エールちゃんの冒険   作:RuiCa

46 / 58
第五章 シャングリラ
エールの日記(これまでのあらすじ)


 エール達はシャングリラまでのうし車が出ているというサバサバの町に到着した。

 

 廃棄迷宮以降はトラブルに見舞われることもなく順調。護衛任務としては良い事だが、エールには少し物足りない道中だった。

「やっと到着だな。はー、長かった! 大変だった! ちょっと魔物多くなーい?」

 長田君が町について安心したのか、息を吐きだした。

「てめーは逃げ回ってばっかだっただろうが」

 ザンスの言う通り長田君は全ての戦いをエール達に任せてばかりだった。

 長田君は魔人になっていた影響なのかまだまだレベルが上がるようで、鍛えてやろうとエールとザンスで無理矢理前線に立たせたり、時には魔物の群れに放り込んだりしたものの成果はいまいちでエールは口を尖らせる。

「ここがサバサバか。けっこう賑わってるんだなー!」

 誤魔化すように長田君はキョロキョロと街中を見回した。

 まだゼス国内なのだが商店の売り物や行きかう人々に異国感がある。

「シャングリラ経由で色んな国に繋がってて他の国の人や品物がたくさん行き来する町だからね。珍しい物も手に入るから観光に来る人も多いんだよ」

 スシヌの説明を聞いてエールは探索も楽しそうだとワクワクした。

「何言ってんだ。さっさとうし車出てるとこまで行くぞ」

「まあまあ、待てって。そろそろ夕方だし、今日はサバサバで泊まってこーぜ。てか、たまにはちゃんとした宿に泊まりたくね?」

 既に空が赤くなりはじめている。

 砂漠はうし車内とはいえ熱いだろうしちゃんと体力を回復させておくべきだ、とエールは長田君に賛成した。

「だよなだよなー! んじゃ、宿探そー、温泉とはいわねーから少なくともでっかい風呂あるとこ!」

 

 エールは適当に宿を取ろうとしたが、ザンスが粗末な所に泊まりたくないと言い出しサバサバで一番大きくて高級な宿に泊まることになった。

 

「宿の人、私の顔知ってたよね……」

 スシヌが宿に来ると、何も言わなくても分かったのだろうか宿の支配人らしき身なりの良い人物が頭をぺこぺこさせながら直々に案内してくれた。

 すでにお忍びという言葉も形だけになっている。

 ぶつくさいうザンスを宥めつつ男女で二部屋で分け、エールはスシヌと一緒の部屋となった。久しぶりの一人ずつのベッドは無駄に広くてエールは少し落ち着かない。

 

 宿の夕食が出るまでの間、エールは広いベッドに寝っ転がっていると自分の日記が目に入った。

 何気なく最初のページを開くと冒険の3つの目標が大きく書かれている。

 

・珍しい貝を手に入れる ← 母の喜ぶもの

・兄弟に会う、お世話になった人にも会う

・楽しい旅にする

 

 3つの目標の達成度は順調で、エールは嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。

 

「エールちゃん、楽しそうに何読んでいるの?」

 そんなエールの表情を見てスシヌが笑顔で話しかけた。

 日記を読み返していた、とエールは答える。

「そういえばエールちゃんって前の冒険でも日記付けてたっけ……今回もゼスに来るまでに色々あったんだよね。リーザスでザンスちゃんやアーちゃんに会って、ヘルマンに行ってレリコフちゃんに会って冒険したとか」

 スシヌは話を聞きたそうにエールを見ている。

「で、でも危ない目にもあったんだよね。日光さんも」

 聞いてはいけない事かもしれないとスシヌは少し目を逸らした。

「無事だったっとは聞いたけど詳しくは聞かせて貰ってなかったわね。エールちゃん、良ければこれまでの冒険話を聞かせてくれるかしら?」

 パセリがそんなスシヌに助け舟を出すように言った。

 

 エールは頷いて日記をめくり今回の冒険を思い返した――――

 

………

 

 思えば今回の冒険のはじまりは母の依頼で攻撃が効かないという謎のハニー退治に出かけたことから始まる。

 行ってみればそれはなんと魔血魂を飲んでハニー魔人ながぞえとなっていた長田君で、エールは日光で叩いて元に戻した。

 

 そして長田君とかねてから約束していた『次の冒険』に行こうという誘われて今回の冒険の旅が始まった。

 目標は家族に会う事、珍しい貝を探すこと、そして何よりも楽しく冒険すること。

 掃除用具入れにさしっぱなしだった日光を携え、まず初めに向かうのは村から近くて世界一豊かな国リーザス。

 

