エールちゃんの冒険   作:RuiCa

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「ゼスの飯、豪華で美味かったな。ザワッスとか初めて食べたけど見た目と違って辛くないのな」

 長田君の言う通りゼスで人気の料理や名産がバイキング形式で並べられた豪華な夕食にエールも大満足であった。

 食事の後、エールと長田君にあてがわれた部屋に集まって話をしている。

「エール、お前は女なんだからもうちょっと落ち着いて食え」

 ザンスが呆れながらそう言った。

「でも楽しかったでござるよ」

 夕食の間、スシヌは様々なゼスの料理を嬉しそうにエール達に紹介して回った。

 それを聞きながら次から次に皿に取ったせいで急いで食べることになっただけ、とエールは言い訳をする。

 

「でもこれでやっと落ち着いた感じがするな! エール、明日からどうしよっか? やっぱゼスでもちょっと冒険したいよな~」

 長田君が話を切り替えながら嬉しそうに地図を広げる。

 冒険をするならどこかいい場所はあるだろうか、とエールも地図を眺めると長田君が色々と指をさし始める。

「ゼスは有名な場所が色々あるんだよな。まずは廃棄迷宮、場所はゼス北東にあるノクタン鉱山の近くだって」

「ゴミ捨て場なんか見て何が楽しいんだよ。なんか捨てるもんでもあんのか?」

 脇でそれを聞いていたザンスが口を挟む。

「ここって地獄の底に繋がっててそこに捨てたものは二度と戻らないっていう有名な場所だから見てみたいんだよな。そうだ!ここなら魔血魂捨てられんじゃね?」

 そう言って長田君はエールを見るが、エールにとってこのハニー魔人の魔血魂は大事な切り札でありゴミでもなければ要らない物でもない。

「……俺はもうやらないからな?」

 捨てるぐらいならお母さんに頼んで封印してもらうよ、とエールは目を逸らしながら答えた。

 

 長田君はゼスの観光案内のような紙も取り出してめぼしいものを挙げ始めた。

 

「ゼスのずーっと南に遊園地があるんだって。昔は奴隷観察場っていう趣味の悪い施設だったところを改心した持ち主が作り直したとか何とか」

「Mランドのがでけーんだからそっち行きゃいいだろうが」

 

「あとはゼス西を端から端まで魔物界と隔てるマジノラインも有名で―」

「そこはもう行っただろうが。魔物界まで行った時、お前ビビりまくってたよな」

 

「そういやロッキーさんてゼスにいるんだっけ。会いに行ければいいなって」

「場所分かんのか?」

 

「ゼス王立博物館っていう世界最大級の博物館があるって」

「ここから歩いてすぐの場所にあんだから今すぐ行ってこい。冒険って名目から離れてんじゃねーか」

 

「ムキー!お前、さっきから何なんだよー!大体、ここは俺とエールの部屋だぞ!」

 いちいち文句をつけるザンスにキレるように長田君が声を上げた。

「まあまあ、主君殿がリーダーなんだからしょうがないでござる」

「エールがリーダーだったのは前の話だろうが」

 前の冒険の名残もあって、エールの部屋は自然とたまり場にされていた。

 ザンスも冒険に一緒に行く?エールが何となく誘う様に尋ねてみる。

「……行くわけねーだろ。俺様を誰だと思ってんだ」

 エールの言葉に一瞬悩んだが、すぐにそう返した。

「ゼスに恩も売れたことだしあとはリーザスに帰るだけだ。エール、お前も法王にちゃんと俺様に助けられたこと伝えておけよ」

 自分は助けられたがそれはAL教には関係のない話、とエールは首を振りながら言った。

「ならお前が個人的に借りを返せ」

 兄弟間で貸し借りは無し、とエールが手でバツ印を作りながら言うとその頭がポカリと叩かれた。

「ザンスはいいとして、ウズメはこれからどうする?せっかくだし俺等と一緒に冒険行かね?」

「楽しそうでござるな。でもウズメはちょっと用事が―」

 

<コンコン>

 

