ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生with軍師の娘 作:雑賀衆見習い
~苗木視点~
自分たちの手で、全員で脱出する。その方針について、マークさんは話し始めた。
「まず、この学園の外からの救出ですが、あまり期待できないでしょう。理由は、おそらく警察という治安を守る部隊ですが、機能不全に陥っていると考えられます」
警察が機能不全に?そんなことが有り得るの?
「根拠としては…舞園さんや江ノ島さんがここにいること、でしょうか」
「私(あたし)?」
「ええ。舞園さんや江ノ島さんは、この国では超が付くほどの有名人ですよね?加えて人前に立つことを仕事としている。ですよね?」
「うん。コンサートや、テレビに出ることも多いし、それは間違ってないよ」
「…あたしも、雑誌の取材とかあるし、ランウェイなんかは特にそうかな」
言われてみれば、舞園さんや江ノ島さんはトップアイドルとカリスマモデル。当然連絡がつかなくなれば、大きな騒ぎになる。
「ええ、そうなんです。そんな二人が監禁状態になれば、自ずと大きなニュースになるはずです。警察とやらも動くはずです。加えてこの学園は、トウキョウという首都のど真ん中にあるそうですね。到着に時間がかかるということもないでしょう。ですが、警察らしき組織からの音沙汰もない」
「でも、単にまだ踏み込めてないだけじゃないの?」
「最初はそれも考えました。ですが、石丸さん曰く、この国ではパトカーのサイレン?やめかぼん?でしたっけ」
「それ、きっとメガホンだと思う」
「そうそう、それです。そういったもので語りかけてくるとかがあると聞きました。誰かを監禁し、立てこもっている今の状況なら尚更です。そんなの、一度でも聞いた人はいますか?」
全員が首を横に振る。僕も聞いたことがない。
「ですよね。つまり私たちの救出は、現在行われていない。と考えるのが自然です」
「そんなわけねぇだろ!希望ヶ峰学園で立てこもりだぞ!葉隠じゃねぇけど、レクでもない限り………」
「桑田さんも分かってくれたみたいですね。そうです、本来私たちの救出に向けて行動するはずの組織が行動の素振りすら見せていない。これは、その組織の怠慢か、機能不全が考えられます。皆さんの信用度から言って、怠慢は考えづらいので、機能不全に陥っていると考えました」
マークさんの主張はすごく突飛で、それでもある程度筋が通っている。でも…
「マークさん、警察が機能不全に陥った理由って、分かる?」
「それはさすがに。外を見ようにも鉄板で覆われていますし」
「…だとしたら、これから私たちはどうすれば………」
警察からの救助は望めないため、自力で脱出しなければいけない。でも、散々脱出のためのルート探しは行ったけど、そんなルートは発見できなかった。
「これから私たちが考えなければならないのは、私たちを閉じ込め、コロシアイを強要する存在が誰なのかを突き止めることです」
「つまり、黒幕を突き止めるってことですか?」
「ええ、そして黒幕を倒し、脱出のためのアイテムを手に入れることです」
言っていることは理解できる。僕たちを閉じ込めた相手なら、脱出用の鍵とかを持っていても不思議じゃない。
「でも、どうやって?僕らは今、ここから出られないんだ。相手が外にいるなら、手も足も出ないよ」
「………これは憶測ですが、黒幕も、この学園内にいる可能性が高いです。警察、というのが機能していない以上、学園の外の秩序が崩壊している可能性もあります」
「ちょっと待ってください!それって私たちの中に黒幕が居るってことですか!?」
マークさんの憶測に舞園さんが声を上げる。でも、確かにそれは考えづらい。だって、僕らの中にいるってことは、黒幕自身もコロシアイに巻き込まれる恐れがある。
「別に私たちの中にいるとは言っていません。というか、その可能性は低いでしょう。ここには鉄の網などでいけない場所が多くあります。おそらく黒幕は、その向こう側に潜んでいるかと…」
なるほど。それなら納得できる。事実、2階へつながる階段にはシャッターで閉ざされていた。その向こう側にいるなら、コロシアイに巻き込まれることは無いだろう。
「でもさぁ、それって無理じゃない?シャッターの向こう側にいるなら、それこそアタシらじゃ手の出しようが無いし…」
「ええ、江ノ島さんの言う通り、今のままでは私たちも動けません。ですから、黒幕に開けさせるんです」
「いや、どうやって開けさせんだよ」
「………コロシアイの阻止、です」
コロシアイの、阻止?
