めだかボックス~北斗七星の輝き~   作:kouma

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第十話:天砕く拳!

突如時詠の前に現れた謎の四人組。

 

「あいつらは13組の13人、そのうちの4人だ!」

 

それを知っている冥利の声は、冗談で言っている声ではない。

彼らが噂の13組、その中でさらに選ばれた……そして、冥加が狙っていた席に座る者たち。

時詠と13人の13組は、本当の意味で対面となる。

その中で冥加は、弟の声と顔から相手が誰かまでは分かっていないが……危険と判断したらしい。

 

「……1349274」

 

「なあ姉ちゃん……今は下ネタ言ってる場合じゃねえぞ?」

 

だが、冥加は何故か……時詠に話しかけている女子の事を見て、つぶやいた。

どうやら彼女の一部分を見ているようだが

 

「姉ちゃん、少しはおっぱいのことから離れてくれ……」

 

「47284?(だめか?)」

 

(だめだこの姉……)

 

時詠だけは、時詠だけはシリアスを保とうと努力している。

しかし……そう言われると、気になってみてしまうのが男の悲しい性だった。

 

「う~ん……雲仙くん、そろそろいい?」

 

「……なにしにきやがった?」

 

「何しにっていうか、目当てはその子かな……霞くん」

 

やはり目当ては時詠。

それに、あちらはすでにやる気が見て取れる。

 

「雲仙先輩、そもそも13組の13人とは?」

 

「……チッ、まさかお前まで巻き込まれるなんてよ。簡単にいえば13組の中でさらにやべえ奴らってことだ!」

 

わかりやすい答えです。

大雑把過ぎるが、間違ってはいないだろう。

 

「酷いなあ雲仙くん、君だって」

 

「俺はもう抜けてるんでね……それより、うちの委員に手を出す気かおい」

 

そう言うと目の前の女子、そして後ろの三人も納得の顔をする。

どうして時詠が冥利と一緒なのか、わからなかったらしい。

 

「へえ~霞くん、風紀委員になったんだ」

 

「そうだよ、だから手を出すなら」

 

「そうだね……でも私には」

 

スッと目の前の女子はファイティングポーズをとり

 

「関係ないかな!」

 

突撃してきた女子の右拳を、時詠は顔を左へ少し動かし……紙一重でかわす。

その動きに他の面々は眼を見開く。

だが、一番驚いているのは攻撃をした女子本人だろう。

 

(およ? かわされちゃった?)

 

「いきなり危ないじゃないですか……それと、貴方は誰ですか?」

 

「あはは、冷静だね~……それと、確かに自己紹介がまだだったね」

 

腕を引っ込め、そのまま女子はいったん下がり時詠の前で自己紹介を始める。

 

 

 

「2年13組『骨折り指切り(ベストペイン)』 の古賀 いたみだよ!」

 

「じゃあ俺もしとくか、3年13組『棘毛布(ハードラッピング)』 の高千穂 仕種だ」

 

「同じく3年13組『枯れた樹海(ラストカーペット)』 宗像 形」

 

「2年13組『黒い包帯(ブラックホワイト)』 名瀬 夭歌」

 

 

 

その一同、全員が13組。

もっとも……この中では正確にいえば冥利と冥加も13組なのだが。

 

(……だ、だめだ。二つ名のセンスについていけねえ)

 

そんなことを考えていた時詠。

まあ、高校になってそんな二つ名は……少し、恥ずかしい。

だがそういった発言は命取りなので黙ってはいるのだが……

 

「俺だけ、一人ぼっちですね」

 

「そうだね~2組所属で唯一のノーマルくん」

 

「……」

 

馬鹿にしてる、という感じはしない。

だが、ちょっとムスッとしている時詠に古賀はそれなりに好感を得たらしい。

 

「あはは、霞くんむくれてる~」

 

「……ふん」

 

「でも人って見かけによらないっていうけど、君はその典型だね!」

 

そう言い古賀はさらに踏み込んでくるが、そこへ冥利と冥加が立ったので急停止。

時詠は少々驚いた顔をしているが……

 

「悪いが後輩いじめって言うなら風紀委員として見過ごせないぜ?」

 

「738473693……84954678294(奴を先に倒すのは私だ……見事なおっぱいだがな)」

 

「う~ん、それはそれで困るなあ……ん?」

 

