シャングリラまでは距離があるが温暖な気候もあってゼスでの冒険は順調だった。
キャンプではエールはスシヌと一緒のテントに入っている。
「眼鏡外れないなぁ…」
割らないように寝るのも眼鏡があたって痛そうで顔を洗うのにも苦労しているらしく、落ち込み気味だった。
エールは何か気を紛れさせることは出来ないだろうかと考え、思い出したように手をポンと叩くとスシヌに魔法を教えてくれないかと相談することにした。
思えばエールの周りにはきちんと魔法を教えてくれる人はおらず、使える魔法といえばどこで覚えたのかも定かでない電磁結界ぐらいである。
「う、うん! 任せて! 何を覚えたいの?」
普段は頼りにならない自分であるが、魔法だけは人より出来る自信がある。
エールに頼られたのが嬉しくスシヌは笑顔で胸を張った。
「あ……でもエールちゃんAL大魔法使えるよね? あれ以上の魔法なんて私じゃ……」
エールの使うAL大魔法は名前の通り普通の魔法ではなく神魔法である。AL教のテンプルナイトが使う技をエールが強力にしたものがAL魔法剣、それを魔法にしたものがAL大魔法。攻撃魔法でありながら相手の体力を吸い取るかのように回復も出来る攻防一体の技で、相手が強ければ強いほど効果が高まるという不思議な特性を持つエールの大事な必殺技だ。
スシヌから教わりたいのはそんな攻撃魔法ではなく、基本や補助系の魔法である。
「基本の魔法?」
温度調節として弱い威力の炎の矢や氷の矢を使いたい、とエールは頼んだ。
エールであれば見よう見まねで覚えることも出来るだろうし、魔法Lv3という破格の才能の魔法使いに頼むのは贅沢な話ではあるのだが知ってる人からちゃんと教わりたかった。
「ううん!それぐらいなら私でも教えられると思う。エールちゃんは魔法の才能あるからあっという間に覚えられるよ」
そしてもういくつかスシヌに教えてもらいたい魔法がある。
「何を覚えたいの?もしかしてマジカルドリル覚えて長田君のこと割りたいとか…」
ハニワ叩きが使えるから長田君を割る時はそれで十分、とエールは首を横に振った。むしろスシヌにもハニワ叩きを教えたいと思っているぐらいである。
「わ、私にもできるのかな?」
長田君が聞いたら泣きそうである。
シャングリラまでの道中で襲ってくる魔物も大したことはなく、長田君でも勝てる程度の敵ばかりだった。
「おいこら陶器、逃げてないで戦え。あの程度、お前で十分だろうが」
「きゃー!無理無理!あんなでっかいのー!」
いもむしDXから逃げ回る長田君をザンスがとっ捕まえて敵前に放り出している。
エールとスシヌは離れた場所で訓練がてらとても弱い魔法で援護しつつ、応援していた。
さらに進んでいくと何やら名乗りつつ現れた盗賊達が現れたのだがエールやスシヌにいやらしい視線を向けた瞬間、ザンスに斬り殺される。
「盗賊を放っておくとゼスの人達が困るかも…」
スシヌの小さな一言を受けてエール達は流れるように盗賊のアジトまで攻め入って頭領を潰して盗賊団を壊滅させる。捕まっていた女性や奪われていた宝を近くの村に届けると村人からは膝をついて感謝された。エール達はもてなしをするという村人の誘いを断り、食料を分けて貰うと挨拶もそこそこに出発していく。
「我等が手も足も出なかった相手をあっという間に壊滅とは何と言う強さか」
「食料だけで良いとはなんと欲のない御方…しかしあのお姿はもしやスシヌ王女では?」
エール達にとっては道中に邪魔な石があったので蹴り飛ばしたぐらいの感覚なのだがその盗賊団は凶悪で、近隣の村々を荒らし近々軍が派遣されることになっていた大盗賊団であった。
それからもエール達は立ち塞がる盗賊を冒険のついでか暇つぶしとばかりに潰していった。
そしてエール達が本場のカレーマカロロを味わおうとイタリアに寄った際のこと。
