申し訳ありません。盆休みの内に沢山書くつもりが、いつの間にかサバフェスに熱中しすぎて書くことを忘れていました。
これからもFGOとかでイベントが来るとこうなる可能性が高いので、何卒ご容赦の程よろしくお願い申し上げます。
……水着ジャンヌ欲しいなぁ(´・ω・`)
柔らかな日差しを顔に浴び、耳に届く小鳥達の囀りによって微睡んでいた凛の意識は眠りから徐々に覚めていく。
「うぁ……?」
いつもは目が覚めると同時に聞こえてくる喧しい目覚まし時計の音が聞こえず、不思議に思いながら凛はうっすらと目を開けつつぼんやりとした意識の中で顔を上げる。
半目になっている凛の視界の先にあったのはいつも見慣れた自分の部屋ではなく、キッチンが備え付けられている和風の部屋だった。
「えっ……って、あぁ」
凛は一瞬ここは何処なのだろうかと思うも、数拍空けて昨日のことを思い出し納得した。
昨日の夜、セイバーと士郎の戦いが終わった後に凛は校庭に残された証拠を隠滅する為に慌てて士郎達と共に学校へと向かい、無事に証拠隠滅をして一仕事を終えて疲れた凛が家へと帰ろうとするも士郎とセイバーに肩を掴まれて強引に衛宮家へと連行された。
そして、道場の修理を手伝わされた後に居間に戻って凛が聖杯に掛ける望みやアーチャーについての情報などを喋らされ(喋らなければ確実に武力行使されていたのでほぼ強制である)、それと引き換えに真名や宝具を除いたセイバーについての情報を教えられたりして、最終的には士郎達セイバー陣営と同盟関係を結んだ所で体力と精神力が尽き果てた凛はそのまま居間のテーブルに突っ伏して寝てしまったのだ。
「頭が痛いわ……」
それはテーブルに突っ伏して寝ていたせいなのか、はたまた聖杯戦争1日目から意味不明な事態に巻き込まれたせいなのか。
恐らくは後者だと思いつつ、凛はヨロヨロと立ち上がって思いっきり背伸びをして固まった身体を解す。
「あれ?士郎とセイバーは?」
「セイバー達なら今は道場の方に居るぞ」
昨日まで一緒に居た筈の士郎とセイバーの姿が見えず、凛が不思議そうに首を傾げていると、キッチンの方からそんな声が聞こえてきた。
「アーチャー、アンタいつの間に────」
キッチンの方へと目を向けた瞬間、凛は絶句する。
昨夜に見せた黒と白の双剣の代わりに見るからに出来たてホヤホヤのフレンチトーストを乗せた皿とお茶の入ったコップを持ち、赤い外套ではなく女の子が着るようなフリフリの付いたエプロンを身に付けたままキッチンから出てきたアーチャー。
その姿は英霊と呼ぶよりもサーヴァントの本来の意味として使われる召使いの方が相応しく────
「む?どうした、マスター」
首を傾げるアーチャーを見て凛の中で何かがブツっと切れると同時に身体がよろめき、フラフラとしながら思わず再び座り込んでテーブルへと突っ伏した。
「おい、マスター。昨日からの疲れが残っているのは理解出来るが、かといって二度寝は身体によくないぞ。それに、同盟関係を結んでいるからと言っても此処は敵地だ。無防備に寝るのは愚策だと言えよう」
「もう黙ってなさいよバカァ……」
召使いなのか母親なのか、それとも英霊なのか。凛はアーチャーのことがよく分からなくなってきた。
☆☆☆
朝から自分のサーヴァントのことが分からなくなってきた凛とは対象的に、傷一つ無く元通りとなった道場に居る士郎は自分のサーヴァントであるセイバーのことがよく分かってきていた。
「なるほど、刀とは本当に斬ることに特化した剣なのですね。私の故郷にあった剣とは大違いです」
「利便性で言えば西洋剣の方が優れてはいるだろうがな。斬る、突く、叩く、たったそれだけでも戦いにおいて出来る選択肢が増えるというのは充分にメリットがある」
そう言って士郎が今朝の内に蔵の中から持ち出してきた日本刀の模擬刀を手にしながら、セイバーは真剣な顔で刀を考察している。
これは凛が寝落ちした後に士郎がセイバーと話してみたからこそ分かったことなのだが、セイバーは聖杯から現代についての知識を与えられてはいるものの、実際にその知識を理解しているとは言えなかったのだ。
幼い子供におもちゃを渡したところで使い方が分からないのと同じように、セイバーもまた現代にある様々な物の使い方をよく理解していなかった。
だから士郎はまず手始めに、セイバーに現代にあるテレビやエアコンといった家電製品を触らせてみたのだが、最初こそ驚いたりするものの少し経てばセイバーの興味は薄れていった。
どうにもこの手の物はセイバーにとってさして気にするような物ではないらしく、ならばと士郎は他の物に触らせてみることにした。
セイバーは剣を使う。ということで蔵の中に何故か置いてあった日本刀の模擬刀を持たせてみた所、先の家電製品とは打って変わってかなりの興味を示したのだ。
……示したのだが。
「両面に刃を作るのではなく片面を反らせることで鞘に入れた状態から抜刀しやすくして……あぁ、なるほど。だからここが……」
かれこれ1時間。セイバーの興味は未だに刀から離れようとしなかった。
まさかここまでの興味を持たれるとは士郎としても思ってもいなかったが、しかしおかげでセイバーのことをある程度は理解出来た。
何事にも真面目に取り組むが興味のある物に対しては殊更取り組み、何者にも律儀で丁寧な対応をし、そして誰であろうと絶対に勝とうとする負けず嫌い。
士郎のクラスメイトである後藤の言葉を借りるとすれば、セイバーは所謂『委員長属性』とやらを持った頑固者なのだ。
