よくある話である。   作:メディペール

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第3話

ハッと意識が覚醒する。目の前にちょび髭メガネのおじさんがいた。よくあるは…じめての体験である、びっくりした。

 

 

「あぁ、ちょび髭メガネの妖精が見える…」

 

 

きっと鼻メガネ〈ちょび髭付き〉の精に違いない。崇めておこう。

しかし妖精とはここまでリアルなおっさんなのか…。知らなんだ。

 

私の友達モブ山モブ子ちゃん、通称、モッちゃんは手のひらサイズのおじさんを見たことがあると言っていた。可愛げのあるおじさんと言っていたが、私の目の前にいる1/1スケールのおじさん型妖精は渋いな。渋カッコいい。

 

 

 

「こいつぁ、頭を強く打ったみたいだな。俺はロマーリオ。妖精じゃなくて悪かったね。はいどうぞ」

 

 

妖精さん、もとい、ロマーリオさんは苦笑いをしながら、水の入ったペットボトルを渡してくれた。

 

 

 

 

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現在、学校の屋上にてロマーリオさんと雲雀恭弥vsディーノの戦いを観戦している。

 

夕日が綺麗に見える。かれこれ5時間休憩を挟むことなく戦っている。帰りの会はとっくの前に終わり、現在学校に残っているのは部活勢ぐらいだ。

 

2人の動きは鈍るどころか、良くなっている。雲雀恭弥はこの数時間でかなり強くなった。つい1時間ほど前では、攻撃一辺倒で攻め、不規則に見えるムチにてカウンターを受けていたが、今ではカウンターを見切り始めている。ディーノの足さばきや回避、攻撃手法を無意識に吸収して応用している。ものすごいセンスである。

 

 

恐らく、雲雀恭弥の十数年の人生において良きライバルや格上がいなかったのであろう。大抵のヤツは持ち前のパワーとそこそこの技術で噛み殺せた。しかし、いくら雑魚を倒しても経験値は得られない。一定以上で成長は止まり伸び悩む。だがらこそディーノが雲雀恭弥に与える影響は大きい。

 

 

それからも2人は休むことなく戦い続けた。辺りもすっかり暗くなりもう少しで完全下校時刻になる。さて、そろそろ頃合いか。

 

私も2人の動きやスピード感に目が慣れた。

雲雀恭弥の戦い方。足や手の動かし方、トンファーの攻撃パターン、間合い、瞬きのタイミング、そして重心の置き方。

 

 

 

私は片レンズが割れている鼻メガネ〈ちょび髭付き〉を装着する。

 

「おう。もう帰るのか?」

 

「えぇ。お疲れ様です。ロマーリオさんまた明日」

 

「はいよ。また明日」

 

 

私は出口、ではなく雲雀恭弥の方へ歩いて行く。

 

 

 

 

「やーい、お前ん家おっばけやーしーき!!」棒読みー

 

 

ダメだ。ピクリとも反応しない。頑張れ私の挑発スキル。

 

「風の噂で聞いたんですが!黒曜中の人にやられたって本当ですかー!?」

 

雲雀恭弥が私の方を向く。

 

「黒曜の生徒に負けるなんて!!」

「先輩実はちょろい人!?」ニヤニヤ

 

これしか思いつかなかったんや…。あ、でも釣れそう。

 

 

「君から先に、咬み殺す!!」

 

やっと標的を私に代え突っ込んで来た。

 

雲雀恭弥なら五歩で詰められる距離まできた。1,2,3,4,5。左足踏み込みの右手トンファーの大振りである。大振りといってもかなり早い。現に数時間前私はこの攻撃でのされた。この攻撃を見切れるかが彼にとっての線引きなのであろう。しかし今は目が慣れ事前情報十分、もはや止まって見える。

 

 

私は身を縮め、低い体勢にて攻撃を回避。一歩踏み込み雲雀恭弥の懐に潜り込む。頭上をトンファーが切る。私の顔のすぐ横には彼のがら空きの左足(ひざ)がある。

 