 エール達が話し合っているところに部屋のドアがノックされる音が響く。

「エールちゃん、お邪魔します……って、みんなここにいたんだ」

 声をかけるとガチャリと扉が開いてスシヌが入ってきた。

「いて悪いか」

 さらにスシヌの後にはマジックが部屋に入ってくる。

「あっ、マジック女王まで? 夕食、美味かったっす!」

 長田君がお礼を言うとエールも大きく頷いて感謝の言葉を述べる。

「そう、喜んでもらえたなら良かったわ」

「リーザスの食事ほどじゃねーけどな」

 少し顔をほころばせたマジックだったが、ザンスの顔を見て無意識なのか眉をひそめた。

「……なんでみんなここにいるのかしら。エールちゃん達にこれから相談したいことがあったのだけど、ザンス君達に気を利かせてと言っても出て行かないわよね」

「聞かれちゃいけないような話でござるか?」

「だったら尚更出て行かねーぞ」

「別に聞かれて困ることではありません」

 マジックは溜息をつくが、そのまま話を進める。

「冒険者としてエールちゃんにお仕事の依頼をしにきました」

 自分への依頼と聞いてエールは気を引き締めてマジックに向き直った。

「スシヌがかけられた呪いですが、調べたところやはりゼスではどうにも出来そうもありません。これを解呪出来るのは呪術のエキスパートであるシャングリラのパステル女王だけでしょう。そこでウルザと相談したのだけれど……エールちゃんにはスシヌをシャングリラまで送り届けて欲しいのです」

 

「お、おぉー…一国の王女の護衛とかすっげー依頼。一流って感じ?」

 長田君が何やら感激しているが、エールからすれば自分から話したことである。

「王女の護衛とかそんなに仰々しいものじゃなくて、エールちゃんの冒険にスシヌを付いて行かせて欲しいの」

 マジックの言葉を補足したパセリに、エールは首を傾げた。

「スシヌをエールの冒険にってどういうことだ?うし車でも使ってささっと行ってくりゃいい話だろ」

 そう言ったザンスの言葉に頷きながら、エールは何故一緒に冒険するのか説明して欲しいとマジックに尋ねた。

「スシヌがハニワの里に行ってとても心配していたのだけど、帰ってきてみれば魔法制御も上手くなって少し自信をつけたみたいなの。前の魔王討伐の旅の時のように、実践に勝る経験はなかったのでしょうね」

 

 マジックはスシヌが魔王討伐の旅から帰って来た時を思い出した。

 部屋に引きこもりがちで自信がなさそうにしていたスシヌは、母親である自分や四天王から見て驚くほどに立派になって戻ってきた。

 ゼスどころか世界でも有数の実力を身につけ自信がついたのだろう。表情も明るくなり、おどおどしていた雰囲気は無くなり堂々とした姿に見せるようになったスシヌをマジックは正式にゼスの女王にすると父であるガンジーが眠る先祖代々の墓の前で決意した。

 しかし、結局そのプレッシャーがスシヌへの大きなストレスになってしまい、また引きこもりがちにさせてしまったのだ。マジックは母親としてパセリの事を軽率と言えないほど大いに反省していた。

 

「思えばあれから帰ってきて以来、スシヌにはほとんど首都にいて貰って外に出していませんでした。これは良くない事です。スシヌには将来、ゼスを継ぐものとして見聞を広める必要があるのだから」

「マジックも昔はランスさんの冒険についていって色んな所を回ったそうね」

 マジックはまだ王女であり、ゼス四天王であった頃にランスについて世界を回った経験がある。

 色々な国で色々な身分の人間と関わることは自身を大きく成長させたはずだ。

「マジックも今は立派な女王様だけど昔は結構やんちゃだったんだって」

「見聞とか、ゼスは俺様が継ぐからスシヌがんなことする必要はないぞ」

「パセリ様もザンス君も黙ってて」

 

「本当を言えば私はスシヌを外に出すのは心配です。でもスシヌにはどちらにしろシャングリラに行って貰う必要があるし、エールちゃんは世界を冒険者して回っているというから良い機会でしょう。それにエールちゃんがシャングリラでパステル女王と交渉もしてくれるとウルザから聞きました。ここはその言葉に甘えることにします」

 マジックは少し優しげな表情でエールを見た。

 母親であるクルックーは掴みどころがなく何を考えているか読めない人間であったがその娘のエールは多少変な所はありそうだが基本は心優しい女の子だと思っている。

「エールちゃんなら実力もあるし、スシヌも心を許しているし安心出来るからね。もちろんお忍びという形で、護衛もしっかりお願いします」

「こいつ、抜けてるとこあるぞ。実際、白陶器に一緒に捕まったじゃねーか」

「それでもエールちゃんは助けに来てくれたよ。たった一人でも迎えに来てくれて…私の事、心配してくれて庇ってくれたんだ」

「本当はスシヌがどうしてもエールちゃんともうちょっと一緒に居たいんだって聞かなかったのよね」

「おばあちゃん!」

 スシヌは少し顔を赤くしながら焦っている。

 