と、時詠はそんな二人の間に入る。

そうして……拳を握りしめた。

 

「雲仙先輩」

 

「あ?」

 

「俺、もう下校時刻だから抑えてましたけど……あれって」

 

時詠は古賀の服装を見ながら口を開く。

 

「立派な、校則違反ですよね?」

 

「……ああ、そうだな」

 

冥利は時詠が何を言いたいのか理解したらしい。

その顔には……凶悪な笑みが浮かぶ。

 

 

 

「なら、取り締まりましょうか」

 

「ケケッ、そりゃそうだ……風紀委員ならよぉ!」

 

 

 

もっとも、これはあくまで建前なのだろう。

それは冥利もよくわかっているはずで……

 

「雲仙先輩は下がっていてください、俺がやります」

 

「!?……ほぉ~なら見せてくれや、独立遊撃隊の強さをよ」

 

「わかりました……彼女も」

 

「ああ……姉ちゃん、764384647(俺たちは見物といこうぜ)」

 

冥利の言葉を聞き、冥加は時詠を見て……コクっと頷く。

どうやら彼女もやる気だったようだが、時詠の力を見てみたいのかもしれない。

 

「冥加さん」

 

「……とき?」

 

「これ、お願い」

 

時詠は冥加に声をかける。

そうして、自身のかばんを持ってくれというジェスチャーを彼女に行った。

冥利はそれを見て通訳をせず……冥加は、時詠のかばんを見て頷く。

スッと彼女に渡すと、軽く手を握られた。

 

「47394874645……とき」

 

「……ああ、わかってる」

 

何が言いたいのか、下から見上げる彼女の眼を見て判断した。

そんな二人に冥利は面白そうな顔をしているが

 

 

 

私以外の女に負けるな

 

 

 

大方、そんなとこだろうと。

そうして雲仙姉弟が後ろに下がり、時詠は前に出る。

 

「へえ~男らしいじゃん。私そういうのは好きだな!」

 

「それはどうも……知ってると思いますが一応。俺は1年2組普通科所属、霞 時詠です」

 

時詠は……手を前に出しながら、体を左右に揺らす。

冥加はそれを見て、軽く……胸を押さえた。

自身のやられたことを、思い出したのかもしれない。

 

「さって、それじゃ霞の実力ってのを……見させてもらおうかね」

 

「……とき」

 

対して、13組の13人の方は……全員余裕そうだ。

後ろで控えている三人も手を出す気がないのか、特に動きがない。

 

「それじゃ行くよ!」

 

「……激流に身を任せ」

 

古賀が駆けだそうとした瞬間、突如時詠は背を向けて校舎へ。

その速さはさすがとしか言えず……北斗無想流舞は使っていないが。

突然の光景に古賀は、いや全員が固まり……

 

「はっ!? ま、待て~!」

 

再起動した古賀が時詠を追いかけて行った。

彼女の速さもなかなかだ。

 

「……なるほどな」

 

冥利はすぐにその意味を理解する。

まだ後ろに三人も控えている中で、わざわざ手の内を見せたくないようだ。

 

「だが……あれはどうなんだ?」

 

「……逆にすがすがしくて殺したくなる」

 

「……」

 

13組の13人も、あまりコメントがしづらいようである。

さらに冥加はというと

 

「273464635」

 

「……まあ姉ちゃん、そう言わず少し待ってみようぜ」

 

つまらない、とかそういったことだろうか?

しかし校舎内に入っていった時詠と古賀は、再び向き合っていた。

 

「もう逃げるのはやめたの?」

 

「逃げたつもりはありませんよ……ここの方がいいので」

 

すでに誰もいない校舎。

見えるのは非常用の電気のみ……おそらく理事長が手をまわしているのだろう。

 

「ふふっ、やっぱり君は面白いね」

 

「それはどうも……かかってくるがいい」

 

時詠の雰囲気が変わる。

その体が左右にゆらりゆらりと揺れ……古賀は、突っ込んだ。

そして再び右ストレート。

恐るべき速さだが……時詠には、見える。

 

「!?」

 

古賀はいつの間にか、壁際に吹き飛んでいた。

確かに自分は時詠の顔をめがけ右拳を振っていた……それが、手に何かが添えられ胸を押されたのだ。

 

「がっ!?」

 

「ユクゾッ」

 