 その道中、可愛らしいリスと三人のお供をその場の流れで盗賊から助けることになった。

 魔王討伐直後、人類最強クラスだったレベルはすっかり下がっていてしまっていたけれど盗賊ごときがエールの相手になるはずもなくさっくりと全滅させる。

 日光さんが言うにはそのリスは危険極まりない最悪の魔人であるケイブリスとその使徒達だったそうだ。

 しかしなんの事情も知らない人間から見ればただの弱々しいリスとへっぽこな女の子モンスター二匹に踊り子。半べそで土下座をしているリスを殺す気にはなれず、さらに踊り子のシャリエラのダンスは深根に匹敵する素晴らしいものだったのもあって見逃すことにした。妙に懐かれてしまったし。

 

 そうしてたどり着いたリーザスだがザンスは遠征中。先にリア女王や修行で世話になったチルディ、そして妹であるアーモンドに再会した。

 リア女王に何故か睨まれたが、冒険の資金を稼ぐため仕事を貰えないか言うと神魔法を使って回復の手伝いや親衛隊の訓練相手を頼まれた。

 若いのに神魔法を使えるというのが珍しがられ、次期AL教法王かと言われてありがたがられたりしつつ医療の手伝い。訓練相手の仕事ではチルディにレベルが低くなっていたのを見抜かれ、剣の師匠となってもらい修行をつけて貰うことが出来た。

 冒険者の仕事として依頼を受けて女の子モンスターとその誘拐事件を解決。聖女モンスターであるベゼルアイと出会い、女の子モンスターやその飼育を担当していたオノハを何とか救いだした。

 女殺しがいて危なかったので長田君がいてくれて良かった。それにチルディの作ったクッキーはかつてない美味しさでいつかまた作ってもらいたい。

  

 そんな日々を送りながら路銀の足しになるかとコロシアムで見世物になる。適当につけてしまったリングネームのことは忘れたい。

 出場条件通りに苦戦している演技を入れつつ順調にお金を稼いでいたところを突然対戦相手として現れたザンスに邪魔され、同時に再会。

 さらに闘神大会のリベンジだという模擬戦をしたところ全く歯が立たず負けてしまった。ザンスは現役赤の将、レベルが下がっているエールに勝てる相手ではなかった。

 そしてリーザスにやってきたシーウィードでカフェに再会、魔王を倒したことを褒められる。無事に日光さんを会わせることも出来た。

 

 ……その後シーウィードで模擬戦の約束として流され、ザンスにエロい事をされる。

 実際は娼婦のシラセの手管のおかげだが、危ない気持ち良さがある大人の体験だった。

 貞操は無事だったのだが、あのまま流されてしまっていたらどうなっていただろう?と今思うと危険だった気がする。

 そういえばあの時ぐらいまで母は自分を心配して見ていたようで、新しく避妊魔法を教えて貰った。

 

………

 

「え、え、え、エールちゃん、ザンスちゃんに何かされたの!?」

 エールが手短にされたことを話すと、スシヌは真っ赤になった。

「……あらあら。そこまでいったのに最後まで出来なかったの。ザンスちゃんももう少し落ち着いていければエールちゃんを大人に出来てたかもしれないのに」

「おばあちゃん、何てこと言うの! エールちゃんにはまだそういうのはは、はや・・・」

 シラセの指はとても気持ち良くて少し大人になったような気がする、とエールは言った。

 スシヌはそれを聞いて目をぐるぐるさせている。

「エールちゃんってエッチな事にあまり抵抗なさそうよね。案外、責められちゃうと弱いタイプかも?」

 エールは首を傾げた。

「責められるって言うのはちょっと強引にされても体が感じちゃうってことで――」

「エールちゃん、続きを聞かせてくれるかなっ!?」

 スシヌがパセリの言葉を遮った。

 

………

 

 リーザスを出発後、ヘルマンに向かう途中でシャングリラに行くがリセットは外交に出ていて会えずじまい。

 パステル女王に再会したが相変わらず冷たくされた。頭にみかんを乗せるのが悪かったのだろうか、叩きだされてしまう。

 その後、なぜかシャングリラで綺麗な幽霊のカラーと一緒にひと暴れしてしまったようなのだがそのあたりはなぜか記憶があいまい。刺青の入った警備の人に迷惑をかけたのだけ覚えている。

