仕事が忙しく中々書けませんでした。
そして、ついに、ついにウマ娘アプリリリースです!!!
事前DLは済ませましたので、当日を楽しみにしています。
因みに、アニメ2期が始まりましたが、ブルボンやライスの所属については、あとからテコ入れいたしますので、どうかご勘弁を。
ブライアンちゃんと何本か直線追い込みの練習をした後、今回の走り方について話し合うことにした。クロフネちゃんももう少しかかるみたいだしね。
「んー、やっぱり少し感覚がズレちゃってるかな?」
ブライアンちゃんの懸念事項について、ユエやおハナさんから聞いている。ブライアンちゃんの持ち味が、今ひとつ活かせていないというか何というか……。
「はい……私も意識はしているのですが、どうも上手くいかなくて……」
「ブライアンちゃんの良いところは、良い脚を長く保てる所だから、そこの感覚を取り戻せればいいんだけど……。やっぱり怪我が気になる?」
ブライアンちゃんは高松宮記念の後に大きな故障を発生させている。今では完治したとユエも言っているので、やはり精神的な部分だろう。
「やはり今まで体験したことがない程でしたから、躊躇してしまうことがありますね。復帰直後に比べればマシになってきたのですが」
「そっか……じゃあ、私が出来ることは、一緒に走ることとマッサージでリラックスさせることくらいかな。あ、後は一緒にご飯を食べること」
ブライアンちゃんも分かっているのだろう。だったら、私はそれを全力でフォローしてあげるだけだ。
「ふふふ、ありがとうございます。姉貴との対戦も残っていますし、絶対に克服してみせます」
腕をグッとしたブライアンちゃんの目はすでに前を向いている。うん、これなら大丈夫。
「あら、フィン先輩、もう走っているんですね」
その声に振り向くと、真っ白な髪を棚引かせたクロフネちゃんがいた。とっても気品があるお嬢様みたいな娘だけど、こう見えて根性のある娘でもある。
「あ、クロフネちゃん。遅かったね?」
「それが、会長の用事が終わったあとにアグデシちゃんに捕まってしまいまして……」
アグデシちゃんことアグネスデジタルちゃん。所々で変態と呼ばれることもある娘。元気一杯なのは良いけど、ルーに要注意ウマ娘としてマークされている。
「ありゃ、それは大変だったね。私は暖まってるから、クロフネちゃんもウォーミングアップしちゃってね」
「はい。それでは失礼しますね」
そのままクロフネちゃんは体を暖めにいった。
「クロフネ……彼女もアグネスデジタルも芝もダートもどちらも強いですよね」
「うん。どっちもG1勝ってるもんね。特にクロフネちゃん、ダートに関しては凄いからアメリカも視野に入れてるみたい」
クロフネちゃんのあのレースは公開調教と言われているが、まさしく圧勝であった。
「とってもお淑やかな娘だけど、レースになるととってもカッコいいよね」
「《淑女》と呼ばれるのも頷けるというものです」
それに比べて、よく一緒に語られるアグデジちゃんは《変態》である。この二人の差よ。まぁ、それも込み込みでアグデジちゃんは可愛らしいのだけれど。
「そう言ってくださるのは光栄ですけど、流石に恥ずかしくなってしまいます。その位でご容赦下さい」
ウォーミングアップを終えたクロフネちゃんが、クスクス微笑みながらそう言ってきた。その仕草も正しく《淑女》なのだけれど、今回は黙っておこう。
「それじゃあ私達も練習始めよっか。クロフネちゃんのストライド、勉強させてもらうね?」
「流石に恐れ多いですけど……私こそ、フィン先輩のスピード、参考にさせて頂きます」
謙遜するクロフネちゃんだけど、彼女は二つのG1タイトルと四つのレコードを持つウマ娘ちゃん。彼女のことを尊敬する後輩ちゃん達はたくさんいる。
まずは慣らしを兼ねて併んで走る。少し速めに走っているつもりだったが、クロフネちゃんは表情を変えずに軽々と併走している。数周したところで改めてスタート位置に着いた。
「それでは東海ステークスに合わせて1800mにしましょうか」
「うん。その後は1400m走ろっか」
「ふふ、ありがとうございます」
そう。クロフネちゃんもフェブラリーステークスを目標にしている。私は東海ステークスで優先出走権をとるスケジュールだが、クロフネちゃんは根岸ステークスに出走予定だ。ステップレースこそ別だが本命は同じ。本来ならこの時期に一緒に走ることはしないだろう。
だけど今回の練習はクロフネちゃんから提案されたもの。
《淑女》らしからぬ、ともすれば非難されかねない行動だ。それに気付かないクロフネちゃんではない。
それでも今回の併せを希望してきた、その理由とは。
Another side Rice Shower
「唯一抜きん出た存在になるため。これがクロフネちゃんがこのレースを望んだ理由だよ」