 

雲雀恭弥は左足重点に右トンファーの遠心力により体が引っ張られている。この体勢から右トンファーの振り下ろしは不可能。左トンファーは後ろに下がり追撃は来ない。左足は重点。唯一の右足は動く気配がない。

 

油断したな。この一言に尽きる。

私は両手で雲雀恭弥の左足ももを掴む。

 

 

「そぉい!」

 

 

気の抜けた掛け声とともに思いっきり揺さぶりバランスを崩す。

バランスを崩した雲雀恭弥は尻餅をついた。私は一歩、二歩、三歩と後ろに下がりドヤ顔とともに鼻メガネ〈ちょび髭付き〉をクイッと掛け直す。少しヒヤリとしたが上手くいった。

 

ディーノやロマーリオさん、雲雀恭弥でさえポカンとしている。雲雀恭弥だけ徐々に表情が険しくなって来た。

 

 

 

さて、帰るか。一泡吹かせたし余は満足じゃ。

 

怒り狂っている完全戦闘体勢の雲雀恭弥にはまだ勝てない。彼の油断を誘った一回限りの裏技だった。

 

 

「それでは、さようなら。また明日。」

 

 

 

雲雀恭弥が立ち上がる前に挨拶を済ませ素早く退散。全力全開ダッシュで家まで帰った。

 

 

 

 

 

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家に帰り、シャワーを浴びて汗や砂汚れを落とした。

 

ソファにて一息つく。携帯を取り出しメールを確認するクラスメイトから何件か来ていた。

 

『インフル大丈夫かー?』とか『お大事に!』とか『嘘乙www』などなど、取り敢えずモッちゃんは後日しばくとして「大丈夫だ、問題ない」と返信しておいた。

 

 

 

冷蔵庫を確認するとピーマンが大量にあったのでピーマンの肉詰めをたくさん作った。これで3日は乗り切ろう。

 

 

テレビを付け夕食を食べながら今日のことを振り返る。

 

激動の1日であった。今世で一番精神力を消費した気がする。あと体中が筋肉痛で痛む。

 

これから原作と深く関わっていくのか……。まだ余り実感がわかないが、充実することを願うばかりだ。覚えていることをノートにまとめた方がいいのだろうか。果たして私は生き抜けるのか。考えれば考えるほど不安が強くなってくる。

 

 

夕食を食べ終わり洗い物を済ませた。気を紛らわすために携帯ゲームをしていると電話が鳴った。

 

 

『はぁーあい。めぐみちゃん元気ー?!』

 

ママンである。

 

「元気よー。どったのー?」

 

『本当に大丈夫?なんだか声が疲れてるみたいだけど…』

 

なんてこった。いつも通りを装っていたが一発で看破された。恐ろべきかーちゃんである。

 

「げ、元気!ワタシ、ゲンキヨ。ちょーゲンキ」

 

『相変わらず嘘が下手ね。誰に似たのやら』ウフフ

 

『ちゃんとご飯食べてる?』

「うん」

 

『朝起きれた?』

「うん」

 

『学校行った?』

「ウン」

 

『余り夜更かししちゃダメよ?』

「うん。わかってるよ!」

 

 

 

その後もたわいのない話を30分少々。母との長電話などよくある話である。

 

 

 

『___それじゃ、また明日ね。おやすみなさい』

 

「ハーイ、おやすみなさい」

 

 

マジでか。明日も電話来るのか。これは間違えなく毎晩電話来るパターンだな。もう私も中学生だ。心配性にもほどがある。

 

まぁ、前世の歳も含めたら両親と余り変わらないわけだが…。しかし精神年齢は体にだいぶ引っ張られている気がする。こんな私を愛してくれる両親には感謝感謝である。

 

ママと話し少し不安が安らいだ。やはりマミーは偉大である。あ、もちろんとーちゃんもである。

 

 

 

 

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ハッと意識が覚醒する。目の前にはちょび髭メガネの妖精さん…もといロマーリオさんがいた。私の右頬には湿布が貼られている。

 

場所は学校の屋上。相変わらず雲雀恭弥とディーノの戦っていた。

 

 

 

 

 

あ、ありのまま今、起こったことを話すぜ!

