BLEACH〜空座町の死神代行少女と多重世界〜   作:桂ヒナギク

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第35話:康太、旅立つ

「浦原さん!?」

「どうやら、康太くんの因果の鎖が切れてしまったようですね。でも、大丈夫ですよ!」

「なにが大丈夫なんだよ!?」

 私が浦原を蹴り倒そうとすると、すんでのところで(かわ)された。

「康太くんにもわずかながらにあるでんすよ」

「何が?」

「死神の力がね」

「え?」

 突然のことに、私は動揺した。

「康太くん」

 と、浦原が康太に近づく。

「生き返りたいですよねえ?」

「うん。でも、死んだ人間は生き返らないんでしょ?」

「それが、君の場合は特別でね。黒崎さんとこの息子さんにやったことを、君にもやってもらおうと思ってね」

「そうすれば、生き返れるの?」

「いや、正確には死神になる、かな」

「死神? 僕が?」

「はい。ということで、こちらへ」

 一同は空座町の地下空間へと案内された。

「はあ!? なにこの広い空間!? 浦原商店の地下にこんなものがあるなんて!」

 私は地下空間を見て驚いていたが、石田はそうでもなかった。

「久しぶりだな、ここ。尸魂界(ソウル・ソサエティ)へ行ったとき以来だ」

「石田、尸魂界に? どうやって?」

「ああ、浦原さんの霊子(れいし)変換装置を使ってね。それがあれば、死神じゃなくても尸魂界へ行けるんだ」

「そうなんだ」

「さて、それじゃあ……」

 うるるという女の子が現れた。

 うるるが突然と康太に襲いかかった。

「うわ!」

 康太はとっさに躱した。

「はい、合格」

「何の試験だったの?」

「霊力テストですよん」

 そう言って、浦原が杖で地面をつつくと、康太の足元に深い穴ができて落下していった。

「七十二時間以内にそこから死神になって這い上がってきて下さい。それを過ぎると、虚になりますので、その時はお姉さんの手で葬られて下さいね」

「は!? 私はしないわよ!」

 タイムリミットは三日。それまでに康太は死神になれるのだろうか。もしなれなかったら……。

 康太が、壁をよじ登ろうとするが、しかし、滑落(かつらく)してしまう。

「お姉ちゃん、助けて」

 私は飛び降りたい気持ちでいっぱいだった。しかし、ここを降りて康太を助けようものなら、彼が死神になるという浦原の計画が頓挫(とんざ)してしまう。

「康太、頑張って死神になるのよ!」

「無茶言わないでよ。第一、僕は死神へのなり方すら知らないんだよ?」

「浦原さん、普通の魂魄が死神になるにはどうすればいいの?」

「尸魂界で死神の学校に入校すればいいんす」

「じゃあそうすればいいんじゃない?」

「ですが、そうすると現世にいたころの記憶は全て消えてしまうんすよ」

「え……?」

「だから、無謀な賭けに出たのですよ」

「うわああああ!」

 康太が穴の底で悲鳴をあげた。

「康太!?」

「鎖が! 胸の鎖が短く!?」

「それは自ら侵食します! 侵食しきる前に死神になって下さいね!」

「浦原さん、やっぱり尸魂界に!」

「いいんすか?」

「死神の学校に行かせて、現世に来た時に浦原さんの技術で記憶を元に戻す手段の方がいいかなって」

「できなくはないですが……」

 浦原が考え込んだ。そして。

「わかりました。聡美さん、康太くんを救出して下さい」

 私は穴の底に飛び降りた。

「お姉ちゃん!」

 康太が私に抱きつく。

「康太……」

 私は康太を抱えて穴を飛び出した。

 浦原が康太を連れて地下空間から出て行く。

 店の奥に康太を招き入れた浦原が、康太の記憶を機材を使ってバックアップを取った。

「では、康太くん尸魂界(むこう)で死神の学校へ行って下さい」

「そうすれば、生き返れるの?」

「元の肉体には戻れませんが、義骸を着てこちらで活動することができます。私みたいにね」

 浦原さん、義骸だったのか。

「それじゃあ、少しの間……」

 私は溢れ出そうな涙を必死に堪え、斬魄刀の柄を康太の額にあてがう。

 康太は光に包まれ、尸魂界へと旅立っていった。

 


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