めだかボックス~北斗七星の輝き~   作:kouma

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第五話:やりすぎればいじめに見える

格差社会……いや、鬼瀬自身の「何か」を粉々にした事件から数日後。

しばらく彼女は霞とろくに口も聞いてくれなかったが、ようやくお昼を一緒にとってくれるようになった。

 

「まったく! 霞くんも霞くんです!」

 

「あはは……ま、詫びはしたから許してくれ」

 

「乙女のやわ肌を見たのですから当然です!」

 

と言いつつ、詫びの品である食堂のデザートを黙々と食べていく。

やはり甘いものは好きらしい。

 

「しかし……あの後大変だったんだね」

 

「え、ええ……あまり思い出したくありませんが」

 

どうも霞と口を利かない数日の間、生徒会のめだか&人吉と騒動があったようだ。

そして木金コンビの襲来。

だが、そこで鬼瀬はまたしてもめだかのことで……何かを感じたようだ。

 

「はあ……正直、あの人たちはどこか」

 

「違わないさ」

 

「え?」

 

鬼瀬の言いたいことはわかる。

だが、時詠はそれを否定する。

 

「なにも、違わないさ……あいつらと、君も、俺もね」

 

「か、霞……くん?」

 

雰囲気が違う。

普段話してるような感じが今の時詠から感じられないと……鬼瀬は、眼を見開く。

だが、時詠はすぐ笑顔になり

 

「気負うなって言ったろ?」

 

「……あ」

 

「ほれ、急がんと昼休み~」

 

「!?」

 

話し込んでいたせいか、気が付けば時間がまずい。

と、目の前の時詠は頬腕をつきにやにや。

 

「か、霞くんっ!」

 

「あははは、かかったな~」

 

「~~~!」

 

鬼瀬は慌ててデザートを食べていく。

その様子を、今度は微笑ましく見ている時詠。

しかし……時詠は鬼瀬から聞いていた。

 

 

 

近頃、オーケストラ部に関する苦情が殺到している事

 

 

 

大音量で、防音設備の問題でもあると言われているが……それはすでに風紀委員会にまで達していた。

確かにその件は部活動に所属していない時詠も知っている。

クラスの友達がそのことで愚痴っているからだ。

ということは

 

(……そろそろか)

 

時詠は急いで食べ終わった鬼瀬に小突かれながら、二人して教室へ。

彼女とは壱ノ2前の廊下で別れ、時詠は席に座った。

そして放課後……時詠はふらっと、部活動で精を出している生徒がいる場所を回っていた。

いつどこで起こるかまでは、実際に見ないとわからないからである。

と……近くで爆発のようなものが起こったのか、一瞬空気が震える。

 

「……」

 

時詠は周囲に誰もいないことを確認し、本来のスピードで駆けだす。

その先は校舎間をつなぐ広場、そして階段。

思った通り……階段下に、たくさんの風紀委員。

おそらくほぼ全員がそろっているのだろう。

さらに、先ほどから携帯で連絡を取っている生徒が一人いる。

 

(やれやれ、いくらなんでもリアルでああも人数差があるとなあ)

 

実は、時詠は別にめだかを慕っているわけではない。

しかし……今回は、風紀委員会のやり方が気に入らないだけである。

だから、邪魔してやろうと。

 

(ま、鬼瀬さんがいなくてよかったけど……お)

 

めだかがママチャリに乗り……これまた刺激的な格好だ。

正直、マンガとリアルでは相当見える部分が際どく……

 

(……結構来るなあ、あの格好)

 

何故あんなあられのない姿を前に男子は平然としていられるのか、と思いきや……何人かは気になっているようだ。

その証拠に、他の女子生徒に足を踏まれたりして正気に戻されている。

そんな光景に時詠はクスッと笑ってしまったが……健全で何よりだ。

しかし、どれだけいようとめだかは前に進むだけ。

 

ジグザグで、階段を、自転車で

 

あっという間に駆け抜けていくめだか。

風紀委員のだれ一人、反応できず追いつけず。

 