 とにかく少し強引だったがカラーの隠れ里・ペンシルカウへの招待状をパステルから貰うことができた。

 ちなみにこの紹介状は別にいらなかったのだが。

 

 そこから向かったヘルマンはシャングリラの暑さが恋しくなるほど寒かった。

 シーラ大統領に出迎えられ、ヘルマン最後の戴冠式という写真見せて貰い母のクルックーやサチコの昔の姿を見れたのが思わぬ収穫だった。法王衣を身にまとった母は小柄でかわいらしくも凛々しく誇らしい。

 そしてレリコフとヒーロー、そしてパットンやハンティと再会。

 レリコフとした一緒に冒険したいというかつての約束を叶えるべく、魔人が出るという噂のあったホルスの戦艦へ行くことになった。

 本当ならマルグリット迷宮に行きたかったのだが東ヘルマンとの境目にあったようで現在は閉鎖中だという。また機会があれば最下層目指して行ってみたいと思う。

 ホルスの戦艦では無口で真っ白な魔人メガラスに会い、その事情をテラ女王から聞くことが出来た。

 危険がないと判断してメガラスに手を出すことはないということを約束し、お土産にホルスの蜜茶をもらった。

 

 その後、ラング・バウに戻りもっと一緒に冒険したいと言ったので、日光のお願いで北の賢者、ホ・ラガの塔へ向かことになった。

 場所が場所なのでさすがに案内が必要とのことで手配して貰えることに。

 その間ヒーローに招かれて改めてヘルマン上空にある空飛ぶ島、ランス城へ。そこには魔王城で会ったビスケッタが出迎え、温泉と豪華な食事をご馳走になった。

 その後、冒険準備中にヘルマン将軍のロレックスと話をしたり、流れでレリコフと模擬戦をすることになったりしながら意気揚々と冒険に出発した。

 

 ……北の賢者の塔への冒険の道中は本当に危ない目にあった。

 命と貞操の危機だった。

 東ヘルマンの罠にかけられてレリコフと共に捕まり、日光は誘拐。この時に初めて日光は巨乳の黒髪JAPAN美人だという事を知る。

 長田君達が助けに来てくれてセーフだったものの、あと少し遅れていたらというのは本当に考えたくはない。

 なんとか日光を救い出し、毒牙に掛けようとしていた男はざくっとやったものの、二度と下衆な男に触らせないように注意したいと誓った。

 冒険を中断して帰ることを提案されたが、こんなことで中断するのは嫌だとそのままポピンズの案内人に北の賢者の塔まで案内して貰う。

 その塔にいたのは妙に睨んでくる偏屈なお爺さん。一緒に居るわんわんが可愛いのが救いだった。

 日光と話をさせた後、何でも一つ教えてくれると言うので伝説の貝の場所を聞いてみた。

 渡されたメモの場所はJAPANの最北端。秘密の貝塚があるという。現在では世界中の貝塚はほとんど発掘済みとなっているため貴重な情報だった。

 

 ラング・バウに帰ってきてヘルマン出発の前の日。

 レリコフは襲われたときの事を思い出したのか泣いていた。大事な家族を危険に晒し、泣かすなんて東ヘルマンは滅ぼさねばならないと決意する。

 その後、レリコフを慰めるはずが調子に乗ったせいでちょっとした拍子で腕を折られた。自業自得なので少し反省しよう。

 ヘルマンの人達は良い人達ばかりだったが、ご飯が美味しくないのが欠点だ。

 

………

 

「危なかったんだね……」

 スシヌは昔、誘拐されて命が危険だったことがある。その怖さが理解できるように目を伏せた。

 エールは暴力を振るわれながらもレリコフだけは守らなきゃと思った、と話す。

「エールちゃんは自分の事も大事にしなきゃダメ! レリコフちゃんにも私にとってもエールちゃんは大事な家族なんだから…… 魔王との闘いの時もエールちゃん、みんなを逃がそうとして引き付けようとしたり、あ、あれでエールちゃんがし、死んじゃってたら……」

 スシヌが目に涙を浮かべたのでエールは焦った。

「スシヌ、泣かないで」

 パセリが慰めるのに合わせてエールはスシヌの頭を撫でた。

「エールちゃんは家族のために自分を盾にするけど、家族の為を思うなら自分も守らないといけないわ。エールちゃんがいなくなったらみんな悲しむんだから」

 決戦前夜でも皆に言われたことだ、エールはパセリの言葉に大きく頷く。

「東ヘルマンとはきちんと決着をつけないといけないでしょうね。次の懇親会は穏便には行かないでしょうし、シーラさんは和平をすすめてたけれど……いえ、それよりもエールちゃん。レリコフちゃんに何をしたのかしら?」

