スシヌがスカートをめくられたり、エールが眼鏡をまたかけさせられたり、ちゃぷちゃぷの格好をさせられたり、えっちなラレラレ石を見せられたり、お揃いの制服を着せられ二人して長くて太い棒アイスを舐めさせられたり。
ハニー城でメイド仕事の合間にそんなハニー的な凌辱を受けつつ、幾日が経った。
「僕はね、女の子が恥ずかしがったり悲しんだりしていじめられたりしてちょっと不幸になってるのが好きなだけなんだ」
凌辱というからにはある程度拷問を受ける覚悟でいた、とエールの言葉にハニーキングが答える。
エールは血を流させるような事は趣味ではないと聞いて一瞬安心しそうになったが、不幸な女の子を見たいという趣味が良いものであるはずがなかった。
暇を見てエールはスシヌと共にハニーキングに挑んでいる。
しかしハニーキングには簡単にあしらわれるだけだった。食後の運動程度にしか思われておらず、力量の差を思い知らされるばかりで勝てる糸口は見つかっていなかった。
他にも脱出方法を考えエレベーターを動かす方法をこっそり調べたりもしたが、ハニワの里というこの島が浮いているのは不思議なハニーパワーと膨大な数の風船のおかげという情報が手に入っただけ。
ハニーキングが満足する様子もなく、勝てる見込みもなく、逃げることも出来ず、平和だが先が見えない日々にエールは不安を覚えていた。
………
そんな不安を表情に出さないようにエールは一日の仕事を終えて今日もスシヌと温泉に浸かっていた。
既に日は落ちていて、星が見え始めている。
「今日も勝てなかったね…… ハニーキング様があんなに強いだなんて。エールちゃんだってすごく強いのに」
スシヌが悲しげな表情を浮かべているがこれがまたハニーキングを喜ばせ、やる気にさせているのだ。
エールは姉にそんな表情をさせてると思うと悔しさと情けなさから温泉に顔半分沈ませぶくぶくと泡を出す。
「二人とも確実に強くなってはいるのにね。 スシヌも魔法の制御がぐっと上手くなったんじゃない? やっぱり実戦は経験値がすごいわ」
パセリも雰囲気だけ味わいたいのか一緒に温泉に浸かっている。
「私が魔法バリアをすぐに張れれば勝てるかもしれないから…」
ハニーキングと戦う前にリベンジだーと向かってくるスーパーハニー四天王や新たに結成されたというハニー戦隊と戦っているうちに、エールもスシヌも順調にレベルや剣や魔法の腕も上がっていた。
問題はいくら強くなっても肝心のハニーキングに勝てる気がしないという事である。
「正攻法で勝てないなら作戦を考えるべきかしらね」
エールはいくつか作戦を考えている、と話した。
「エールちゃん、作戦って何?」
スシヌの眼鏡を盾にする作戦。
エールが眼鏡をかけて挑んでも、嬉しそうな顔をされたぐらいだったがスシヌの眼鏡を外したらすごく動揺するんじゃないだろうか。
さらにそれを防御に使えば割らないようにするために攻撃が弱まるのでは、という作戦である。
「え、私の眼鏡? え、えーっと、えっと、ならやってみよっか?」
エールは首をぶんぶんと横に振った。眼鏡とはいえ姉を盾に使うなんてあまりに人の心がない最低すぎる鬼畜作戦である。
そしてハニーキングが正々堂々と戦っている以上、そんな卑怯な真似はしたくない。
眼鏡をはずせばスシヌの視界が悪くなって危険ということもありこの作戦は却下である。
エールはもう一つ作戦を考えているのだが、それにはエールの相棒が必要だった。
「相棒って長田君? そういえば長田君といつも一緒に居たのに今回はいないんだね」
今頃気が付いたとばかりにスシヌがエールに尋ねた。
ゼス王国で捕まったことをかくかくしかじかと話す。
「わ、私のせいで長田君にまで迷惑が…」
そう言ってスシヌが落ち込み始めたがエールは首を横に振って他のハニーと友達になって楽しくやっていたと答えた。
エールはそれを思い出すと少し寂しさで胸が締め付けられる気がする。
