エールちゃんの冒険   作:RuiCa

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ハニーと眼鏡と

 スシヌがハニーキングに攫われた。

 

 それを聞いてエールは目を丸くした。ハニーキングとはエールも一度だけ会ったことがある。

 神がかり的な能力を持った最強のハニー、全てのハニーを束ねひれ伏させる圧倒的なオーラを持ったハニーの王様だ。

 

「これからお話することは王宮外には知らされていないことですのでエールさんも御内密にお願いします」

 頷いたエールを見て、疲れ切った様子のマジックに代わりウルザが説明を始めた。

「今から一か月ほど前のことです。スシヌ王女が王宮から姿を消しました。スシヌ王女の自室には書置きが残されておりまして、ハニワの里に親善大使として招かれたので行ってきます、と書かれていました」

 ハニワの里というは東のハニワ平原にある浮遊大陸の名前だそうだ。

 ランス城もそうだったが浮遊大陸と言う響きはワクワクする、とエールは思った。

「スシヌがいなくなる前、ハニーキングからは何度も…毎日のようにスシヌをゼスとハニーの間を繋ぐ親善大使として招きたいと手紙は届いていました。もちろんそれは出来ないと返事を……行かせるはずがありません。大事な娘をハニーキングの所になんて!」

「マジック女王、落ち着いて」

 声を張り上げたマジックを千鶴子が宥めた。

 ハニー全般がそうだが、その中でもハニーキングの眼鏡っこ好きは世界的に有名である。さらに不幸な女の子も好きとくれば何をされるか分かったものではない。マジックとしては大事な娘をそんな相手に送るなど考えられないことだった。

「ハニワの里もそう遠くはない場所。一応書置きもあり使者ハニーからもスシヌ王女は立派にやっていると連絡もあったので、当初はとりあえずそこまで深刻に考えてはいませんでした。 しかし何日経ってもスシヌ王女は戻られません。あまりに遅いのでこちらから迎えの使者等出したのですが、のらりくらりとかわされハニワの里に入ることも出来なかったそうです」

 

 そこでウルザの眼が少し厳しくなる。

「……そしてハニーキングより一通の手紙が届きました。スシヌのこと気に入ったから、ずっとうちで親善大使してもらうからよろしくー、と」

 軽い口調であるが、内容はかなり深刻なものだ。

 つまりスシヌはハニーに誑かされて、捕らわれてしまったと言うことである。

「その通りです。スシヌ王女は未来のゼスを背負って立つ身、そんなことは許されないと幾度となく使者と手紙を送りましたが返事はなく。我々はハニワ平原に向けて部隊を派遣しました。 ゼス王国とハニーは友好条約を結んでいますからあくまで交渉団としてですが、戦士も魔法使いもそれなりの者達で固めた部隊でした」

 千鶴子がウルザの言葉に頷いた。その部隊を編成したのは千鶴子である。

「しかし結果はハニワ平原で自称人間嫌いの謎のハニー軍団を名乗る集団相手に全滅。ハニワの里に入ることもできませんでした。魔法の効かないハニー相手は魔法使いが多く戦士の少ないゼスでは分が悪い相手ですね…」

 謎のハニー軍団、考えるまでもなくハニーキングの差し金だ。

「そして今度は本格的に武力制圧やむなしとゼスでも有数の戦士の一団を揃えて派遣しました。それが一週間前の事です」

 その結果があの部屋の怪我人の山、謎のハニー軍団相手に全滅してしまったのか…とエールが沈痛な面持ちで呟いた。

 

「いえ、あれをやったのは先ほどエールさんが止めてくださった、アニスさんです……」

 へ?、とエールは素っ頓狂な声をあげた。

 

「スシヌ王女の誘拐を知ったアニスさんは自らの大事な弟子が攫われたとパニックを起こしました。単身、ハニワ平原に向かい手当たり次第大規模な魔法を打ち込んだようです。おかげでこちら側の部隊は全滅、そして相手のハニーは被害は無し。こちらだけが大きな被害を被る羽目になりました。ちなみにアニスさんはハニワの里から飛んで来たハニーフラッシュで撃墜されたそうで被害はあれでも最小限です」

