ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生with軍師の娘 作:雑賀衆見習い
~苗木視点~
「マークさん、いきなりどうしたの?」
「そうですよ、冗談でも言っていいことと悪いことがありますよ!」
人を殺してまで外に出たいかという、現状この学園からの唯一の脱出手段を実行するのかというマークからの問いに驚ろかされる。
今の状況でよくそんなこと聞けるよね…
僕らの動揺を知ってか知らずか、マークは平然と言葉を続ける。
「だって、十神さんも言ってましたよね。この中にすでに誰かを殺そうとしている奴がいるかもしれないって。お二人がそう考えていたら怖いなーって思ったものですから。で、どうなんですか実際?」
まるで彼氏との近況を深堀りする女友達のように躊躇のない問いかけ。しかし内容は信頼関係にヒビを入れかねないギリギリな質問…
「…マークさん。僕は、誰も殺さずにここから脱出したいと考えているよ」
「そうです!それに私と苗木君は誓ったんです!必ずここから生きて出ようって!」
当然、殺しても出るなど言えない。というかそもそも言えるはずがないのだ。
「そうですかー。いやーよかったです。聞きたいことは以上なので、私もう寝ますね。おやすみなさい!」
そう言いつつ、セレスさんの部屋のインターホンを押した。どうやら今回は彼女の部屋らしい。
「まったく、変なこと言いだすからビックリしました。ね、苗木君?」
「う、うん、そうだね。僕らももう寝ようか」
「そうですね。では苗木君、おやすみなさい」
「おやすみなさい、舞園さん」
二人はそれぞれの個室へと入っていった。
それにしても、どうしてマークさんはあんなことを聞いたんだろう…
マークの最後の質問が気になっていたが、結論が出ることはなかった。
翌日も校内の探索が行われたが、脱出の手がかりとなりそうなものはなく、いたずらに時間だけが過ぎていき、定例報告会の時間となった。
「んあああああ!どんだけ同じ場所探しても、なんも手がかり無ぇよ!」
「…本当に、もう帰れないのかな…助けも来ないのかな…」
苛立ちを露にする野球選手。同じ場所に3日も軟禁状態では無理もないよね。不二咲さんに至っては今にも泣きだしそうだ。
「大丈夫だよ不二咲さん。だってさ、もうすぐ助けは来るんだし」
「はぁ!?助け?」
「マジで?」
朝日奈さんの一言に僕を含め全員が反応する。確かに、もしも救援が来るのならこの学園から脱出できるかもしれない。彼女はその根拠をこう言った。
「だって、あたしたちがここに閉じ込められてからもう3日も経つんだよ。警察だって動いてるに決まってるよ」
彼女の言い分も一理ある。何せ、希望ヶ峰学園は大都会に位置している。そんな場所で監禁事件など起きれば、警察が気付かないはずがないからだ。
「アッハッハッハ!警察だって?警察なんかあてにしてるの?」
突如現れたモノクマがそれを嘲笑する。
「というかさ、そんなに出たいんだったら、こk「ハイ!!」おぅわ!」
モノクマが凄みをきかせながら何か言いかけたんだけど、マークさんが突然モノクマの真横から勢いよく手を挙げ大声を上げる。モノクマはそれに驚き椅子から転げ落ちてしまう。
「もう!マークさん!いきなり出てきたら心臓に悪いでしょ!あービックリした」
「あははーすいません」
数秒前に突然出てきたモノクマにだけは言われたくない。この時ほど発言がブーメランな瞬間はそうそうないと思う。
「あ、そうだ。ついでだから緊急で作ったマークさんの生徒手帳渡しとくね」
「あ、ありがとうございます。」
「で?何の用?」
「皆さんの会話の中で分からないことがあったんです。今後の皆さんの会話についていくためにも分からないままではいけないと思いました」
「うむ、それは良い心がけだ。分からないこととは何かね?」
