エールちゃんの冒険   作:RuiCa

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※ ちょいエロ


シーウィードの夜

 リーザス首都近くにシーウィードが到着した。

 

 長田君がエールの泊まっている部屋で冒険の荷物を整理しながらそんな話をする。

「懐かしいよなー!せっかくなら俺もシーウィード行って前のリベンジをーって、そんな金ないけど」

 シーウィードは超高級売春宿。その利用料金は一介の冒険者であるエール達が払えるような額ではないだろう。

 残念そうにしている長田君にエールはどうせ入れても割れるだけ、と言った。

「お前、何でそーいうこと言うの!」

 長田君がエールをぺしぺしと叩いた。

 

 二人は明後日にはリーザスを発つ予定になっている。

 シーウィード来るの間に合って良かった、と言いながらエールは立ち上がった。

 

「あれ? エールがシーウィードなんかに何しに行くん?」

 日光さんがカフェさんと話がしたいって言うから預けてくる、と日光を持ち上げた。

「ありがとうございます、エールさん。よろしくお願いしますね」

「日光さんとカフェさんって知り合いなんだっけ?」

「はい、私がこの姿になる前からの昔馴染みです」

「へー……って、あれ。そうするとカフェさんって年いくつ?」

 エールも気になるが女性に年を聞くのは良くないこと、と言って長田君を残してシーウィードに向かった。

 

………

 

 日光を持っているという事もあってか、シーウィードのボーイに話をするとすぐにカフェに話が通される。

「いらっしゃい。久しぶりだね」

 シーウィードのオーナー、カフェ・アートフルとの久しぶりの再会である。

 エールより少し小さいぐらいの小柄な体型、丸い眼鏡と三つ編みが似合っているそのどこか素朴な姿は全く売春宿のオーナーには見えない。しかし姉のリセットや神であるベゼルアイとはまた違う、見た目にそぐわない大人の雰囲気……例えるならば気さくな近所のお姉さんかお婆ちゃんか、そういった温かさを感じる女性だった。

 

 エールが人類が魔王の脅威から解放されたことを改めて話すと、カフェは感慨深く少し目を瞑る。

「ブリティシュからも聞いてたけど……本当に、本当に終わったんだ。私達には、他の人達じゃできなかったこと、やってくれたんだね」

 ゆっくりと目を開けてエールの手をぎゅっと握ると、

「ありがとう!」

 可愛らしい笑顔を浮かべてそう言った。

 それは家に戻った時の母クルックーの優しい笑顔と重なり、手に伝わる温かさもあってエールはなぜかドキドキとした。

「日光さんもお疲れ様、本当に、長かったね……」

 しみじみとつぶやくカフェの目にはうっすら涙が浮かんでいた。

「ふふふ、頑張ったご褒美にシーウィード一回おごってあげよっか?」

 涙をごまかす様に悪戯っぽい顔をするカフェ。

「エールさんにはまだ早いですよ」

 日光がそう少し楽し気にそう答えた。

 割れるだけだろうが長田君を連れてくれば喜んだかもしれない、エールは思った。

 カフェの表情や日光の親し気な声色から察すると二人はかなり深い間柄、そこにエールがいては話しづらいこともあるだろう。

 明日取りに来ますのでごゆっくり、と日光をカフェに預けると外に出て行った。

 

 エールの姿が見えなくなると、日光は人間の姿になった。

「エールちゃんってどんな子?」

「とても不思議な子です。父親に似て乱暴かと思えば優しいところもあって、突拍子もないことをしたと思ったら周りをまとめる力もあって、子供かと思えば大人顔負けに魔王に立ち向かう」

 日光は口元に笑みを浮かべた。

「少し困ったところもありますが、良いオーナーですよ。エールさんの旅に同行出来て魔王討伐に力添えが出来たことはとても幸福なことでした」

「ならそのオーナーさんとのお話、聞かせてくれる? お茶用意するから」

「ふふ、カフェのお茶を飲むのも久しぶりです」

「ブリティシュやカオスもいたら良かったのにねー、今度みんなで集まろっか。 ホ・ラガも誘えば来ると思う? 引き籠ってるみたいだしこっちから押しかけちゃおうか」

 懐かしい味がする茶を囲む。

 普段は物静かで多くを語らない日光も、カオスと共に人の姿を失ってまで達成した1500年の悲願を感慨深く話しはじめた。

 魔人を討つ武器であるカオスと日光、エール達の師匠となったブリティシュは魔王討伐の旅に大いに力となった。

 カフェがまた目にうっすらと涙を浮かべている。

 