魔法が使えない国民をかつての2級市民のように裏で奴隷として扱っていた悪徳領主がいることを知った。その悪行にスシヌは怒り、大の人見知りでありながらゼス王家の者と名乗って都市の衛兵を味方につけ領主の邸宅に乗り込んだ。イタリアの悪徳領主は相手が王女と分かりつつ大量の警備兵を引き連れて反撃をしてきたが護衛であるエールやザンスに敵うはずもなく護衛ごと一瞬で壊滅させられ、その日のうちに全財産を没収され投獄、奴隷として扱われていたイタリア市民も無事に解放された。
スシヌはそんなイタリア市民に王女として頭を下げると、すぐに魔法通信で首都へ連絡し安全に過ごせるように取り計らった。
「あれが魔王を討伐したというスシヌ王女。かつてのガンジー王のように身分を隠して世直しの旅をしてらっしゃるのか」
「ゼスきっての卓越した魔法の才能がありながらそれを鼻にかけることもなく我らに接してくださる。全くスシヌ様はゼスの誇りじゃあ…」
これはかつてガンジー王がしていたという征伐のミトの噂と重なり人々の口から口に伝えられ、次期女王と言われているスシヌとひいてはゼス王家の評判に繋がることになる。
問題があるとすればお忍びということが頭から抜けているかのように大暴れしているということだ。
………
そんなこんなでゼスで冒険をしつつ数日が経った。
冒険中はキャンプが基本、とエール達がいつもの通りキャンプの準備をしようとした時のこと。
「あー!」
スシヌが急に何か気が付いたように声を上げた。
「なんだ、いきなりアホみたいな声出しやがって」
「ご、ごめん。私、ママからこんなものを貰ってたんだった……」
そういってスシヌが荷物から取り出したのはミニチュアの家のようなアイテムである。
「魔法ハウスか、いいもん持ってんじゃねーか。さっさと出しとけよ」
ザンスはそれに見覚えがあるようでスシヌの手からそれをひょいっと取り上げた。
「前の時はキャンプだったからすっかり忘れちゃってた。エールちゃん、これ使ってみない?」
使ってみると言われても何に使うものなのか、エールは首を傾げた。
「そのおもちゃみたいなの何なの?いいものなん?」
「スシヌ、さっそく使って見せてやれ」
エールや長田君が不思議そうな目で見ていると、ザンスがスシヌの手にそれを戻した。
「私も使うの初めてなんだけど…えっと使い方はこれを地面に置いて、ここをこうするんだったっけな」
スシヌが何やら操作するといきなりそのミニチュアが大きくなって一軒の家になった。
「うわー!なんだこれ!なんだこれ!」
テンションがあがる長田君と共にエールも驚きながらぱちぱちと拍手をした。
「小っせぇ家だな。まぁ、テントよりはマシか」
「小型タイプだけど中にはベッドとかキッチンとか最低限の設備はあるみたいだよ」
ザンスとスシヌは王子と王女なので驚きはなさそうだったが、作りもしっかりしている立派な二階建ての家である。
「これで小さいの……?」
長田君が茫然と言っているところに、二人とも王子と王女だから、と言いつつエールも自分の家よりも大きいそれに少しショックを受けていた。
「これは魔法ハウスっていってね。簡単に言うと携帯用のお家の魔法アイテムなんだ」
「
あのリーザスにも中々ないとなればそれはレアなものなんだろう、とエールは思った。
「へー、やっぱ王女ともなるとすげーもん持ってんだなぁ」
「これは最新式でちょっとした魔物除けの機能があるんだったかな?」
「そうか。なら陶器だけ一人外でキャンプになるんだな」
キャンプ張るのは手伝うからね、とエールは言った。
「え、俺は入れないの!? 俺、悪いハニーじゃないよ!?」
ハニーは魔物だから、とエールは同情するように答える。
「そ、そうじゃなくて!魔物除けっていうか、敵に見つかりにくくなるって魔法がかけられてるだけだから、長田君も大丈夫だから!」
スシヌは長田君に謝りながら言いなおす。