「もちろん十分な依頼料も出します。引き受けてもらえないかしら?」

「私は冒険に慣れてるわけじゃないけど、それでもエールちゃんの足を引っ張らないように頑張るから」

 エールは考えるまでもなく、胸をポンと叩いて任せて下さいと快諾した。

 それと同時に姉を届けるのを仕事にしたくないので依頼料はいらない、と返事をする。

「ちょ、エール、そこは受け取っておけよー…俺達、そんなに手持ちないんだって話したじゃん」

 ぼそぼそと話しかけられつつ長田君が袖を引っ張るが、エールは首を振った。

 元々スシヌが呪いをかけられたのだって自分がハニーキングを再起不能にするか、逃げられていなければいれば起こらなかったことだ。ハニーキングに捕まってゼスの人達に心配をかけてしまったお詫びもある。これは名誉挽回の機会だ、とエールは気合を入れる。

「お前、変な所で頭固いよな」

 スシヌが旅の仲間になってくれれば心強いしきっと楽しい冒険になる、と笑みを浮かべて手を差し出した。

「えへへ…エールちゃんに長田君。しばらくの間よろしくお願いしますっ」

 スシヌは胸をどきどきと高鳴らせながらも笑顔でその手を取った。

「スシヌ、良かったわね。もちろん私も一緒に行くから子孫共々よろしく~」

「別に依頼料も遠慮しなくていいのに」

 ならば依頼料の代わりではないが冒険の準備だけゼスの支援が欲しい、とエールはマジックに頼んでみる。

「ええ、スシヌの冒険の準備もあるからもちろん支援させてもらうわ。エールちゃんに渡すはずだった依頼料はスシヌに全て預けます。途中で入用になったらそこから出してね」

 笑うスシヌにエールや長田君が笑顔を返すのを、マジックも微笑ましく見ていた。

 

「コラ、俺様を無視して話を進めてんじゃねぇぞ」

 その雰囲気に水を差すように、なぜか長田君を蹴り飛ばしながらザンスが口を挟んできた。

 

「そうそう、ザンス君には明日リーザスへのうし車を用意させます。良ければウズメちゃんもそれに乗って…」

「いーや、俺様もエール達と一緒に冒険とやらに行ってやるわ」

 ザンスから出た言葉にエール達は驚いた。

「はい?ザンスもくんの? さっきは行くわけねーとか言った癖に?」

 長田君は蹴り割られた。

「お前らだけじゃどっかで取っ捕まるかもしれねーしな。俺の女共に何かあったら面倒だ。世界最強の俺様が一緒に行ってやるんだ、ありがたく思え」

「何言ってるの。ザンス君にはリーザス将軍として仕事があるでしょう?」

「うちの軍は俺様がいないだけで崩れるほどやわじゃない。いつかリーザスになる国を見ておくのも悪くないしな。というわけだ、俺様もついてってやる」

「ま、待ちなさい。女の子のウズメちゃんならともかくザンス君が一緒に行くなんてダメに決まってるでしょう!」

 あくまで上から目線で話すザンスにマジックが語気を荒げる。

「まあまあ、エールちゃんも一緒なんだから」

「エールちゃんだって女の子でしょう!スシヌだって何をされるか分かったもんじゃないわ!」

「そろそろスシヌにもそういう経験が必要だと思うんだけど」

「パセリ様はいい加減にしてください!!」

「そろそろスシヌの処女ぐらい貰ってやっても良いな。エールも混ぜて三人でってのもいいな」

「おま、なんてこと言うんだー!」

「な、何言ってるのザンスちゃん!」

「兄上殿のえっち…」

「じょ、冗談でも言っていい事と悪い事があるわ!」

 冗談でもないと続けるザンスにマジックが掴みかからんばかりに怒り始めスシヌやウズメがそれを止めてパセリは笑っている。部屋は騒然となった。

「エールさん、私もザンスさんの同行は反対です。リーザスでエールさんがされたことを思えば危険かと」

 今まで黙っていた日光も周りに聞こえないように小さくエールに話しかける。

 目の前の喧騒を見つつ、エールは何かを考えるように目を閉じた。

 