 二人は朝まで心行くまで語り合った。

 

………

……

 

 エールはカフェに日光を渡して早々に帰る予定だったのだが、何となくシーウィードを見回っていると意外な顔と出会った。

 

「エール、お前何でこんなところにいんだよ」

 赤い鎧を着ていないのでお忍びというやつだろうか、ザンスの姿があった。

 エールは日光を預けに来てそのついでにカフェに魔王討伐のことを報告していた、と話す。

「そういや、陶器がそんなこと言ってたな」

 ザンスこそ何をしているのかと聞き返そうとしたが、場所が売春宿、一人うろうろしているということを考えるとそれは聞いてはいけない気がした。

 エールはじーっとザンスを見てその肩を優しくぽんぽんと叩く。

「何、勘違いしてんだ、おめーは! 俺様はお前を探しに来ただけだ!」

 ザンスはエールの頬をむにーっと引っ張った。

 何か用事でもあった?、エールが頬を引っ張られながら聞く。

「お前が模擬戦で負けたから一日好きにしてやるって言っただろうが。 忘れてリーザス出ていくつもりだっただろ」

 エールは忘れていたわけではなく、ただ冗談か、そうじゃなくても何となく誤魔化しうやむやにして無かったことにしようとしていただけである。

 誤魔化せなかったのであれば仕方がない、何をするつもりなのかと、エールは尋ねた。

「そりゃもちろん……いや、おあつらえ向きにここはシーウィードだったな」

 何かを思いついたらしくニヤリと笑ったザンスにエールは首根っこを掴まれてしまった。

 

 そのまま引っ張られて連れていかれたのは大きなテント。

 そして目の前にいたのはエールが前にシーウィードで会ったシラセだった。

 大事な部分が透けて見えている服、というよりは下着姿が非常に扇情的で目のやり場に困る。

 ザンスも一瞬そう思ったのかたじろぐが、エールは軽く手を振った。

「あら、お久しぶりですね。エール様」

 シラセとは一度ちらりと会っただけなのに名前を憶えていてくれたようだ。

「会ったことあんのか?」

 ザンスは驚いた顔をしていたが、前の冒険の時に深根がエロテクを教わってた人、とだけエールは答えた。

 エールはその時にされた体験を思い出して少し鼓動を早くした。それに気づいているのか、シラセはまっすぐにエールの方を見つめている。

 その瞳に肉食獣のように獲物を狙うような気配を感じ、エールはぞくりと背中を震わせた。

 

「お二人様ですわね。本日は初心者サポートコースでしょうか?」

「いや、こいつに何かエロいことしてやってくれ」

 エールはシラセの方に乱暴に突き出された。

 シラセにそっと受け止められ抱き寄せられると、頭がくらくらとするような甘い香りがエールの鼻をくすぐった。

「こいつ女のくせに色気も何もないからな。ちょっとエロいことでもされりゃ少しは女らしくなるかもしれねーだろ」

 ザンスはニヤニヤと笑いながらそう言った。

「そうじゃなくてもどんな反応するか興味がある。俺様は見てるだけだがちっとは楽しませろよ」

 なんでボクが、とエールは言ったがこれが一日好きにするということらしい。

 

 それを聞いたシラセは妖しげな笑顔を崩さないまま、何かを考えるような仕草をした。

「つまりエール様を気持ちよくさせる、ということでよろしいですか?」

 シラセがエールに小首をかしげながら尋ねる。

「あ? まあ、そういうことだな」

 ザンスもニヤニヤしながら頷いている。

 エールも裸を見られるぐらいなら何度かあった、そう断ることもないとそのまま頷いた。

「かしこまりました」

 そう薄く笑ってエール達をテントの奥へと促した。

 

 

 部屋の中は薄暗く、中心には天蓋のある大きなベッドが置かれていた。

「ここは少し特別でして、どんな声をだしても外に漏れることはありませんのでご安心くださいね」

「がははははは! エール、お前どんなに声上げても大丈夫だってよ」

 エールは声をあげるつもりはないので要らない心配だ、と口を尖らせた。

 