 

 

私は今朝、鼻メガネ〈ちょび髭付き〉(新品)を装着して学校に向かった…!だが、屋上のドアを開けてからの記憶がまるでねぇ……!

 

 

な…何を言ってるかわらねーと思うが、私も何をされたかわからなかった…。

 

痛い…。頭がどうにかなりそうだぜ…。拳だとかトンファーだとかそんなチャチなもんじゃあ、断じてねぇ。

 

もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……!!

 

 

 

ロマーリオさんに話を聞くとどうやらロマーリオさんのボス、ディーノの鞭がアゴに当たり軽い脳震盪を起こしていたようだ。事故だったらしい。どうやら雲雀恭弥がうまく誘導して私に当たるように…まて、それは事故ではなくないか。故意だよな。雲雀恭弥マジ許すまじ、まじまんじである。

 

昨日の仕返しか?なんて大人気ない手口だ。いや、中学生はまだ子供だ。落ち着け俺クールダウンだ。深呼吸だ。スーハースーハー。

 

 

 

「……、あと、コレな」

 

ロマーリオさんに粉々の何かが入った透明の袋を渡された。

 

ハッ!!

コレは鼻メガネ〈ちょび髭付き〉(新品)の残骸っ?!

 

「コレも雲雀恭弥が?!」

アイツマジ許さない。いつかメッタメタのギッタギタにしまくれるわ……!!

 

 

「いや、コレはボスが間違えて踏んづけちまって……」

 

「ギルティ」

 

「……」

 

有罪だ!ディーノは許そうかと思っていたがアイツも許さん。

いつかメッタメタのギッタギ(ry

 

 

閑話休題。

 

 

 

 

 

 

私は今、ロマーリオさん協力の下ゆっくり組手をしている。

 

形をしっかり構え、ゆっくり拳を突き出す。ロマーリオさんがゆっくりとそれを避ける。

 

次にロマーリオさんがゆっくりとパンチを繰り出し、私がそれをゆっくりと体の動きを確認しながら避ける。ただ、ひたすらこれの繰り返し。

 

なぜこのようなことをするのか。それは昨日感じた違和感の確認と修正である。昨日雲雀恭弥に一泡吹かせた時、違和感を感じヒヤリと嫌な予感がした。

 

前世の感覚で体を動かしたら体の重心が合わなかったのだ。もちろん頭脳は大人、体は子供、重心のズレはあるだろう。しかしそれだけじゃない。前世には無くて今世にはあるもの……。胸である。む、胸である!

 

大層なものがあるわけではないが、違和感がすごい。発育が悪くてよかった。少しでもこれ以上大きかったら修正できる気がしない。ちっぱいさまさまである。あれ?おかしいな。目から涙が……。

 

 

 

 

 

 

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それから数日間。ひたすら組手と観察、筋トレ。そして1日2回雲雀恭弥に挑み、苦渋を飲まされた。初日以降傷1つ付けられない、惨敗である。

 

 

 

 

 

「そろそろ、起きろー」

 

 

ゆっくりと意識が覚醒する。目の前にはロマーリオさんがいた。よくある話である。

 

そうか…。また負けたのか。強ずぎる。日に日に差が広がっていく感じがする。ロマーリオさんに起こしてもらい、いつものごとく水を貰った。

 

 

 

ピロリン♪

 

 

 

 

ちょうどメールが来た。リボーンからだ。

 

 

『ランボを保護してほしい』とのこと。

 

?。ランボ?だれ?

 

 

 

 

 




原作を余り覚えていない系主人公





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