「万が一にでも大暴れしたら困るからとスシヌの事は黙っていたのに、本当に最悪のタイミングだったわ……」

 マジックがものすごく疲れた声で言った。

 スシヌが弟子ということは、アニスさんはスシヌの師匠ということなのだろうか。あんなポンコツな人が?とエールはつい自分の優秀な師匠であるサチコやリーザスのチルディと比べてしまった。

「アニスさんはスシヌ王女と同じ魔法レベル3の持ち主でそれを買われて専属家庭教師をしているんです。もちろんあんな方ですから最初は皆で反対したのですが、当のスシヌ王女が同じ魔法レベル3同士なのが嬉しかったのか二人はすぐに仲良くなりまして……スシヌ王女はアニスさんの事ちゃんと尊敬していますよ」

「魔法レベル3はゼス王国内でもミラクルさんは除くとして、アニスとスシヌだけ。スシヌも魔力の強さで小さい頃から苦労をしてきたから、他の人には分からない魔法レベル3同士で何か思うところがあったのかもね。 不思議だったのがアニスがスシヌに魔法を教えている間はすごく落ち着いていること。 弟子が出来たってとにかく嬉しそうで、魔法も普通に教えていてみんな私を含めて本当に、本当に驚いたものよ。 ダンジョンの作り方なんかまで教えたりしてたのは困ったものだけどね」

「もしかしたら無意識的に千鶴子様の真似をしているのかもしれません。アニスさんは師匠である千鶴子様を本当に慕って尊敬していますから」

「そうだといいんだけどね。 やっと教育の成果が出たって私だって泣いて喜んで…… 味方殺しのアニスの汚名も過去の事だと思っていたのに」

 マジックにウルザに千鶴子、ゼスの重鎮がそれぞれ頭を抱えている。

 ご愁傷さまです、とエールは手を合わせた。

 

「コホン。アニスの事はいいわ。 問題はハニーキングよ」

 マジックが話を切り替えた。

 

「先ほど話にあった通りゼス王国はハニー達と友好条約を結んでいます。スシヌも表向きは親善大使として派遣されているだけです。もし王女がハニーに誘拐されたなんて外部に知られたら王家として能力を疑われるし、外交的にもハニーと険悪になってしまいます。大規模な軍隊を組織しようものなら最悪戦争になりかねない…」

 体面や外交なんか気にせず助けに行くべき、とエールが少し怒りつつ言った。

「王族としてはそういうわけにもいかないけれど、既に何人もうちの中でも手練れを送り込んでいるわ。事情は伏せてるけど、冒険者まで雇ってね…でもみんなやられて戻ってきてしまった。魔法使いはもちろん戦士もね」

「仮に軍を送ることになってもゼスは魔法主体の軍、ハニー相手では最悪返り討ちにあってしまうでしょうね。もともとハニワ平原はハニーを隔離するための場所だったんだもの。それに魔法が効かないことを考えなくとも、ハニーの中にはかなり強い種類もいるわ。 実際に謎のハニー軍団はスーパーハニーを筆頭とした危険な集団だったとか」

 そういえばとエールはハニーキングに会った時の事を思い出す。あまりに神がかった規格外の能力の持ち主でそんじょそこらの人間では全く太刀打ちできるはずがない。

 エールであっても戦いとなれば勝ち目があるかどうか。スシヌは大丈夫なのだろうか、とエールが心配そうな声を上げる。

「捕えたハニー達から情報を聞き出したところ、スシヌ王女はハニーキングの下で仕事をしているそうです。おそらくこちらの状況を当のスシヌ王女は全く知らないのでしょう」

「あの子、真面目だから親善大使だと思い込まされてるんでしょうね。 でもそのせいで下手に事を荒立てたら向こうにいるスシヌが人質されてしまうわ。そうなったらそれこそ一体何をされるか」

 エールは色々と納得した。

 

「それで現在、こちらも対抗してハニーとの取引を全面禁止にしてゼス首都に入ってくるハニーを手あたり次第捕まえています。もう200人ぐらいかしら? スシヌと交換してもらえるとは思えないけれど、商売や交易をしてるハニーの中にはハニワの里へ物資を運んでいたハニーもいたわ。 ハニー達が捕まって、交易が止まり、物が届かないとなれば向こうも何かしら動かざるをえないはず」

