めだかボックス~北斗七星の輝き~   作:kouma

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第十七話:脅威の時音

時詠と向かい合う女子。

黒いメイド服の様なものに身を包んだ女子は……名前を呼ばれ、口元を歪める。

 

「変わってないね……時詠」

 

「姉さん……」

 

時詠が姉と呼ぶ、女子の姿は異様だ。

改造された制服ですらなく……しかも、目に巻かれている包帯と異常に長い袖口から見えるのは白棒。

つまり、彼女は目が見えていないのだ。

 

「時詠が私を捨ててもう何秒? 何分? 何時間? 何日? 何年?……経ったかな?」

 

「っ!?」

 

「逃げるのも喧嘩も大好きな時詠……なんで、私を捨てたの?」

 

棒が地面を軽く叩きながら、彼女……時音は歩いてくる。

時詠の靴に棒が当たり、そこで時詠を見上げる。

 

「……」

 

「だから迎えに来た」

 

時音の右足が、時詠の顔を蹴りぬこうと振られる。

スカートが巻き上がるのも気にせず、それなりに背丈のある時詠の左頬をかすめた。

すんでのところで避けていた時詠は……時音に声を荒げる。

 

「くっ!?」

 

鋭い蹴りは、とても目が見えていないとは思えない。

しかし……時音の目が確実に見えないことを、時詠は知っている。

 

 

 

目を視えなくしたのは、時音が自分で行ったことだった

 

 

 

時詠は時音に声を出すしか伝えれない。

だが……時音は踏み込み、再び鋭い回し蹴り。

その蹴りが、避けたはずの時詠の制服を切り裂く。

いや……この感触は、皮膚までも軽く裂いているのか血が流れていた。

 

(!?……おいおい、今のってまさか)

 

時音の蹴りは、確実に時詠へ向かい続ける。

スカートなのにお構いなく……感じられるのは、闘気。

 

 

 

(南斗白鷺拳!?)

 

 

 

そう、今の流れはまさに南斗六聖拳にある南斗白鷺拳の技。

避けたはずの蹴りから、時詠の皮膚までも切り裂く。

時詠も一応扱うことは出来る技だが……時音のそれは、少し違うように見えた。

 

(くっ……どうして)

 

増え続けていく傷は、そこまで深くない。

だが、時音の本質は足技でなく全然違うところにある。

 

あの隠された両手

 

それが使われないなら……いや、身体能力の差があるのでいくらでも勝ち目はある。

しかしもし、アレがいまだに消えていないとなれば

 

「時詠、時詠のためだけに頑張った私だよ?……ただただ、強くなろうって努力したよ?」

 

「……」

 

「目が見えなくてもね、よかったんだよ。時詠がいればどうでもないって……」

 

するりと、包帯が消える。

そこには……目のあるはずの場所がない。

 

「私は時詠と離れたくなかったから、この両手で目を潰したんだよ?」

 

「くっ……姉さんは、まだあのころのままだと思ってるのか!」

 

「目が見えないから、時詠も一緒にずっといてくれると思ってるよ……一緒に、地獄まで」

 

「!?」

 

時音は、時詠とずっと離れなかった。

何をするのも一緒で、時詠みたいに強くなろうとした。

いつしか、死ぬ時も一緒になろうと言いだした。

悲しいから、一緒に死のうって言いだした。

誰もいないから一緒に死のうって言われ殺されかけた。

 

 

 

離れることになった時、目を潰して時詠に……自分の目になってもらおうとした

 

 

 

時詠は恐怖してしまった。

始めて向き合う、異質な存在と共に……大好きな人の恐怖から。

 

「時詠……球磨川さんはきっかけを与えてくれたの」

 

「……この」

 

時詠は、それでも……やはり、手を出せない。

彼女をこんなふうにしてしまった、自分を改めてみてしまったから。

そして彼女は、自身の長い袖で隠された……白い手を、初めて見せて

 

「だから、時詠……一緒になろうよ」

 

時詠に、微笑む。

その、潰された目を隠さずに……向かって行った。

 

「私ね、時詠が私のことを好きかどうかあの時悩んでたの。これってどうなのかな、本当なのかなって。もし時詠の姿が見えなくなっても私を好きでいてくれるかなって」

 

時音の白い手が、急に伸びる。

いや……異常な速度で、彼女自身が踏み込んでいた。

まるで時詠と同じような動きで……

 

「私は間違ってなかった」

 

「!?」

 

時音の右手が時詠の肩をつかみ……その部分が、焼ける様になくなっていく。

いや、消滅していくのだ。

時詠は……後ろにさがりつつ、振り払った肩の部分を見る。

 

(姉さんの過負荷……やはり、これは元斗皇拳に近い!?)

 

時音は、物心ついた時から普通ではなかった。

時詠と出会ったころから……すでに両手で触れる、生き物全てを消滅させてしまっていた。

北斗の拳で、それに近い技を振るう男がいた。

 

金色のファルコ

 

彼が扱う拳法、元斗皇拳。

今、時音はそれに近い感じのマイナスを振るっているのだ。

そして、そんな時音を皆は気味悪がっていた。

同時に時詠は普通の子供だったので……ずっと、時音は蚊帳の外。

 

時詠はそんな時音とずっと一緒にいたのである

 

彼女は、時詠が神様と修業している光景を見て……そこに参加もしていたほど、身体能力も優れていた。

神様も戯れなのか、離れたがらない時音も一緒に参加させていたのだが……12の時、別れの日が来る。

その時……時音は、己の目を自身の手でつぶしたのだ。

 