「長田君は明るいし、話上手だしお友達多そうよね。どこでも混ざれるって感じがするわ」
相棒はボクです、とエールが頬を膨らませる。
「あらあら。 エールちゃんって長田君のこと本当に大好きよね」
エールはパセリの言葉になぜか顔が少し赤くさせた。
話を逸らそうとエールは今まで聞いていなかった、ハニーに捕まる前にどうしてスシヌが落ち込んでいたのかを聞いてみることにした。
「そういえば、話してなかったわね。スシヌ、せっかくだから話を聞いて貰ったら?」
スシヌは少し悩んでいる様子だったが、頷いて話しはじめた。
「うん…… 実はね。 私、ママから縁談を勧められたんだ……」
エールはばしゃっと温泉から飛び出しスシヌに詰め寄ってその相手について尋ねた。
「エールちゃんちょっと落ち着いて。スシヌはちょっと話しづらいだろうから私が説明するわ」
「マジックがね、魔王討伐から自信をつけて帰ってきたスシヌを立派な次期ゼスの女王にするって決めて厳しく接するようになったの。厳しくって言っても今までやってなかった帝王学とか政治とかを学ばせるって事よ。ゼス王家はスシヌ以外に後継ぎがいないし、魔法レベル3っていう破格の才能もあって周りの人達からの期待も大きくて……スシヌもそれに応えようと魔法もお勉強もすごい頑張ってたわ。ゼス応用学校ではトップクラスだったんだから」
パセリは自慢の子孫だと得意げである。
「ママはずっと主席だったんだよ。 それに比べたら私なんか全然……」
「魔法はあなたの方がずーっと上なのよ? ううん、ゼス王家始まって以来の才能なんだからもっと自信を持っていいのに」
エールもスシヌの魔法には何度も助けられている、と頷いた。
「でも戻った学校生活は大変でね。ゼスの王女という立場もあって同級生は一歩引いちゃうし、学校の先生の中には露骨にごますりするような人もいて……周りからは良く思われないわよね。もちろんゼス王家の人間に直接何かしてくる子はいないんだけど。ちなみにマジックもそうだったらしいんだけど乳姉妹の子やガンジー王…スシヌのお爺ちゃんの部下の子とかが仲良くしてくれたそうでお友達には困らなかったみたいね。でもスシヌはそういう子に恵まれなかったわ」
エールは学校に通ったことはないのでよくわからない話である。
「それに魔法レベル3っていう破格の才能は周りが思っている以上に大変なもの……魔法大国ゼスでは羨ましがられる反面、妬みの的でもあり、そしてそれ以上に恐れられる重いものなの。同じ魔法レベル3であるアニスさんがスシヌの家庭教師になってくれた時、周りはものすごく反対したけど私は歓迎だったわ」
「アニス先生も昔は苦労したみたいだよ」
今は周りが苦労させられている、とエールは思ったが口には出さなかった。
「とにかくスシヌは頑張ってたけどそれですごいストレス抱えてたのね。そこにマジックが……」
縁談を持ってきた?エールが口を尖らせる。
「そう、正確には縁談とまではいかないけど男の人を紹介されたってところね。マジックは自分が好きになった相手がランスさんですごーーく苦労したのもあってスシヌには良い人と一緒になって欲しいみたい。ザンスちゃんがスシヌのこと許嫁だの正室だの言うもんだから本気で心配してるのね」
そういってパセリがくすくすと笑っている。
「ちなみにその相手はお父様が現ゼス将軍をしているゼスの名家中の名家であるクラウン家の息子さんなの。家柄はもちろん魔法の才能も申し分ないし、将来のゼスの将軍になるのは確実って言われたエリートさんよ。さらにお父様に似て爽やかなカッコよさとお母様譲りのクールさもあって今ゼスで一番人気と言っていいほどモテモテ…ってエールちゃんそんなに怖い顔しないの」
女にモテるやつは大体女侍らせて浮気するに決まってるからやめるべき、とエールがどこかを睨みつけながら言い切った。
「そ、そんなことないと思うよ?」
「JAPANの国主様が聞いたら悲しみそうな言葉ね~」