その吹き飛ぶ古賀とほぼ同じ速度で目の前に来た時詠。

壁からの跳ね返りで前のめりになっている無防備なその身に対し、左の手刀を突きいれる。

古賀の右肩に突きいれられ、すぐさま右拳で古賀を上に跳ね上げるように振り上げる。

 

「はあっ!」

 

時詠はその跳ね上げた古賀に左の裏拳をぶつけ、再度壁に張り付けた。

だがまだ終わらず、右手で足をつかみ地面にたたきつけるように振りおろし……そこを左足で蹴りあげる。

 

 

 

残酷に見えるが、時詠は彼女に抵抗などさせないつもりだ

 

 

 

そして腹部を蹴りあげと同時に時詠も跳躍し、時詠は空中で古賀の背に対し左右の手で振り払うかのように手刀で廊下へ叩きつけた。

古賀の体が、うつぶせのまま冷たい廊下に叩きつけられる。

 

「……ここまでだ」

 

冥加より古賀の実力が上なのは理解していた。

だが向かってくるスピードはそれほど大差が無い。

しかし彼女はあの13組の13人、多少のダメージではすぐ立ち上がってくるはずだろうと考えていた。

なので冷静に、そして確実に対処すれば問題は無いと時詠は思い……結果は見てのとおりで

 

「ふーん」

 

「!?」

 

だが、聞こえる余裕そうな声。

時詠は背筋に冷たいものが奔り北斗無想流舞を行いその場から離れる。

その瞬間、背後に廊下が砕かれる音が響き……振り返り、戦慄する。

 

右拳が廊下に小規模のクレーターを作っていた

 

そして古賀の右拳が戻され、パラッと破片が廊下に落ちて行く。

舞い上がった破片が落ちながら、そこには先ほどまで廊下に倒れ伏していた古賀の姿があった。

 

「なっ……」

 

「今度は私の番だね」

 

視界に収めていた古賀の姿が消える。

 

 

 

「ライダーキック!」

 

 

 

そして続けざま、時詠の真上から聞こえる声。

古賀は天井を蹴った反動で、思いっきり下へ向かい蹴りつける。

さすがにこれは当て見がとれず、時詠はスッと最小限の動きで回避したが

 

「ちっ」

 

また廊下が粉砕され、破片が勢いよく飛び散る。

自身に向かう破片をたたき落とす中、古賀は廊下で低い姿勢を保ったまま

 

「下からも来るよ!」

 

両腕を軸に体を回し、時詠へ足払い。

それを時詠は足を動かし、跳躍することなく……廊下を滑るように回避する。

しかし、古賀は止まらず上下正反対のまま足技を繰り出してきた。

型破りな攻撃ばかりだが……一撃一撃がかなり重い。

 

(そうだった……彼女は改造人間!)

 

古賀のアブノーマル。

それを知りながらも、時詠は今までの技でも大丈夫だろうと高をくくっていた。

 

(俺の、大馬鹿野郎が!)

 

思考が乱れ、普段のような動きはなく……とっさに両腕を防御に回す。

そう……時詠は甘い部分がある。

もし北斗の拳のトキなら、最初で全てを決めている。

だが

 

 

 

時詠はトキの力を持っているだけで、トキではないのだ

 

 

 

思考にも違いがあり、まず……相手の秘孔を突くことを滅多にしない。

それが死につながる可能性もあり、躊躇してしまうからだ。

今、その甘さが自身を危機に陥れている。

 

『そして今の君なら、言葉はおかしいが「基本的な13組」相手なら十分だ……それ以上は、君自身が決めろ。以上、幸運を』

 

学園が始まる前に神様……お師さんからの手紙。

そこに書かれていた内容の意味。

時詠は理解し……自身の未熟さを、驕りを、責める。

 

(いずれ来る時の為、俺自身に気づかせる為……お師さんは敢えて詳しく書かなかったのか。相手はただの13組ではない、その中で選ばれた13人だと!)

