それから数日、エールはチルディを師匠として修行のやり直しをさせられていた。
もちろん医務室での怪我人のヒーリングや親衛隊の訓練相手もしているが、礼節や兵法の座学は寝てしまうためにその間修行をつけてもらうのが日課となっている。仕事だったはずだが、チルディに修行をつけてもらえるのは下がってしまったレベルと勘を取り戻すためエールにとっては願ったりかなったりであった。
修行途中、チルディはエールが幾度となくレベル神が呼び出しているのを見る。
「神異変によってなくなりかけている神魔法にレベル神……神に近いと言われた法王の娘だから? エールさんをもっと調べさせてもらえればいいのですが……」
チルディがエールをリーザス軍に勧誘し、エールが首を横に振るのも定番のやり取りとなっていた。
「そういえばエールさんの使っているAL魔法剣、これはAL教のテンプルナイツが使っている技に似ていますわね」
ALICEガードと共に師匠から教わったもの、とエールは言った。
「エールさんの師匠はお母様のクルックーさんと、サチコさんでしたかしら。そういえばあの方もテンプルナイツのガードでしたっけ」
ガードということは話したことはなかったはず、チルディさんはサチコさんを知っているんですか?とエールが少し嬉しそうに聞いた。
「15年前に魔人討伐隊でご一緒しましたわ。尤もお話したことはあまりありませんが」
エールにとってサチコはクルックーがAL教の用事で外に行っている間、ずっと預けられていたため師匠と同時に母親代わりでもあった。
剣やガードの他、ちょっとした勉強も教えてくれて優しく温かく、パン作りも上手いとてもすごい人、昔はテンプルナイツとして母を立派に守った人だったと聞いているとエールは話した。
「え、えーっと。そんな方でしたかしら?ランスさま相手に普通に接していたり、恐れられている魔人と打ち解けたりと随分胆力のある方だとは思いましたが……」
チルディの中のサチコは顔が良く思い出せないぐらい印象が薄く、かろうじて思い出せるイメージは胆力があるというよりは能天気といった程度。チルディはそんなにすごい人ならもっと友好を深めておくべきだったと少し後悔していた。
「エールさん、あまり人前でレベル神を呼び出すのはやめた方がいいかもしれませんわ」
それはなぜでしょうか?とエールは聞いた。
「神魔法もそうですが、才能や能力を利用しようと言う輩が現れるかもしれません。AL教に反感を持つ人も少なくありませんから、法王の娘ということもあまり知られないほうがいいでしょうね。 人質として狙われたりも……エールさんはどうも危機感に欠けていて心配です。東ヘルマンもいまだ健在。この世界では強いというだけでは乗り越えられないことも多いですから」
前の冒険でも無茶をするとよく言われていたがエールにその自覚はなく、ピンとこない話である。
ただチルディの、娘を心配している母親のような強くも優しい忠告をエールは素直に嬉しいと感じた。
「リーザス軍に入っていただければきっとどの国よりもエールさんの能力を生かし、守ることができますわ。考えておいてくださいね」
抜け目なく、勧誘も忘れていない。
………
……
そんな日々を送っていると、エールはチルディからいつもとは違う仕事の依頼をされることになった。
リーザス首都からかなり離れた場所で女の子モンスターを飼育している場所があるのだが、そこで連続して女の子モンスターが攫われるという事件が起きているという。一匹二匹なら盗難もあるだろうと思っていたのだが、それだけに留まらず誘拐はエスカレートしてとうとうそこで働いている女性に行方不明者が出たと言うのだ。
「それ事件なんじゃないすか?」
エールと共に呼ばれた長田君がそう言った。
ちなみにエールが働いている間、長田君もハニーが魔法が効かないことを利用して紫の軍で魔法の的になるという仕事をこなしている。
「それが実はちょっと特殊な飼育施設でして大っぴらに軍を派遣するわけにはいかないのです。本当は私が呼ばれているのですが、ここはエールさんにおまかせします。私の弟子として立派に働いてきてくださいね」
エールはチルディの弟子、と言われなんだかちょっと照れたが、逆に傍らにいるアーモンドはむすーっと頬を膨らませている。
母親を取られてしまう娘の気分はエールにもよく分かるので自分は二番弟子だから、とアーモンドの頭を優しくポンポンと叩いた。
