ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生with軍師の娘 作:雑賀衆見習い
週刊少年ゼツボウマガジン①
~苗木視点~
新しい世界の開放。
モノクマが言うには、本来は学級裁判後に開放するはずだったが、一向にコロシアイが行われないので、先にスペースを広げてみようというものだった。
保健室でマークさん含むみんなで決意を新たにした矢先に、マークさんの言う通りにスペースが解放された。
正直、昨日の今日だけに黒幕の何かしらの意図が何なのかと勘ぐってしまう。
ともかく、解放されたスペースを含め、もう一度校内の探索が行われることとなった。
「…ム?先ほどからマークくんの姿が見えないようだが?」
「あの小娘なら、モノクマが消えたと同時に出て行ったぞ」
電子手帳で確認した結果、2階にはプールと図書室があった。僕はまず図書室に向かうことにした。
図書室には、十神君、霧切さん、山田君、腐川さん、マークさんが居た。
山田君と腐川さんによるラノベVS小説の大論争を尻目に先ほどから読書に夢中になっているマークさん。
「あ、苗木さん!ここの図書館すごいですね!見たことも読んだこともない本が大量にあります!片っ端から読んでもどれくらいかかるでしょう…特にこの魏・呉・蜀の三国時代や日本と呼ばれる国の戦国時代という時代に関する小説には、時折戦闘に関する詳細な記述があってとても勉強になります!苗木さんも…」
「あー、うん、後で読むよ。それより僕は、ここの探索を優先したいかなって…」
「はっ、それはそうでした。では読書をいったん中断して、探索に戻ります!」
そう言うと、本を閉じて図書館の探索を始めた。
この後、霧切さんや十神君と共に希望ヶ峰学園が「閉鎖」されたという内容が記された手紙を発見した。って…
「希望ヶ峰学園が閉鎖!?」
「しかも、このホコリからして、つい最近というわけでもなさそうね…」
でも、少し前に希望ヶ峰学園に来たときは、そんな印象なかったけど…
「しかも、この手紙にある深刻な問題って一体………」
「苗木さん!苗木さん!正体不明の物体を発見しました!」
マークさんはそう言いながら、両手で抱きかかえるようにして少し古いタイプのノートパソコンを持ってきた。
「…少し型落ちしただけのパソコンね。正体不明というものでもないわ」
「霧切さん、パソコンって何ですか?」
「………え?」
…そう言えば、生徒手帳に関しても全然扱えてなかったなぁ。DVDを見るために視聴覚室に行く間、生徒手帳の操作方法について説明したっけ。スマホどころか携帯電話すら知らないマークさんに使い方を教えるのは苦労した。
マークさんって、会話の内容から現代機器に疎いのは分かるけど、携帯もパソコンも知らないってどういうことなの?
「…苗木君、説明しといてもらえる?」
「えっ!?僕?」
………この後、結局マークさんへのパソコンの説明に時間がかかってしまい、説明が終わるころには報告会の時間になっていた。
食堂での報告会では、図書館のほかにプールと、その更衣室にトレーニング器具が併設されていることが朝日奈さんから報告された。
一階を再度探索した石丸君から、倉庫と大浴場に入れるようになったことが分かった。
しかし、今回も脱出の手がかりとなる情報は無く、そのまま解散となった。
翌日、新しい校則が追加された。内容は「電子生徒手帳への他人への貸与禁止」というものだ。
確か朝日奈さんが昨日の報告会で、更衣室へ入るには生徒手帳をかざす必要があったって言ってたっけ。それで異性の更衣室に入れないようにするためだろう。
食堂に入ると、石丸君と十神君を除く全員がすでに来ていた。みんなの話だと、遅刻魔の十神君を石丸君が呼びに行ったらしく、それを全員で待っている状態だという。
そんな中、セレスさんが口を開いた。
「待つのはよろしいのですが、一つ問題があります」
「問題?」
「山田君、紅茶を入れてくださる?」
「な、何故僕が?」
「喉がカラカラですの。早くしてくださる?」
セレスさんの命令には逆らえなかったらしく、しぶしぶ厨房へと入っていった。
しばらくして、トレイを片手に山田君が戻ってきた。
そしてセレスさんが紅茶を一口紅茶に含むと、突然カップを壁に向かって投げつけた!
「えええええ!?」
かなり長々とした彼女の主張によると、紅茶はロイヤルミルクティーしか認めていないらしい。
「いや、紅茶だけでロイヤルミルクティーだというのは、先に言って…」
「いいから早く持ってこい、このブタがぁぁぁぁ!!!!」
「ひぃぃぃぃ!」
豹変したセレスさんの気迫に押され、慌てて再度厨房に駆け込む山田君。やっぱり、セレスさんは一筋縄ではいかない人みたいだ。
「…あれ?そういえばマークさんは?」
「む、先程までここに座っていたはずだが……」
そういえば、さっきまで居たはずのマークさんが居なくなっている。もしかしてセレスさんの豹変に怯えて逃げた………無いな。想像できない。
「皆さん、お待たせしました!」
「マーク殿、助かりましたぞ。あんまり待たせるとまたセレス殿の内に潜む狂気が現れるところでした」
たくさんのティーカップを乗せたトレイを両手にマークさんが厨房から出てきた。
「あ、もしかしてみんなの分も?」
「ええ、どうせなら皆さんと一緒に、と思いまして」
「気が利くじゃない。どこかのオタクとは違うわね」
「因果律の流れに逆らうことは許されないのですよ根暗女」
バチバチとした雰囲気を出す腐川さんと山田君をよそに、マークさんはみんなに紅茶を配っている。
とは言っても、さっきのセレスさんを見ている限り気が気じゃない。またカップを投げつけたりしないだろうか…
セレスさんは紅茶を一口含み………それを静かに置いた。
「香りも味も申し分ありません。なかなかの腕前をお持ちですわね」
「ふっふーん、ブレディさん直伝のロイヤルミルクティーは伊達ではありません!」
エッヘンといった感じで胸を張るマークさん。ブレディさん?マークさんの知り合いかな?
とりあえず、セレスさんが満足したようなので一安心だ。と思っていたら…
「みんな、妙なことになった!」
慌てた様子の石丸君が駆け込んできた。
「あ、石丸さん。ロイヤルミルクティーどうぞ!」
「あぁ、ありがたくいただこう。って、いや、それよりもだ…」
「あ、もしかしてお嫌いでした?すみません、別の飲み物を」
「………少し話をきいてもらえないだろうか!」
彼の話によると、何度インターホンを押しても十神君の部屋から反応が無いそうだ。
最悪の事態を想定し、全員で手分けして捜索することになった。
生徒名簿.1
苗木 誠
超高校級の「幸運」
取り立ててずば抜けた才能を持たない、普通の高校生。今回、抽選の結果希望ヶ峰学園への入学を許された。平和主義な常識人で、仲間意識が強いが物腰は低く少々頼りない。しかし、下地から滲み出る素直さ、謙虚さから他の超高校級と衝突することなく会話が出来る数少ない存在となっている。
クラスメイトの中で一番、前向きな性格。
誕生日は2月5日