英霊に対してそんな表現の仕方はどうかと思うも、セイバーは分かりやすく表現するとしたらこれが適切だろう。
「はっ!?すみません、マスター!つい刀を見ることに没頭してしまいました……」
「構わん……が、少し時間を使い過ぎたな」
道場に掛けてある時計を見てみれば、時刻は既に8時を回っている。
サーヴァントであるセイバーはともかくとして、学生の身分である士郎としてはそろそろ学校に向かう準備をしなくてはいけなかった。
「そろそろ本邸に戻るとしよう。朝食の時間だ」
「分かりました」
蔵に戻すのも面倒なのでセイバーが持っていた模擬刀を竹刀と同様に道場の壁に立て掛けてから士郎はセイバーを連れて道場を出て行く。
いつもなら本邸に戻る途中に漂ってくる美味しそうな料理の香りは今日はしない。
それはいつも料理を作ってくれている桜に士郎がケータイで来なくてもいいことを旨としたメールを今日の朝の内に送ったのが原因であった。
何の関係もない一般人である桜を聖杯戦争に巻き込まない為に取った行動ではあるが、これにより士郎達は自分の分の朝食を自分で作らなければならなくなった。
しかし子供の頃から料理の出来ない姉と飯ならジャンクフードで充分と考えていた養父に代わって衛宮家の料理を毎日作っていた士郎にとってそのことはさして問題では無い。
……問題は別のところにあった。
「セイバー、お前に食わせる必要な分はどれくらいあれば充分だ?」
「そうですね……とりあえず沢山としか」
士郎の問い掛けに困った表情を浮かべるセイバー。一般人にとっては何もおかしくない会話だが、魔術師からしてみればこの2人の会話が如何におかしいか理解出来るだろう。
通常、サーヴァントが飯を食べる必要は一切無い。だがしかし、士郎とセイバーの会話からはまるでサーヴァントが飯を取る必要があるように感じられる。
この矛盾が発生している原因はただ一つ、魔術師としての士郎の未熟さにあった。
士郎は戦闘者としてならば一流の腕を持っているが、魔術師としては間違いなく三流以下だ。
そんな見習いと言っても過言ではない魔術師がサーヴァントを召喚すれば、何の影響も出ない筈が無い。
その判断の元、寝落ちする前の凛と共に士郎がアーチャーとセイバーを比べながら確認してみたところ、幾つかの不具合が発見された。
まず一つ目に魔力供給の不足。これは士郎の魔力量が少ないせいであり、それを補う為にセイバーは食事や睡眠といったサーヴァントにとって必要とされない行動を余儀なくされた。
二つ目に霊体化の不可。これは直接の原因が不明であるが、士郎の未熟さと召喚に問題があったと予想しており、セイバーはサーヴァントとしての大きなアドバンテージを失うこととなった。
そして最後に
サーヴァントは召喚される際にクラスやマスターの力量、そして召喚される土地などの要因によってステータスの評価が上下に変動するものの、召喚されればそれは固定化される。
しかし、何故かセイバーは違っていた。BからA、AからB、BからCという風に、まるで回り続けるスロットのように常にステータスが変動し続けているのだ。
セイバーが隠蔽系の宝具を持っていればこの現象にも納得出来たのだが、どうやらセイバー自身にも身に覚えは無いらしかった。
とりあえず士郎の未熟が原因と仮定されたが、本当の所はどうなのか誰にも判明されていない。
アーチャーのように記憶を失っている訳ではないが、それを差し引いてでも今のセイバーの状態はあまりにも酷いことになっていると言えた。
「沢山か……食材が足りるといいが」
「あの、少しぐらいなら食事を抜いても動けますので、マスターが無理に気を使う必要はありませんよ?」
「そうもいかん。戦いに向けて準備を怠るのは愚か者のすること。お前に背中を預ける以上、何時如何なる時であっても万全でなくてはならない。違うか?」
「マスター……いえ、その通りです。確かに戦士ならば常在戦場は当たり前のこととして肝に銘じておかなければなりません。私が間違っていました」
「分かればいい」
胸に抱く望みは違えど、理念や性格などの内面が瓜二つと言っていい程に似通っている士郎とセイバーの相性は非常に良く、2人はますます意気投合していく。
これが聖杯戦争の後に聖杯を巡って戦いをする誓いを立てた者達とは傍目からではとてもではないが見えないだろう。
むしろ会話さえ除けば二人の姿はまるで────
「ん……?マスター、何やら美味しそうな香りがしませんか?」
「む?ふむ……言われてみれば確かにそうだな」
本邸へと戻り、居間へと近付くに連れて漂ってきた美味しそうな料理の香り。
しかしそれは桜の居ない今日に限ってはある筈の無い物であり、怪訝に思いながら居間の襖を開けてみれば、そこには何とも不思議な光景が広がっていた。
「来たか。そろそろ来る頃だと思ってついでに準備しておいたぞ。幾つかの食材と台所を使わせてもらったが、まぁ許せ」
テーブルの上に置かれた見るからに美味しそうな料理の数々。それを死んだ目をしながら無言で食べている凛に、何処か得意気な顔をしている桜のエプロンを身に付けているアーチャー。
色々とツッコミたい部分はあるものの、先程の言葉的にこの数々の料理を作ったのはアーチャーということになるが英霊がここまで現代の食事に精通してるのは明らかにおかしい。
「アーチャー、お前はいったい何者なんだ?」
「さてね、私としてもそれは是非とも知りたいところだ」
そう言って士郎の問い掛けをはぐらかしたアーチャーの顔には自嘲するかのような笑みが浮かんでおり、それ以上何かを言うことは無かった。