「それととても珍しいお方に会うと思いますのでこれを渡しておきますわ。その方に出会ったらチルディがよろしく言っていたとお伝えくださいまし。片方はお二人で食べてくださいね」
そう言って二つの袋が渡された、中身はなんだろうか。
「普段は作らないんですけど……お菓子ですわ。 アーモンド、引っ張らなくてもあなたの分もありますから」
傍らにいるアーモンドが嬉しそうにしていた。
「それでその珍しい人って誰っすか?」
「大きな剣を担いだ方で……いえ、会えばすぐにわかりますわ。楽しみにしておいてください」
二人と一緒に行きたいというアーモンドをなだめてエールと長田君は出発した。
「へっへー、なんつーか。冒険者っぽい仕事がきたな!」
今までの仕事と違う、誘拐事件の捜査という仕事にエールと長田君は少しワクワクしていた。
その場所までの専用のうし車を用意してもらえたのでそれに乗って現場へ向かうこととなった。
そのうし車の中で長田君が紫の軍にアスカさんというお姉さんがいることを話しはじめる。
「普通の魔法じゃなくて幻獣魔法っての使うんだぜ、珍しいからエールも見に来いよ。俺の勇姿も見せたいし?」
的になっているだけで勇姿なのかどうかは分からないが、時間があったら見に行ってみようとエールは言った。
………
……
うし車にはかなりの時間揺られることになった。
到着した場所は都会であるリーザス首都からだいぶ離れているせいか、一見すると素朴な村、悪く言えば貧相な村といった風情である。
「エールの故郷の村に似てるな」
長田君がそんな感想を言っている。
しかしその素朴な村というのは表向きで、中に入ればスタッフも全員女性という特別な女の子モンスターの飼育場である。
うし車から現れたのがチルディではなく、まだ大人とは言えないぐらいの女の子だと知るとスタッフ達は露骨にがっかりと肩を落とす。
「まぁ、俺たちは有名じゃないしこういう反応も仕方ないだろ。さくっと解決して見返してやろうぜ!」
妙なハニーを連れているのもがっかりされた原因だったのではないだろうか、とエールは思ったが黙っていた。
さっそく事件現場という女の子モンスターの飼育場に案内された。
飼育場のスタッフに聞いてみるとこの施設自体が秘匿されていて、さらに女の子モンスター達が強いのもあって警備は雇っていなかったらしい。
「すげーな。レアなモンスターまで色々いんじゃん。俺だけだったらとても勝てなさそー……」
エールもてっきりきゃんきゃんやメイドさんぐらいだろうと思ったら神風、まじしゃん、フローズン等かなり高レベルな女の子モンスターや普通とは違った服を着たレア種、さらに突然変異種までいる。なんでこんなに育てているのだろうか?
「女の子モンスターって可愛いのはペット用に人気だしな。メイドさんとかすげー人気なんだぜ?あと、強いのとかは戦わせたり護衛として侍らせたりー」
ちなみにハニーにはちゃぷちゃぷが人気らしい。
エールたちが眺めていると、見慣れない少女やハニーが珍しいのか女の子モンスターが寄ってくる。
聞いてみると仲間とお世話をしてくれていた大好きな人がいなくなってみんな寂しがっているようだ。
その大好きな人、というのが攫われた女性の魔物使い。自分たちを世話してくれていた人で女の子モンスターは揃って心配しているようだ。
「なんか、みんな懐っこいというか人間を警戒してないな。女の子モンスターってけっこう危ないのも多いのにさ」
それだけ躾が行き届いた、良い魔物使いだったんだろう、とエールが言った。
「あなた達、見ない顔ね。なんだか良い匂いがするわ」
エールたちは後ろから不意に声をかけられ、振り向くとそこには大きな剣を担いだ可愛い少女が一人立っていた。
その身長はエールよりも小さいが、かついだ剣は身長とほぼ変わらない大きさである。
「はじめまして、私はベゼルアイ。世話になってる人がここにいて遊びに来ていたんだけど」
エール達もきちんと挨拶を交わす。
「ってベゼルアイ!?もしかして聖女モンスターのベゼルアイ様!?」
長田君がその名前に驚き、飛び跳ねた。その言葉を聞いてエールも昔、本で読んだことがあったのを思い出す。聖女モンスターという名前だが女の子モンスターではなく確か神様だったはずだ。
エールと長田君はなんとなく拝むポーズを取った。
「やめてよ。私達はよくわかんないんだけど神異変で消えなかったのよね。魔物を絶やさないためかしら?」
エールは自分をまっすぐ見つめてくるベゼルアイの頭の上にチルディから貰っていたお菓子の袋を乗せてみた。
