BLEACH〜空座町の死神代行少女と多重世界〜   作:桂ヒナギク

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第06話:異界

 白皇学院。

 時計塔の上空に、上下が反転した街が浮かんでいる。

 生徒たちは何事かと、時計塔を見上げている。

「封印が解かれました」

 と、鷺ノ宮 伊澄。

「あれは何を封印してたの?」

 私は鷺ノ宮に訊いた。

「異界よ。あそこから沢山の魔物たちがやってきたことがあって、それで封印していたの」

「鷺ノ宮さんが封印を?」

「私と、他の霊媒師たちと一緒にね」

 いずれにせよ放っておけない。

 私はカイを飲み込み、死神化した。

「あんなの根元から断てば」

 異界に向かって飛び上がる。

 魔物たちが異界から飛び出してくる。

「うわりゃ!」

 迫り来る魔物どもを蹴散らし、敵陣に乗り込む。

 異界に突入した瞬間、引力の向きが変わる。

「うわ!」

 私は地面に向かって落ちていく。

 体勢を整え、着地する。

 私は敵の根城を霊圧で辿った。

「ここか……」

 お城のような建物の前で立ち止まる。

 扉が開き、歓迎されるかのごとく、中に入る。

 玉座にやってくると、椅子に座る魔物の長が言った。

「ようこそ、我が城へ。私の城に何用か?」

「城もろともこの世界を破壊しに来た」

「ほう。侵略者か」

「侵略者はそっちだろ」

「貴様、何者だ? 見た所は人間のようだが、その格好は?」

「死神代行、北神 聡美。よろしく!」

「死神だと?」

 魔物の長が立ち上がる。

「我を刈るつもりか? ならんぞ!」

 魔物の長が頭上から刀を取り出す。

 二人同時に前進し、剣を交える。

 互いにぶつかりあった刃が金属音を掻き立てる。

 めきめきと斬魄刀が悲鳴をあげる。

 折れる!

 私は飛び退いた。

「あんたのその剣……」

斬魔刀(ざんまとう)のことか? これはこの魔界に伝わる伝説の秘宝でな、あらゆるものを切り裂く剣。貴様のただの剣では適うまい」

「ただの剣? これは斬魄刀……ただの刀じゃないわ」

「ほう」

「この刀はね、霊体なら斬ることができるのよ」

「霊体を斬る?」

「あなたは!?」

 私は斬撃波を飛ばした。

 衝撃で魔物の長が後退する。

 ポタポタ、と血が滴れる。

「む……」

 魔物の長は自分の腹部を見た。

「お、おのれえ!」

 魔物の長が高速接近する。

「ぐわ!」

 体当たりされて後方に吹っ飛び、壁に激突する私。

「がっ!」

 衝撃で意識が朦朧とする。

「月牙……天衝……!」

 その声とともに、どこからか斬撃波が飛来し、魔物の長が吹っ飛んだ。

「大丈夫か? 北神」

「黒崎くん!」

「おめえの霊圧が消えたと思って来たら、なんなんだ、ここは?」

「ここは魔界らしいわ」

「魔界?」

「うん。魔物たちが現世に侵攻を始めてね。根本を潰せば、勢力落ちるかなって思って、あいつと」

 私は魔物の長を差した。

「ていうか、誰が助けてなんて言った?」

「素直に礼ぐらい言ったらどうだ?」

「うるさい!」

 私は仮面の軍勢(ヴァイザード)化して、立ち上がった魔物の長に接近する。

「やああああ……!」

 渾身の一撃が、魔物の長に大きな傷をつけた。

「がはっ!」

 吐血する魔物の長。

「き、貴様! 一度ならず二度までも!」

 私は無言を回答に、瞬歩で背後に回り、魔物の長の首を切り落とした。

「な、なんだ……と……?」

 動きを止め、倒れる魔物の長の体。

 ごとりと音を立てて落ちる魔物の長の首。

 ゴゴゴゴゴ……!

 辺りが揺れ始めた。

「崩れるぞ!」

 私と黒崎は城を脱出すると、杉並の時計塔の前に戻った。

「お帰りなさい、死神さん」

 と、鷺ノ宮が出迎える。

 上空の異界が消滅していく。

「魔物の長を倒したのね?」

「うん」

「これでもう、魔界は現れないはず……」

 と、鷺ノ宮は言う。

「で、そちらの殿方は?」

「黒崎だ」

「黒崎様ですか」

「死神代行だ」

「死神って沢山(たくさん)いるのですか?」

「まあな。現世には少数しかいないが、尸魂界ってところには沢山いる」

「ソウル・ソサエティ……?」

「あの世のことだ。死んだ人間は皆そこへ行くんだ」

「そうなんですね」

「それじゃ、俺は行くぜ」

 黒崎はそう言うと、飛び立っていった。

 


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