 エールがベッドの上に座らせられシラセに後ろから抱きすくめられ背中に柔らかい感触が当たると、ドキドキと鼓動が早くなるのを感じる。

 すぐ近くにあるシラセの顔は母のような優しい表情をしているのに同時に怖くも感じた。

「エール様、リラックスなさって……怖くはありませんので安心して私に体を預けてくださいね」

 シラセの腕の中は少しの怖さと同時に不思議な安心感もある。そっと耳元で囁かれるだけで力が抜けてしまった。

 

 エールは衣服をゆっくりと脱がされていく。

 

 体に触れるシラセの指先はあくまで優しく撫でられる様な動きでくすぐったさで自然と身じろぎを繰り返してしまう。

 ブラウスのボタンが手早く外され、キュロットを外されるとエールは下着だけの姿にされた。

「ガキっぽいもんつけてんな」

 ザンスはそんな感想を述べた。

 エールの下着は純白で上はキャミソール、下は短いフリル付きのドロワーズ、冒険での動きやすさを重視したものであり別に誰に見せる物でもない。

 シラセはそれを気にすることなくしゅるりとキャミソールをたくし上げると、わずかなふくらみしかない胸があらわになる。

 さらにドロワーズが足から引き抜かれると、エールは一糸纏わぬ姿になった。

「うお……」

 ザンスは女の裸を見たぐらいで動揺するのは情けないことだと、なんとか余裕の態度を崩さないようにするが、隠すもののなくなったエールの裸姿に目のやり場を求めてきょろきょろと動かした。

 エールとしても服を自ら脱ぐことはあっても、こんなにゆっくりと脱がされるという経験は赤ん坊になったようで気恥ずかしさとむず痒さで少し顔を赤くする。

 足をぴったりと閉じているが、胸は外気にされされたまま、薄桃色の先端が見えていた。

 

「エール様はお肌がお綺麗ですわね。力を入れたら折れてしまいそうなほど華奢で……とても可愛らしいですわ」

 薄い胸にシラセの細い指があてがわれると、ただ触れられてただけでエールは体をピクリと跳ねさせた。

 シラセはその反応に満足すると今度は指をやわやわと動かし、さらに白い首筋に長い舌を這わせた。

 するとエールは体はぴくぴくと痙攣させて、その口からは刺激に耐え切れなくなったように小さく甘い声が漏れ出た。

「あのエールが女みたいな声出してる……」

 その様子をまじまじと見ていたザンスが呟いた。

 魔法や剣を振り回して魔物や人間と戦い、他人の頭に物をのせては陶器を割る、そんな突拍子もない行動ばかりする存在の、それは意外過ぎる女らしい反応だった。

 

 エールは声を出さないように唇をぎゅっと結び目を固く閉じて体を強張らせた。

「大丈夫です。その反応は女性でしたら当たり前のもの、恥ずかしがることなどありません」

 シラセはそうエールの耳元でささやき、息を吹きかける。

 さらに強張った未成熟な肢体をほぐす様に愛撫し続けると、エールは刺激に耐え切れず鼻にかかった声を上げさせられた。

 エールは裸を見られても特に恥ずかしく思わないが、自ら出している声と体を這いまわるシラセの指の刺激に気持ちの良さで閉じた足をくねらせ、はっきりとした羞恥に目に涙を浮かべている。

 

 シラセはその様子を見るとぴたりと愛撫していた手を止めた。

「ザンス様も触りたいですか?」

 エールの肩を抱き胸元を大きく開かせ見せつけながらザンスを誘った。

 

「は? あー…いや、そんなわけあるか。そんな貧乳触っても楽しくないだろ」

 エールが抵抗もせず好き放題されている様子を食い入るように見ていたザンスは急にそう言われ狼狽えた。

 エールの方はその言葉に少しむっとした。長田君だったら割っているところだ。

「エール様もむくれないで。ザンス様もそんなこと言っていますとこの柔らかくて吸いつくような肌と可愛らしい膨らみも私が独り占めしてしまいますよ?」

 呼吸を荒くし、激しく胸を上下させているエールから目を逸らす。

 挑発するように言ってから、シラセがエールの腰から胸につつーっと指を這わせるとエールはまた小さく声をあげさせられた。

 

 ザンスもその体に興味があるのだろう、明らかにそわそわとしている。

 あくまで見るだけと言ってしまった手前、誘われたからと言って触るのは誘惑に負けたような気分になる。

 