「よ、良かった~…俺だけキャンプとか泣くぞ」
エールはわくわくとしながらさっそく入ってみよう、と言って魔法ハウスの扉を開けた。
魔法ハウスの中に入るとそこかしこに埃が積もっているのが分かる。
一通り部屋を確認すると中は二階建て。一階には使用人部屋っぽいベッドが二つある部屋、小さなキッチンと食堂、二階には三人ぐらい寝られそうな大きなベッドのある部屋となぜか付属のシャワー室がある。備え付けられている調度品もシックだが精巧な細工が施されていて風格があり、エールのささやかな実家よりも広く豪華な作りであった。
「すげー、まじで家じゃん! これあればどこにでも住めんじゃね?」
これがあれば家出しようが何かあって逃亡しようが快適に過ごせそうである。
「でもちょっと埃っぽいね。使ってなかったからかな」
「自動で掃除する機能とかねーのかよ。今どきダンジョンでもこんな汚れてねーぞ」
「迷宮が綺麗なのはメイドさんのおかげだからいなきゃこんなもんじゃね?」
使う前に掃除をしようか、とエールが提案した。
スシヌや長田君がそれに頷く。
「掃除もだが飯の支度もしとけよ」
そう言って外に出て行こうとするザンスにエールが声をかけた。
「あ?こういうのはお前らの役目だろうが。俺は散歩にでも行ってくる。俺様が戻る前に終わらせとけ」
「お前、勝手に俺達の冒険についてきたくせに偉そうにー!ちょっとは手伝えよー!」
そう言った長田君は振り向かれることもないままザンスに叩き割られた。
………
「ムキー!あいつ、飯抜きにしてやろーぜー!」
その時はたぶん容赦なく長田君のご飯が奪われることになる、とエールが言うと長田君は言葉に詰まった。
「まあまあ、ザンスちゃんに手伝わせるなんて無理な話よ。代わりにどこかで美味しいものでもご馳走になっちゃいましょ」
パセリがぷりぷりと怒っている長田君を宥めながら魔法で器用にシーツなどを洗っている。
水の魔法でささっと洗い、パパっと広げて、火の魔法でふわふわに乾かす。一連の動作は澱みもなく優雅ですらあった。
「おばあちゃん、本当に器用だよね。お料理も出来るし」
「私自身は食べられないんだけどね~」
さすがゼス建国王、とエールは魔法は色々なことが出来るんだなと感心する。
魔王討伐の時はリセットやロッキーをはじめとして全員で手分けしてやるのをニコニコと見つめていただけだったが実際にはパセリ自身で色々なことが出来るようだ。
「家事全般ちゃんと出来るっていうのは女の子の基本、これぐらい出来ないとモテないわ。男の子っていうのはかいがいしく働く女の子が好きなものなのよ」
幽霊で体はないのに器用だというのが言いたかったのだが、さすが恋人が何人もいたというパセリの言葉である。
可愛いらしい容姿落ち着いていて朗らかな物腰、真の意味でモテる女性による妙な説得力があった。
エールはスシヌと一緒に掃除をしながら、魔法ハウスについて尋ねる。
「これはゼスで作ってる魔法アイテムなんだけど、作るのが凄く大変で国全体で50個ぐらいしかないんだって。それもほとんどは国の偉い人たちが視察で各地を周る時とか軍の遠征とかに使われてるから見たことないのもしょうがないんじゃないかな。大きいタイプのは貴族が別荘代わりに使ったりもしているらしいけど」
ゼスに50個程度しかない、と言うからには本当にレアなアイテムなのだろう。
「前に冒険したときにずっとテントだったからってママが持たせてくれてたんだ」
キャンプも楽しかったけどね、と掃除の手を休めないままスシヌが懐かしそうに答える。
エールの母といえば法王と言う結構偉い人であるはずだがテントを自分で張れるように訓練し、冒険の心得を仕込んだだけで便利なレアアイテムの類はくれなかった。
火をどこかうっとりと見つめる母とするキャンプは良い思い出だったとはいえ、比べるとマジック女王は厳しそうに見えて、こんなものをさっと持たせるぐらいには娘に甘いらしい。
