処女作ですので大変痛々しい表記とかが含まれていると思いますが生暖かい目で見守ってくださいー
折れた左足を庇いながら、それでも出せる限りの速度で慣れ親しんだ森を駆ける。応急措置の包帯は既に鮮血で染まり、最早傷口から血が零れるのを防ぐので精一杯だった。左足だけじゃない。背中には矢尻がいくつも刺さり、かつ皮膚が焼け爛れている。
俺は――風詠 雹(かざみ ひょう)は知っていた。何故自分が終われているか。命を狙われているか。竦み上がりそうな心を平静に戻すために親父の形見の短刀を片手に握り、敵の奇襲に備える。手は一瞬背中の日本刀に向かったが、その長さ故にこういう場所では意味がないのを察して短刀に戻る。そうだ。まだ動いてくれる。一縷の希望が目前に光を送る。けれど理性でそれを打ち消した。そしてまた俺は進む。道に生える草木や小石が靴に刺さる。それでも俺は進まなければならないのだ。
親父が死んで、うちの流派も影で見え隠れしていた権力争いが浮き彫りになった。親父の一番弟子の玄さんと、親父の幼馴染みの龍彦さんが誰を頭領にするかで揉めていたのだ。親父の遺言通りに俺を頭領にするべきだという主張の玄さんと、流派の中で一番強い俺が――龍彦さんが頭領になるべきだという龍彦さん。正直俺は龍彦さんに賛同した。だって15足らずの餓鬼に頭領が勤まるわけないじゃないか。流派の皆だって玄さんではなく龍彦さんを指示していた。
それだけならよかったのだ。が、やはりそれだけではすまなかった。殺しが起きてしまったのだ。
うちの流派では身内の殺しを禁止している。もしそれが明らかになれば身内である証明の腕章を剥奪、更に情報を口外されないように舌を抜き、目を潰して放免だ。正直やりすぎじゃないかと思う。というかそれならそもそも忍者という職業集団なのに殺しを禁ずるというのが馬鹿馬鹿しいのだが。
で、俺の予想通り玄さんが何者かに殺された。もちろん犯人――というよりは首謀者の方が近いんだろう――は龍彦さんだろう。けれど賛成多数ならわざわざ殺さなくてもよかったのでは、とも思う。まあいずれにせよその延長戦上で俺も殺されそうなのだろう。いい迷惑だ。
本当は理由なんてわかっていたんだ。けれどそれを受け止めたくはなかった。龍彦さんだって俺を育ててくれたし、恩はある。だからこそこんな事実を受け止められる訳がない。
………くよくよ考えても仕方ないか。どうせもうすぐ死ぬ身だ。なら最後は自分の聖域で戦いたい。得意な暗殺術もかつての同胞相手では意味をなさないだろう。それでも、おいそれとこの首を差し出すわけにはいかないのだ。
ようやく心で仲間との殺し合いを覚悟して、俺は親父が教えてくれた聖域――博麗神社にたどり着いた。