大海賊時代・22年
涼音のような女声に続く帆のはためき音。錨縄を手繰る威勢のいい男女の掛け声。船着き場から投げ掛けられる大勢の人々の歓声。
だがそんな平和で晴れ晴れしい旅立ちは、未来の海賊王を名乗る少女船長ルフィにとって無縁のものであった。
「 あー、こりゃメシ食って生命帰還で復活しちまってんな。倒す最高のチャンスを棒に振っちまったぜ、ちくしょうが…! ったく、ただでさえこんなエロかわい子ちゃんをいい大人が全力出して襲うだけでも嫌な絵面だってのに…!」
「誰が”エロかわい子ちゃん”よ、このヘンタイっ! もうっ何でもいいからおじいちゃんと一緒にあっち行って!!」
「NO~! 生娘なお嬢ちゃんには悪ィが、男ってのはみんなヘンタイなんだぜ? 逃がさねェよ…っ!!」
最初に彼女のキャラベル船に襲い掛かったのは、海軍の最高戦力こと『海軍大将”青雉”クザン』。屈指の戦力”王下七武海”三名の尽力で追い詰めた世界政府の裏切り者を討伐せんと、海をも凍らせる極寒の冷気が大男から放たれる。
「”
「”ゴムゴムの
対する船長ルフィはゴムの摩擦と血流加速で生み出した高熱を腕に纏わせ、無数の炎の拳の弾幕を放つ。
それは『バラティエ』での対面で少女が男の攻撃から料理店を守った、両者の攻防の繰り返し。だが、あの満身創痍の海賊娘と今の気力溢れる彼女の攻撃が同等であるなど、受けた海軍大将が見誤るはずもない。
「…ッ!だからゴムに炎は卑怯だってお嬢ちゃん…っ! “
火山噴火にも匹敵するルフィの炎熱の大技を前にし、不利を悟った海軍大将は即座に“
爆炎、水蒸気、氷砕片。
それらが吹き荒れるルフィ、クザン両者の間合いは双方に僅かばかりの空白の時を与える。
「よし、今のうちに…! ゾロ、サンジ、
『ラジャー、船長!』
「膨らむのはナミに怒られちゃうから、これで風を送りましょ “ゴムゴムのつっぱり突風”!!」
仲間の男性陣に船の帆を任せたルフィは、掌裏で連打した空気を海賊船のマストへ一気に叩き付けた。ミシミシと軋む異音を上げながら『ゴーイング・メリー号』が少女の生み出す強烈な推進力を受け大海原を疾走する。
だが、ルフィを追う刺客は”青雉”一人ではない。
「 ”
突如、立ち上る水蒸気の中から無数の桃色光の矢が飛び出した。
「なっ、嘘おっ!? あ、あれってまさか…!」
「ぎゃあああっ!! あの石化女まで復活してるううう!!」
「うおおおっ!! 美の女神よ!おれを石にしてく じゃなくて、船はおれが守るぞおおおっ!!」
「…師匠との今生の別れかもしれねェのに立ち直り早ェな、このエロコック」
水煙を斬り裂き『麦わら海賊団』へ接近してきたのは、一隻の朱塗りのジャンク船。
その船首に佇む追手の正体は、討伐部隊主力の一角『”海賊女帝”ボア・ハンコック』であった。
世界政府が発令したモンキー・D・ルフィ討伐作戦の正規戦力は三名の”王下七武海”。不本意ながら単独で部隊の先遣隊を務めた彼女は、標的の海賊娘ルフィの驚異的な実力の前に一度屈してしまった。
だが今、美貌の女海賊の後ろには、皇帝を慕う百戦錬磨の覇気使いたちがいた。
「よくも蛇姫様を…ッ!!」
「お姉さまの美肌が…美肌が…ッ!! 許すまじ小娘ェェェッッ!!」
『待てーっ! “麦わら”ァァァッ!!』
女船長の頭上にはためく海賊旗に描かれているのは、舵輪を成す九匹の蛇。女ヶ島アマゾンリリー帝国屈指の精鋭のみが入団を許される、