<パン!>

 

 そして大きく手を叩くと、辺りは一瞬静まり返って全員が驚いてエールを見た。

 エールが出した結論はシンプルだった。ザンスにそんな度胸あるはずない。

 

 エールがそう言うとすかさずその頭に拳が飛んで来るが、いつもと違ってエールはその拳をぱしっと止めて受け流した。 

 睨みつけてくるザンスは無視して視線をマジックに移し、スシヌに何かあった時は腹切って詫びます、と日光を突き出しながらエールは堂々と宣言する。

「え…?」

 その言葉にその場にいる全員が驚いて目を見開いた。

「主君殿、本気でござるか?」

 護衛を任されたのだのだからそれぐらいは当然。もちろんその時は刺し違えてでもざくっとやる、と言いながらザンスの目をまっすぐに見つめた。

「だ、ダメよ。エールちゃんはAL教法王の娘なんだし、スシヌの妹なんだからそんなこと―」

「ここでザンスちゃんの我儘聞いてあげればリア女王に好き勝手言われることもないんじゃない?」

「誰が我儘だ。むしろ感謝するとこだろうが」

 

 変な事をするなら連れていかない、とエールがいつもの笑みを消してザンスの目を射貫く様に見つめる。

「なんで俺様がお前の言う事なんぞ聞かなきゃなんねーんだ」

 冒険に連れていくかの判断は依頼を任された冒険者であり、リーダーである自分が決めること。一緒に行くのか行きたくないのか、エールはザンスに尋ねた。

 

「ちっ……からかってやっただけだ。誰がお前らみたいな色気のないの相手にするか」

 エールの強い視線に目を逸らしながらザンスは答えの代わりにそう吐き捨てた。

 

 エールはほっとした後マジックを見て、スシヌは必ず守りますと頭を下げる。 

「え、エールちゃんがそこまで言うなら大丈夫かしら……」

「エールちゃんがここまで言ってくれてるんだから大丈夫よ~」

 パセリがマジックの言葉を反復するように説得している。

 

 エールはウズメも一緒に行く?と誘ってみる。

「もちろんウズメも行くでござーる、と言いたいのはやまやまなんでござるが母上殿から頼まれたお使いがあるので今すぐ一緒に行けない…」

 ウズメはにゃんにゃんの耳のような髪をぺたんとさせる。

「ウズメちゃんのお使いって?」

「ちょっと魔物界方面に用事が。母上殿は魔王がいなくなった後の魔物の動向は知っておくべきだとホーネット殿とも連絡を取ってるんでござるよ。ウズメその連絡係を任されたのでござる」

 今度は重要な任務を任されたと言うのが誇らしいのか薄い胸を張った。

「ならリズナさん達と一緒に行けばよかったんじゃねーの?」

「いやいや、会うのは魔人の使徒殿でマジノラインに秘密の情報受け渡し場所が……っとこれ以上はさすがに話せないでござるね」

 機密でござる、と口元に指でバッテンを作った。

「そう…ゼスでももちろん注意してるけれど魔王という統率者が居なくなってどう動くかわからないものね。元々ランスは魔王としての統率とか全くしてなかったからそう変わっていないはずだけど、魔人が魔人じゃなくなったことで反発する過激派が増えることが予想されているわ。あれから一年、今はまだ動きはないけれど……」

「母上殿もそれが気がかりなんでござるね、きっと。母上殿は厳しい方でござるが人間界の平和のため魔物界にもバッチリ気を配っているんでござる」

 エール達は感心しながら聞いていた。

 しかしその中で、ランスとよく一緒に居たことでその実力は良く知っているマジックだけが別なことを考えていた。

 きっと誰かの入れ知恵だ、と考えながら思い浮かんだのはもちろんリーザスの女王である。

「それは置いておいて。主君殿達はシャングリラまで冒険に行くんでござるね?」

 エールは頷いた。

「なら魔物界行って戻って、自由都市にいる母上殿に報告したら急いでシャングリラに向かうでござる。ウズメも主君殿と一緒にいたいゆえ、そこで待っててほしいでござるよ」

 その聞くとかなり忙しく大変な道のりのように思えるがウズメにとってはそう大変な事でもないらしい。

「おいウズメ、ついでにリーザス行ってこれ母さんに届けろ。俺は戻るの少し遅くなるってな」

「ういうい、了解でござる」

「ちょっと、礼状をそんな軽々しく渡して…」

 マジックはそこまで言ってまたため息をついた。

 

