ダンガンロンパ 希望の学園と絶望の高校生with軍師の娘   作:雑賀衆見習い

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イキキル⑧

~苗木視点~

昨日は本当に長い一日だった。モノクマによる動機のDVDだったり、舞園さんのことだったり、マークさんのことだったりと、一日に起きた出来事にしてはボリューム満点な日だった。

モノクマによる朝のアナウンスで目を覚ました僕は、朝食を食べるため食堂へ向かう。

すでに石丸君のような、時間を守る人たちは食堂に来ていた。

 

「おはよう苗木君!少し眠たそうだが大丈夫か?」

「おはよう石丸君。昨日はなかなか寝付けなくてね」

 

昨日起きた出来事をそのまま話すのも気が引けたので、そこは伏せておくことにした。

 

「あー苗木もそうだったんだ。私も眠れなくてさ、さくらちゃんに無理言って私の部屋に泊まってもらったんだよね」

 

僕が眠れなかったのは別の理由だけど、まぁ気持ちは分かる。あのDVDは人の不安をあおるには十分過ぎた。

 

「不健全ではないか!男女が一つの部屋で眠るなど!」

「我は女だが…?」

「し、失礼した………」

 

そんな会話をしている間に、他の人たちも続々と食堂に集まってくる。

 

「おはようございます。苗木君」

「苗木さ~ん。一緒に食べましょうよ~」

 

憑き物が落ちたような晴れやかな笑顔の舞園さんと、いつもと変わらないマークさんが声を掛けてきた。特に断る理由もないので、そのまま一緒にご飯を食べる。

………超高校級の野球選手から呪いの言葉らしき呪文が聞こえたような気がしたが、きっと気のせいだ。うん、気のせいだ。

全員が朝食を食べ終えた後、モノクマからアナウンスが流された。

 

「え~、オマエラ、三十分後に体育館に集合してください。以上」

 

いつものモノクマらしからぬテンション低めなアナウンスに違和感を覚えながらも、とりあえず体育館に全員で向かう。

体育館に到着すると、一番最初の朝礼のように壇上にモノクマが飛び出してきた。

 

「はぁ~、オマエラには心底ガッカリです。せっかくコロシアイに相応しい環境を整えて動機まで用意したってのに、結局なぁんにも起きなくて残念です…」

 

そう言いながら、何故かそこにあった小石をコツンと蹴るモノクマ。昨日のことでコロシアイが起きなかったのがそんなに残念だったのか…

というか、どうしてそこまでコロシアイにこだわるのか…

 

「そんな簡単に誰かをコロそうとするわけないじゃん!」

「DVDのことは確かに気になるけど…だからって…」

「つうかよ、このレクレーションいつまで続くわけだべ?そろそろ疲れてきたべ」

 

朝日奈さんや不二咲さんがそれぞれモノクマに反論する。葉隠くんは昨日のことをしらないから、まだこれがレクレーションだと思っているみたいだ。

でも、本当にレクレーションなら舞園さんがあんなこと起こす前に当然止めるだろうし、何よりあんなDVDを用意する理由が分からない。レクレーションやドッキリにしては度が過ぎる。

 

「あ、そうだ。モノクマさん、質問いいですか?」

「またマークさん?今度は何?」

 

こんな状況でもマイペースというか、空気が読めないというか、唐突に質問を出してくるマークさん。

 

「昨日貰った生徒手帳に書かれていた校則の6番目に書かれていることに関して詳しく説明をお願いします」

 

校則の6番。僕らに配られている電子生徒手帳には、この希望ヶ峰学園で生活するにあたって守るべき校則が存在する。6番の内容は以下の通りだ。

 

仲間の誰かを殺したクロは〝卒業〟となりますが、自分がクロだと他の生徒に知られてはいけません。

 

つまりこれは、コロシアイのルールといえるものだ。

 

「ん~?んん~~?どうしてそんなこと気にするの?マークさんはそれ聞いてどうするのかな~?」

 

まるでコロシアイを実行するためにルール確認を行うような行為に、みんなの視線が突き刺さる。(舞園さんと桑田君は心配そうな目をしていた)しかし、マークさんは気にも留めていないのか、そのまま言葉をつづけた。

 

「だって、他の校則は規定や禁止行為が明確なのに対して、この校則だけ曖昧なんですよ。分からないことも多くて、気になります」

 

「………ふ~ん。ま、いいでしょう。校則6の補足説明をします。校則6にもある通り、ただ殺すだけじゃ駄目なの。ほかの生徒に知られないように殺さなければならないの!で、その条件がクリアできているかどうかを査定するためのシステムとして…

殺人が起きた一定時間後に、『学級裁判』を開くこととします!」

 

学級裁判、初めて聞くフレーズだ…

モノクマの説明を要約すると、学級裁判では生徒全員で誰が犯人かを議論する。

その結果、犯人を見破った場合は犯人だけが“おしおき”

犯人を見破ることが出来なかった場合は、犯人が卒業してここを出て、残った生徒全員に“おしおき”が行われる。

 

「あの…さっきから連呼している、“おしおき”とは…」

「あぁ、簡単に言えば処刑だね」

 

処刑の二文字に程度の差はあれど全員が動揺する。不二咲さんに至ってはもう泣きそうだ。

 