兄の名誉のために立場上いっぱい奥さんがいても良い人は別、と追加しておいた。
「まあ、そのせいで今度はその子のファンの子からそりゃあもう遠巻きにやっかまれたり。恋愛って綺麗事ばっかじゃないわよねー」
エールはここから解放されてゼスに帰ったらそのクラウン家の長男を探して一発ボコろうと決意した。
「ま、待って。お付き合いとかそう言う事をする気はないの」
エールの目が真剣になったのを見てスシヌが慌てながらそう言った。
「昔はザンスちゃんのお嫁さんになるっていってたせい?」
「それも今はなんか違うかなーって」
ザンスなら強さは文句はないし大事にもしてくれそうだが、エロい事ばっかり考えてるからやめた方がいい、とエールは言った。
「エールちゃん、ザンスちゃんと何かあった?」
パセリが何かに気が付いたのかそう聞き返したが、エールは否定も肯定もしないまま目をつぶった。
リーザスであったシーウィードの夜のことはまだ話していない。
「と、とにかく。私、将来の事とかゼスの事とか色々と考えてて……そのせいなのか魔法制御が上手く出来なくなっちゃったの。そうしたら昔みたいに学校とかどこかで怪我させちゃうかもって」
「昔みたいに引きこもっちゃってたのよねぇ」
エールも魔法が使えるので分かるが、魔法を使うにはある程度の集中が必要だ。
特に魔法レベル3ともなれば下手すれば大惨事に繋がる、というのは師匠であるアニスを見たこともあって簡単に理解出来た。
だが今はそんなに制御できていないようには見えない、とエールが首を傾げる。
「ここに来てハニーさん達が魔法の練習手伝ってくれたの。ハニーさん相手ならいくら失敗しても怪我させる心配ないから」
ハニーの誘いに乗った理由の一つなのだろう、パセリがうんうんと頷いている。
「私、本当にダメだなぁ……ママの期待に全然応えられないどころかみんなに心配させてばっかり」
またぽろぽろとスシヌが泣き始めた。
エールは頭を優しく撫でる。エールに王族の重圧など分からないが、頑張っていた姉を誰にも…姉自身にも批判などして欲しくはなかった。
「……ありがとう、エールちゃん」
スシヌはそう言って笑顔を浮かべた。
「ねえねえ、エールちゃん。ゼスに来てスシヌと一緒に学校行かない? エールちゃんなら魔法の才能もあるし、神魔法だって使えるし、レベルだって……将来ゼスの将軍にだってなれるわ。ううん、いますぐにだって将軍にして貰えちゃうかも」
エールは少し悩んだがごめんなさいと言いつつ首を振った。姉と通う学校というのには惹かれるものがあるが、エールは冒険があるし何より勉強は好きではなかった。
「うーん、エールちゃんが男の子だったら良かったのにねえ」
スシヌとエールはそう言ったパセリを驚いた顔で見た。
「そうしたらマジックだって大歓迎だったでしょうに。 あっ、勘違いしないでね、私は女の子でも大歓迎よ? でも後継ぎが出来ないとなるとゼス王家としては困るってマジックなら言うだろうなって――」
「おばあちゃん!」
スシヌは少し怒ってパセリにお湯をばしゃばしゃとかけた。効果はないがきゃーきゃー言ってパセリが笑っている。
「そ、そういえばエールちゃんこそどうしてたの? 新年会にも来てなくて、お姉ちゃんはエールちゃんはちょっと都合が合わなかったんだって言ってたけど連絡も何にも無くてすごく心配して」
何とか話題をかえようとしたスシヌの言葉を遮るように、温泉の湯煙に二つの人影が見えた。
「……あら、スシヌちゃんにエールちゃん? パセリ様も相変わらずお元気そうで。こんばんは」
「なんだ。お前ら、まだいたのか? 幽霊が元気とか変な奴」
人影の方を見るとグラマラスな金髪美女と赤い髪のスレンダーな女性が立っていた。
「リズナさんにえっと、サテラさん。こ、こんばんは」
元魔人の二人である。エールも挨拶をしつつ視線をリズナの胸元にまっすぐに向けていた。
