戦姫絶唱シンフォギア Concerto 〜歌と詩で紡ぐ物語〜   作:鯛で海老を釣る

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今回は未来さん視点でのお話です。




少女とロボと少女と装者

◇◇◇

 

 

私立リディアン音楽院高等科1回生並びに特異災害対策機動部2課の外部協力者ーー小日向 未来は、親友である立花 響と7月上旬に、流れ星を見る約束をしたのだが、時間が出来たので、災害やらで立ち入り禁止になってないか、下見を兼ねて流れ星がよく見える小丘まで足を運んでいた。

 

 

「響ってば、『未来ー!今日も一緒に寄り道して帰ろーっ!』ーーなんて言ってたのに……お仕事だからしょうがないのは分かるけど……」

 

 

響が特異災害対策機動部2課から与えられている端末が鳴った時は、『もしかして』って思ったけど、案の定だった。響は『急な呼び出し』って言ってたけど、あの感じは只事じゃない感じだった。また危ない事してるのかなぁ…あんまり心配させないで欲しい。

 

 

「ーーいけない。響を信じて帰りを待つって決めたんだから」

 

 

首を左右に軽く振って自身に言い聞かせ、歩みを進める。暫く歩いて行くと目の前に開けた場所が見えてきた。何回か訪れているから見覚えがある風景に私は満足を覚え踵を返そうとした……のだけれど、二つの人影ーーひとつは人影というには大きくゴテゴテしてるものが視界の先に入った。「好奇心は猫をも殺す」とは言うけれど、私は好奇心に負けて近付いてみた。

 

 

「ーーえ?」

 

 

二つの影の正体を確認して私は呆気にとられてしまった。一人は私と同じくらいの年齢に見える女の子。端正な顔立ちで、美少女と形容してもおかしくない容姿で、同性としてはちょっと羨ましくも思う。

 

 

問題なのは、もうひとつの影。一言で言うなら正体は大きな二足歩行のロボット。自然の中に佇んでいるから異物感が凄い。女の子に何か語りかけるような身振りをしているけど……よく見ると女の子の方はオロオロしてるし、何か困り事なのかも。

 

 

こんな時、私の親友ならどうするのかな、そこまで考えて私は一人で小さく笑う。私は意を決して話しかけることにした。

 

 

「あ、あのー……?」

 

 

女の子とロボットが私の方に向き直る。

あれ…ちょっと緊張してきちゃった。

 

 

「えと…あのぉ、こんにちは…?」

 

 

「え?あ、はい。こんにちはー」

 

 

女の子の方が若干戸惑いながらも挨拶を返してくれる。ロボットの方は頭部に付いている、人で言うなら「目」にあたるパーツなのかな。それで私を見据えているような気がした。

 

 

「急に声を掛けてごめんなさい。こんな場所で女の子とロボットが一緒にいるってことと、あなたが困っている様に見えたから、ちょっと気になっちゃいまして…」

 

 

「ふふっ、優しい人なんですね。困ってるいる様に見えただけで、見ず知らずの私たちにわざわざ声を掛けてくれるなんて。でも、丁度良かったぁ。確かに困ってるとこだったの。ねっ、アーシェス!」

 

 

柔和な笑みを浮かべ、好意的に接してくれる女の子。そしてロボットの方へと顔を向け、嬉しそうに話しかける。

 

 

『そうだね。僕たちは現状右も左も分からない状態だからね』

 

 

あれ?この場にはいない第三者の声が聞こえてきたけれど

この場にいるのって私と女の子一人とロボットだから……

 

 

「ーーもしかして、今喋ったのって……」

 

 

『僕だ。ごめんね、驚かしちゃったかな』

 

 

ロボットが喋る。そのこと自体は現代の技術力を考えれば特段不思議なことではないのかもしれない。でも、テレパシーみたいな手段で話すと話すとは思わなかった。友人の口癖を借りるならば、「アニメみたい」と例えるのかな

 

 

「い、いえ。驚きはしましたが…高度な人工知能なんですね」

 

 

頭の中に直接言葉が響くような感覚だった。ニュースとか結構見てるつもりだったけど、こんな高度な技術が開発されてたなんて知らなかった。

 

 

「ううん、人工知能じゃないよ。アーシェスは実際に存在する人間と繋がっているの。何て言うのかなぁ…こことは別の世界から動かしているんだよ」

 

 

「……別の世界?それってどういうーー」

 

 

『ソレ』が現れたのは私が疑問を口にしたの同時だった。

 

私の視界の先、約20メートル先の木々の中から半透明な人型の化け物が、様子を窺うかのようにゆっくりと近付いてくるのが見えた。人間では到底敵わない理不尽そのもの。『ソレ』が一歩、一歩と踏み出す度に、頭の中で警鐘が五月蝿く鳴り響く。心臓をギュッと締め付けられるような感覚に思わず、自身を抱き締めるような姿勢を取り、後退りしてしまう。

 

私の顔色が変わっていくのが分かったのか、女の子は不思議そうにしながらも後ろに振り向き、『ソレ』を目撃する。

 

 

「あれはーーなに?何だか不思議な感じだけど…」

 

 

『ソレ』を見ても女の子は悲鳴ひとつどころか、怯む様子も逃げ出す素ぶりすら見せない。寧ろ物珍しいものでも見つけた子供のように、ジロジロと眺めている。

 

『ソレ』ーーー世間では『ノイズ』と呼ばれる災害。

人類共通の脅威とされる認定特異災害。

ノイズを目の当たりにして動じる事なくいられるなんてどういうことだろう?