 

「さっきの勢いはどこいっちゃたのかな!」

 

古賀は黙りこくってしまった時詠に対し、連続で足技を繰りだす。

と……

 

「!?」

 

自身の足が宙で止まる。

何かと思えば……そこには、時詠の右足。

二人の足が宙で交差し、動きを止められたのだ。

 

「……ありがとうございます、古賀先輩」

 

「ん~?」

 

時詠は急に古賀へ礼を言う。

どうしたのかと思えば……顔を上げた時詠は、眼が活き活きとしていた。

そうして古賀の足から離れ、時詠は数歩下がり……一礼。

彼女との戦いで、時詠は気付く事が出来たのだ。

 

「どうして頭を下げるの?」

 

「先輩のお陰で、自身の未熟さに気付く事が出来ました」

 

「あはは、本当に霞くんって面白いね」

 

古賀もいつのまにか姿勢を戻し、しっかりと足で立っている。

だが……ここからは違う。

 

「でも古賀さんは、回復力もすごいですが……確かにライダーキックに負けない、強力な蹴りですね」

 

「……気付くのが早いね、その通りだよ。因みに私は初代が一番かな!」

 

「いいですね、俺も大好きですよ仮面ライダーの一号二号……でも、それなら」

 

時詠は、構えを変える。

身体を揺らしていたのが、まるで不動の構えのように……天地上下の構えを取る。

さらに時詠の両腕から、肩から……浮き出た血管が弾けたのか、血が噴出したのだ。

 

「せめて奥義で……いかせてもらう!」

 

と、古賀は今の時詠が先ほどまでとは雰囲気が違う事に……いや、肌に感じるもの。

時詠から発せられる、何かだ。

 

「な、なに?」

 

廊下を砕きながら、古賀へ見えない何かが迫っていた。

とっさにガードするが、プレッシャーにも似た何かは古賀の身を再び弾く。

 

 

 

北斗神拳奥義【闘剄呼法(とうけいこほう)】

 

 

 

剄は鋼、圧縮された闘力。

吸い込む気と共に体内に全闘力を蓄え、吐く気と共に一気に拳に集約する剛拳の呼法。

だが、時詠は今までこの奥義を使う事が出来なかった。

使えば自身の身体がはじけ飛ぶような感覚に襲われ、使うことは出来なかったのである。

しかし今は、その時の恐怖をもない……いや

 

そんなことではこの先も、変わる事は出来ない

 

神様との修行。

その時も何度も何度も思った……だが、乗り越えたからこそここにいる。

今一度、それを思い出し……時詠は剛の拳を放ったのだ。

時詠もやる時は容赦なく、冥利が感じたものは、興味を惹かれていたのは……その、優しさでなく非情な面。

すでにその資格は、神様との修行で得ていたのである……自分を強くする為に。

 

「わけがわからないけど!」

 

しかし古賀も黙ったままではない。

彼女には彼女で、抱えている物も……また、違う。

 

「後輩には負けられないんだよね!」

 

「いあぁ!」

 

両者が急加速から互いの右足による回し蹴り。

空気が震え、互いに衝撃が足を駆け抜ける……だが、古賀は自身の右足が粉砕されるような感覚に襲われた。

そして激痛と……目の前から迫る、プレッシャー。

 

「勝機!」

 

「!?」

 

古賀は使えない右足を戻し……いや、驚く事にそのまま踵落としを時詠へ。

彼女の足が天を向き、そのまま振り下ろされる。

驚くべき柔軟さと回復力だ。

しかし、身長さもあるためか時詠はその踵落しを左に回避。

 

「なら! ライダーチョップ!」

 

続けざまに、古賀は右手で手刀を振り下ろしていた。

本命はこちらの用で、時詠は回避することもできるが……

 

「なっ」

 

時詠は両腕をクロスし、額への直撃を避ける。

押しつぶされそうなパワーに足が若干沈み……いや、反動を付ける為にわずかに沈めたのだ。

 

「はあっ!」

 

時詠の左足が、真下から襲いかかり、前屈みからのけぞってかわそうとした古賀の胸を打ち抜く。

彼女の身体が宙に浮くほど……同時に時詠も宙に舞う。

そして、上空で互いが視線を交えた瞬間……時詠は、己の拳を振りぬく。

 

 

 

「天翔百裂拳!」

 

 

 

空中では完全にかわす事が出来ない。

時詠は無防備な古賀の身体に連続の秘孔突きを叩き込む。

だが……幾度なく振りぬかれた拳の後に、時詠から噴出す血が舞っていた。

その無数の連打を浴びた古賀が廊下に叩き付けられる。

 

「はあっ、はあっ」

 