マークの言葉に石丸が同意する。分からないことを質問するのは優等生らしいといえばそうなのだろう。
「警察ってなんですか?」
「・・・」
…内容にさえ目をつむれば、の話だが。
全員が【何言ってんのこの人】といった目でマークを見る。あのモノクマでさえ同じ目をしている。ネタなのか本気なのか分からない…
「………それは後で誰かから教えてもらってよ。とにかく僕が言いたいのは、一向にコロシアイが起きないから視聴覚室にあるものを用意させていただきました。じゃ~ね~」
モノクマが用意したのはDVDだった。ご丁寧に誰のDVDか分かるように名前付きだ。ただ、全員が気になったのは…
「どうして私だけ円盤がないんですか!仲間はずれは嫌です!」
「だからマークさんは希望ヶ峰学園の生徒じゃなかったからそんなもの用意してないの!」
マークさんのDVDだけが用意されていないこと。部屋といいDVDといい、マークさんだけはぶられているから、腹は立つよね。
というか、円盤って…DVDももしかして知らない?まさかね…
苗木や石丸などがなだめること数分、落ち着いたマークだったが…
「苗木さん苗木さん!円盤を机が食べちゃいましたよ!大丈夫なんですか!?おなか壊さないんですか!?」
ちょっと黙っていてほしい。その後もうるさいマークさんを放ってヘッドフォンを使いDVDの映像に意識を集中する。
相手にされなくなったマークさんはいじけて部屋から出ていった。
若干悪いと思ったけど、それ以上にDVDが気になった。
僕のDVDに記録されていた映像は、自宅にいる家族から自分に充てたメッセージと…
その自宅の無残な姿だった。周りも似たような反応を示していることから、おそらく自分の大事な人に何かあったことを示す映像だろう。舞園さんに至ってはショックのあまり視聴覚室を飛び出してしまった。
慌ててそれを追いかけて、なんとか廊下で腕をつかむが…
「嫌っ!離して!」
「みんなで協力すれば、きっとここから脱出できるよ!」
「そんなの嘘よ!」
「もしかしたら、その前に助けがくるかも…」
「助けなんてこないじゃない!」
先ほどの映像がよほどショックだったのだろう。普段の笑顔を絶やさない彼女からは想像できないほど取り乱していた。
生半可な言葉ではダメだ。そう思った僕は自分の思いを正直に叩きつける。
「…僕がここから君を出してみせる。どんな手を使っても絶対にだ!」
「!」
舞園さんの動きが止まる。説得成功、かな?
「…約束、して下さい。苗木君だけは、何があっても、ずっと、私の、味方でいて…」
それだけ言うと、彼女は僕に縋り付いて泣き出した。その後、誰も何も言葉を発さないまま、自然解散となった。
その夜、間もなく夜時間となるとき、僕の部屋にチャイム音が響いた。
扉を開けると…
「苗木君…」
自身の両肩を抱き寄せ、怯えた様子の舞園さんが居た。
とりあえず彼女を招き入れ、事情を聴くことにする。
「部屋で横になっていたら、ドアが急にガタガタと鳴りだして…誰かを疑っているわけじゃないけど…怖くて…」
コロシアイが容認されているこの空間では、それはとてつもない恐怖だろう。そう思った僕は…
「だったら、今晩は僕の部屋に泊まろう。そうしたら怖くないでしょ?校則には、誰がどの部屋で寝るかは書かれていないし」
うん、我ながら考えた。
「でも、男女が同じ部屋で寝るというのは…」
「・・・ハッ!」
…しまった
その後、彼女からの提案により、僕と舞園さんの部屋を交換するという結果となった。夜時間となり、舞園の部屋に入った。
「舞園さんは、僕が支えないと…」
決意を新たに、ベッドに横になる苗木。しかし、女子の部屋ということもあり、なかなか寝付けないでいた。そんな時…
ピンポーン
苗木が寝ている舞園の部屋にチャイム音が鳴り響いた。