翌日、時詠はクラスメイトから現風紀委員会のことを聞いていた。
そうすると、色々な事実がわかったのだ。
過激すぎる
風紀を乱す者に、警告はする。
しかしそれでも聞かない場合は……らしい。
もっとも、警告をする風紀委員がいるだけマシなのだとか。
「力こそが正義、いい時代になったものだ」
「霞?」
「……いや、なんでもない」
クラスメイトに思わずそう返してしまうほど、ここは世紀末に近いようなイメージである。
正直、風紀委員会は世紀末の軍団に近いものを感じる時詠だったが
「……ま、礼だけはしないと」
クラスメイトの誘いを断り、一人で隣の三組へ。
隣も丁度授業が終わり生徒たちがそれぞれ昼食へ向おうとしている中……時詠は目的の人物を見つけた。
「やあ、鬼瀬さん」
「えっ?……貴方は確か、霞くん?」
「そうそう。昨日はありがとう……!?」
と、時詠は周囲の声を聞いた。
もっとも、ぼそぼそとしたものだったが……
(おいおい、あの鬼瀬に声かけてるぜ)
(本当……あいつも風紀委員か?)
どうやらあまり好意的な感じはしない。
風紀委員は毛嫌いされている、とは聞いていた。
しかし、これではまるで
「……なあ鬼瀬さん」
「は、はい?」
「今、暇?」
そして場所は食堂。
二人は今、向かい合ってうどんをすすっていた。
「あの……」
「ん?」
「なぜ私は霞くんとうどんを?」
「俺が誘ったからだね」
あの後、時詠は三組から鬼瀬の手を引き食堂へ。
まあ、意外にも抵抗されず……急すぎる展開に彼女も付いていけなかったのだろう。
そうして今、二人はうどんを注文しすすっている最中である。
「……鬼瀬さん、大変だね」
「え?」
「風紀委員ってだけなのにさ」
正直、やりすぎなのは少し気になる。
だがそれでも、言いすぎてしまえば……同じだ。
「私は別に、気にしていないので」
「……俺だったら耐えられないぜ」
自分が同じなら、まず無理。
メンタルが弱いとか言われるが、頑張ってるのに酷評されれば誰だって嫌ではないだろうか?
「私は自分の信じる道を行ってるだけですから」
「そっか……強いね」
「当然です!」
時詠も、正直あまり風紀委員とは事を構えたくない。
しかしいずれは、彼女らと対立する未来があるかもしれない。
別にそれはそれで、いいのだが……そうしているうちに、うどんを食べ終えていた。
会話も続かないのか、彼女も席を立とうとしているので
「なあ、鬼瀬さんって携帯持ってる?」
「?……それは、ありますけど」
「なら俺にアドレス教えてくれよ」
「えっ!?」
いきなりメアドをくれとの言葉に、鬼瀬は目を見開く。
それはそうだろう、昨日今日の出会いでいきなりなのだから。
しかし、時詠はまったく気にした感じも無く聞いていた。
「だめか?」
「な、な、な!? あ、貴方は出会ってそこらの女子に聞くのですか!?」
「……声がでかいって」
机を強くたたきながら立ち上がった鬼瀬。
と、自分の声で周囲が見ている事に気付き……顔を赤くし座り込んだ。
「一応理由を言うと、せっかく知り合ったんだし」
「……本当にそうですか?」
「実は俺、まだ他のクラスに友達居ないから……だめかな?」
「!?」
その言葉と嘘をついてない感じからして、本当に友達になりたいから聞いてるように見える。
鬼瀬は、風紀委員の自分をまったく毛嫌いしない時詠に……一瞬戸惑いながらも、口を開く。
「ま、まあそこまでいうなら教えてあげても……いい、ですけど」
「おっ! そうか! ありがとな~ちょっと待っててくれ」
そう言い笑う時詠。
友達が出来て嬉しい、そういった感情がよく伝わってくる。
一方、鬼瀬は……少し、緊張したような感じだ。
時詠はそんな鬼瀬の状態を見ないで、生徒手帳のメモ帳覧から1ページ破り……自身のアドレス、電話番号を書き記す。
「これ、俺のアドレスと番号。家に帰ってから返事をくれ」
「……わ、わかりました」