「……はっ!? お、追え! 追うんだ!」

 

ようやく時間が戻ってきたのか、一人が叫ぶ。

その声に反応し一斉に風紀委員らが階段を駆け上がり……止まった。

彼らの目の前にゆらっと……立ちふさがるように、立つ人影。

 

「あれ、すいませんね」

 

時詠である。

駆けだそうとした風紀委員の前をさえぎるように立っている。

その後方には……すでにめだかの影も形もない。

 

「な、なんだお前!」

 

「はあ……いえ、ちょっと皆さんの声が五月蠅いので」

 

「なっ!? お、お前! 俺たちは風紀委員だぞ! 今は生徒会の」

 

「五月蠅いって言わなかったか?」

 

「!?」

 

時詠は語尾を強める。

見れば、振るえば簡単に人を傷つけれる凶器を持った奴が何人もいる。

やりすぎてからでは、遅い時もある。

暴力には不幸な出来事もあるのだから……無論、彼らも対策ぐらいはしているだろうが

 

「風紀委員ってのはいつもこうか? 武器持って、集団でボコることしかできないのか?」

 

「それがどうした! 学園の治安維持、そして風紀を正すための正義を翳してるだけだ!」

 

(こいつら、自分が学生だって理解してるのかね……ま、そういう理屈なら)

 

時詠は眼をスッと細める。

不正をただす、そのための暴力も武装も手段の一つだ。

そして罪を犯した者への罰……と。

それで理屈が通るなら

 

「じゃあ俺は一人の女子を寄ってたかってボコろうとしたお前らが許せないので、いじめ反対としてここを動かない」

 

「なんだと?……警告はした。通さないって言うなら、風紀委員の活動を邪魔するとして排除だ!」

 

と、前にいる男子と女子が一人ずつ。

その手にあるのは……鉄パイプと縄跳びだろうか?

それらを振るい、二人は時詠を横へ弾き飛ばし……てはいなかった。

見れば時詠でなく、向かった二人が地に崩れ落ちる。

 

「!?」

 

「……やめてほしいけど」

 

時詠が持っているのは、先ほどの男女が持っていた鉄パイプと縄跳び。

その体も無傷だ。

 

「お、お前何を」

 

「……いじめ反対、やるなら正々堂々、学生らしくタイマンまでにしなよ」

 

北斗神拳は使っていない。

使う必要もないほど、彼らは弱い……格闘をかじっているわけでないのだ。

時詠は、これで彼らも止まると思っていた。

 

「風紀委員の仕事もわかります、でもそればっかに囚われないでほしい」

 

「な、なんだよ……俺たちは」

 

「やりすぎなけりゃ正義じゃねえ、いい言葉だと思う……でも、それはまだ早いんじゃないかな?」

 

時詠はそれだけ言い、先ほど倒れた二人を見る。

傷もなく、ただ気絶しているだけだった。

 

「いきなりすみませんね……お二人をお願いします」

 

「……お前、一体」

 

「ただの一年生です……少しだけ、いろんなことに首を突っ込みたがりですけど」

 

それだけ言い、時詠はその場から離れ帰宅した。

生徒会と風紀委員の対立はこの後、熾烈さを増していく。

だが時詠はこれ以上首を突っ込まない……この後が、問題なのだから。

 

(13組……か)

 

時詠にとって、もっとも気になる部分、

箱庭学園という場所で……彼は何を見るのか。

そして、今も……

 

「ふ~ん、霞 時詠だっけ……やっぱあいつって少し変わってるね~」

 

時詠の行動の一部始終を見ていた一人の女子生徒。

彼女はその足で……理事長室へと入っていった。

 




今回で風紀委員会編は終わります。
あの階段での対峙、時詠は本当にただ足止めだけが目的でした。
しかし……マンガでのめだかの恰好、正視するのは健全な男子学生だときついですね。
ついに次回から13組編突入、そして……時詠に迫る危機とは。
ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
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