エールちゃんの冒険   作:RuiCa

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エールとパステル

「断る」

 

 パステルが親書を受け取って中を見るのを確認しつつ、改めて解呪を頼んだところいきなり断られてしまった。

 まさか断られるとは思ってなかったエール一行は思わず目を点にし、パステルの後ろに控えていたイージスやサクラも少し驚いた顔をしている。

「……え? な、なんでっすか!?」

 固まった雰囲気を壊す様に長田君が抗議をするがパステルはエール達を睨むようにじろりと見回した。

「お母さん、親書ちゃんと読んだでしょ!?」

「親書には娘の呪いを解いて欲しいと書いてあった。眼鏡を外せなくなる呪いとはまたしょうもない呪いにかけられたものだな」

 もしかして解けないんですか?とエールが聞いた。

「そんなわけがあるか。お前たちの呪いを解いて妾に何の得があるのじゃ」

「ちょっとー! スシヌは王女なんだしコクサイモンダイになるんじゃねーのー!?」

「国際問題、じゃと……?」

 パステルが長田君を睨みつけた。

「ふん、なら起こったばかりじゃぞ。先日カラーの森にやってきた密猟者はゼスで依頼を受けた連中だったのだからな」

 パステルが忌々し気にそう言った。

 カラーの密猟者、ペンシルカウを訪れようとした際にボコボコにした連中だろうか?エールはパステルの後ろにいたイージスに尋ねる。

「その通りだ。あの後、生き残りを尋問したのだがゼスの貴族と売買契約をしていたことが判明した。ゼスには既に使者を送っているからすぐに対処されるだろうが……」

「その謝罪もなくカラーの力に頼ろうなど虫が良すぎるとは思わんか」

「それスシヌちゃんは関係ないでしょ?」

「そこの娘はゼス王族。治めている国の責任を負う義務がある」

 パステルは言い切ったが、そういうものなのかな?とエールは首を傾げる。

「あ、あの本当にごめんなさい、じゃなくて大変申し訳ありません。そういう人たちはきちんと調べて、その、ゼスでちゃんと責任を……」

「ゼスは魔法の国。魔力をお幅に増幅させるカラーのクリスタルは特に高値で取引されているものね。もちろんゼスではカラーを襲うことは禁止して破れば厳しい処罰を与えるようにしているし、マジックやウルザさん達も注意しているはずなのだけど……本当に申し訳なく思います。ゼス建国王として謝罪を」

 あわあわと慌てて謝罪の言葉を言おうとしたスシヌを助けるようにパセリは杖から出ると真剣な表情でパステルに頭を下げた。

 普段はほんわかとお茶目な人ではあるが、やはりゼスの偉大な建国王。幽霊ながらその所作も優雅でエールは感心した。

 

「うむ……国だってカラーの森を襲わぬのはゼス建国王が先祖とかわした盟約ゆえ。謝罪は聞き届けよう」

「ほっ。ならさっそくスシヌちゃんの呪いを……」

 リセットが安心してパステルに再度頼もうとしたところ、

「そこの生意気な二人が頭を下げるのであれば、解いてやろうではないか」

 次にパステルが視線を向けたのはエールとザンスだった。

 

「はぁ? 何で俺様が村長なんかに頭下げなきゃなんねーんだ」

「村長と呼ぶな! カラーの女王にしてシャングリラの都市長じゃ! 全く母親と同じで妾を馬鹿にしおって……」

 即座に言い返したザンスにパステルは憤慨した。

「あれ、もしかしてスシヌだけだったら素直に解いてくれた?」

 長田君の言葉を受けて、ボク達は外に出てようか、とエールが相談する。

「そういう問題ではないわ。今から10年以上前になるが妾はリーザスが世界に向けて宣戦布告したこと忘れてはおらぬぞ。大体、あの女王はシャングリラを取るに足らない勢力だと侮っておる。リーザス新領地をシャングリラの方へ伸ばしてきおって全く油断がならん」