「ラインナップは多岐にわたるからね。“おしおき”の時間を楽しみに待ってるんだよ」

「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!!」

 

説明し、出ていこうとするモノクマに江ノ島さんが突っかかる。

 

「あんたの言ってることめちゃくちゃじゃない!あたしはそんなのに絶対参加しないから!!」

 

分からなくもない。いきなりコロシアイに巻き込まれて、その上命がけの裁判なんて、本来なら絶対にやりたくない。

 

「学級裁判に参加しないだって!?なんという巨悪!だけどなぁ…僕は悪に屈する気はない。最後まで戦うのがモノクマ流よ…どうしても通りたければ、ボクを倒してからにしろー!」

 

そう言ってトテトテと突進してきたモノクマは、いとも簡単に江ノ島さんに踏んづけられてしまう。

 

「はい、これで満足?」

「そっちこそ。校則5を覚えてる?」

 

校則5は、えっと確か…

 

「学園長ことモノクマへの暴力を禁じます。…江ノ島危ない!」

「さすが風紀委員。召喚魔法を発動する!助けて!グングニルの槍!」

 

そうモノクマが言うと、天井や床から無数の槍が江ノ島さんめがけて飛び出してきた。これから起こる出来事が直感的に分かった僕は思わず目をつむる。

 

「ぐぁあぁ………ううぐうぐうう………」

 

だけど、聞こえてきた悶絶の声は、江ノ島のものではなかった。恐る恐る目を開けると…

 

「マークさん!?」

 

無傷の江ノ島さん、体育館の床に突き刺さった槍、そして………

 

 

 

 

脇腹に槍が一本刺さっているマークさんだった。

それを見た瞬間僕と舞園さんはマークさんに駆け寄った。

 

「大丈夫!?しっかりして!」

「は?いや?なんでだべ?あんなの何本も刺さったら死んじまうべ?だってこれ、ただのレクじゃ…」

 

目の前で誰かがコロされようとした光景に全員が言葉を失う。何人かは腰を抜かして座り込んでいた。

江ノ島さんも殺されそうになった現実に腰を抜かしている。さっきから何かうわごともつぶやいている。

 

「葉隠さん、残念ですが、モノクマさんは本気でみなさんに殺し合いをさせようとしています」

「いいね!よく分かっているじゃない。まぁ今回はマークさんが大怪我を負ったわけだし、コロシアイ生活とは関係ないところで死人はあんまり出したくないからこれで終わりにするけど、今後校則を破る生徒には、グレートな“おしおき”を発動させちゃうからね!」

 

モノクマが爪を立てて威嚇しながらそう宣言する。

 

「マークさんの怪我もあるし、保健室を開放しておくよ。じゃあ皆さん、これからも張り切ってコロシアイ共同生活を続けてくださいね~」

 

モノクマはそう言うと今度こそ帰っていった。みんなの目が疑心暗鬼になっているのが気掛かりだけど、先にマークさんを保健室へ運ぶことを優先させる。

 

「舞園さん……すみませんが…江ノ島さんを保健室に連れて行ってあげてください…彼女も心配です…」

「わ、分かりました!」

 

 

 

 

 

 

「いつつつ………苗木さん、助かりました」

 

保健室についてからマークさんの行動は早かった。自分の大怪我に対してテキパキと応急処置を済ませていく。その手つきは何処か手慣れた感じがした。

マークさんが応急処置を終えたころに舞園さんと桑田君が江ノ島さんを抱えて入ってきた。

 

「マーク!江ノ島連れてきたぞ!」

「なかなか動こうとしないので、桑田君に手伝ってもらったんです」

 

抱えられた江ノ島さんは生気の感じられない虚ろな目をしていた。殺されそうになった現実に頭が追い付いていないのかな…

 

「とりあえず、江ノ島さんはベッドに寝かせておいてください。それにしても、桑田さんが居るのは好都合ですね」

「好都合?」

「いい機会ですので、これからの方針をここで話し合っちゃいましょう」

 

いや、そんな大怪我してるのになんでいつもと変わらない感じでしゃべれるの…

 

「つってもよ…何度同じ場所探しても、脱出の手がかりなんてねぇと思うけど…」

「私も同感です。このまま大人しく警察を待ったほうが………」

 

僕も二人の意見に賛成だ。全員で手分けして探したから、もう捜索されていない場所なんてほとんどない。

 

「マークさんも、その方向でいいかい?」

「ちっちっち、甘いですよ!苗木さん!」

 

………短い付き合いだけど分かる。マークさんはこの後、とんでもないこと言い出す。

 

「今後は、『自分たちの手で、全員で脱出する』です」

「わ、私たちでですか!?ちょっと無理があるんじゃ…」

「そうだよマーク!どこにも脱出できる場所なんかねぇだろ!」

「これにはちゃんとした理由があります。少し長い考察になりますけど、聞いてもらっていいですか?」

 

やっぱり。でも、マークさんはちょっと抜けてるところがあるけど、訳もなくこういうことを言い出すとも思えない。

 

「分かった。話して、マークさん。二人とも、一度聞いてみようよ」

「ありがとうございます。江ノ島さんも、聞いてもらえませんか?」

 

江ノ島さんも、落ち着いたのか、ベッドに腰掛ける形で座り、頷いた。

マークさんは一呼吸置くと、今回の方針の根拠を話し始めた。

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