二匹の巨大海蛇“遊蛇”に曳かれる海賊船では、崇拝する女帝を傷物にした小娘への殺意と憤怒の波動が竜巻のように渦巻いている。
「ハンコック…! “鷹の目”との戦いの途中から覇気が消えてたからちょっと心配だったけど、あれに巻き込まれずに回避出来るなんてやっぱり手強いわね…! でもその攻撃はもう見切ったわっ! “飛ぶ指銃・撥の群”!!」
迫り来る石化の矢を打ち落としながら、ルフィはあの巨大な岩島を消し飛ばした己の全力全開の大技から退避するハンコックの実力に舌を巻く。思えばあの陸地も彼女がメロメロの実の能力で生み出したもの。それほどの実力者が、他者の決闘の余波程度で脱落することなどあり得るはずがない。
「くっ、また小手先でわらわの攻撃を…っ! 貴様だけは許さぬ! 地の果てまで追い掛けてわらわ自ら引導をくれてやるわァッ!!」
「我ら『九蛇海賊団』を舐めるな、“麦わら”の小娘! 戦列砲放て!!」
『撃てェッ!!』
激情と共に飛んでくる強敵の猛攻からルフィは油断なく船を守る。その背に、一味の頼りになる天才航海士が歓喜と共に吉報を届けてくれた。
「…ッ!ルフィ、“常東風”を掴んだわ! これから最大船速に入るから二人ともあともう少しだけ粘ってちょうだい…っ!」
「任せて、スーパールフィちゃんは無敵なんだからっ!」
「はぁん…♡ 流石我が一味の乙女たち、なんて可憐なんだ…」
姉貴分ナミの言葉の通り、一味一同の体に吹き付ける海風が一気に強まる。『ゴーイング・メリー号』が、南西の
「くっ、しまった! “麦わら”に逃げられる…っ!」
「このままじゃ引き離されるわ! 遊蛇たちは何をしているの!?」
「こっ、これ以上は無理です! ただでさえ傷が癒えていないのに…!」
追い掛ける『九蛇海賊団』から標的の海賊船がみるみるうちに離れて行く。しかしその差を埋める手段が間に合わない。一味の主要推進力である船曳の海蛇たちが消耗しており速度が出せないのだ。
元々『九蛇海賊団』はこの三日間、
そして長い強行軍を経て満身創痍の蛇たちに、海域随一の追い風に乗った敵のキャラベル船を捉えるだけの力は最早残っていなかった。
「うおお凄ェ、帆船最速のジャンク船を引き離してやがる! おれらのメリーめちゃくちゃ速ェじゃねェか!」
「あの船曳いてる蛇たちが弱ってるみたいだし、それにウチの航海士はこの私なのよ? 今更あいつらが本来自慢の風力推進に変えてももう遅いっての、バーカ!」
「麗しきナミさん…! おれの女神は美しいだけじゃなく、卓越した航海術までお持ちだったのですね…っ!!」
「…お前の女神は何人いるんだよ」
思わぬ優位に沸き立つ『ゴーイング・メリー号』の甲板。
だが、一同の笑顔は長くは続かない。
『うわっ!?』
はしゃぐ彼ら彼女らの耳に不気味な飛翔音が届く。そして右舷近くに大きな水柱が立ち上った。
炸裂、榴弾による艦砲射撃だ。
「こ、今度は何だよちくしょおおっ!?」
「…ッ!見てルフィ! あそこ!」
一味は叫ぶナミの指先へ目を向ける。そこにあったのは、大空に羽ばたく蒼き鴎を高々と掲げた、一隻の軍船であった。
船首を飾る猛犬、両舷に開かれた幾つもの砲門。
“海軍の英雄”「拳骨のガープ」の搭乗艦だ。
「 久しぶり、ルフィちゃん」
「ボガードさん!? お久しぶりねっ、四ヶ月前以来かしら!」
