俺のラノベは間違っている’   作:もよぶ

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第九話

数日後予想通り由比ヶ浜が失踪したという連絡が卒業したばかりの高校から入った。傍から見れば付き合ってたわけなので連絡が来るのは当然だろう、由比ヶ浜の家には探さないでください、いつかきっと帰ってくるという内容の置手紙が置いてあったそうだ。

 

「いえ、卒業後やることができたので別れようという話になってそれっきりです」

 

そう材木座は言って電話を切った。警察や何か感づいた雪ノ下家からの追求があるかと思ったが結局そういうのも無く日々が過ぎて行った。

 

数日後、材木座家の夕食時義輝の父がまたまた情報を持ってきた。

「義輝、例の叔父さんの工場にまた新しい人が入ったそうだ」

「ほう、またであるか、してどのような方なのだ?」

知らないふりをして興味深そうに聞く

 

「それが今時の女子高生みたいな感じの明るい娘でな、やっぱり先に入ってた人たちの知り合いだったみたいだ」

「どんどん仲間が増えていくな」

「しかもなんか今回のは来るなり男に抱き着いたりしてなんか大変だったらしい」

「ほほう、いわゆる修羅場というやつか」

「それがそうはならなくてな、元ご令嬢の方とも泣きながら抱き合っていて友人でもあったようだ」

「なるほど、いわゆる恋敵というやつだな?」

「それがどうもそんな雰囲気じゃ無いっぽくてな、住むのも3人でとか言い始めて叔父さんも絶句したそうだよ」

「いわゆるハーレムというやつか」

「結局アパートの空いてた別の部屋に住まわせているんだそうだがこれからどうなることやら、なんかお前の好きなアニメみたいな話になってきたな」

 

結局広い所には引っ越せなかったか八幡の奴と材木座は思う。

「アニメは結局殆どが大団円になるから安心して見れるんだが、現実は違うからな、安心して見てられんな」

「それもそうだな、現実は苦い物だ、若い連中に幸があるといいね、お前にもな」

なにか聞き覚えのあるセリフをどこかで聞いたなと思い、材木座は夕食を食うことに専念した。

 

その晩雪ノ下からメールが届く、由比ヶ浜が無事についてようやく落ち着いたということと由比ヶ浜に協力してくれたことについての感謝の言葉が並べられていた。

「しかし八幡のやつこれから毎晩二人を相手にするのか?クソ!それなんてエロゲだよ!・・・でもまあ八幡も両手に花とかいって浮かれてる暇なんぞないだろうしな、大変なのはこれからであろう、どのみち我に出来るのはここまでだ」

大学が始まるまでにどんな様子か一度行ってみようかと思ってはいたがなんやかんやとやることが結構あり結局行くことは無かった。

 

4月になり、材木座は大学に入学する、一人暮らしを始めたことにより、父から工場の顛末を聞く機会が無くなり、またサークル活動やバイトを始めた為私生活は格段に忙しくなる、たまにアドレス欄の『氷の女王』へメールを送ろうと思った時もあったがそういう時に限ってなんと書いていいか思い付かず、またメールを送らない事が続いたため余計に連絡が取りにくくなり、だんだん比企谷達のことを忘れて行った。

 

その後就職も順調に行き都内にあるそこそこの規模の出版会社に入社することができた為、材木座はまたもや忙しい毎日を過ごすことになる。

入社して数年後、二十代後半の年齢になった材木座は営業に出た先で偶然戸塚と出会い飲みに行く約束をする。

 

その晩

「一緒に食事なんて久しぶりだね、昼は良くわからなかったけど少し痩せた?」

「毎日忙しくての、しかし戸塚殿はおかわり無いようでなによりですぞ」

「あはは、その口ぶりまだ続いてるんだ」

「あーいやこれは懐かしくてつい、な」

 

それからひとしきり高校時代の思い出話に花を咲かせる

やはり一番の話題はアレだった。

 

「それにしても八幡と雪ノ下さんが一緒にいなくなるなんてね・・・」

一瞬ビクッとなる、そういえば自分はその関係者だったことを思い出す。

「材木座くんは奉仕部によく行ってたよね、本当はなんか知ってたんじゃない?」

「我はただ自作のラノベの批評をもらいに行ってたのでよくは知らぬぞ」

「そっかーそれもそうだね」

 

さらっと流されホッとする、ふと居酒屋のテレビを見ると成り上がり特集とかいうのをやっていた

一代で会社を巨大な物にしたやり手の企業の特集らしい。

ちょうど山形のとある工場の話をやっていた、小さな町工場から今や国を代表する国際プロジェクトにも関係することになったとのことで最新設備が整った工場の内容を映しているところだった。

 

ちょうど工場長がインタビューをうけていた、女性ということで余計に注目があるようだが、どう見ても見覚えがある顔だ。

「戸塚殿、あの女性だれだったかな?見覚えがあるのだが?」

「材木座くん!あれって平塚先生だよ!ほら!八幡達がいなくなった後学校をやめた先生だよ!」

「あ!、んじゃあまさかここが?」

たしか叔父の工場は昔お邪魔した時は繁盛していた時でも数人程度で回してた小汚い小さな工場だったはずだ、だが今見るとどう見ても別物だ、白い綺麗な壁、そこかしこに産業用ロボットが配置され100人規模はありそうな感じである。、