大きさならナギの方がやや上かもしれないがそれでも迫力のある大きさと、立っているだけで溢れてくるようなエロい雰囲気が合わさって長田君なら見た瞬間に砂になりそうだ。
「え、エールちゃん、そんなにじろじろ見ちゃ失礼だよ」
「ふふ、エールちゃんがお迎えかと思ってたんだけど、まだ帰ってなかったのね。 ここが気に入っちゃった?」
リズナとスシヌは親しそうに話している。
「……ハニーキング様、なんてことを」
エールはリズナに事情を説明する。
リズナはハニーキングに気に入られているらしいので説得してもらえないかと相談してみる。
「残念ですが、私から言ってもたぶん聞いていただけないかと」
「放っておけばいいだろ。 しかしあんな陶器どもに捕まるなんて情けない! はっはっは、やっぱり人間は弱っちいな!」
サテラがここぞとばかりにエールを見てバカにするように笑った。
エールはそんなサテラを見て口を尖らせて口だけのビッチに言われたくない、と呟く。
「ビッチって、サテラのことか!?」
サテラはエールを睨みつけるがここは女湯。シーザーもおらず、粘土がこねられず、無敵結界もなくなっているサテラは実のところエールにとって全く怖い相手ではない。
ハニワCITYには夜な夜な一人で粘土をこねて自分を慰めているビッチがいてたまに覗きに行っていることをエールは城のハニー達から聞いていたがこの噂がサテラのことだと確信していた。
「昼にやると色々言ってくる奴がいるから… ビッチって、そんな風に言われてるのか?」
「えーっと、その、言い辛かったんですけど、昔からハニーさん達の間では……」
「はやく教えろー!」
サテラがリズナに怒鳴っているのを見てエールは心の中で笑った。
「えっと、リズナさん達もここにいて長いですよね」
スシヌがサテラからリズナを庇う様に話しかけた。
「サテラ達は情報屋が来るのを待ってるんだ。それを受け取ったらすぐに出ていくさ」
どこに行くのか、とエールは尋ねた。
「ランスがどこにいてもとりあえずこのまま魔物界に戻る予定だ。ホーネット様達にも報告しないといけないしな ……しかしまだ情報屋が来ない。情報料だって安くはないのに騙されたんじゃないのか?」
「そんなことないです。景勝が紹介してくれたんですから」
「はやくしないとまた奴らに見つかって……ふん、面倒くさい」
少し目を伏せたサテラに、エールはその想像をつけつつ奴らとは何なのかを尋ねる。
「…魔人討伐隊です。魔王様がいなくなった今、人類の脅威は魔人だけ。復讐を考えている人も多くて追われているんですよ」
「人間に協力していたリズナはまだマシだ。あとは妙に人間と親しくやってたレイもか。 だがサテラや他の魔人には人間界に居場所なんかない」
それを聞いてエールは想像が当たって少し目を伏せた。
「なんだその顔は。別にどうってことないぞ。無敵結界がなくなったとはいえサテラ達は魔人としての誇りまで失ったわけじゃないからな。強さだって人間とは比べ物にならないんだ、恐れをなすのも当然だろう」
「でも無敵結界が無くなったと広く知られたら、もっと本格的に襲い掛かってくるかもしれませんね」
そういえばヘルマンで会ったメガラスさんにはまだ無敵結界があったな、とエールが呟いた。
日光の使い手であるエールには関係ないことだが、無敵結界は人間には破ることが出来ない。
どの魔人に無敵結界が残っているのか人間側は把握しきれていないのだろう、さらに丸っこくて小さいリスや元魔人だった相棒を頭に思い浮かべたところでそのエールのつぶやきにサテラが詰め寄った。
「メ、メガラスだと!? お前、メガラスに会ったのか!? どこでだ? 元気にしていたか!?」
エールはその勢いに驚きつつもホルスの戦艦で会ったことを話すと、サテラは泣きそうになりつつ顔をしつつ安心したのか顔をほころばせた。
「そ、そうか。あいつ、無事だったんだな。 よ、良かった……ずっと心配して…」
「良かったですね、サテラさん」