ハニーキングにそんな常識が通用するのだろうか?とエールは疑問に思った。

「捕まえたハニー達はお客さんとして丁重に扱っていますよ。ハニワの里への警告として、逮捕という形にはしていますので抵抗するハニーも多いのですが」

 長田君が捕まった理由が分かった。

 抵抗するなら眼鏡のお姉さんがいるとか言えばすんなりついていくのでは、とエールはアドバイスした。

 二人もいるから嘘でもないし、とちらりとマジック女王と千鶴子の方を見る。

「……スシヌも言ってたけどエールちゃんちょっと変わった子なのね」

「え、ええ。お姉さんって歳じゃないわ」

 そういうマジックとは対照的に千鶴子はお姉さんと言われたのが少し嬉しいのか、少し口元を緩める。

「それだと逆に噂を聞き付けたハニーが押し寄せてきそうなんですよね…」

 

 エールは話を聞き終えるとビシッと手を挙げて、それではハニワ平原に行ってきます、と言った。

 マジックと千鶴子は驚いた表情でエールを見るが、ウルザは薄く微笑んだ。

「こちらから頼む必要も無かったようですね。エールさんは高いレベルと剣の腕があると聞いています。またハニーキングとの面識もある様子、それを見込んでハニーキングに直接女王の親書を届けて欲しいのです」

 ウルザの依頼に、エールは大きく頷いた。

「いいの? エールちゃん、相手は色々と想像がつかない相手よ」

「待ってください。それよりもエールさんはAL教法王のご息女です。何かあったら最悪そちらも大問題で――」

 止められても行くつもり、とエールは言い切った。

 スシヌはエールの大事な姉の一人であり、ゼスへ来た最大の目的はスシヌに会う事である。とてもこのまま放ってはおけない。

「ありがとう。 スシヌも喜ぶわ」

 マジックは久しぶりに口元に笑みを浮かべた。

 

「ではエールさんにはマジック女王の親書とこちらの青のハーモニカをお渡しします。これを浮遊大陸の下、指定の場所で吹けばハニワの里へ入れるはずです」

 エールはウルザから大事なアイテムを受け取って荷物に詰める。

 他にもゼス王国の使者として、冒険や戦いで便利なアイテムや身なりを整えるちょっとした小物アイテムまで準備は全て用意してもらうことが出来た。

「エールさんはまずハニワの里に侵入することを考えてください。ゼスの使者といえばまず通してもらえませんので観光客を装うのがいいかと思います。今はこんな状況ですけれど、ハニワCITYは観光事業に力を入れてますので」

 ハニワCITYはハニワの里にある町の名前らしい。観光に力を入れていてもこんな問題を起こせば全てが水の泡だと思うがハニーにそんな常識は通じないのだろう、とエールは苦笑いをする。

「それとマジック女王の親書ですが受け取りを拒否された場合は―― 他にも――」

 ウルザはエールに様々なアドバイスを施していく。

 あらゆる場面を考慮した分かりやすいその助言に、エールはこれが出来る女性というやつかーとウルザに憧れの視線を向けた。

 

 出発する前に捕まってしまった長田君に会いたい、と言うとウルザが案内してくれることになった。

 エールが後をついて行くと、車いすがキコキコと軋むような音を鳴らす。

「油が切れたかしら。ちょっと待ってくださいね」

 エールはさっと手を伸ばして車いすのメンテナンスを始めたウルザをじっと眺めた。

「大したことはありませんよ。 不便ではありますがこうやって働くには支障はありませんので」

 ウルザの足は魔王ランス…つまりエールの父親との戦いにおいて患ったものだが、父親の悪行は子供であるエールには関係ない。

 そしてそのランスも魔王の血に飲まれていただけ、ウルザはかつて車いすに乗って絶望していた自分に希望を与えてくれたランスを忘れていなかった。

 エールもスシヌもどこかそんなランスの面影がある、とウルザは小さく笑みを浮かべた。

 

………

 