ルフィの見聞色の覇気が戦場の遠方で呟かれた知人の挨拶を耳聡く捉える。少女が物心付く以前より祖父ガープの副官を務めてきた、海軍本部中佐ボガードだ。
艦長が不在の軍艦を仕切る彼の口から、尊敬する英雄の孫娘へ向けた残念そうな声が上がる。
「全く、君には困ったものだ。ガープ中将の英雄譚に一切関心が無いのは気付いていたが、まさか海賊に憧れていたとは……つくづくあの人も報われない」
「むっ、ボガードさんも私を狙うのね! いいわ、かかって来なさいっ!」
親しい海軍将校のいつも通りの愛情の中に、確かな敵意が渦を巻く。彼の内心を読み取ったルフィは、同じ戦意で以て彼を迎え撃とうと船尾の高欄に飛び乗り仁王立ちする。
そんな好戦的な船長へ、狙撃手ウソップが慌てて縋り付いた。
「お、おい何言ってんだルフィ! あれお前の爺さんの船なんじゃねェのか?! み、身内なんだから何とか見逃してもらえたりとかよぉ…!」
「何言ってんのよウソップ。相手は海軍よ? 私たち海賊の敵じゃない。それに見逃すも何も、おじいちゃんなら今”鷹の目”しか見てないからこっちの戦いとは関係ないわ。大人しく応戦お願いねっ!」
ルフィの笑顔の船長命令に、戦闘禁止で暇をしている剣士ゾロが嫌らしい笑みで便乗する。
「…だ、そうだぜウソップ。またお前の故郷でのときみてェに一発爆沈で頼むわ」
「一発轟沈だと? へぇーこの長鼻野郎、そんなに凄かったのか……楽しみだ」
「期待してくれていいわ、サンジくん。この”キャプテン・ウソップ”さんなら絶対やってくれるもの、ね♪」
「イヤアアアアア!!」
一味の期待に長鼻狙撃手の胃が不調を訴える。
だが緊迫した状況で弱音は吐けど、戦意は未だ健在。
今の彼は”未来の海賊王のクルー”という自負を持つ、一人の男である。ボロボロの体を引き摺り、皆を守り、「見捨てないで」と涙ながらに一味に懇願する船長の姿を見てしまった少年には、応えなくてはならない想いがあるのだ。
そんな彼女に頼られて奮い立たぬなど、目指す”勇敢な海の戦士”どころか”漢”が廃るというもの。
半ば自暴自棄に震える体へ鞭を打ったウソップは、責任分散のために一味の客人二人ジョニーとヨサクを巻き込むことにした。
「~~ッッコンちくしょおおおっ、やってやらァーッ!! おい賞金稼ぎのバカコンビ! 大砲は準備出来てんだろうなぁっ!?」
「ふっ、無論! そう来るだろうと思って 」
「紙一重で準備完了っす、ウソップのアニキ!」
「出来てんのかよっ!」
ルフィ船長の鉄拳制裁で『麦わら海賊団』の雑用に成り下がっている哀れな賞金稼ぎユニット。彼らもウソップ同様、少女の涙に心打たれた者の二人である。
惚れた弱みと言うべきか、男たちはかつてない命の危機に怖気付くことなくルフィを陰ながら支えようと励んでいた。少年狙撃手はそんなジョニーとヨサクに日課のツッコミを入れながらも感謝する。
「だあああもう後には引けねェ、おれは百発百中のウソップさまだァーッ! これでも喰らいやがれ、海軍ッッ!!」
『撃てえええァァァッッ!!』
仲間たちの声援を受け、狙撃手は渾身の思いで火種棒をカルヴァリン砲の火口へ突き立てる。
重音が一同の胸に響き、砲弾が勢いよく敵『ブル・ハウンド号』へ飛翔する。その狙いは正確無比の言葉さえも霞むほど。まるで魔法のように、ウソップが放った18ポンド実体弾は敵艦の左舷砲門の一つへ吸い込まれていった。