 リア女王ならこっそりシャングリラを取り込もうと企んでてもおかしくない、とエールは思った。

「それにあのAL教の法王もじゃ。リセットを勝手に連れ出し何度も危険な目に合わせておきながら何もかも妾達に秘密にした上、改めて話を聞こうとしてものらりくらりとかわすばかり。全くバカにしておる」

 母があまり話さないのはいつでも誰に対してもだ。

 その誰でもは娘である自分も含まれているし、そういう母なので、とエールが説明する。

「娘にまで話さないことがあるとは、秘密主義にしても度が過ぎるな。ともかく何を考えてるか分からぬ以上、あれもまた信用ならん」

 エールは母であるクルックーを悪く言われてむっとした。

 母が黙っているのは大抵それが黙っていなきゃいけないことだからである。

 確かに聞かれなかったからという事も結構あるかもしれないが必要になったらちゃんと話してくれるはずだ、とエールは少し自信がないながらも拗ねるように口を尖らせる。

「大体、お前は前にシャングリラで暴れたろうが。父親そっくりじゃな」

 この前にも言われたことで記憶はあいまいだがちゃんと謝ったはずである。

 何度言っても気が済まないのだろうか、とエールはパステルの器の小ささに驚いた。

 この人とあの父との間に脇にいる頼れる姉・リセットが生まれたと思うと本当に奇跡である。

 ペンシルカウで会ったビビッドは小さいながらも威厳があり、上に立つものとしての風格があったのでリセットは先祖返りなのかもしれない、エールはまじまじとパステルをリセットと見比べながら思った。

「お母さん! エールちゃん達は森でみんなを助けてくれたって話、聞いたでしょ!」

「お前は黙っておれ。妾は偉大なるカラーの女王にしてシャングリラを統治するもの。そしてここは大陸でも重要な交易地点であり完全な中立地帯。国、人種、文化に宗教を問わず色々なものが流れ込んでくる。ゆえにどの国にも、どんな人間にも舐められるわけにはいかん」

 女王なりの苦労があるのだろうか。

「全く最近は人間に誑かされるカラーも増えおって、全く嘆かわしい」

 それが原因か、とエールはすぐに考えを改めた。

 パステルの言葉は筋が通っているようで、やはり納得いかない。

「国同士のいさかいは子供である私達には関係ないでしょ。魔王討伐だってみんなと各国で協力してやったんだから、どの国も手柄を独り占めなんてことにならなかったんだよ」

 魔王を倒した功績というのは大きくどこそこの国がそれを成したとなればその影響は計り知れない。

 しかしランスが各国に子供を作ってたのを幸いに、東ヘルマンを除く全ての国で協力して成し遂げた功績という事となっている。

 そのおかげで大きな混乱もなく、各国で情報を統一し魔王の脅威は消えたという情報を発信することが出来た。

 そうでなければ東ヘルマンが流している未だ魔王は消えてないという虚報が未だ世界を大きく不安にさせていただろう。

「うむ。だからその二人が頭を下げれば解いてやると言っているだろう」

 エールは腕を組んで悩み始めた。

「……めんどくせぇからぶん殴っていいか?」

 ザンスが苛立ちを隠さずにパステルを睨みつけた。。

 その言葉に敵意を感じたのか、すっとイージスが庇う様にパステルの前に出る。さらに控えていた従者サクラまで警戒し、その場に緊張感が走った――

 

パカーン!

 

 と、同時にエールがザンスの後頭部を不意打ちで思いきり叩いた。

「っーーー!!」

 エールはそのまま痛がっているザンスの頭をぐいっと押して無理矢理頭を下げさせる。

「エールちゃん!?」

 この通り頭を下げるのでお願いします、スシヌの呪いを解いてあげてください、とエールもパステルに深々と頭を下げた。

 その様子は突然変な行動をとるいつものエールではなく、必死なお願いをする一人の少女である。

「え、えー…? あのエールが素直に頭を下げてる……?」

 長田君は口をあんぐりと開けて驚いた。

「あら……エールちゃんったらスシヌの為に頭を下げてくれるのね」

 それを見たパセリが優しく目を細めた。

 周りもその素直な様子にスシヌやリセット達カラーの面々、何より頭を下げるように言ったパステルが呆気にとられていた。

 エールとしては屁理屈で頭を下げさせようとしているようにしか見えないパステルに素直に頭を下げるのは嫌だったのだが、ここで逆らって呪いを解いて貰えないなんてことになれば困るのは姉のスシヌである。