「そうだわ。これ、エールちゃんにあげて良いんじゃないかしら?」
エールがパセリの言葉に驚いて振り向いた。
「マジで!?すっげーじゃん、エール!これって超レアアイテムなんだろ!?」
「あっ、それもそうだね。私が持ってても全然使わないし小型のタイプだと軍の遠征とかにも使えないだろうから、良ければエールちゃんこれ――」
大喜びの長田君を制しつつエールは首をぶんぶんと横に振った。
さすがに簡単に貰っていいものではないのはエールにも分かる。
「いいのよ、貰っちゃっても。エールちゃんはスシヌを助けてくれたんだし、今だって護衛してくれてるんだから何にも報酬がないっていうのもゼスの沽券に関わるわ。マジックには私から話しておくから大丈夫」
姉を助けることは当たり前なので報酬をもらう気はない。
そしてエールは魔法ハウスより、手間をかけてキャンプを張るのが冒険の楽しさの一つだと思っている。普段は長田君と二人旅なのでキャンプで十分、とエールが答えた。
「そうだけどエールちゃんの冒険話を聞くと二人きりってそんなに多くなかったんじゃないかしら。これからまた人数増えるかもしれないんでしょう?こういうものはリーダーが持ってた方がずっと役に立つアイテムよ」
「パセリさんがこんな風に言ってくれるんだし、貰っちゃえよー!こういうのは好意として受け取るべきだぞ」
「私は普段、首都の外に出ることはないから持ってても使わないもの。こんな風に埃がたまるだけだからエールちゃんが使ってくれたら嬉しいな」
笑顔のスシヌを見つつ、なら遠慮なく貰います、とエールは言った。
今はパーティ人数がそこそこいるので有用だが、二人だけになったら中の手入れの方に時間がかかるだろうしそこは使い分ければいいだろう。
「やったな、エール!」
思わぬ報酬に、エールも笑顔を浮かべた。
………
エールは長田君達に食事の支度を任せ、ザンスを探していた。
エールがザンスを見つけると剣を振って一人で訓練をしているのが見える。お忍びゆえに赤の鎧は着ていないがその姿はとても様になっていてエールは何となくその光景を見つめていた。
ザンスもその気配と視線には気が付いていたようで一通り剣を振り終わるとエールに向かって声をかける。
「飯の準備は出来たか?」
エールはもう少しかかるだろう、と答えた。
「そうか。ならそれまでお前も付き合え」
魔王討伐の旅の途中、ザンスが隠れて訓練していたのにエールは付き合ったことがある。
今回も散歩と言いつつ、一人で訓練していたのだろうということぐらいは分かる。偉そうにしているがその自信に見合うだけの努力はしているのだ。
「前やりあった時よりは鍛えてあんだろうな?」
エールは返答の代わりに日光をすらりと構える。その構えはリーザスで模擬戦とした時よりも隙がなくなっていてザンスはニヤリと笑った。
しかしエールははっと思い出したような表情になると模擬戦じゃないから勝っても負けてもエッチな事はしないよ、と言った。
「誰がするか!」
訓練の前にエールの頭がポカンと叩かれる。
そのままエールはザンスと一緒に剣の訓練をはじめる。
ザンスの振るうバイロードから素早く重い斬撃が繰り出されるがエールも一撃で吹き飛ばされるような無様な事はなく、上手く受け流して反撃に出られるぐらいにはなっていた。エールも持ち前の身軽さを活かして隙を突こうとするが手数の大きい攻撃もザンスに即座に反応して受け止められ、レベルと経験の差は簡単に埋まるものではない。
エールは手加減をされていることを感じ、まだ勝てないことを理解しながらもなんとかザンスを観察し勝てる道筋を探した。しかし鎧をつけてないせいか防御力は低くなってる代わりに俊敏さが増しているのか結局、エールはすぐに防戦一方になり、最後は手を打たれて日光を跳ね上げられてしまった。