「こちらです。申し訳ありませんが、柵の中には入らないでくださいね」

 ウルザに案内された王宮の中庭は柵で囲まれており、そこには所狭しと色々な種類のハニーがわさわさとしていた。とてもハニワ臭い庭である。

 捕まっているはずのハニ―達だが、きゃーきゃーと楽しそうに遊んでいたり、眼鏡っこ談議に花を咲かせていたり、ハニー向けの雑誌を読んだりと思い思いに過ごしていて平和な雰囲気だった。

 中には仕事があるんだ、とゼスの兵士に詰め寄っているハニーがいるが少数派である。

 

「あっ、エール! 無事だったのかー」

 エールの姿に気が付いたのか、はに飯の箱を握っている長田君がのんびりと歩いてきた。

 捕まってるのに元気そうだ、とエールは少し拗ねるように口を尖らせる。

「おっ、心配させちゃった? でも俺は全然ヨユーだぜ? ここから出るなとは言われてんだけど、低ランクとはいえはに飯食い放題だし、仲間もいっぱいで居心地も悪くねーっつーか」

 そう言ってさらさらとはに飯を口に流し込んだ。

「なになに? この子が長田君が言ってた相棒の子?」

「おうよ! こう見えてすっげー強いんだぜ?」

「へー、全然そんな風に見えないや」

 呼ばれた長田君が気になったのか何体かのハニーが近づいてくる。 周りのハニーと見比べてみると長田君はカツラや恰好だけではなく目元が流し目風でイケメンだ、とエールは心の中で納得していた。

「眼鏡っこじゃないとかがっかり。なんで眼鏡かけてないの?」

「でも貧乳なのはポイント高いよー、それを気にしてそうな所もグー」

「おっぱいはあった方が良いだろ! 巨乳で眼鏡のいじめられっ子こそ最高!」

「俺は圧倒的巨乳派だけど、眼鏡があればさらに嬉しいっつーか? そういう相乗効果ってのが大事で―」

 性癖は違えど仲良く出来るものなのか、長田君は既にたくさんの友達を作っているようだ。

 自分そっちのけでわいわいわさわさハニー達と楽しそうに盛り上がってる長田君を見てエールは少し胸の辺りがもやもやとするのを感じる。

 柵がなければ友達ごと長田君が割れたのに、とそのもやもやごと吹き飛ばす様に拳を行先を求めてぐるぐると回転させてみた。

「あれ? エール、その恰好どっかに行くん?」

 旅支度をしっかりと整えているエールが気になり、話を止めて少し心配そうに長田君が尋ねた。

 事情は話せないけどちょっとハニーキングに会いに行ってくる、とエールが答える。

「えっ、エールがキングに会うってどういうこと?」

 エールは事情は話せないけど長田君はここで待っていてほしいと伝えた。

 

 エールは長田君を連れて行く気はなかった。

 長田君はハニーであるがゆえにハニーキング相手だと問答無用でぺこぺことひれ伏してしまうから役に立つとは思えないし、交渉決裂でハニー達と戦うことになれば長田君も辛いことになる。

 何よりハニーなのに眼鏡より巨乳が好きという異端者ということもあり今回の交渉事には連れて行かない方がいいだろうと考えての事だった。

 

「いやいやいや! 待った、待ったー! そりゃ、俺はキングには逆らえないし同胞とも戦いたくないけど! ついでに強いやつとか危険なやつとも戦いたくないけど! でもお前、俺がいないと色々と無茶して何しでかすか分かんねーっつーか、強いけど抜けてるとこあるし、一人旅とかめちゃくちゃ心配なんだけど!」

 それを聞いた長田君が途端に慌てだす。エールはその様子を見て胸のもやもやがすっと消えるのを感じた。

 日光さんも一緒だから、とエールは笑顔で頷く。

 長田君抜きで行くのは寂しいが、地図で見る限りハニワ平原はそんなに遠い場所でもない。すぐに帰ってこられるはずだ。

「うーん、でもよぉ… なんでそんなとこに…」

「王様に用事? 今ならハニワCITYにあるハニー城にいるよ。お気に入りの子と楽しくやってるみたいでその子すごく可愛い眼鏡っこでさ。自慢したいみたいでお城には自由に出入り出来るんだ」