 困っている様子のスシヌを放っておけはしないし、自分のせいでこじらせようものなら冒険者の仕事も大失敗。この場で頭を下げるだけで姉の呪いを解いて貰えるなら安いものだと思った。

「エールちゃんは優しいね」

「パステル様。エールはカラーの森で密猟者を退治し、人質に取られていた娘を無事に救い出しました。エールが居なかったら犠牲が出ていたかもしれません。ビビッド様もペンシルカウでも迎え入れられるだけの器量があると認めておられます」

「お母さんも女王としてそれには恩を返す必要があるんじゃないかな?」

 リセットはエールを嬉しそうに見ながらイージスと共に助け舟を出した。

「う、うむ」

 パステルは自分に頭を下げているエールを本当に意外そうな顔で見下ろす。

「エール! てめー! いきなりなにしやがん……」

「はいはい、ザンスちゃんはちょっと黙ってようね」

 憤慨しているザンスをリセットが止めようと引っ張った。

 逆にリセットが耳を引っ張られるてしまうが、そこにイージスやパセリが止める。

「全く常にそういう態度でおれば良いものを」

 ザンスはなおも怒っているが、パステルはエールの素直に見える態度に大いに気を良くしていた。

「うむ、そこまで頼まれれば仕方がない」

 そう言って少し得意げに笑っているパステルは姉であるリセットの笑顔とそっくりでやはり母娘なのだなと、エールは顔を上げながら考えた。

 

「ではそこの娘、こちらに座れ」 

 目の前の椅子に座ったスシヌの眼鏡にパステルが手をかざすとほわんと光が溢れ、スシヌの顔を覆った。

 とても眩しく、スシヌはぎゅっと目をつぶっている。

「しかし眼鏡が外せなくなる呪いなどなんてくだらない呪いじゃ……」

 手をかざしながらパステルは呆れたように言った。

「あはは、たぶんこんなことするのってハニーさんだよね。確か前にもかけられた人見たことあるよ」

 それにリセットが少し苦笑いをして、何となく長田君をちらりと見た。

「俺じゃないっすよ!?」

 長田君は眼鏡っこも好きだがそれ以上に巨乳好きである。

 もし巨乳になる呪いがあるのならかけられてみたいものだとエールはアホな事を考えていた。

 

「うむ。これで良かろう」

「あ、ありがとうございます!」

 スシヌはさっそく久しぶりに眼鏡を外してみた。 本当に久しぶりなので妙な解放感を覚える。

 エールはそれを見て小さくぱちぱちと拍手をした。

「……あ、あれ?」

 確かに少しの間、眼鏡は外れた。

 しかし顔から完全に離れ、眼鏡を膝に置こうとしたところでまたしても吸い込まれるようにスススッと眼鏡がスシヌの顔に戻って行ってしまう。

 エールは手を叩くのを止めた。

 

「む? 少々焦りすぎたか」

 パステルは再度、スシヌの顔に手をかざしはじめた。

 今度は先ほどより目を真剣にし青い髪がふわりと浮かせている。エールは少し神秘的な空気を纏ったパステルを見ながらここだけ見ると立派な女王様に見えなくもない、とその光景を眺めた。

 

 ……だが今度はいくら時間をかけてもパステルが手を離すことはなかった。

「お母さんどうしたの?」

「……なんじゃこれは」

 リセットの問いに応える事無く、パステルが焦り始めた。 

「な、なぜじゃこんなくだらん呪いが! おい、この呪いをかけたのは誰じゃ!?」

「えっと、私、ハニーキング様のところにいたんですけど……」

 スシヌが事情を説明する。

 

