うぜ?何しろ今工場に来て開発に協力してくれているメーカーの人と結構いい感じになってるみたいだからな』
「なんと!それはめでたいではないか!」
『でも自分のことより俺たちのことをまだ気にかけてくれてるからな、この人はどこまで行っても俺たちの先生だよ』
「八幡、頑張りすぎて体を壊して皆を悲しませるようなことはせぬようにな」
『それがだな、雪乃に由比ヶ浜も呼ぶんだから広い所に引っ越す資金を作らないと!って毎日尻を叩かれてるんだよ・・・さっき話した一千万の機械も、使いこなすには覚えることも値段相応にたくさんあるから喜んでばかりでは居られなくてさ・・・それに工場に猫が何匹か住み着いているからもうずっと雪乃の奴元気で手におえなくて・・・イデデデ!雪乃!本当のことだろ?』
「ハハハハ、この幸せ者め!爆発しろ!!!」
『平塚さんも雪乃を不幸にしたら今度はゴッドフィンガーで顔面破壊するとか言ってて強制社畜状態だよ。しかも毎日ラーメンばかり食ってるし、この間は地図に印つけてオリジナルラーメンマップだなんていってウキウキで事務所に張り出しててさ、そのうちこの人高血圧で死ぬんじゃないのか?なんて人を送り込んでくれたんだ・・・』
「ふん!貴様のせいで職を失ったのだ。責任とるべきであろう!」
それから深夜になっても比企谷と材木座は会話を続けるのだった。