メガラスの方は本当に何もしゃべらなかったが、サテラとは知り合いだったようだ。
「あいつは基本無口なんだ。 だがすごい魔人だぞ。 常人には目に捉えられないスピードで飛び回れてな、サテラもそれに助けられたことがある ……だがあいつはケイブリスどもの汚い奇襲からホーネット様を庇おうとしてやられたんだ」
テラからもうっすら聞いていた魔人戦争直前の魔人同士の決戦の話。
エールはメガラスの事を自慢げに話すサテラが少し意外だった。
「復活したなら会いに来ればいいものを。なんでホーネット様のところに来なかったんだ?」
エールはテラが言っていた魔王に操られるのを恐れていたことを含めて話すと納得がいったようだった。
エールは何となく戦艦で見たテラとメガラスの二人が頭に浮かんだ。
もしかしたらメガラスはホーネットに忠誠を誓っていたわけではなく、ホルスの戦艦がある人間界に魔軍が行かないようにするためにホーネット派にいたのではないだろうか。
そしてホーネットもそれを知っていて魔血魂となったメガラスをホルスに返したのではないだろうか。
「ホーネット様が聞けば安心するだろう、良い土産話が出来た。お前も役に立つじゃないか」
エールは思ったことを話さないまま上機嫌なサテラを見つめた。
エールはハニーキングを倒すのに協力してもらえないかを頼んでみることにした。
「なんでサテラ達がお前なんかに協力しなきゃいけないんだ」
ゼス王国首都では大勢のハニーが捕まっていて、その中におそらく情報屋のハニーもいるということを話す。
「大勢捕まって… もしかしてハニーさん達が物資や手紙が最近全く届かないって困っているのはそのせいなのかしら?」
「は、はい。私が誘拐されたのでゼスではハニーさん達を大勢捕まえてるってエールちゃんが持ってきた手紙に書いてありました」
城のハニ子達が食材が少ないと困っているのを見るに、ハニーとの交易を途絶えさせるというゼス側の報復作戦は効き目が表れてきているようだ。
「つまりお前らが解放されないと情報屋は足止め食らったままって事か? 全く迷惑な」
エールは大きく頷いた。
「でもハニーキング様。とてもお強いですよね。私達が加わるだけで勝てるでしょうか?」
確かに魔王であった父を思い出すような圧倒的な強さである。
「魔王様があんなでかいだけのハニワなんかと比べられるわけないだろ!」
愛する魔王であったランスのことを思い出したのかサテラが吠えた。
エールは戦ってみればわかる、と答える。
「ふん、そこまで言うならやってやる。お前らが解放されないとサテラ達も困るしな。勘違いするな、お前らの為じゃないぞ!」
「わかりました。私は攻撃付与が出来るので少しはお役に立てるかと思います」
「ありがとうございます。頑張ろうね、エールちゃん」
エールもお礼を言った。
「あら、思わぬ協力者をゲット。裸の付き合いってやっぱりすごいわね」
パセリが裸の付き合いというとなんだかいかがわしい感じがしたが、人数が多ければ回復でなんとかなるかもしれない、とエール少し希望が湧いた。
「リズナさんはずーっと前に私と同じ学校だったんだって。制服見たら気が付いてくれたの」
「スシヌちゃんのおじいちゃんは学生時代に後輩だったんですよ」
エール達はそんな会話で盛り上がりつつ、なんとなく父の話を聞いてみた。
「ランスさんには本当にお世話になってたんですよ。私がこうして生きていられるのはランスさんのおかげですから」
「ランスはサテラの使徒だ。魔王様になってうやむやになったが…使徒になるっていうのはあいつが言い出したことだからな!逃がす気はないぞ!」
エールとスシヌが元魔人の二人から聞く父の話はとても面白かった。
リズナはランスに何度も救われたと強い恩を感じているらしく言葉はとても優しい。
長年閉じ込められた城から救出され、自分を酷い目に合わせた人物を倒し、一緒に何度も冒険に行き、魔人に攫われた自分を救い、壊れかけた自分を何度も救い上げてくれた存在。