 一緒に居たグリーンハニーから思わぬ情報が聞けた。そしてそのお気に入りの子が間違いなくスシヌだとエールは確信する。

 他にハニワの里やハニーキングの事で知っていることはないかと尋ねる。

「ハニワCITYには温泉が湧いてるんだけど改装して男湯と女湯に分かれたんだ。 絶景の露天風呂で最高だよ!入浴料ちょっと高いけど」

 温泉の情報はあまり役には立たないが、絶景と聞くとその温泉には入りたくなった。スシヌを助けたら帰りに寄ってみるのもいいかもしれない。

「せっかく観光地化したのに全然人来なくって困ってたっけ」

「美味しいはに飯屋があるのにね」

人間ははに飯を食べない、とエールは当然のツッコミを入れる。

「あそこ魔人が出るって噂なかったっけ?」

「ハニーキングとハニー魔人が毎日戦っていい汗かいてるって話だっけな」

「ハニワCITY広場で満天の星の下、意中のハニ子に告白すると必ず成功するって言われてるんだよね」

「なんかとんでもないビッチが夜な夜な一人で慰める音が聞こえるってエッチな怪談があるね」

「有名な青姦スポットじゃなかった?」

「エロエロでボインボインのお姉さんがいるって話は?」

 わいのわいのとハニーが騒ぎだした。どれもあまり役に立ちそうはない信ぴょう性のある話とは思えないものばかりである。

 そういえばと、エールは荷物の中に手を入れてハニーの魔血魂があるか確認してみると、ハニーと油性ペンで書かれた真っ赤な玉が禍々しい淡い光を放っているのが見えた。

 これとスシヌを交換してもらえないだろうか。

「そうだ。 おーさまに会うならめがねがいるよ。 めがねがないとか会ってもらえないよ!」

 そう言ったハニーに周りが同調し始めた。

 視力がいいので眼鏡の持ち合わせがないエールはその言葉に驚いた。

「……そんなはずはないと思いますが」

 ウルザが苦笑いをしている。

「眼鏡かー、エール。 ちょっと待ってて」

 長田君がぱっといなくなると、しばらくして何かを手に持ってきた。

「捕まってるハニーの中に眼鏡屋がいてさ! せっかくだからこれ、エールにやるよ!」

 柵越しに手渡されたそれは眼鏡ケースだった。もちろん中には眼鏡が入っている。

 エールがそれを取り出して掛けてみるとそれは度が入っていない、オシャレ用の伊達眼鏡だった。

「おー、いいねいいねー! さすが俺の見立て、ヤバくね!? すっげー似合うじゃーん!」

 長田君が眼鏡をかけたエールを見て嬉しそうに飛び跳ねた。

「即席めがねっこだけど悪くないね!」

「貧乳ともぴったり合ってる!年齢的もグー!」

「うんうん、やっぱメガネっ子サイコー!」

 やんややんやとそれを見たハニー達が喜び、エールも貧乳と言われたことが気にならないほど上機嫌になった。

「へへっ、まぁそれを俺だと思って持ってってくれよな! 相棒!」

 キリっと決める長田君に思わぬプレゼントを貰ったエールは目をキラキラとさせて喜びながら満面の笑みでありがとう、と言った。

 

「今の台詞かっこいー…… 言ってみたい台詞上位に入る一言」

「こういう台詞はイケメンハニーにだけ許されてんだぜ? ハニーもさー、もっとオシャレに行くべきだと思うんだよ」

「ボクもカツラ被ろうかなぁ」

「それに俺って魔王討伐に行って、ちょっと前まで魔人だったし内側も修羅場潜ってるっつーか?」

「えー!? 魔人だったとかマジマジー? 詳しく教えてー!」

 長田君が周りのハニーに自慢話をはじめている。

「気を付けて行けよな―! くれぐれも無茶すんなよ!」

 エールは手を大きく振って行ってきます、と返事をする。

 少し振り返ると長田君はハニーと話しつつもこちらにずっと手を振っていた。

 離れるのは寂しいが、気合が入った。

 

「良い相方ですね」

 エールは眼鏡は割らないように大事に荷物へしまいながら、微笑ましいものを見るような瞳のウルザの言葉に何度も大きく頷いた。

 

 次の目的地はハニワ平原。ハニワの里にあるというハニー城だ。

            

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