めだかボックス~北斗七星の輝き~   作:kouma

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第十二話:人間の証

「ちっ! やっぱこいつら相手はきついか!?」

 

「雲仙委員長! このままじゃ!」

 

ここは時計塔。

そして今、その時計塔内部へ少し進んだ場所。

そこからさらに地下へと続くエレベーター、そして階段のあるフロアでは……戦いが始まっていた。

 

「あいかわらずだなお前らは!」

 

「やはり君らに手加減はいらないね」

 

そこで戦っているのは、雲仙姉弟、鬼瀬、そして13組の13人の高千穂、宗像……そして

 

「手品じゃないんやから始末に負えんなあ」

 

柔道部の元部長、反則王と言われる……鍋島猫美。

正直、箱庭学園でも屈指の実力者と言われる彼ら。

そのメンバーが今、追い詰められている。

 

「じゃあもう一回♪」

 

一人の、ボンテージのようなものを着た女子。

彼女の長い髪が伸び……冥利たちへ向かっていく。

一同は二度目なのでその攻撃をかわし、切り捨てたりするが

 

「っ237463!?(しまった!?)」

 

「姉ちゃん!?」

 

冥加はその攻撃により、動きを止められてしまう。

黒髪が彼女を縛りあげ……持ち前の怪力でもその髪を振りはらえない。

さらに彼女の持っている鉄球の一つが、相手に掴まれているため動きが鈍っていた……いや

 

「ふっ……」

 

相手の指が、冥加の鉄球を溶かし貫いているのだ。

そんな並はずれた芸当を行っているのは、顔の左部分に妙なラインが奔った男子。

紳士服を身にまとい、彼の指が冥加の鉄球を指で溶かし続けていた。

 

「とどめだ」

 

冥加の動きが封じられたのを見て、他のメンバーは助けに行こうとするが……妨害されていた。

冥利も動くに動けず、冥加は鉄球をつなぐ拘束具を外そうとしたが……間に合わない。

紳士服の男子の指が貫手となって冥加に迫り

 

 

 

岩山両斬波!

 

 

 

突如響く声。

その声と共に冥加の体が何かに引き寄せられ……縛りあげていた黒髪が、大きくなびく。

さらに向かってきていた紳士服の男子が弾き飛び、後方へ吹き飛んでいた。

 

「!?……ケケッ、来るのが遅いぞ!」

 

「すみません雲仙先輩!」

 

冥加を抱き寄せているのは、時詠だった。

破壊されていた拒絶の扉。

その先から戦闘の気配を感じ取り……冥利たちを見つけた。

だが、冥利が何かに縛られているのを見た瞬間……北斗無想流舞で間に割って入る。

 

そして冥加を縛る髪の毛に岩山両斬波を放っていた

 

しかし、やはり髪の毛の全てを断ち切ることはできないが、拘束をゆるます事が出来た。

体勢の悪い冥加を抱き寄せながら迫ってきていた紳士服の男子に対し……貫手を回避し、左の裏拳による当て見。

今回はそこまで威力がなかったのか、軽く地面をずりながら吹き飛ぶ程度だったが……それで充分だ。

すでに冥加を縛る黒髪は、ゆるくなった隙に引きちぎっている。

 

「……と、き?」

 

「ごめん冥加さん、遅くなった」

 

ギュッと、かばう際に強く冥加を抱きかかえていた時詠。

そんな中で、しばらく時詠に抱きしめられ……顔を上に向け、目をしばたかせていた彼女。

だが……急に冥加は何かに気づいたように、時詠の腕の中でじたばたしだしたのだ。

 

「23、23748373846!」

 

「わ、わわわっ!?」

 

いきなり暴れ出した冥加を放るように時詠は離す。

そのまま駆けだし、弟の背後に隠れる冥加。

どうしたのだろうか……

 

「……へえ」

 

「みょ、冥加さん?」

 

「…………734746」

 

冥利は普段見れない姉の慌てようと、その後の様子に苦笑していた。

弟に対してもある程度プライドがある冥加だが……今は、顔が真っ赤だ。

その言葉から、冥利の方は面白そうな顔で時詠を見ている。

 

「霞じゃねえか、お前も来たんだな!」

 

「まさか君も来るとはね」

 

「あ、こんにちは高千穂先輩、宗像先輩」

 

すでに顔見知りの三人。

昨日出会ったばかりだが……どうやら、霞については敵対してないようだ。

そして、もう一人……鍋島は霞の事を知らないが、さっきの行動から敵じゃないと判断したらしい。

 

「なんや、またおもろい子が来たなあ」

 