 話の流れでちょっと触っただけです、とエールが目を逸らした。

 前の冒険でのシーウィードの一件はレリコフとエールの秘密である。

「あらあら、スシヌも触って貰ったら? 何となくだけどエールちゃん、上手な気がするのよね」

「おばあちゃんったら何言うの! エールちゃんは女の子なんだよ!」

 エールは胸のサイズは自分と同じぐらいだろうか、というのを考えながらスシヌをじっーーと見た。

 レリコフは大きくなりそうだ、とつぶやく。

「どこ見て言ってるの、エールちゃん! お話の続き!」

 

………

 

 ヘルマンを出発した後に向かったのは魔王城があった翔竜山の麓、クリスタルの森にあるというカラーの隠れ里ペンシルカウ。

 森では見事に迷ったものの、カラーの密猟者をボコり、カラーの親衛隊長であるイージスさんに招かれてカラーのまとめ役をしていたビビッドに出会った。

 ビビッドはパステル女王のおばあさんとのことだが、小さいながら威厳の感じられる人でどこかリセットに似ている。ペンシルカウにはそのリセットがいるという話だったが残念なことにすれ違いになってしまいがっかりだった。

 ペンシルカウにいる住人はみんなカラーで当然のように可愛い、綺麗な女性ばかり。自分が魔王を倒したエール・モフスだと知ってきゃあきゃあと言われ ちょっとしたカラーハーレムを味わいつつ、一泊させてもらった。

 

 そしてゼス王国に入ったらいきなり逮捕されそうになった。

 抵抗してちょっとした大事になったが、そこで会ったウルザに上手く回り込まれてしまったのもあって日光の助言で大人しく捕まることに。

 長田君は連れていかれてしまった。

 

 城まで行ってマジック女王からスシヌがハニーキングに誘拐されたと聞かされた時には驚き、 千鶴子やウルザから詳しい事情を聞いた後すぐに助けに向かうことにした。

 ちなみに長田君は相手がハニーキングなので大量に捕まえられているハニーと一緒にお留守番。

 役に立つからと言って長田君からメガネを一式貰った。とても気に入って大事にしまってある冒険の宝物である。

 

 ハニワ平原を超えて、ハーモニカを披露しつつハニワCITYのハニー城へ。

 途中、まさかの元魔人二人に再会したが、スシヌの救出優先。あまり話さずにハニー城へ向かった。

 そしてスシヌやハニーキングに再会。

 スシヌが騙されていたことを知って助けようとハニーキングに挑むが勝てず、一緒に捕まることになってしまった。

 それからハニーキングのペットにされてハニー城でハニー的凌辱、つまりセクハラの日々を受けることに。ただハニワの里の名物温泉は今思い出しても絶景で素晴らしい観光名所だったと思う。

 

 何度かハニーキングに再戦してみるが、レベルは上がってるのを感じるものの必殺技が魔法では勝てる気がしなかった。

 温泉でまたもや元魔人の二人と遭遇。なぜこんな場所にいるのか事情を聞いたり、なんで帰れないのか事情を話したり、リズナの圧巻の巨乳に目を奪われたり、メガラスのことをサテラに話したり、父の事を聞いたりしつつ、とにかく協力を取り付けた。

 それでも勝てないと色々と考えているうちに、驚いたことにリーザスからお忍びでザンスとウズメ、そして捕まってたはずの長田君が助けに来てくれた。

 

 切り札である魔血魂を長田君に飲ませて盾にして、ハニーキングと改めて勝負。

 厳しい戦いだったがなんとか勝利することが出来た。

 尤もその時にスシヌが眼鏡を外せなくなる呪いをかけられてしまったが……

 

 王都へ戻る前に入った温泉は色々と絶景だったが、そこでリズナの胸を触りたがったばかりに……記憶はあいまいなのだがえらい目にあってしまった。

 

………

 

「エールちゃん、どこでも誰かにエッチな事したりされたりしてるわね。やっぱりランスさん似なのかしら?」

 リズナも言っていたが父に似ていると言うのは誉め言葉なのだろうか、とエールは首を傾げた。

「エールさん、もうあんなことをしてはいけませんよ」

 それまで黙っていた日光がエールに叱るような口調で言ったので反省しています、とエールはしゅんと顔を伏せた。

「でもエールちゃんが助けに来てくれて本当に良かった。あのね、再会した時本当に嬉しかったんだよ。とっても元気そうで…」

 ハニーキングもその配下であるハニー達もセクハラはともかくとしてエール達を乱暴には扱わなかった。

 思い返せばのんびりとした日々だったのかもしれない、と思い返した。

 