「ここまでですね」
日光の呟きでザンスもバイ・ロードを下げた。
「相変わらず魔王と戦った時よりはクソ弱い。が、ちっとは勘が戻ってきてるみてーだな」
ヘルマンやゼスの冒険を経て、エールのレベルもだいぶ上がったようだ。特にハニワの里で毎日のようにハニーキングを相手にしていたのが効いている。
まだ勝つことは出来ないが勝てるのもそう先の話ではない、エールはザンスや自分にヒーリングをしつつ頬を膨らませつつ呟いた。
「バーカ。お前が俺に勝てるわけねーだろうが」
そう言いつつ、ザンスは久しぶりに自分の一撃を受け止められる相手と戦えたことで楽し気である。
そういえばハニーキング相手でもエールはザンスが少し楽しそうに見えた。レリコフもスシヌも大分レベルが下がっていたようだがザンスは赤の将としてレベルもほぼ維持している。世界に戦える相手はほぼいない状態、もしかしたらそれは寂しいことなのかもしれない、とエールはザンスを見つめながら考えた。
「なんだ? 俺の顔を見てまた抱かれたくなったか?」
抱かれてない、とエールは普通に首を横に振った。
これでスシヌには魔法、ザンスには剣を鍛えて貰っていることになる。
訓練ではなくいつかちゃんとまた模擬戦でリベンジがしたい、とエールは地面に刺さったままの日光を抜き軽く振り回して鞘に納める。
「そーか、回りくどいもんだな。抱かれたいなら素直に言えばやってやらんこともないが、そん時はあの時の続きでもしてやるか」
あの時、というのはシーウィードの一件のことだ。さっきは誰がするかとか言ったくせに、とエールが口を尖らせると頬がぐいーっと引っ張られた。
「エールさんの交友関係にあまり口を出す気はありませんが、軽はずみなことはしてはいけませんよ」
日光がエールへ心配そうに声をかける。
「そういや日光。あの魔女ババアのとこでも言ってたがお前、人間になれるんだったな」
「…その通りです。あまり知られたくないことですので他言は無用に願います」
日光さんは巨乳のJAPAN風黒髪美女だ、と何故かエールが得意げに答えた。
「JAPANの女に興味はわかねーな。んで、あー、それで耳に挟んだんだが。日光のオーナーになるには儀式が―」
「エールさんとは何も、儀式もしていません。儀式をしないで私を使えた方はエールさんがはじめてでした」
少し言いにくそうにしていたザンスの言葉を日光は強い口調で止める。
「ならいい。俺の女を変な道に引っ張り込まねーように言ってやろうとしただけだからな。前持ってたアームズも女だったし、お前そっちのケがあんだろ?」
「断じて違います。それとエールさんはザンスさんの女ではありません」
エールはザンスと日光の言葉に首を傾げている。
「はっ、刀のくせに母親か姉気取りか? 何人と儀式と称してやってきたのか知らねーがそんなお前が言えた義理か」
ザンスのどこか軽蔑するような口調を受けて、エールは刀のまま日光が目を伏せたような気がしてとりあえずザンスをボカンと鞘で叩いた。
「何しやがる!」
エールはそれには答えずじっとザンスを見ると、ザンスの方は言葉に詰まってばつが悪そうに目を背けた。
「エールー!どこ行ったー!」
そんな空気を払うかのように長田君が呼ぶ声がした。
長田君の緊張感のない声はどこか安心する。
「ちっ…おせーんだよ」
ザンスは声のした方にのしのしと歩き出し、エールもそれについて行く。
エールは手に持ったままの日光が少し微笑んだような気がした。
・魔法ハウス …… ゼスに30個ぐらいしかなかった魔法アイテム。ランスも持っている。スシヌはあっさりとエールにあげてしまったが家具付きの家一軒+携帯可能という便利なアイテムなのでおそらく高価なんてもので済まない価値がある。
・日光の儀式 …… エールは日光を儀式なしで使えているため、儀式が必要な事は知ってるのもののその内容までは知らない。