 するとそんなザンスを見て、女の子の体に触ったことないから触り方とかわからないんじゃないか、とエールが特に悪気はなく言った。

 エールの頭がポコンと叩かれ、ザンスが伸ばした手がその胸を乱暴にまさぐった。

 シラセに与えられていた快楽が一気に吹き飛ぶような痛いだけの触り方にエールが顔を歪める。

「やっぱ貧乳だな、ぜんっぜん楽しくねーわ」

 下手くそと言って蹴り飛ばしてやろうかとエールは頬を膨らませながら考えていると

「そんなに乱暴に触ってはいけませんわ。そして胸が小さいとか色気がないとかそんなこと言ってはいけません。女性の色気はパートナーが引き出すものなのですから」

 その様子を微笑ましく見ていたシラセが、無遠慮にまさぐっていたザンスの手を優しく払った。

 

「まず手のひらで包むように触れて、手を…指を押し返す感触と反応を楽しんで下さいね。そこから指を軽く押し込むように――」

 ザンスがシラセに手ほどきを受けさせられると、改めてシラセの細く柔らかな指とは違う、男性特有の固い指がエールの胸に触れた。

 先ほどとはうって変わってやわやわと優しく触れられている。

 それはシラセの身体を芯から熱くさせるような絡みつく指とは違い、くすぐったさを感じる程度のものだ。

 散々小さい胸だと言ったものを触って楽しいのだろうか、エールはそう思いながら落ち着いた様子で触られている自分の胸を見ていた。

「柔らかいでしょう?」

 シラセもまたその様子を見つめている。

 

 ザンスの方ははじめてじっくりと触れる女の体に自身が熱くなるのを感じていた。

 エールの裸は見たことがあるが直接肌に触れたことはないし、それを想像したこともない。

 手に吸い付くような白い肌、小さいが触れると女性らしい弾力を返してくる胸、手から伝わる温かさ。

 恥ずかしさからか感じているからか、体を軽くよじるエールの反応に思わず生唾を飲む。

 

「…………!」

 ザンスがふいに先端の突起に触れると突然訪れたその強い刺激にエールが甘さの混じった甲高い声を出す。

 ザンスの方もその反応は予想が出来ず、思わず手を離した。

「あらあら、可愛らしい声を。だいぶ敏感になっていたようですね」

 シラセはここまで特に敏感な胸の先端などには一度も触れていなかった。

 

 改めてザンスの手がエールの胸に伸びる。

 先端を指に挟まれ、軽く摘ままれるとエールはその度に体を震わせる。

「ザンス様、楽しいですか?」

「は!?……ま、まあ、悪いもんでもないな」

 最初は遠慮がちに触っていたザンスもエールが明らかに感じているのが分かると次第に遠慮がなくなってきた。

 胸だけではなく、尻を撫でてみたり、腰をさすってみたり、太腿を撫でてみたりとといろんな場所に手を伸ばし始める。

 少しずつ手に力が入り触り方も乱暴になっていくが、その度にエールは声を我慢できずに小さな声が漏れた。

「お前感じてんのか。 俺に触られんのがそんな気持ち良いか?」

 嬉しそうにニヤリと笑ってザンスが言うが、エールは首を横に振った。

 強がっているのは明白である。

 ザンスは続けて足の間に無理矢理手を入れようとするが、エールはその手を強く払った。

 

 見てるだけって言った、とエールはシラセもザンスも振り払って頬を膨らませて抗議をする。

「お前が挑発するのが悪い」

「私が任されたのはエール様を気持ちよくさせること、ザンス様にも協力いただいているだけです。それに健康な男性に見てるだけというのは酷というものですわ」

 シラセにまでそう言われるがエールは処女であり、こういった事をされた経験はない。

 ただこれ以上触らせるのは流石にまずいというのは分かる。

「ほぐし方がまだ足りないのかもしれませんね。エール様は初めてですもの、もっと時間をかけて……」

 

「いや。あんたはもういい、下がってろ」

 そう言ってザンスが身を乗り出しエールを押し倒す様に覆いかぶさった。

 また胸を乱暴に触ると、エールは苦痛に顔を歪める。

「ザンス様、そんなに強く触ってはいけません。エール様が痛がってますわ」

「うるせぇ、俺は俺の好きなようにやる」

 ザンスは力加減が出来ないほど興奮していた。

 エールが痛がる様子も気にせず、その体を一方的に貪りはじめ、むしろ痛がっている様子でさえ興奮を刺激するだけだった。

 

 そのまま足を強引に開かせようとしたのだが、それにはエールは抵抗してその手を蹴り上げる。

 エールが体を起こすと、興奮よりも痛みでジンジンとしていた。

 