それは大砲の戦列が敷かれる砲甲板。潤沢な火薬に榴弾が犇めく、軍艦の急所。
あのゲッコー海海戦の再現か。米粒のような砲弾の軌跡を見つめる、少年の武勇伝に立ち会った海賊たちは、このとき誰もがそう思った。
「 侮るなよ、海賊共」
だが彼ら彼女らの敵は、世界有数の精鋭部隊。
その声が直接耳に届いたわけではない。しかし一同がそう幻聞した瞬間。一筋の紫電が敵艦の舷側に走り、砲甲板に命中した筈の砲弾が膾切りのように散り散りとなった。
『なっ!?』
「ヒヤアアアうそおおお!!?」
「…ッ! へぇ、やるじゃねェか…!」
多くの声がメリー号の甲板に揃い木霊する。渾身の一撃を斬り伏せられたウソップは悲鳴を上げ、腕の立つ剣士の技前にゾロが感嘆の声を零す。
「……我らは海軍本部。全世界から選ばれた一握りの益荒男女傑が集う、正義の最高戦力だ。一兵卒に至るまでの“世界の違い”を、
『撃てェッ!!』
見事な剣技を披露したボガードが何事も無く刀を鞘へ納め、部下に第二射を指示する。
ドッオオオン!と心臓に響く砲撃音が『麦わら海賊団』へ届き、続いて大粒の黒点が恐ろしい放物線を描きながら届いた音を追従した。
そこで船長ルフィは、その全てが一味のキャラベル船の進行方向へ狂いなく迫り 突如、周囲の海が凍り付く未来を覇気で“見る”。
「ッ、来たわね“青雉”…っ! サンジ、砲弾を!」
「Yes, Ma'am!」
「他のみんなは伏せてっ、あの吹雪が来るわ! “ゴムゴムの
少女が炎の拳の暴風を解き放った瞬間、覇気で幻視した通りの肌を劈く冷気が『ゴーイング・メリー号』を襲った。
撒いたはずの海軍大将が再度追撃を開始したようだ。
「ぐぅぅ…ッよし、今だ! ルフィちゃん、頭上失礼するぜ!」
「ええ! 迎撃お願い、サンジっ!」
「御意にございます、姫! …ふっ、女性を一人矢面に立たせるなんざ”愛の奴隷騎士”が聞いて呆れるぜ! “
ルフィと敵の攻撃の鍔迫り合いが放つ余波に耐えきり、甲板から飛び上がったサンジが迫る『ブル・ハウンド号』の砲弾の軌道を足技の柔術で逸らす。
着弾したのはメリー号から大きく離れた氷の海面。硬質な破砕音を上げ爆発した榴弾は、鋭利な氷片を周囲に撒き散らした。
「ほげええええ、またあの氷野郎が来たあああ!!」
「な、泣き言言わないのウソップ! ジョニーたちも早く次弾装填急いで! ルフィ、何も見えないからこの霧掃ってちょうだい!」
「ええ、任せてっ!」
航海士の要求通りルフィは覇気を込めた腕を無造作に振り、霧を晴らす。
だが開かれた眼前に広がっていたのは、今まで見たことも無い、極寒の氷獄。
追手の海軍大将が生み出した、そびえ立つ氷の巨島が一味の進路を塞いでいた。
「ほああああっ!? ヤバいヤバいヤバい道がねェェッ!!」
「今度は氷の大陸ぅ!? いつの間にあんなの出来たのよ、もう天変地異はこりごりだってのにーッ!!」
「おいおい、
突然現れた断崖絶壁に海賊たちは立ち竦む。
だが、彼ら彼女らの親分の覇道は、この程度の障壁で止めることなど出来はしない。
「大丈夫よみんな! ナミっ、私が何とかするからあなたはメリーを直進させて!」
「直進んん!? い、いいいいのねルフィ? ホントにいいのね!? 止まれないからもうこのままいくわよ!? 信じてるからねっ!!?」