おずおずと鬼瀬はその切れ端を受け取る。
そうして、いきなり席を立ったかと思えば……すぐに食堂から出て行ってしまった。
あまりに速い動きだったので、用事があったのか、それとも……
「……あれ? 俺失敗した?」
残った時詠は、頬を掻きつつ……自分と鬼瀬の丼を持って、食堂の返却コーナーへと向った。
しかし、先ほど食堂から早々と立ち去った鬼瀬は……
「なんなんですか彼は! あんな! あんな簡単に! 女の子の手を!」
よくわからない感情を発散させるがごとく、手錠を手に壁に当たっていた。
周囲の生徒はそれから離れるように歩き……鬼瀬は、息を切らせながら止まる。
「……友達、かあ」
風紀委員になってから、友達は皆いなくなっていた。
それどころか毛嫌いされる毎日。
なのに、突然……でも、それが普通なのだ。
「友達って、気が付けば出来てたんだっけ……」
そんな簡単なことを、忘れている。
しかし、それでも彼女は風紀委員として学園の治安を維持するのが役目なのだ。
(……霞くんは、そんな私でも友達になってくれるのでしょうか?)
不安もある。
だが、この学園で始めて……同学年の男子から友達になろうと、声を掛けられた。
鬼瀬もまだ16になる少女だ、友達だって欲しいのである。
そして、一人の女子がそんな青春を謳歌している頃
「あの~これは?」
「この前は邪魔が入ったからな」
「俺たちと続きでもしようぜ」
昨日の二人組みである。
食堂から戻る際、この二人は時詠に声をかけて……今、人気の無い校舎裏へつれてきたのだ。
昨日の腹いせ、とのことらしい。
振り切っても良かったが、時詠も少しこいつらを懲りさせようと考えていた。
「続き、ですか……俺、素手なんですが」
「「卑怯万歳!」」
そう言い、木金コンビと恐れられている二人……時詠は昨日鬼瀬から聞いてやっと思い出したのだ。
ああ、そういえばいたなあと。
しかし……漫画で見ているのと現実ではやはりだいぶ差がある。
「……仕方ない、かかってくるがいい」
「「余裕ぶっこいてんじゃじゃねえぞコラ!」」
一回、痛い目に合わせようと時詠は考えた。
腕を軽く動かし、身体を左右にゆらっと動かしながら相手を待つ。
(……トキの持つ柔の拳)
「「食らえ!」」
時詠は向ってきた一人……その振るわれる金属バットをかわし、そのバットを持つ右腕に自身の左手を沿え……軽く流す。
すると、振られた右腕は金属バットを持ったまま身体をぐるっと巻き込むように回っていった。
「な、なんだこれ!?」
「兄弟!? この野郎! そんな踊りみたいな動きで!」
今度は木のバット。
肩に担ぐように、袈裟で振り下ろされたが……同じように手を沿え、相手の身体のほうへ流す。
こちらも同じように、自身の身体を巻き込むような形で腕が回された。
「げっ!?」
「その腕じゃ、しばらくバットは振れないな」
「お、おい待て!? こ、これどうするんだよ!?」
「しばらく反省してろ……夕方には腕も戻る」
そうして、その二人に背を向け時詠は歩き出す。
急がなければ午後の授業が始まってしまうからだ。
後ろで二人の悲鳴が聞こえるが、死にはしないので無視した。
(激流を制するは静水……あの二人は激流でもないけど、実感は出来た。加減できることも……生徒会の奴らとも、近いうちに顔合わせするかもな)
いずれその時はくると……しかし、時詠は気づいていない。
今の動きを、ある生徒に見られていたことを。
「……」
その生徒は、お菓子を食べ終えたのか袋を抱え……鋭いまなざしを緩める。
顔にはその童顔に似合わない笑みを浮かべながら。
時詠、ついに動き出します。
そして謎の生徒の正体とは!?……ぽきゅるるる~
登場キャラ、木金コンビ。
だが彼らの出番はまだ終わらない!
タイトルは、今後北斗の拳からいくつか使っていきます。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。