「モノクマ及び黒幕は、私たちを殺したいわけではないと思います」
「マークさん、江ノ島さんは殺されかけたんだよ!あれは殺意が無かったっていうわけ!?」
「落ち着いてください。あれは明確に殺意があったと思っています。ですが、本当に最初から私たちを殺す気なら、とっくにそうしてると思いませんか?モノクマは殺害する方法は多数そろえてあると言ったんですよ?」
………ラインナップは多岐にわたる。確かにモノクマもそう言っていた。でも、だとしたらどうしてコロシアイの強要なんかを?
「だとしたら、どうして私たちを閉じ込めて、コロシアイなんてさせているんでしょうか…」
「黒幕は、私たちを殺したいのではなく、コロシアイを観たいのではないかと」
「…だとしたら、趣味悪すぎだろソイツ…」
「ですが、皆さんで協力すれば、今行動可能なスペースなら、コロシアイの阻止は十分可能です。私たちでコロシアイを阻止し続ければ…」
「コロシアイが見れない黒幕は、スペースを開放する。ということですか?」
「その通りです。いくら“動機”を用意しても、コロシアイを阻止されてしまえば、あるいはコロシアイの犯人がすぐにばれてしまっては黒幕にとっても望まない展開です」
「だから、スペースを開放せざるを得なくなる。か」
「これを繰り返し、黒幕のいる居住スペースまで解放させる。そうすれば、私たちの手で捕まえることも可能です。…納得してもらえましたか?」
…正直、かなり気の遠くなるような作戦だと思う。でも、だれもコロシアイに巻き込まれることなく、ここから脱出できる可能性があるなら…
「江ノ島さん、どうでしょう?私たちの作戦に協力してもらえませんか?」
「………ゴメン、ちょっと考えさせて」
そう言って、江ノ島さんは保健室から出て行った。
「マークさん、僕はその作戦で行こうと思う。誰も殺されずに出られるなら、僕はその可能性に賭けてみたい」
「私も賛成です。桑田君をコロそうとしたときも、本当はすごく怖かったんです。仲間のためだ、って自分に言い聞かせても、震えが止まらなくて…あんな思いをしなくていいなら、私もそのほうがいいです」
「いやコロされそうになった俺が一番怖かったわ!でも、だからと言って正直今は舞園ちゃんを責める気になれねぇんだよな…まぁマークは命の恩人みたいなところあるし、俺もマークの作戦に協力するぜ!」
「皆さん賛成ですね!よかったです。じゃあこれから、頑張っていきましょー!えいえいおー!……いたたた」
「いや無理しないでよマークさん」
「あはははは、すみません」
マークさんが笑うのにつられてみんなも笑ってしまった。でも、このコロシアイ生活になってから、初めて心から笑った気がした。
「うぷぷぷぷ、コロシアイの阻止だって?面白いねぇ。………彼らの言う通りにするのは癪だけど、そうしないとコロシアイが見れそうもないのは事実か。………私様の計画を邪魔するとはいい度胸ですわね!………その笑顔が、絶望に染まる瞬間を楽しみに待っているとしましょう」
いかがだったでしょうか。
これにてイキキル編終了です。
次話についても今書き進めていますので、少々お待ち下さい。
高山流水さん、誤字報告ありがとうございます<(_ _)>