終業式。
学校では各学期の終わりにあるものだ。
それはここ箱庭学園でも変わらない……しかし
『生徒会長黒神めだか 君に解任請求を宣言する』
壇上で話すめだかの前に突然現れた球磨川。
彼は、現状の生徒会がメンバー不足という……生徒会の業務不履行をついてきた。
そこは間違ってはいないのだろう……もっとも、生徒会役員がそろったことも、箱庭学園ではないのだが。
球磨川の背後にいるのは、新生徒会メンバー。
だが……そこにいるのはノーマルであるはずの不知火。
何故彼女がそちらについたのか……そして、そこに時音の姿はない。
(……姉さん)
やはり、普段は別行動らしい。
球磨川の言うことを聞いてはいたが……おそらく、彼女は時詠が関係しない今のイベントには興味を示していないのだ。
そうして生徒会メンバーは、この要求をのむしかないのかと苦慮する。
しかしめだかは違い……それを覆すことに成功した。
黒箱塾時代の塾則
いまだに撤廃されていないルール。
解任請求の球磨川に対し、決闘という形で受けて立つ。
それがめだかの……残された手だ。
球磨川は、めだかの出したその案を……受けた。
「生徒会戦挙だ」
めだかの宣言。
夏休みに突入するはずの箱庭学園に……再び、乱が巻き起こる。
普通、特待、異常、過負荷。
それぞれは……どのような夏を過ごすことになるのだろうか。
「……」
終業式が終わり、一同が解散していく。
と、めだかが時詠の方へ歩み寄ってきた。
「霞同級生、貴様はこれからどうするのだ?」
「昨日のまま……俺は俺で戦います。もし手がいるときは、すぐ言ってください」
「……そうか、もし姉が私達と戦う時は」
「俺がいきますよ……姉さんのことでは、俺の方がよく知ってる」
めだかは頷き、そのまま軍艦塔へ向かうようだ。
しかし……時詠は逆に、時計塔へ向かって行った。
すると、無残に破壊された扉が見える。
拒絶の門
かつて13組の13人との戦いで、最初の試練として立ちふさがった……扉。
今はもう機能を果たしておらず、時詠は立ち入り禁止のテープをくぐり中へ。
すると現れるのは迷路。
時詠は……以前自分が破壊した穴を飛び降りた。
そして降りたのは、庭園。
一応手入れはされているようだが……時詠は先へ進む。
(はあ……俺、本当はこうしたかったんだな)
転生したっていうのも、ただこの「めだかボックス」という世界に来たかった。
キャラクターたちと馬鹿みたいにはしゃぎたかった……そう、思ってた。
(誰かを護るために、なんてな……トキだったらどういう選択をしたんだろう)
自分はあの、北斗4兄弟の次兄ではない。
いまだにそのスペックの全てを扱えず、彼の力に頼っているだけだ。
(情けない)
最近の戦いで、少しは実力をつけたのではと浮かれていたのだ。
今一度、自身を鍛え直さねば駄目だ……時詠は、11階に到着する。
ここは一番戦闘に向いていて、なおかつ被害が来ない。
そうして辺りを見回すと
「よ~来たか」
「待ってたよ」
高千穂と宗像。
元13組の13人の二人。
何故ここにいるのかといえば
「今日からよろしくお願いします」
「ああ、こっちこそな」
「入院してた間、体がなまっていたからね……僕らも調整がいる」
時詠が相手に選んだ二人。
彼らなら、十分修業になる。
だが……実は相手はまだいたのである。
「霞、お望み通り来てやったぜ~!」
声がする方向を見ると、そこにいるのは6人。
そこに驚いたのは……高千穂と宗像だった。
「なっ!? 裏の6人だと!?」
「……驚いたな、君たちも来るなんて」
球磨川にやられていた裏の6人。
彼らはいち早く退院しており……時詠が、声をかけていたのだ。
「義を見てせざるは勇なきなり! 仲間のピンチを見逃せないこの私だ!」
「仲間?……ああ、今回もそういう設定でしたっけ」
「私としてもやられっぱなしは癪ですからね」
「……君のことは、嫌いじゃないね」
「俺は霞のおかげで気付いた……その礼をするためだ」
「同感です……私にもこういう感情があったのですね」
糸島、湯前、百町、筑前、鶴御崎、上峰。
13組の13人の中でさらに異常といわれる裏の6人。
彼ら全員が霞の協力に賛同してくれたのだ。
「しかし霞~お前も結構やるときはやるんだな。鶴御崎や都城のことでも……今回もよ」
「あはは……いや、アレは本当にすみませんでした。鶴御崎先輩、上峰先輩」
糸島の苦笑が混じった声。
それに対し霞は申し訳なさそうに鶴御崎、そして上峰に頭を下げる。
彼らが一時入院した病室でも頭を下げていた時詠だが……