ユエさんの言葉に、私は思わず息を呑んだ。
この言葉自体は、学園にいる娘なら皆知っている。スクールモットーである《Eclipse first, the rest nowhere(唯一抜きん出て並ぶ者なし).》のことで、お姉様の《金環食》の名前の由来となった言葉だ。
「うん。クロフネちゃんがこの併せをしたい理由。フィンちゃんのことを押さえて一位になるためだって。私の仕事はフィンちゃんを勝たせることだけど、クロフネちゃんの目を見たら、私も最高の状態の二人のレースを見たくなっちゃったの」
そう言いながらユエさんは、とても嬉しそうに微笑んでいた。
「その目標を掲げるウマ娘は数多くいます。私もそうですが……」
ブルボンちゃんの言うとおり、私もそうだし、リョテイちゃんもその夢を持って練習に励んでいる。
だけど、お姉様の速さを前に、その夢は何度も打ち砕かれている。
そして、届くことが出来ない背中を前に、夢を諦めてしまう娘もいる。
そのことにお姉様は心を痛めている。それでも、だからこそ、お姉様は本気で相手をして、私達他のウマ娘が速くなることを促している。
「クロフネちゃん……本気でお姉様に勝ちにいくんだね」
「えぇ。先輩はダートは初挑戦ですから、その実力を測るため……だけではなさそうですね。まぁ、私でもそうしたくなりますが」
ブルボンちゃんも笑っているけど、私もその気持ちは良く分かる。
今の実力の差を測りたい。
勝ちにいく為の何かを掴みにいく。
レースでの癖を見つけ出す。
それらも勿論あるんだろう。お姉様に勝つ為には、なりふり構ってはいられないから。
だけど、そういうものを全て抜きにして、お姉様に伝えたいことがある。
「やっぱりお姉様に見てほしいもんね」
「えぇ。先輩に挑む力があることを示したい。ふふ、《淑女》と言われる彼女もやはり負けん気が強いですね」
憧れだからこそ、自分の力を見てほしい。
だから、私は……。
「やっぱり、クロフネちゃんが羨ましいなぁ……」
「えぇ。私達も負けてはいられませんね」
羨ましいけど、とても楽しみでもある。
お姉様が初めて挑むダートレース。それを迎え討つダート最強の一角であるクロフネちゃん。
この対決に心躍らない娘はいないだろう。
「先輩、どんな走りにするんだろう?」
「フェブラリーステークスを目標にしているのですから、差し気味で行くのが定石ですが……」
「お姉様、逃げたがるからなぁ……」
自在に走るお姉様だし、世界的にも差し足の切れ味が高く評価されているけれど、お姉様的には逃げたがることが多い。予定外の走り方をして、よくユエさんにお説教を受けている。
「確かに先輩、夜にツインターボ先輩とかメジロパーマー先輩のレースを見てましたね」
「そ、それは……」
「確実に逃げるよね……」
チラリとユエさんの方を見てみると、やはりというか、どよーンと肩を落としていた。
「説得はしたんだけど、どうしても見せたい逃げ方があるって聞いてくれなくて……」
「見せたい逃げ方、ですか?」
涙目のユエさんを説得するお姉様の姿が簡単に想像出来た。が、ブルボンちゃんの言うように、見せたい逃げ方というのは何だろうか。
「そういえば先輩、昨日英語でどこかに電話してましたけど、誰と話してたんでしょうか?」
すると、リョテイちゃんがふと何か思い出したようで、首を傾げていた。
「どうしたのリョテイちゃん?」
「あ、えっとですね、さっきの話で思い出したのですけど、昨日の夜先輩がどなたかと電話で話していたんです。初めは日本語でしたけど、途中から英語で話し始めたので内容は分かりませんでしたけど……あ、多分アメリカの方とですね。ベルモントステークス、とだけは分かりましたから」
確かにベルモントステークスの話が出たのならアメリカのウマ娘と話していたのだろうけど……。
「ダートの走り方でも聞いていたんでしょうか? 先輩は海外にも知り合いが多いですし……」
皆で首を傾げていると、二人の準備が終わったようだ。色々気になることもあるけど、先ずはレースに集中しないと。
「へぅ……フィンちゃん、無茶しなければいいけど……」
ユエさんは心配しているけど、私達は新しいお姉様が見られるからとてもワクワクしているのだ。
そうして、二人はスタートを切ったのであった。
Another side out
Another side Kurofune
スタートが切られた瞬間、私の前に躍り出る小さな影。
フィン先輩の速さは知っていた筈なのに、実際に体感してみると、それは想像を遥かに超えていました。
「(やはり簡単には追い縋れないのですね)」
フィン先輩が逃げの戦法をとることは何となく分かっていました。……まぁ、私のトレーナーがユエさんの愚痴を聞いていたからですが……。