「……か、霞君?」

 

そんな中で鬼瀬は、さっきの霞の動きが視えなかったこと。

さらに……冥加を強く抱きしめていた部分に対し、少しジト目になっている。

しかし

 

「おいお前ら! いきなりそっちで和んで如何するんだ!?」

 

完全に忘れられていた……敵対している6人組。

時詠は、そんな6人を見て……冥利に問いかける。

 

「雲仙先輩?」

 

「……あいつらは裏の6人っていう、13組の13人に入ってるメンバーだ」

 

「わかりました……で、皆さんよければ自己紹介でもしてください。俺、今来たところなので」

 

突然時詠がそう言いだす。

すると

 

「にひひひひ! いきなり飛び入り参加でそう言うか! 悪くないねえ~ならお望み通り」

 

裏の6人、その中で中心的人物っぽい一人。

和風とも洋風ともとれる服を着ている男子が先に声を出す。

 

 

 

「糸島 軍規、仲良くしてね」

 

「湯前 音眼だよ、仲良くしてね」

 

「百町 破魔矢なる者です、仲良くしてね」

 

「筑前 優鳥……らしいんだ、仲良くしてね」

 

「鶴御崎 山海という、仲良くしてね」

 

「上峰 書子と申します、仲良くしてね」

 

 

 

六人がそれぞれ自己紹介と個性的……とは思えないあいさつ。

確かに、時詠も彼らが少し危険だと感じてはいた。

 

「おい霞……あいつらは俺達の中でもかなりのアブノーマルだ」

 

「……アブノーマル、か」

 

高千穂がそう言い、再び構えなおす。

と……時詠も同じように、彼らに自己紹介をした。

 

「ご丁寧にどうも……1年2組普通科所属、霞 時詠です」

 

「あ? ノーマルだと?」

 

霞もてっきり13組関係と思っていたのだろうか。

糸島と名乗った男子が、眉を動かす。

だがそれ以上に反応したのが

 

「俺は普通(カス)がそばにいるというだけで不愉快だ」

 

「同感です、普通(ゴミ)は分別せずに処分しましょう」

 

鶴御崎という先程の紳士服の男子と、上峰という巨大な本のようなものを抱えた女子。

二人は……どうやら天才主義者なのか、ノーマルである時詠を侮蔑の眼差しで見ていた。

 

「なっ、何を言うんですか貴方達は!」

 

真っ先に反応したのか鬼瀬。

彼女も、ノーマルだからなのか、それとも……しかし鶴御崎は続ける。

 

「ふんっ、予定変更だ。まずは貴様から駆除する」

 

「……」

 

だが、時詠は何も言わない。

黙ったまま……ブレザーを脱ぎ、下に置いた。

その顔は、笑顔。

ものすごくいい、笑顔。

しかし……何故か冥利たち6人が寒気を感じるような、そんな気配があるのだ。

 

「お、おい霞お前」

 

「雲仙先輩、俺は……ここまで挑発されて黙ってられるような人間じゃないんです……」

 

時詠の両腕が前に向けられ、その身がゆらゆらと左右に。

足が静かに動き、眼は鶴御崎を捉えていた。

 

「その態度、先ほどの行為……全てが許し難い。貴様を即刻駆除する!」

 

鶴御崎からすれば時詠の行動、いや存在が気に食わないのか。

真っ先に向かい……中々のスピードだ。

その鉄球をも溶かした手が時詠の胸元へ伸び

 

次の瞬間、壁際に吹き飛んでいた

 

壁に何かがぶつかる音。

ぶつかったのは……先ほど時詠に向かったはずの、鶴御崎。

この中で唯一それを食らった冥加は……弟の背からこそっと、それを見ている。

その顔はまだ少し赤いのだが、次の瞬間青ざめていた。

 

 

 

鶴御崎の体が、地面をバウンドしている

 

 

 

しかもよく見れば、その鶴御崎をまるでボールみたいに地面にたたきつけているのが時詠。

全員の目が地面をバウンドする鶴御崎を追って上下に動いていた。

彼の身体から金属音らしきものが響き、どうやらショートしている感じである。

 

「ごふっ……」

 

そしてとどめに、時詠が鶴御崎に人差し指を突きいれ……彼は地面に倒れ、動かなくなった。

荒い息を吐きながら時詠はブレザーを拾い、冥利を見る。

 

「雲仙先輩、俺は生徒会メンバーの方へ行きます」

 

「お、おう……」

 