「いや、あのことで俺は過ちに気付けたからな……後輩に謝らせてばかりな先輩だ」
「本当に同感ですね……生徒会の庶務だってノーマルです。霞君のおかげで目が覚めた気分ですから」
この二人。
あの後腹を割って話してみれば、意外に仲間想いなだけでなく後輩にも優しいのだ。
天才主義というものが消えた二人は、時詠からすれば頼れる先輩なのである。
「しかし、君は本当にあの連中を相手にするのですか?」
「……百町先輩の言いたいことはわかりますが、俺にも退けないところがあるので」
「いいね……そういうところ、男らしいよ」
筑前が続く形だが、どうも裏の6人は初めて……別学科の後輩というものに触れたのだ。
そしてノーマルなのに自分たちのことを理解してくれる時詠に対して、大事にしたいと思える様子がある。
しかし、マイナスの彼らはこうはいかない。
「俺は皆さんに稽古をつけてもらうためにきていただいたので……正直、助かります」
「気にしないでいいよ、私達もあいつに借りがあるんだし」
湯前がそういい、ガムを膨らます。
相変わらず何を考えてるか読みにくいが、まあ……協力してくれるのだろう。
と、高千穂が声をかけて来た。
「しかしよお霞、具体的にどうするんだ?」
「そうですね……俺は、やはり自身の鍛え直しをメインにしたくて」
「……正面から向き合う気なんだね?」
宗像の言葉に、時詠は頷く。
彼ら相手に奇策などはかえって逆効果だ……そして、なによりも
真っ正面からぶつからなければ、一生過負荷のことを避けてしまう
時詠にとって、時音のことを避けていた過去。
それを打ち消すために、真っ正面からぶつかる覚悟だった。
「……皆さんとは一週間ほどですが、お付き合いしていただきたく。数人ずつでお願いします」
「構わん。俺としても霞ともう一度戦ってみたかった」
「そうですね……先輩として頑張る後輩を応援するのも当然です。頼られるのは初めてですから」
鶴御崎と上峰がそういい、他のメンバーも頷く。
この中で一年は時詠だけだが、やはり学生という面では……先輩としても面子もあるようだ。
「俺もやっと時詠と勝負できるのが嬉しいぜ!」
「にひひ! この前はあんなすげえの見たけど、なんか楽しくなってきちまうな!」
「僕としても人吉君以外の一年に興味がある……スピード勝負もいいかな」
高千穂と糸島、そして宗像。
この前時詠が見せたバスケに対して、今は楽しみだと。
誰かと触れ合う、それが一番アブノーマルにとっては……大切なのかもしれない。
「ふむ……いいでしょう、恩を売るとかではなく、たまにはこういうのもね」
「そうだね……霞君、中々面白いから」
「……まあ、私もこの前のが消化不良だったし」
百町、筑前、湯前。
それぞれがやる気を見せ、時詠をジッと見ていた。
「はい……ところで、湯前さん。その服はちょっと」
「ん~気にしないでいいよ」
「いえ、そうはいってもですね……結構動きますし、それだとちょっと……」
だが、訓練前に時詠は気になることがある。
湯前のだぼっとした格好で……うん、正直たまに見えるのだ。
何がと聞かれると返答に困るものである。
「おいおい霞~そんなんで大丈夫か~?」
「糸島先輩……健全な男子に目の毒です」
13組の13人のメンバーはやはり見慣れているせいか何も言わないようだ。
しかし、ここの女子学生って結構きわどい人も多いので時詠にはきついものがあった。
めだか然り、湯前然り。
筑前や上峰は直視しても問題はないのだが、湯前だけはいろいろ見えすぎる。
「ふむ、まあ私たちは見慣れているのでいまさらですが……湯前、今回は」
「大丈夫大丈夫~……なんかあったら責任取ってもらうつもり」
「!?」
百町の言葉もスルーする湯前。
だが、そのあと気になることを言っていたが……ガムを膨らまし、相変わらず無気力な目で時詠を見る。
「……事故が起こっても知りませんからね?」
「その時はその時……君には興味もあるし、期待してるね」
「……わかりました、では」
時詠が構える。
それを見て、他のメンバーも顔が引き締まる。
「お願いします……いくぞ、アブノーマル!」
「かかってこい……ノーマル!」
時詠と13組の13人。
生徒会のものとは違う「強化合宿」が始まるのだった。
箱庭学園の乱は、まだ終わらない。
あけましておめでとうございます。
久しぶりの投稿になりますが、今年もどうかよろしくお願いします。
時詠は姉である時音をどうしたいのか、そして名瀬がついに動き出す!?
ここまで読んでいただきありがとうございました。