………

 

 スシヌがかけられて眼鏡の呪いを解くべく護衛を任されて一緒に呪いのエキスパートであるカラーの女王パステルがいるシャングリラへ向かうことになった。

 ウズメは仕事があるといっていたが、ザンスは心配したのかついて来てくれることになって並の敵ではびくともしないパーティの誕生である。

 

 ゼス首都を出発するとすぐに異界ゲートでお誘いを受ける。

 そこを潜ってミックスの母でありかつて修行で世話になったミラクルに再会した。

 真トゥエルブナイトに勧誘されたり、スシヌの新しい魔法について話をしたりしているうちにミラクルから「エール・モフスは一年間行方不明だった」と驚くべきことを聞いた。

 全く覚えがなく冗談だと思ったがスシヌもザンスも新年会に来なかったと言っている。

 リセットがエールちゃんは用事があると誤魔化していたことも気になるし、クルックーがエールにそれを秘密にしていたことも気にかかる……大事な二人のことなので悪い事ではないと思うが事情は聴いておきたかった。

 

 ミラクルやザンス、スシヌからここ一年間の出来事を聞く。

 領土拡大や勢力の変化、魔物の動向など難しくてよくわからなかったが、世界ではいろいろとあったようだ。

 

 思い返しているうちに何か不思議な笑い声を聞いたような気がしたのだが……誰の声だったのだろう。

 何だかもやもやとする。

 

 異界ゲートを出発して、向かったのはかつて世話になったロッキーがいると言うアイスフレーム孤児院。

 道に迷ったところをアルフラに案内されつつ、到着すると懐かしいロッキーがいた。

 ザンスが借金を取り立てしようとしたのでちょっと泣いていたので申し訳ない事をしたと思う。

 院長のキムチはかつて魔王の子の世話をしたことがあるらしく、ザンスやスシヌにも気軽に接していた。かつての英雄にして先代カオスオーナーのカーマ・アトランジャーもアイスフレーム孤児院出身だと聞けた。

 キムチの作ったキムチ鍋はいつかまた食べたいと思う。力が沸き上がる不思議な料理である以上に、何よりもカラウマだった。 

 ちなみにドッス・ワッスもいるはずだが、二人は仕事で出ていたらしい。ロッキーも借金返済にまた冒険に出るのだろう、父探しはだいぶ先になりそうだ。

 

 その後はゼスを北上して盗賊団や悪徳領主を成敗しながらお忍びの旅だと言う事を半ば忘れながら北上。

 この時に魔法ハウスという超レアアイテムをスシヌから貰ってしまった。実家よりも大きい。

 

 ついでとばかりに寄った秋の森で桜の通り抜けイベントに参加。

 スシヌと一緒に試練に挑戦して無事突破することが出来た。

 桜の前で元魔人のレイとその恋人メアリーに会って、お花見。

 なんと貝集めが得意だというメアリーから桜貝を貰ってしまった。しかも素晴らしい発色で可愛らしさ満点の逸品。

 サテラやリズナが言っていたが魔人はやはり魔人討伐隊に狙われたりして大変らしく、メアリーにはトリダシタ村の場所を教えた。

 

 そしてそこから後をつけられている気がして、遠回りに観光名所でもある廃棄迷宮へ。

 廃棄迷宮の穴からなんだか恐ろしい視線を感じた。地獄に繋がっているらしいが、地獄はJAPANにもあったし広いのだろうか。

 RECO教団だというアバズレ神官に押されつつ、魔人討伐隊だという連中をなぎ倒した。

 

 視線の正体は魔人討伐隊ではなく、ハウゼルの使徒火炎書士。

 どうやら魔物界は勢力争いが酷くなっていて、色々と大変らしい。

 レイや魔人討伐隊と接触したことで誤解されたようだが、その誤解を解いて別れた。

 

 そして目指すはシャングリラ。

 スシヌの呪いを解いて貰って、姉であるリセットに会うために。

 

………

 

「色んな所を冒険してきたんだね。ありがとう、エールちゃん」

「お疲れ様。ふふふ、なんだか説明がふわふわしている部分があるわね」

 長田君のように話上手なら良かったが、エールは元々話すのは得意ではない。

 スシヌとパセリはぱちぱちと拍手をしている。

 