「それでね、気が付いたら時詠みたいに動けるの」

 

時音は、間違いなく時詠の動きに負けていない……いや、ほとんど同じだ。

訳がわからない時詠に対し、時音は口を開く。

 

「人を呪わば穴二つ」

 

「!?」

 

「それが私の過負荷……時詠と同じ動き、同じ……痛み」

 

ニタァっと、口の左右がつり上がる。

彼女は、時詠しか見えていない。

だからこそ、全て時詠を重視して……同じように、動いて行く。

 

「この両手のは……名前は、ないけど。同じ過負荷だって球磨川さんが」

 

驚くことに、時音は二つのマイナスを備える女子だったのだ……いや、違う。

元々危惧していたのはあの両手のこと。

しかし時詠との別れが、時音に新たなマイナスを発現させてしまったのだ。

よく見れば時音の右肩も、時詠と同じようになっていた。

 

 

 

さらに胸のあたりからも、出血してるように見える

 

 

 

全て時詠が攻撃を受けた部分。

ということは、もし自分が攻撃すれば

 

ダメージが全て、自身に跳ね返ってくる

 

そういうことだろう。

そしてどちらかが死ねば、おそらく……

 

「一緒だよ時詠」

 

「!?」

 

「痛いのも、悲しいのも、辛いのも……死ぬのも」

 

時音は恐れてもいない。

一緒に傷つくことも、悲しむことも……不幸になることも。

全て、時詠さえ一緒ならいいと。

 

「姉さん……」

 

「まだ、私を姉って呼ぶんだね……そんなの、血もつながってないのに」

 

「っ!?」

 

時詠は、普通の移動とは違い……北斗無想流舞でその場から離れる。

だが……追ってはこない。

 

(北斗神拳を使えるってわけじゃ、ない……あくまで俺と同じ身体能力か)

 

時音の過負荷。

少しずつだが、時詠も理解してきていた。

時詠はそのまま、軍艦塔へ向かう。

傷の方はもう大丈夫だが……心が、落ちつきを求めていた。

 

「……ふふっ、ふふふ。時詠は恥ずかしがり屋さんのままだね」

 

いつの間にか消えた時詠。

しかし、時音にはその場所がしっかりわかり……その後を追おうとしたが

 

『時音ちゃん』

 

「!?……球磨川さん」

 

『今日はここまでにしておこうよ いい感じに痛そうだし 挨拶出来たんだね』

 

「はい……わかりました」

 

いつのまにか背後に来ていた球磨川。

どうやら他のマイナスと一緒にお菓子でもつまみながら作戦会議をすると……時音は、挨拶も終わったので他のマイナスに会うことにした。

時音は球磨川の後に続く。

 

そのころ時詠は再び生徒会メンバー合流し……そこで、日之影がいつのまにか来ていた

 

どうやら、ここでもマイナスに対しての作戦会議の真っただ中のようだ。

先ほどのことで説明を受けためだかは、目を細める。

 

「血のつながらない姉、か」

 

「黒神会長……俺が、彼女の相手をします。他のマイナスも含めて」

 

「……霞」

 

名瀬の声が聞こえたが……時詠はすでに、決心した。

生徒会メンバーが戦う以外の、転校してくるマイナス全てと戦うことを。

今、彼女らを守るために……違う。

 

 

 

自身の戦いは、誰かを護るためのものだった

 

 

 

転生した理由も、あの子供を護りたかったから。

だから……ここでも、そのための力を欲していたのだと。

時詠は自身の北斗神拳と南斗聖拳、その使い道をようやく見つけれたと思っていた。

 

「それと……俺は、はじめに言っておく」

 

突然のことに、全員の視線が時詠へ。

しかし、時詠は自身の考えをはっきり口にする。

 

「俺は人生をプラスだと思えない方でして、むしろマイナスだと考えています……結局は失っていくばかりですから」

 

「人生は、マイナス……か」

 

善吉は、それにどこか思うところがあるのか。

微妙そうな顔をしている。

 

「マイナスさ……ただそれでも、失いながら歩いて行こうかなと……姉さんを、必ず」

 

「お前の考えがそうなら、それでいいさ……今まで助けてもらってばっかだし、俺も協力するぜ!」

 

「……頼むよ、人吉」

 

ガシッと、ノーマル一年男子同士が手を組む。

そして……日之影から、そんな時詠に誘いがあった。

 

凶化合宿

 

なんでもかつて、箱庭学園が黒箱塾と呼ばれていた時代。

そこで行われていたメンタルトレーニングだと……しかし、あまりに過酷なため理事長が廃止したのだ。

しかし、他のメンバーは参加すると。

真黒や日之影がいるなら、可能なのだろう……だが、時詠は断った。

 

「俺は、過負荷から他の生徒を護る義務があります」

 

「……そうか、お前は風紀委員として戦うんだな?」

 

「日之影先輩の言う通りですが……何かあるなら、俺は駆けつけますから」

 

「わかった」

 

時詠は生徒会メンバーと別れる。

そうして、時詠は過負荷との戦いに備えるのだった。




ついに時音の本領発揮。
過去の話は、今後明かされていきます。

時音の容姿は、黒のミニスカメイド服に髪型と顔が地獄少女の閻魔あい。
目の包帯については平戸ロイヤルっぽい。
戦闘力(胸)はそこそこですが、145センチと小柄で……実は、時詠と同い年です。

詳しくは今後、キャラ設定で出させていただきます。
ここまで読んで頂き、ありがとうございました。

※タグ編集しました、いろいろなご指摘をしていただきありがとうございます。
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