着地した時詠の体力はすでに尽き掛けていた。

慣れぬ剛の拳、これが今出せる時詠の最高の力。

そして……古賀は、まだ立ち上がろうとしている。

しかし

 

「うぐっ!?」

 

足が震え、胸を押えながら彼女は……再度膝をつき、口から血を吐き出す。

今、身体の中では秘孔による破壊と彼女自身が持つ異常な回復力による再生が繰り返されているはずだ。

それでも……痛みは、古賀を苦しめ続ける。

 

「い、痛い! 痛い痛い痛いぃ!」

 

彼女の回復力が、逆に秘孔による苦しみを倍増させている。

時詠は……廊下でのた打ち回る古賀に馬乗りする。

痛みに悲鳴をあげ、涙を流し続ける古賀を両脚で押さえ……時詠は、古賀の身体を数回突く。

そしてしばらく激痛に暴れていた古賀だったが……次第に、動きがなくなっていった。

 

「あ、うっ……あ、あれ?」

 

「……大丈夫ですか?」

 

「う、うん……でも、これは動けない、かなあ?」

 

どうやら古賀の身体は、動かないようだ。

痛みはだいぶ消えたが……やはり疲労までは消せない。

だがそれは時詠も同じようで、ほとんど力が入らないようである。

 

「俺の勝ち、ですね……古賀先輩」

 

「うん……あ~悔しい、なあ」

 

だが、何故か時詠が顔を横に背けたままなのに古賀は気付く。

 

「霞くんどうしたの?」

 

「あ、いえその……」

 

古賀はときおり時詠の視線が自身のある場所に向けられているのを見て……視線をずらす。

そこには先ほどの連打で、古賀の胸を隠しているモノが弾け飛んでいた。

 

「「……」」

 

いやな沈黙。

そして古賀は自身の腕がまったく動かせないので

 

「霞くん?」

 

「す、すみません……」

 

先ほど対峙していたときとはまた別の声色で話しかける。

時詠はなんとか身体をずらし、すぐさま自身のブレザーを脱いで古賀にかけた。

古賀自身も、ちょっとは動かせる程度に戻ったのか

 

「後ろ、向いて」

 

「はい」

 

時詠がしっかり後ろを向いているのを確認し、ブレザーに袖を通す。

意外に時詠の身体はがっしりしているせいか、だいぶブカブカだった……胸はきつそうだが。

そうして前を留め、震える足で立ち上がろうとし……尻餅を付く。

 

「あいたっ……」

 

「……古賀先輩、あの、よければどうぞ」

 

時詠はスッと、古賀に背中を向ける。

その申し出の意味を理解はしたのだが……

 

「……しょうがないなあ、お願いするね」

 

「いえ……では」

 

背中に重みが来て、時詠は立ち上がる。

だが、古賀はそんな中で時詠も足が震えていることに気付いていた。

 

(ふふっ、男子って本当に……意地っ張り)

 

力強い背中だが、今は若干震えが混じっている。

必死な形相になっているであろう時詠の顔を想像しながら、古賀は彼に任せる事にした。

正直、自身の回復には休息が必要だと感じるほど。

 

(でも……なんだろう、あんな痛みは初めてだったけど)

 

目の前の後輩にされた攻撃が全然わからない。

ただ普通にバトルしていたと思えば、あの未知の痛みである。

 

「……古賀先輩」

 

「ん?」

 

「痛かった、ですよね……あれだけは、本当にごめんなさい」

 

「……」

 

なんで時詠が謝るのか、古賀にはわからなかった。

時詠が古賀に謝ったのは……下手をすれば彼女が死ぬ可能性があったから、かもしれない。

しかし、時詠は今日の戦いで感じたことがある。

と、そうしている間に校庭へ戻ってきていた。

 

「霞……」

 

「雲仙先輩、すみません」

 

「……ああ、待たせたのはいいさ」

 

冥利は二人の様子から勝敗がどうなったかを理解したようだ。

時詠はそのまま古賀を13組の13人の元へ。

 

「すみません、彼女を」

 

「お、おお……」

 

高千穂が古賀を時詠の背から受け取る。

が、だいぶ立てるようになったのか……彼女は自分の足で立っていた。

 

「えへへ、負けちゃった」

 

「マジかよ……おい霞、次は俺とやらねえか? お前とならいいデータが得られそうだしよ」

 