 

 もしかして、解けないんですか? エールが今度は少し声を強めにして聞いた。

 

 

 その言葉を聞いてパステルが固まったが、意固地になったように言い返した。

「ま、待たんか! こんなくだらん呪い! あ、あと少しじゃ、あと少し……!」

 パステルは焦りながら何度も解呪を試みた。

 一瞬外せそうになったりもするのだが、少しするとまたしても顔に吸い付くように眼鏡が戻っていく。

「もう一度じゃ、もう一度……」

 しかし何度試してみてもスシヌの呪いを解くことは出来なかった。

「こんなはずが……魔王の呪いならともかく、カラーの女王である妾がこのようなくだらぬ呪いを解けぬなどと……!」

 手のかざす方向を変えたり、他人には分からないが解呪のアプローチを変えるなどしてみた。

 

 しかし、その試行錯誤も無駄だった。

 

 どれぐらい時間が経ったか分からないが、パステルはとうとう諦めたように手を下ろし、顔を伏せた。

 

 その場に重々しい空気が流れる。

 

「お母さんでも完全に解呪できないなんて……で、でもどうして」

 リセットはとても驚いていた。

 呪いを使えるものは多くないが、その中でもカラーの女王というのは特別で世界一と言っても過言ではない呪いのエキスパートである。

 パステルもまたほとんどの呪いは肩の埃を払うかの如く解くことが出来る。

 スシヌを見たところ苦しそうな様子は一切なく、生命に関わるような重い呪いではないのが誰に目にも分かる。事情を聞けばたかだか"眼鏡が外せなくなる呪い"あっさりと解呪できるはずだった。

 しかし、実際はそれは非常に強力で高度な呪いだった。

 パステルの噂を聞いていたスシヌも外せない眼鏡をつまみながら、思わぬことに目を点にしている。

 

「はぁ? こんなくだらない呪いも解けねーのかよ。このポンコツ、本当に呪いのエキスパートなのか?」

 エールに叩かれふてくされていたザンスが心底馬鹿にした様子でそう吐き捨てた。

「うぐっ……」

「それは本当だよ。カラーは世界で一番、呪術を扱うのに長けた種族で中でも女王は特別なの。間違いなく世界で一番の呪術のエキスパート。なんだけど……」

 リセットは再度ポンコツと呼ばれどんよりとした空気を放つ母親に何とかフォローを入れようとする。

「……呪いはかけるよりも解く方が難しいですから。かけた者より、解く側が高ランクでなければ解呪は不可能ですね」

「え、それってカラーよりハニーの方が上ってこと?」

 長田君がサクラの答えにそう返した。

 エールは何となくぺしぺしと長田君を叩く。

「ハニーキングはハニーさん達の中、いえ魔物全ての中でも別格の存在よ。だから種族がってことではないと思うわ」

 パセリがちょっと重たい空気に話を挟む。

 ただ一つ分かったのは解呪が不可能な以上、カラーの女王よりハニーの王が高ランクの存在であるという事だ。

「さっすが俺等のキング? キングっつーかマジでゴッドだし、さすがのカラーの女王でもなー! しょうがないよなー!」

「誇り高いカラーの女王が……あ、あんなハニワなんぞに……」

 得意げに胸を張る長田君を前に、パステルはどんよりとした空気を強めてぶつぶつと何かを呟いては自分の手を眺めている。

 

 ともかくスシヌのかけられたこの呪いはカラーの女王であっても手に負えないほどのものであるらしい。

 

「やっぱり役立たずのポンコツじゃねーか。頭の下げ損だな」

 別にザンスは頭を下げていないから殴られ損だね、とエールが言うとボコンと強く叩かれた。

 

 言われたパステルは目に涙を浮かべて悔しそうに歯噛みしている。

 それはさっきまで得意げにしていたのが嘘のように気の毒な光景だった。

 