突然の無茶ぶりにナミが泣きベソを掻きながらヤケになる。そんな航海士を無視し、少女は一瞬で黒雷と蒸気を纏い空へ飛びあがると、“ギア
「”ゴムゴムの
『うぎゃああっ!?』
舷縁に吹き飛ばされるほどの衝撃波が吹き荒れ、一味のクルーたちは甲板を転げ回る。
直後、凄まじい爆音が響き渡り、混乱する視界を必死で正した一同は
「あば、あばば…壁が…氷の大陸が…真っ二つに…」
船首の先に巨大な氷の渓谷を見た。
「す、げェ……流石ルフィちゃん…! 未来の海賊王…!」
「…ッ、いつ見ても気が狂っちまいそうな馬鹿げた覇気だぜ、ったく」
「かっ…ぁ……! …ねっ、ねぇルフィ、あんたホントにマジで人間なの? 私夢見てるワケじゃないわよね…!?」
敵も敵なら味方も味方。この半日で無数の地獄を見させられ、クルーたちの開いた口はいつまでたっても塞がらない。ショックで命を放棄しないのは、不本意な”慣れ”か。はたまた、それこそが”王”の臣下の素質であるからか。
「むっ、失礼ね! “新世界”に行ったらこれくらい出来る人結構いるわよ、10人くらい」
「“10人”って全く気休めになんないわよバカァッ!!」
「もうっ、さっきから何よナミ! なんでこんなときにまで私のことバカ扱いす あ、また敵が来る!」
「バカをバカって呼んで何が悪いのよ、このバーカ! ばーか! うわぁーん!」
「おいナミが幼児退行しやがったぞ! 何とかしてやれルフィ!」
「出来ることなら退行してしまいたいっての! あんたはさっさと追手に鉄弾命中させなさいウソップ! 代わりにあんたの頭砲口に詰め込むわよっ!?」
「もう無茶苦茶だあああ!!」
「ちょっと、油断し過ぎよあなたたち! 上を見なさい、敵が来るわよ!?」
度重なる理不尽な驚天動地に遂に半狂乱になってしまった『麦わら海賊団』のクルーたち。
そんな彼ら彼女らが突入した氷の渓谷に、豪速の何かが吹き飛んで来た。
『ぎゃあああっ!?』
今度は何だ。号泣しながら抱き合うナミとウソップを尻目に、一味の戦闘員たちは眼前の氷壁に激突した物体へ意識を向ける。
砕け散り崩落する氷の塊から船を守り、白煙が去った絶壁の大穴を凝視したゾロたちは、そこに現れた人物の姿に驚愕した。
「 ぐっ…流石は“英雄”…! 老いて尚その自慢の拳は健在か…っ!」
かつての気高い佇まいが影も形も無い、襤褸雑巾のような様。
祖父孫娘と立て続けに死闘を交わした、最強の王下七武海『“鷹の目”のミホーク』の無様な姿がそこにあった。
「…ッ!あいつ…っ!」
宿敵の登場にゾロは思わず立ち上がる。受けた胸の傷が疼き出したのは、男の屈辱が生んだ錯覚だろうか。つい数刻前に味わった彼我の実力差も忘れ、剣士は己の亡き親友と…そして己の船長と交わした大切な約束を果たさんと、未熟な覇気を研ぎ澄ませる。
「あ、あ……ぜ、前後で敵に挟まれた…!」
「『バラティエ』で倒したはずなのに、あいつ…まだルフィを狙おうっての…!?」
「くっ…ルフィちゃん、おれの後ろに…っ!」
だが、誰もが彼のように奮い立てるはずがない。一日で体験した無数の地獄。その中でも随一の恐怖であったあの”鷹の目”に道を塞がれ、クルーたちは絶望にその顔を歪ませる。
そして…
「 許さん…許さんぞぉぉぉ……”鷹の目”ェェェッッ!!」
孫娘を傷物にされたと怒張する最恐の爺バカが、任務も立場も全て忘れた修羅と化し、氷の巨壁を粉砕しながら舞台の壇上に再度、その姿を現した。