 思い返せば魔王を討伐したにもかかわらず魔王の子、エールの家族を狙ってくる連中は東ヘルマン、魔人討伐隊、まだまだいる。人類の危機は去っても、世界は決して平和になったわけではない。

 

 しかし冒険をしてみればやはり世界は楽しい。

 行っていない場所、会いたい人、美味しい食べ物、そして何より楽しい事がきっとまだまだたくさんある。

 冒険に誘ってくれた長田君に感謝しなければいけない。これからの冒険もきっと楽しくなる、エールは笑顔で次なる冒険に思いをはせた。

 

 

                          ………くすくすくす

 

 

 エールはまた誰かの笑い声を聞いたような気がした。

 

 その声はとても楽しそうで、まるで今の自分と同じようだとエールは思った。

 




※独自設定
・エール・モフス … 魔王とAL教法王の娘。一人称は「ボク」かなりの美少女で普段は笑顔を浮かべており口数は少ない方だが表情は豊か。
 全員と旅館の夜に会話をしたが、誰とも親友エンドを迎えていない状態。ハニーインザスカイへは長田君と一緒に行った。
 日光は家に持ち帰り、今回の冒険にも愛刀として携帯中。日光とは契約の儀式はしおらず契約方法もまだ知らない。
 魔王を討伐したと言う功績、神魔法が使え、レベル神付き、そして創造神と大いに関わりのある存在であり良くも悪くも注目・警戒されている。自分の存在や立場の重要性は良く分かっておらずあまり自覚もなし。
 思いつきで動くことも多く常識はあったりなかったり。処女ですがエロい事に対して無知で無防備、貞操観念は低め。エロい事には好奇心として単純に興味があり、シーウィードの一件から触られるのを多少なりとも「気持ちの良い事」と認識。貧乳をかなり気にしていて巨乳を見るとご利益と称して触りたくなるナチュラルなセクハラ魔。悪気は一切なし。
 母親を愛しており、兄弟姉妹全員大好き。特に長兄と話したことで姉妹を悪い虫から守ろうという使命感がある。家族が傷つけられるとあれば誰であっても容赦はしない。
 長田君をからかったり割ったりするのは圧倒的な信頼と親愛ゆえ。大事な親友ですが貧乳を突っ込まれたりノリで割ったりすることも。
 今回の冒険は前回の冒険から一年後。その間レベルは大きく下がっているが決して弱くはなく、修行と冒険でレベルも少しずつ戻っている。
 好きなことは冒険と貝集めと食べる事、そして楽しい事全て。

現在の大事な持ち物:日記帳、聖刀・日光、ハニーの魔血魂、ホルスの蜜茶、眼鏡(長田君から貰った)、魔法ハウス(スシヌから貰った)、桜貝(メアリーから貰った)

・その他の設定妄想
 トリダシタ村では母クルックーの他にパン屋を営んでいるサチコやたまに訪ねてくるアルカネーゼに世話になりながら基本的な勉強や戦闘技術を習った。おかげでパンも焼けるしハーモニカも吹ける。魔法や剣の修行は楽しいので嫌いじゃないが勉強は苦手。サチコやアルカネーゼからは娘のように、サチコの父親であるBSには孫みたいに可愛がられ、BSからは未来のAL教法王に期待されているがエールは興味なし。
 AL教の聖書「アリスの大冒険」を一度も読んだことがない名ばかりのAL教徒。信仰心はないものの母の勤め先(法王)であり、トリダシタ村にAL教徒が多い事もあって一応大事に大切に思っている。
 貧乳コンプレックスはモデルであるアルカネーゼに大きくなったらエールもスタイルが良くなると言われ期待していたせいで、「ハゲ」を酷い罵倒の言葉だと思ってるのはミ・ロードリング司教に言って母親にしこたま怒られたせい。
 アム・イスエルとも会ったことがあるが、その時クルックーに凄く怒られている。
 冒険中着ている服は母親も愛用していたレディ・チャレンジャー。サイズが少し大きめなのは成長してからも使えるように、少しでも長く世界を楽しんで欲しいと言う願いを込めてクルックーが用意したものだから。

 エロい事は流されたり責められたりすると抵抗できなくなる雰囲気に弱いタイプ。
 「エールちゃんの冒険IF」というタイトルでシーウィードの夜の出来事を18禁にしたエロSS製作中(どこかで頒布したあと無料公開予定)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。