「んー…ってことは目的地はシャングリラ。俺とエールとスシヌとザンス、あとパセリさんもか。ワイワイ行くってことだよな」

 楽しくなりそうだね、エールは満面の笑みを長田君に向けた。

 

………

……

 

 次の日、エールがゼスの支援で冒険の準備をしているとウルザが中に入ってきた。

 

「エールさん、これが例の地図です。必要ないと思いますが紹介状も用意しましたよ」

 エールは覚えがなく首をひねっていると、長田君がひょいっと顔を出した。

「ゼスにいるって言うロッキーさんの居る所わかんねーからさ。スシヌに聞いてみたんだよ」

 その情報をウルザが持ってきてくれたらしい。

 長田君は気が利くね、とエールは感心しながらその頭を撫でる。

「ここにあるのは私の古くからの友人、キムチが院長をやっている孤児院です。ここはロッキーさんにとっては家のような場所でして、もし外に出ていないのであればこちらにいるのではないかと」

「まぁ、ロッキーさん冒険者だしな。会えないかもしれないけど一応行ってみようぜ」

 エールはウルザに礼を言った。

 ロッキーには魔王討伐の旅を陰で支えて貰い本当に世話になった。

 昔ランスの召使だったという事でその子供である自分の事を敬ってくれているが、エールもまた冒険者の先輩としても大いに尊敬している人である。

 兄弟ではないが会いたい人物の一人だった。

 

 冒険の準備は万端。魔法大国というだけあって魔法アイテムを色々と融通してくれたのが嬉しい所である。

「んでは、ウズメは先に出発するでござる。次はシャングリラで―」

 ウズメは先がけて首都を旅立った。

 さっぱりしているがウズメは天才的な才能を持っている。心配はいらないだろう。

 

 エール達の見送りにはマジック女王とウルザが顔を出していた。アニスもいたのだが、千鶴子に引っ張られて引っ込まされている。

 

「絶対に無茶はせず、出来るだけ目立たないようにね。エールちゃんにしっかりついて行くのよ」

「うん、行ってきます!」

 スシヌがニコニコとしながら答えるのをマジックは心配そうに見つめる。

「エールちゃん、くれぐれもスシヌの事を頼みます。ザンス君はスシヌに手を出さないように。エールちゃんにもね」

「知ったことか」

 エールはザンスの脛に軽く蹴りを入れながらしっかり見張っています、と答える。

 そしてマジック女王やウルザにしっかりと世話になった礼を言いつつ頭を下げた。

「是非、またいらしてください。その時はサクラ&パスタで食事が出来るよう取り計らいますから」

「おっ、やったぜ!また来ような、エール!」

「マジックもスシヌがいないからって心配しすぎないようにね。ウルザさん、マジックをよろしく頼みます」

 

 本日は晴天、冒険日和。

 エール一行はゼス首都マジックを出発した。

 

「……私、過保護なのかしら。すごく心配だわ」

「精神感応等の対策準備もしっかりしましたし、彼らはレベルなら世界でもトップレベルですよ。そう簡単に手を出す者もいないでしょう」

「スシヌが変な意味で手を出されないか心配なのよ」

「それはエールさんがスシヌ王女を守ってくれるよう信じましょう。これはスシヌ王女たっての願いなのですから」

 

 マジックがスシヌからエールと冒険に行きたい、外を見に行きたいと言い出した時には驚き最初は反対した。

 スシヌは昔から聞き分けの良い素直な子供で反対すればすぐに引き下がるのだが、今回はどうしてもと譲らなかったのだ。

 

「昔のマジック様を思い出しますね。ランスさんからの要請でマジック様がJAPANにいらした時は驚いたものです」

「あ、あれは予定が変わっただけだったの。 親父が女装して向かうとか言い出してそっちの方がまずかったんだから」

「…思い返せばあれも良い経験でしたね。私達のようにスシヌ王女が存分に見聞を広めてくれることに期待しましょう」

 

 二人は青い空を見上げながら未来のゼス女王の旅の幸運を祈った。

 

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