ともあれ、普通のウマ娘の逃げならば、私は追い抜く自信があります。それがダートならば尚更です。
だけど、フィン先輩を相手にするならば、私も限界を超えなければ影すら踏めない。
「絶対においていかれません!!」
だから、この無理なマッチレースを組んで下さったフィン先輩やユエさんの顔に泥を塗ることなんて、私が許せません。
フィン先輩に置いていかれないように、それでも脚を残せるギリギリのペースで、最後の直線に挑む。
――――でも、貴女はこんなにも遠い。
最後の直線。私は、フィン先輩を抜くために、残しておいた脚に全ての力注ぎ込み速度を上げた。逃げの戦法を取っていたフィン先輩の背中に追い縋り、抜き去るために。
それなのにフィン先輩の背中は近付くどころか離れていく。
スズカさんのように、逃げて差す走り。だけど、フィン先輩の速さはそれ以上だ。
フィン先輩がゴール板をかけ抜けた時、私はその影を見ることすら出来なかった。
遅れてゴールした私は、疲れから手足を地面についてしまった。
「ハァ……ハァ……ッ」
「クロフネちゃん、お疲れ様。大丈夫?」
私の様子を見て、フィン先輩が心配そうにのぞき込んできてくれた。
「ハァ……ハァ……、ふぅ……。はい、ありがとうございます」
何とか呼吸を整え、その場に座り直すと、フィン先輩も私の前に座った。
「全くもぅ……フィン先輩ったら、本当にダート初めてなのですか? あんな伝説の走りを再現されてしまったらびっくりしてしまいます」
「ふふふ、私にも最強の先生がいたから。アメリカからちょっとアドバイスを貰ったの」
確かにフィン先輩には海外のウマ娘のお知り合いが多い。ブレーヴ先輩やパントレセレブルさん達、欧州ウマ娘の方々も勿論、アメリカにも知り合いは多い。
サンデーサイレンスさんやそのライバルイージーゴアさんとは特に仲が良く、良く喧嘩をするらしいお二人の仲裁に入るとか。
そして、その縁でアメリカに行った際に気に入られたのが、アメリカの英雄である《ビッグ・レッド》のお二人。
マンノウォー様とセクレタリアト様。
私はお話の中でしか存じ上げないが、それでも英雄の名に偽りない実力をお持ちの方々である。
マンノウォー様はもうお歳も召されていらっしゃるため、あまり表舞台には出てこないものの、セクレタリアト様はトレーナーとして多くのG1ウマ娘を輩出している。その時にダートの走り方を教えて頂いたり、トレーニングをしてもらったりしたそうだ。
……あとこれはサンデーサイレンスさんから聞いた話だが、セクレタリアト様はフィン先輩とニンジン大食い対決をして引き分けたらしく、物凄く気に入られたそうだ。その後のパーティーの写真では、セクレタリアト様の膝の上でニンジンをポリポリしているフィン先輩が写っていた。
「ふふふ、そのお二方のご指導でしたら、是非ともお受けしたいですね」
「それじゃあ受けてみる? クロフネちゃんのレースを見せたら興味津々だったから、受けてもらえると思うけど」
思わぬ幸運。普通の方の言葉なら社交辞令だが、フィン先輩は嘘は言わない方だ。
ならば、私は遠慮はしない。
「はい、是非ともお願いします」
「分かった。まぁ、お二人ともお忙しいから、いつ日本に来れるかは分からないけど、今度連絡はしておくね」
「ふふふ、楽しみですけれど、気長にお待ちしてます」
全ては、愛らしく気高い先輩の先を走るために。
私だけではなく、トレセン学園に通うウマ娘全員が目指す悲願。誰もが願わくば一番に達成するために切磋琢磨している。
「それじゃあ、もう一本走ったら、私達も坂路走ろっか。リョテイちゃんの様子も見てあげたいし」
「はい。私もあの娘がどこまで強くなれるか、とても楽しみですから」
私もフィン先輩と共に過ごしている内に、後輩を育てる楽しみに目覚めてしまった。普段はチームの娘のトレーニングに付き合っているけれど、キンイロリョテイさんの成長振りは見ていてとても楽しい。それは私だけではなく、ミホノブルボンさんやライスシャワーさん、それにダンシングブレーヴさんやパントレセレブルさんも同じなのだろう。
キンイロリョテイさん自身はいつもフラフラになっていますが、それでも彼女の夢を叶える為に、皆の期待を背負い走り続けている。
そんな健気な娘を見てしまっては、先輩として放ってはおけません。
「それでしたら、坂路の後にダートでも走りましょうか。足腰のトレーニングにもなると思いますよ」
「あ、そうだね。スタミナがギリギリの所でのスパートをかける練習にもなるよね」
ですので、キンイロリョテイさん? そんなにビクビクキョロキョロしないで下さいね? 私達はあなたが可愛くてしかたないのですから。
Another side end