その言葉には多くの感謝と大きな愛しさが込められていてスシヌは聞いてるだけで赤面していた。
人間だったころに貰ったプレゼントを今でも大切に持ってるらしいがエール達にはそれが何なのか教えなかった。
サテラはランスは自分の使徒だとやたら自慢げに語る。
魔人戦争でホーネットを救出し、数多の魔人を討ち破った英雄。その英雄はすぐに魔王になってしまったが、サテラにとっては仕えがいのある魔王様であったらしい。
そのせいで人類は大変だったが、魔人であったサテラには関係ない事だと言われエールは眉を寄せた。
二人の話を聞いて感じるのは二人が父を本当に愛しているという事だ。
「パパ、愛されてるんだねえ…」
「うんうん、惚気よねー」
スシヌが顔を赤くさせながら呟き、パセリはいつも通りきゃーきゃーと楽しそうだ。
父を愛しているのは自分たちの母も同じだ、とエールは返した。
いつかこの二人と父の間に妹か弟が生まれるかもしれない。
エールはそれは少し嬉しい事のような気がした。
………
……
エールが元魔人二人の協力を取り付けた次の日。
エールはまたしてもスシヌと同じ制服を着せられていた。
ハニーがミニスカートをめくりにくるというスカートめくりの日だそうだ。
「きゃー!」
スシヌのスカートがめくられないよう庇うのはエールの仕事だが、スシヌは隙を見せると簡単にスカートをめくられていた。ちなみにめくったハニーはエールに割られないようにぴゅーっと逃げ出すまでが勝負であるが大抵割られる運命である。
エールの方はといえばまずハニーが近づくのさえ大変だ。じりじりとエールを狙うハニー達の視線は獲物を狙うハンターのそれである。
正攻法で一気にめくろうとするハニー、背景に解けこんで隙を狙うハニーに大きな扇風機や釣り竿でスカートを狙うハニーまでいたがエールは鉄壁だった。
グリーンハニーから渡されたメモには
"簡単にめくられないように。めくられたらさっと手で抑えて恥ずかしがる"
エールは逆に防御してレアさで勝負しろということだ。
今日もハニーは楽しそうだった。
「今日のご飯はコロッケだ!」
ハニーキングの鶴の一声で、エール達はごはんの準備をしていた。
エールが大きな鍋で茹でられている大量の芋を見てヘルマンの料理とそれを一緒に食べたレリコフ達とを思い出していると…
ガーンと大きな音が城に響いた。
「敵襲だー!」
「出会えー、出会えー!」
そんなキャーキャーとした大きな声が聞こえてきた。
「な、何!?」
敵襲という言葉に東ヘルマンや例の魔人討伐隊が頭をよぎる。
エールは怯えた様子を見せているスシヌやハニ子に部屋から出ないよう伝えると、日光を持ち出して音のした方へ走った。
城の入り口では門が真っ二つになり、明かりが差し込んでいるのが見える。
「兄上は派手でござるなー」
「お前ー! 穏便に行けって言っただろー! 何いきなり門を叩き割ってんだよー!」
「うるせぇ、てめーも叩き割るぞ」
さらにハニーが割られる音がするが…同時に懐かしい声も聞こえる。
エールは驚いてそちらを見ていると
「あっ! エーーールーーー!」
聞きなれた声のエールの大切な相棒が手を振っている。
長田君!と叫んでエールが走り寄り久しぶりの再会に喜び合おうとして
ポカン!
いい音がしてエールの頭が叩かれた。
長田君の横にはなんでこんな場所にいるのか意外な人物。
「しゅーくーん。久しぶりでござるなー!」
いつのまに後ろにいたのか、エールの脇からひょいっと顔を出したのは紫の髪ににゃんにゃんっぽい忍者ルックの少女。
エールの姉妹であるウズメがにょほほと笑っていた。
「てめー、何捕まってんだ!」
そしておそらく門を真っ二つにしたであろう大きな剣を担いでいる青年。
赤い鎧こそ身に着けていないが見間違いようもない青い髪、エールの頭を叩いた兄弟であるザンスだった。
エールはハニー城にて相棒、そして兄弟姉妹と再会した。