時詠はその際、上峰を睨んでいた。

やはり相当怒っている。

さすがに侮辱されたこと……目の前でカスだのゴミだの言われ、耐えれるほど時詠は我慢強くない。

しかもそれがノーマルにということは、自身の友達や鬼瀬をも侮辱したのだ。

友達を大事にする時詠が怒るのも、当然だった。

 

「……なあ、もうやめにしないか?」

 

「……わかった高千穂、俺らもそうする」

 

と、高千穂が静まり返った場でそう言い……糸島はそれに同意した。

先ほどのあれを見たせいで、全員の戦意が喪失したらしい。

特に上峰がやばそうで……先の冷静な面とは裏腹に、あたふたしている。

だが、それ以上の妥協はしないのか……冥利たちが地下に降りることはできなかった。

しかし冥利も、これ以上戦えば双方無事でないことはよく理解しており……あとは、時詠に任せようと。

 

「……ったく、俺の後輩はこんなのばっかりか?」

 

それでも、さっきの行動は逆にいえば頼もしい。

侮辱されれば怒り、そして動く。

友達の為に、自身の為に動ける……時詠の本質を見たような気がしていた。

 

(姉ちゃん、姉ちゃんはやっぱり)

 

先に見せた姉の行動。

そして、その顔。

時詠は知らないのだが、最近冥加は家にいても時詠の話題ばかりだと。

彼女はそれ以外、特に面白いこともなかったといえばそれまでだが……その顔はとても楽しそうに感じた。

 

「……」

 

さて、いざ元気よく地下へ降りていった時詠だが……そこは、迷路。

生憎時詠にはそんな迷路で戸惑っている時間もなく……彼は、非常手段に出る。

 

時詠は廊下に、剛の拳をぶち当て破壊したのだ

 

自身の身から軽く血が噴出すが……下へ続く穴が出来ていた。

下は庭園のようなもので、空気が逆流してくる。

 

(非常時だし許してください)

 

そうして地下二階に降り立ち、その後は大急ぎで各フロアの階段を下りていた。

と、地下四階に行くと……何故か大穴が開いている。

おそらくここで古賀と阿久根が戦っていたのだろう……階段を下りるのもめんどいので、そのまま時詠も開いた穴へ飛び降りる。

スタッと軽やかに降り立つと、ここは地下六階のようだが……誰もいない。

 

「……図書館?」

 

なぎ倒された本棚。

そして散らばる多くの本

時詠はそれらを避けながら次の階段を下りる。

 

「……温泉?」

 

湯気、お湯。

この雰囲気はどうみてもそれだ。

猛烈に浸かりたい気持ちに陥ったが、今は時間がない。

次の階段をおりていくと

 

「……どこの劇場だよ」

 

舞台だった。

しかもセット一式もあり……時詠は考えるのをやめた。

そうしてまた階段をおりていくと

 

「……」

 

墓場だった。

墓石が多く立ち、しかも妙に古いものもある。

時詠はそそくさと次の階段を下おりていく。

 

「あのさあ……」

 

今度は、美容院っぽい施設。

何故学園にこんなものばかりがあるのか。

次の階段をおりるのも億劫になっていくが

 

「球技場?」

 

バスケのゴールなどもあり、こんな地下でどんな秘密特訓をするのか。

学園といえど、時間外の部活は禁止である。

 

「……12階、か」

 

そしてようやく地下12階。

ここはゲームセンターのようだが、すでにかなり破損している筐体ばかり。

もう喜界島と13組の13人、ここの管理者である行橋との戦いも終わって……

 

「ってことは、もう会長さんは……!?」

 

まだ、地下に続く階段がある。

ここに一同がいないということは、全員おりているということになるが……時詠はさらに駆け出す。

地下13階へ続く長い階段をおり……扉を開けると、肌寒い空気。

目に付く大量のコンピューター。

 

そして……先に下りた面々、背を貫かれ血を流し息絶えようとしている、古賀の姿

 

時詠の目に映るその姿。

自身が死ぬ間際、子どもを助けた時に視えた……そんな、死の気配。

 

「まあ、いいか……む、貴様は誰だ?」

 

右手を自身の髪に当てたまま、時詠に気付く……男子。

中々背も高く、堂々とした雰囲気。

しかし彼は、そのそばで倒れている小さな身体の、おそらく女子だろうか?