「すみません、さすがに今日はもう帰りたいし……多分ろくに動けないので、明日以降なら」

 

と、高千穂の誘いに対しても普通に答える。

この言葉に彼はますます興味がわいてきたようである。

 

「ははっ! こりゃ生徒会長以外にも掘り出しものじゃねえか」

 

「ふむ……」

 

「ごめん名瀬ちゃん~」

 

「……」

 

宗像は何か考えるように、古賀は黙ったままの名瀬の元へ。

名瀬はそんな中、古賀の様子を見て……何か時詠の方をじろじろ見ていた。

 

「それではこれで……古賀先輩、また」

 

「あ、うん……じゃあね」

 

時詠はそのまま冥利たちの方へ。

その背を見ながら、13組の四人は……フッとその場から消える。

 

「ケケッ、上等だ時詠……俺の眼に狂いは無かったな」

 

「待っていて下さりありがとうございます」

 

「ああ……だが、お前も相当やられたな。あいつらも様子見程度だったからよかったけどよ」

 

「……ええ、古賀先輩の指導は中々きつく」

 

そんな言葉に冥利はますます面白いと思えたようだ。

あの改造人間相手にそう言える一年はそういないはずだと。

だが

 

「38493593747458……とき」

 

「え?」

 

急に冥加が時詠の前に出てきた。

すると……スッと、かばんを出している。

 

「?」

 

「負けなかったな、だとさ」

 

冥加は勝ち負けの心配をしていたのだろう……と、頬を掻いてみたら頬にも血が付いているようだ。

すでに、血は止まっているが……それが垂れている。

どうやらいろんな箇所から噴き出したらしい。

 

「……あ、ありがとう」

 

かばんを受取り、時詠は……冥加が心配していたのかも、と思ってしまった。

冥利の顔を見る限り、さっきの訳はちょっと違うのかもしれない。

だがその頃……校庭から姿を消した13組の13人。

そのうちの二人である古賀と名瀬は先ほどの事を話していた。

 

「でも、霞くんの攻撃はちょっとおかしいというか……当たってるんだけど、変な感じなの」

 

「……古賀ちゃんがあんな短時間で動けなくなるほどの攻撃、か」

 

「そうそう……おかしいよね。十分余裕は残しておいたのに……いくら消耗が激しいっていっても」

 

古賀は時詠のブレザーを着たままだが、名瀬特製の栄養ドリンクと治療を受けていた。

しかし、名瀬はそんな古賀の言っていたある言葉に注目していたのである。

 

 

 

(てんしょう、ひゃくれつけん……どこかで聞いたことがある)

 

 

 

そうして二人は別れ、古賀も自宅へ向かうらしい。

名瀬は……今日は少し一人になると残し、調べものに取りかかる。

何かで聞いたことのある、時詠が叫んだ言葉……そして、時詠を調べるために。

一方時詠は、途中まで雲仙姉弟と一緒だった。

 

「……くっ」

 

「おいおい大丈夫かよ?」

 

「え、ええ……疲れました」

 

冥利が呆れたような声を出していた。

そんな弟を見て、冥加は変わらず無表情だが……

 

「48267494(私たちはこっちだ)」

 

「ああ、俺らはこっちだからな」

 

「あ、はい……さようなら」

 

「おう」

 

しかし、帰り道が違うこと言うことで二人と別れ、一人歩いていた。

一人で帰るというのも、結構さみしいものである。

 

「……」

 

と、今時詠は思い返しているのは……理事長室での出来事。

あのサイコロによる占いで現れた死兆星は、あちらのメンバーに向けられていた。

だがあの占いに当てはまるのは、フラスコ計画かあそこのメンバーたちにかは……わからない。

 

「……もし、あの5人の誰かに死兆星が見えていたとするなら」

 

もしくは

 

 

 

「彼が……いや、彼らが来る予兆か?」

 

 

 

あの、学ランを着た転校生。

彼の到来が、再び箱庭学園に乱を呼び起こす前兆なのか。

時詠と13組の13人……そして、生徒会。

全てがぶつかる時は、確実に近付いていた。




古賀戦、終了……異常だけど普通な彼女との戦いで、時詠は色々学ぶことができました。
次回、時詠も時計塔地下へ。
動き出す生徒会……そして、名瀬が調べ上げたものとは。
輝く死兆星は誰の頭上に落ちるのか。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
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