ーーーまさかノイズを知らない…?そんなことがあるの?

 

 

「ーーっ、何してるんですか!?早く逃げないとっ!」

 

 

私はノイズが先程より距離を縮めている事に、緊張から解かれたかのように、急いで来た道を戻ろうと踵を返しながら女の子に呼び掛ける。

私の警告を聞いていたロボットが女の子の手を取り、私の方へと手を引きながら向かってくる。女の子は困惑気味だったけど、私の切迫した声色を分かってくれたのか、大人しくロボットの誘導に従って此方へ来てくれる。

 

 

「えっ?えっ?ちょっと待って、突然どうしたの?あれは危ない生き物だったりするの?」

 

 

「あれはノイズですよっ!?触れたものを炭素の塊に換える存在ですっ!テレビで報道とかされてるじゃないですか!」

 

 

「し、知らないですっ。それに炭素って……」

 

 

『イオン。危ないから僕の後ろに』

 

 

「そんな事してる場合じゃーーー」

 

 

ロボットが女の子を庇うように前に出る。それを見て抗議を入れようとしたけど、いつの間にかロボットの両手に拳銃が握られている事に気が付き口を噤む。拳銃と呼ぶには大きめのサイズな感じもするけど、大きい機械の手に収まっている分には違和感は然程ない。ロボットは二丁拳銃をノイズに向け構え、今にも引き金を引きそうな様子を見せる。だけど、ノイズ相手にはーーー

 

 

「ま、待って!ノイズに攻撃はーーー」

 

 

『ダブル』

 

 

ロボットが短く言葉を発すると、拳銃から弾が放たれる。

連射音が山中に響き渡り、着弾した箇所に風穴を開けた。

 

ーーーノイズの身体を通過した後ろに位置する一本の木の幹に。

 

 

『弾がすり抜けたっ!?』

 

 

「…ノイズに物理的な攻撃は一切通用しません。だから、対処法はノイズが一定時間で自壊するまで逃げることしかないんです…」

 

 

ロボットが驚愕の声を上げながら後退する。私は諭すように二人に現状で力を持たない私達が出来る抵抗は逃げる事だけだと説明する。そうする間にもノイズは、こちらが抵抗を示したからか不気味にも軽快に走り出す。

 

 

「だ、だったら私の詩魔法でっ!これなら、もしかしたらもしかするかも!」

 

 

『イオンっ!』

 

 

「正直、分かんない。だけど、何だが出来る気がするの!時間が無いから強力なのは紡げないけど、お願い!届いてっ!」

 

 

ノイズが接近するなか、女の子が動いた。

私とロボットの前に立つ。私は、何をする気なのかは知らないけど、みすみす死ににいくような真似をさせる訳にはいかないと、手を掴もうとした時ーーー

 

 

Queli->(クェリパ)EX[bmb]->(エクボムパ)EXeC->{DW};(エクゼクパドゥ)

 

 

聞いたことのない言葉が女の子の口から発せられる。日本語でも英語でもない。唱え終わると女の子の掌にサッカーボール程の白く輝く光球が現れる。それは、まるでノイズに狙いを付けたかのように、正確に勢いよく飛んでいく。光球はノイズにぶつかった瞬間、すり抜けたりなどせず、小さな爆発を起こした。

 

爆風と爆煙の後には、上半身が吹き飛ばされたノイズが立っている。半身を吹き飛ばされたことにより、形状を保てなくなったのか、残った下半身が炭素化を始め、最後には黒い塵となり霧散した。

 

私は命の危機が無くなったことの安堵から膝から地面にゆっくりと座り込む。それでも、私はさっき目の前で起きた光景が信じられない。だって、女の子はシンフォギアを纏わずにノイズを倒したのだから。

 

 

「ノイズに…攻撃が届いた…?」

 

 

「ーーーよ、よかったぁ〜!一時はどうなる事かと思ったよ…」

 

 

『ありがとう、イオン。だけど、危険を顧みずにいきなり前に飛び込んで来るのは駄目だよ』

 

 

「アーシェスがそれを言うの?」

 

 

「………」

 

 

この場所に来てからの情報量が多く混乱してきた。取り敢えず今回の事は特異災害対策機動部2課の皆さんに伝えた方がいいよね。だって、シンフォギア以外でノイズに対抗する事が出来る者が目の前にいるのだから。これからどうしようかな…

 

未来が今後の事に、頭を捻らせているところ

ーーー突如として上空にヘリコプターのローター音が鳴り渡る。

何事かと未来は空を見上げる。そこには、ヘリコプターの扉から身を乗り出し、此方を見下ろす人影が見える。襟足が広がったボブカットが印象的なシルエット。あれはーー

 

 

「未来ーーーーッ!!」

 

 

ヘリコプターのローター音に負けないくらいの大きな声で、手を大きく振りながら呼び掛けてくる私の親友が其処にはいた。

 

 

 




色々と説明省いてるところがありますが、説明回で詳細を明かす予定です。

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