そして次に視線を古賀へ移し、まるで道端の石ころをみる様な目で見てそうつぶやいた。

だが時詠には……聞こえていない。

生徒会のメンバーも、そのそばにいるめだかの兄である真黒も……突然の乱入に、目を見開いている。

 

「古賀、先輩……」

 

「貴様、俺の問いかけを無視するとは!?」

 

その男子が時詠に対し口を開いていた最中、その姿が消えているのに気付く。

視線を左後方に向ければ、いつの間にか倒れている古賀と付き添っている名瀬の隣に。

 

「!?」

 

その動きに気付けなかった生徒会のメンバーと、真黒……めだかは吹き飛ばされた場所から視線で追っていたようだが。

時詠は、名瀬の隣に膝をつき……古賀の姿に、目を細める。

 

「霞……」

 

隣にいる霞に気付いたのか、名瀬がその焦点が定まっていない目で声を出す。

身体は、寒さで震えているのではない……友達を失ってしまう、そんな哀しみからだ。

 

「名瀬先輩」

 

「お前なら、お前なら……古賀ちゃんを」

 

覆面の上から涙が流れ続けている。

時詠は、必死に流れ出る血を止めようとしている名瀬の手に自身の手を重ねる。

その手は震えている、血に染まっている。

 

なんで、まだ高校生なのにこんなことに

 

わかっているつもりだった。

めだかボックスを読んで、起こることだってわかっている。

だが、それでも……時詠は

 

 

 

古賀の身体に、両の人差し指を突き入れた

 

 

 

そして、引き抜く。

その瞬間、古賀の呼吸が止まった。

名瀬は、その状態にビクッと身体を震わすが

 

「(名瀬先輩……一時的な仮死状態です、後はお願いします)」

 

こそっと、名瀬の耳元でつぶやく。

こんな状況でも、彼女はそれで理解したのか……

 

疑わずに頷いた

 

後ろから真黒が来ており、すでに原作の通り頼み込んだ後なのだろう。

だから……時詠にできることは、治癒力を高め、確実性を増加させる処置だけ。

そして時詠は、おもむろに自身のブレザーを名瀬の肩にかけ……持っていて欲しいと、頼んだ。

 

「貴様……俺の言葉を無視し続けるその態度、じつに許しがたいが……まあ今は」

 

しかし、その男子。

地下13階の管理者である都城 王土は……それより重大なことがあるのか、めだかに向き直る。

 

「さあ黒神 めだか。立ち上がって戦って負けて殺されて死ね」

 

立ち上がり始めていためだか。

都城はそんな彼女以外に興味は無いのか、視線を向けている。

 

「なんならお前のアブノーマルも徴税して、偉大なる俺は完全なる俺へと進化しよう」

 

「…………あまりこういうことを聞きたくないのだが」

 

めだかが立ち上がり、都城に問う。

 

「貴様、それでも人間か?」

 

「もちろん。俺が人間だ」

 

「そうか……」

 

その言葉を聴いた瞬間、めだかの雰囲気が変わる。

だが、この時……その言葉を間近で聴いていたのがもう一人。

 

 

 

「だったら私は! 化物でいいよ!」

 

 

 

突然都城が吹き飛ぶ。

吹き飛ぶ瞬間、めだかが右の肘鉄を食らわしていた……彼女が持つ、乱神モードとなって。

だが、めだかは吹き飛ばした都城に対し動かないほうがいいなど……心配とは違うが、声をかける。

しかしそれは都城にはどうでもいいことだったのか、再び立ち上がり

 

「王(おれ)に命令するなよ! 黒神ィィィ!」

 

その鋭い拳がめだかに襲い掛かる。

めだかはかわしたが……右の頬に血が奔った。

拳の鋭さは、本物であり……古賀のアブノーマルを徴税した結果だろう。

 

「「!?」」

 

いったん離れていた二人の間に立つ、一人の男子。

時詠である。

 

「貴様は……霞同級生?」

 

「貴様、一度ならず二度も」

 

「黙れ」

 

「「!?」」

 

めだかの方を向かず、都城の方を向かず。

間に入っている時詠は、ずっと視線を下に向けたまま……倒れている行橋を見て、古賀を見て。

その側で必死に治療をしている名瀬を、真黒を見て。

視線を上げ、ボロボロで傷ついた生徒会のメンバーを見て……最後に、めだかを見て。

その目を見ためだかが、驚いている……時詠の、哀しみに満ちている目に。

 

「人の」

 

ポツリと、時詠はつぶやく。

 

「人の皮をかぶった悪魔……都城、てめえの」

 

時詠が、自身の手に付いた古賀の血。

それをかみ締めるように強く拳を握り……目を見開き、叫ぶ。

 

 

 

「てめえの血は……何色だぁ!」

 

 

 

時詠の叫びが、空気を震わす。

その身は……本当の怒りによって、震えていた。




たまり続けていた時詠の怒りが臨界に達しました。
次回、13組の13人編最終章。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
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