 エールが掴まれていた足や腕を見ると痣が出来ている。

「ちっ……お前が大人しく股開いときゃ怪我することもねーだろが」

 ザンスは一瞬気まずそうな顔をしたがそう吐き捨てると、エールはその自分勝手な物言いに頭に来た。

 乱暴だの下手くそだの童貞はこれだから、とエールはザンスを罵倒した。

 もし長田君に言ったら割れて立ち直れなくなりそうなかなりひどい事まで色々と言い放った。

「あ!? いきなり胸触らせて脱ぎだすような女のくせに何抜かしてんだおめーは!」

 

 結局、二人はベッドの上で言い合いを始めた。

 ベッドの上でぎゃーぎゃーと騒ぐ二人からは初体験を迎えるようなムードは全くなく、子供同士がケンカをしているようにしか見えない。

 ……まずはムードを盛り上げるところから教えるべきだっただろうか、シラセはその様子を微笑ましくも困ったように見つめていた。

 

 エールが怒ったままベッドから出ようと立ち上がる。

「今更逃げてんじゃ―」

 そう言ってザンスがエールの柔らかく華奢な腕を掴んだ瞬間。

 

ガンッ!

 

 とても良いのが入ったような衝撃音。

 シラセが驚くと、エールがザンスに勢いよく背負い投げを決めていた。

 

 クルックーから習っていたものだが、人間または人型のモンスター相手にしか効かず、かつ至近距離でしか使えないためエールは今までほとんど使ったことがなかった技である。

 ザンスの方も完全に意識が別のところにあり、またエールに怪我をさせない程度に力を抜いていたのもあって、そんな状態で食らった突然の背負い投げには対処が出来なかった。

 

「だ、大丈夫ですか?」

 シラセが慌てて寄ってくるが、ザンスは息はしているようだがものの見事に気絶していた。

 

「あ、あらあら……私の仕事はエール様を気持ちよくさせることですが、どうしましょう?」

 笑顔を浮かべているが、さすがにこんな事態は想定していなかったシラセは首を傾げ困惑している。

 床に転がるザンスのことを気にしているシラセに、死んではいないからそのまま気絶させておけばいい、とエールは足でそれをつつきながらヒーリングをかけている。

 

「エール様、一旦シャワーを浴びてはいかがですか? 今の体のままでは落ち着かないでしょうから」

 とりあえず服を着ようとするエールだが、その体は乱暴に触られた痛みで快感は大分引いていたもののどこか手の感触が残っていてむずむずとしていた。

「ふふふ、私にお手伝いさせていただければ気持ち良く静めて差し上げられますわ。 さぁ、参りましょうか」

 妖しく言うシラセにエールはぶんぶんと首を横に振ったが、逆らいきれずそのまま手を引かれてしまった。

 

…………

………

……

 

 エールが目覚めると、ザンスがベッド脇に座ってエールを見下ろしている。

 目が合うと同時にその鼻を摘まんだ。

「さっさと起きろ、出てくぞ」

 その顔は言うまでもなく不機嫌そうだが、それ以上に顔を赤くしている。

 

 エールの方はおはようといって体を起こすと、はらりと体を覆っていた布を落とした。

 シャワーを浴びている間、シラセに体を弄ばれたエールは気持ちよくもへろへろにされてしまい、結局服を着ないままベッドに倒れ込むように寝入ってしまっていた。、

 ザンスは一瞬動揺したが、すぐに目を背ける。

「服を着ろ、アホ」

 エールが何かを考えた後、ザンスのえっち、と呟くとポカンとその頭に拳骨が落ちた。

 シラセが整えたのか、服はきちんと畳まれてベッド脇に置いてある。

 エールが言われた通り手早くいつもの冒険服を着込むと気が引きしまった。

 

「おはようございます。エール様は気持ちよく眠られていたようですね」

 シラセにエールは少し悩んだが、気持ちよかったですと言った。

「ザンス様も。昨夜のエール様はとても可愛らしかったですわね、どうか大切になさって下さいませ」

 エールが寝ていた間、シラセと何かあったのかもしれない。

 ザンスは苦々しい顔をして、エールを連れテントを出て行った。

 

「お二人とも先は長そうですわね」

 互いに未経験というのは難しいもの、二人が出て行ったテントでシラセは微笑ましく二人を見送った。

 




※ エールちゃんの下着 … 画集「織音計画」描き下ろしより

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