 どうにかならないの?とエールが尋ねた。

「お母さんでも解呪できないとなると他には誰にも……かけた本人なら解呪できると思うけど」

「そ、そんな……」

 リセットは耳を垂らしながら申し訳なさそうに話すと、スシヌはショックを受けたようで悲しそうに顔を伏せた。

 かけた人というと―人ではないけど―つまりハニーキングにしか解けないということだ。、

 しかしそのハニーキングは世界中に別荘を持っていて、どこにでも顔を出す神出鬼没の存在。

 会うのも難しいだろうし、また会えたとしても素直に呪いを解いて貰えるとも思えない。

 エールは悩み始めた。

「うーん、とりあえずさ。自由都市にあるはにわ大神殿行ってみね? そこならキングがどこにいっか聞けるかもしんねーしさ」

 長田君が手を挙げながら場を和ませるように言った。

「まぁ、死ぬような呪いでもないんだしそう落ち込むなって。むしろもうちょっと一緒に冒険できるって前向きに考えようぜ!」

 そう言ってスシヌの肩を叩いて励ましている。

「あっ、うん。そ、そうだね! 帰るのはちょっと遅くなっちゃうけど、これも社会勉強だし、エールちゃんともうちょっと一緒に……」

 スシヌは長田君に微笑み返した。

 長田君はこういうところがイケメンハニーだ、エールは二人に笑顔を向けた。

「そうそう、スシヌは眼鏡めっちゃ似合うんだし俺的にはずっとそのままでもいいぐらいだぜ!」

 一言多かった長田君はエールに割られた。

「ちっ……まぁ、ここのポンコツが何にもできないんじゃ行くしかねーだろ。とんだ無駄足だったな」

 リセットには会えたから、と言ってエールはリセットの頭に隠し持ってたみかんを乗せた。

「わわっ、エールちゃん。急に頭に物を乗せないでっ……」

 

 パステルはそのやり取りを聞きながら強く歯噛みした。

 

「しっかし全くマジで役に立たねぇな。唯一の取り得だろう呪い(もん)でこれじゃ、このポンコツ村長は一体何の役に立つんだよ」

「そんなにお母さんを責めないであげて。まさかハニーキングの呪いだなんて思わなかったんだから」

「散々、えっらそうにしやがって。結局何も出来ねーとか、マジで偉そうなだけの無能じゃねーか。エール、お前もなんか言ってやれ。無駄に頭下げさせられたんだからな」

「ザンスちゃんってば! エールちゃんを煽らないのー!」

 

 エールは悩んでじーっとパステルを見た。

 それはどうでもいいものを見るような視線である。

「うぐっ……」

 エールはパステルと目が合った。

 

「……………」

 

 エールははぁーーーーー……っと呆れたような大きくて長いため息をつく。

 そしてポンコツ女王、と小さく呟いて口を尖らせた。

 

「がはははははは! もっと言ってやれ!」

「エールーだ、ダメだぞ、そんなこと言ったらちょっと気の毒……ぷぷぷ」

 ザンスはバカ笑いし、長田君も肩で笑っている。

「エールちゃん……パステル様は何とかしようとはしてくれたんだからそんなダメだよ…」

「何も出来なかったけどな。しょうもない呪いとか言ってた癖に」

「エールちゃんまで酷いよぉ……お母さんだって頑張ってるんだからね」

 なおも笑うザンスと不満げに口を尖らせているエール。

 それをスシヌとリセットが窘めようとしたところで、

 

 

「ふ」

 

 

「ふっふっふ……」

 パステルが静かに笑い出した。

 

 その様子にサクラがハラハラとしながらそっと耳打ちをする。

「パステル様、気を静めて下さい」

「そうだ……お前は特に何を考えてるか分からない所があるとリセットも話しておった。……そういう所はあのAL教の法王によく似ておるのじゃろうな」

 

 パステルは顔をあげて目を見開き、その手をエールに向けて大きくかざした。

 

「少々、灸をすえてやろう!」

 

 パステルの手から光が放たれた。

 


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