 

カメラは工場からオフィスに切り替わる、事務員がたくさんいてPCに向かっている

「あれってもしかして由比ヶ浜さんじゃない?」

戸塚がまた叫ぶ、そこには特徴的なお団子ヘアーが映っていた。

 

カメラが切り替わる、今度は開発部だ、CADやら何やらが並んでるところにも見覚えのある青みがかったロングヘアーの女性が映る

「あれはもしかして川崎さん?」

これはどういうことだ?本当にあのラノベみたくみんな呼び寄せたのか?というかテレビなんかに出たら高校時代に奔走したことが無意味になってしまうではないか!

 

材木座は焦り高校から一度も連絡していなかった雪ノ下へ電話をする。

数コールののち相手が出る。

『もしもし、どちら様ですか?』

「知らないふりはやめていただこうか、積もる話もあるかもしれんが、今テレビを見ているあれはどいうことだ、とうとうとち狂ったか?」

『久しぶりね、ふふふ、これは記念よ』

「記念?どういうことだ」

 

『会社の名前が売れすぎて実家にばれてしまったの、それで半年ほど前に実家から両親がやってきて一悶着あったのよ』

「大丈夫だったのか?」

『こちらは国のプライドをかけた国際プロジェクトに参加してるのよ?もう地方の建設会社や議員がとやかく言っても意味のないレベルまでなったということ、警備員を呼んで早々にお引き取り願ったわ、あとその場で八幡と結婚したと宣言もしたわ、このテレビに出たのはもう雪ノ下という苗字に縛られることは無くなった記念ということね、入籍はもう済ませてあるのよ?そして八幡と私と結衣さんはあなたのラノベ通りの関係、式はまだなのだけれど』

「そうであったか」

『あなたには本当に感謝しているわ、どうにならなくなった状態に道を示してくれたんですもの、今だから言えるのだけれど、あのままだったら私と八幡は心中していたかもしれないわね』

「なんか八幡も似たようなことを言っていた気がするが、おヌシが言うと昼ドラみたいな生々しい感じになるからやめてくれぬか?それに今までも綱渡りだったのではないのか?」

 

『ふふふ、それがあなたのラノベの話のように順調に進んでたので八幡も驚いていたわよ、ところであなたの後ろからやたらと名前を叫んでる声が聞こえるのだけど誰といるのかしら?』

振り向くと戸塚が酒を飲みながらアレは生徒会長だった一色さん?あ!あれは戸部君だ!

とか叫んでる。

「戸塚殿だ、今日営業先で偶然会ってな」

『あらそう、ちょっと待ってね』

携帯の向こう側でごそごそと音がしたかと思うと

 

『戸塚か?戸塚ー!!』

「八幡、相変わらずだな」

『なんだ材木座か、久しぶりだな、それより戸塚に変われ!今すぐに!』

「はいはい、ちょっとまたれよ」

戸塚に携帯を渡す

 

「八幡!久しぶり!元気だった?!」

もう大喜びである、しばらく話をしていたがだんだんまじめな顔つきになり電話を渡してくる。

『材木座か?今戸塚をスカウトした、悪いがお前の営業先の担当者が変わってしまうな』

「それは一向に構わぬが、ヌシはすいぶんと元気そうだな」

『まあな、積もる話は山のようにあるんだが、ここ数年忙しくてまったく落ち着かなくてな・・・連絡できなくてすまん、もうすぐゆっくり話す機会をつくる、もうちょっと待ってくれ』

「あいわかった、連絡しなかったのはお互い様だ、我のことは気にするな、その日を楽しみにしておるぞ」

材木座はそういって電話切る

 

「八幡の方は色々順調で何よりだ、戸塚殿は八幡の所へいかれるのか?」

「うん、八幡の仕事を手伝うことにするよ、しかも今度社内でテニスサークルも立ち上げるとか言ってて社会人大会も目指してるからぜひ来てくれだって」

「それは素晴らしいではないか、良かったな」

「じゃあ僕もう行くね、さっそく退職届書かなきゃ」

 

戸塚が出て行った頃ちょうどテレビには比企谷とその妻の雪ノ下が映ってる、比企谷の目はほとんど腐ってはおらず、雪ノ下はますます美人になっているようだった。

二人ともなにやら苦労話をしていたようだが、無難なことしか言っていないようだった。

「ふん、我の書いたラノベに影響されて駆け落ちしたあげく周囲に多大なるご迷惑をおかけして申し訳ございませんでした、しかも俺の嫁は隣にいる美人の他にもう一人美人の嫁がいますとか言えよ八幡の奴、まったくどんなエロゲだ・・・」

 

すでにぬるくなった戸塚の分のビールを煽りつぶやく

 

「ふ、また一人か、つか戸塚殿の分も我が払うの?あれ?」

まあ餞別がわりだなと自分に言い聞かせ空っぽになった財布を握りしめアパートに帰った。

 

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