「くれるの?ありがと」
エールはベゼルアイと少し仲良くなれた気がした。
「何これ、めっちゃうまくね!?」
長田君がもう一つのお菓子の袋開けてぱくぱくと食べていた。エールも一つ食べてみると、食べる手が止まらなくなるほどに今まで食べたクッキーとは別格の味わいであった
「これは、チルディちゃんのお菓子ね。美味しい……」
これは手作りだったのか、チルディさんは強いだけではなくお菓子作りも得意なのか、そういえばサチコもパン作りが上手かった、とエールは師匠達の万能ぶりが少し誇らしくなった。
エールはベゼルアイにチルディから依頼を受けてここに来た、ということを話す。
「なるほど、エールちゃんがチルディちゃんの代わりなの。 それじゃ向こうでお茶しながら話しましょうか」
スタッフに用意してもらった別室でエールたちはお茶を飲んで休憩していた。
どうやら誘拐事件で困っていたスタッフに、リーザスから応援……チルディを呼ぶように言ったのはベゼルアイであるらしい。
エールはベゼルアイがお茶に10個ぐらい砂糖を入れて、さらにぱくぱくとお菓子を食べているのを見ているだけで口が甘くなりそうだった。さらに満足げにお菓子を口に運ぶ姿を見て、チルディを呼ぼうとしたのはお菓子目当てだったのではないかと考えていた。
エールがなんとなくチルディの娘とは姉妹であることを話した。
「へぇ、あなたもランス君の子なの。子供がたくさんいるのは知ってたけど」
「ランスさんのこと知ってるんすか?いや、魔王だったんだから知ってて当然かもしれないっすけど」
「ええ、魔王になる前のランスくんに精液を貰ってモンスター産んだことあるから。私以外の三人も産んでたわ」
ベゼルアイはあっさりというが、長田君はお茶を噴きだして割れた。
そういえばクエルプランの時も神様とやってたな、とエールは父の姿を思い出す。
つまりエールにはあと他に最低でも四人兄弟(魔物)がいるということだ。
「いや、そこは納得するなよ!?こんな見た目小さい子に手を出すって……アレだぞ!」
確かにベゼルアイの見た目はリセットより大きいがレリコフと同じぐらいの子供サイズであった。
実年齢は神なので長生きしているのだろうが確かに子供のような容姿、これに発情したのだとしたら父はロリコンなのか……とエールは渋い顔をする。
「あれ、でもなんで図鑑と何でこんな違うの?ベゼルアイ様といったら聖女モンスターの中でももうすごいバインバインなはずじゃ?」
確かに図鑑に載っているベゼルアイはスタイル抜群のでかなり大人っぽい姿であったような気がする。
「ランス君の名誉のためにも言っておくけど、私達は力が溜まったら大人の姿になるのよ。さすがにこの子供の姿じゃランス君もやれないって言っていたわ」
「俺も大人の姿が見たかったっすね。なんてったって神様だし?すげー美人なんだろうなー」
長田君が残念そうにベゼルアイを見る。
「そういえば、まだハニーとの子は作ったことなかったわね……」
そう言って長田君の方をじーっと見つめ返した。
「マジっすか!?なら、バインバインの姿になったらぜひ」
エールはそれを言い終わる前に長田君を粉々に叩き割った。
「あら……ごめんなさいね。 長田君とはやらないでおくから安心して」
エールのむすっとした表情を見て口元に笑みを浮かべながらベゼルアイが優しい瞳でそう言った。
体は小さいが大人の雰囲気、エールは姉のリセットを思い出した。
話をしきりなおして、なぜベゼルアイ様がこんなところにいるのか、と尋ねてみる。
「普段はいないわ。ここにいる魔物使いの子、名前オノハちゃんって言うんだけどその子の世話が年々気持ちよくなってきちゃってたまに来させてもらってるのよ。 でもちょうどいなくなっちゃったみたいでね……また変なことになってなきゃいいけど」
事情を聞くと、魔王ランスが大暴れしていた時代に一時期「滅殺魔物団」なんてものを作って魔物を滅ぼすことに使命感を抱いていた時期があったらしい。
「人間って突然不良っぽく振舞ってみたり、そういう悪いことしたくなる時期があるんでしょ?」
反抗期というやつだろうか、エールはまだ迎えていないはずだ。
ともあれ、改めてエールが自分たちがここに来た事情、女の子モンスター達が誘拐され、魔物使いの子もいなくなった件をチルディの代わりに解決しに来たと説明する。
「なるほどね。なら、待ち伏せでもしましょうか」
………
女の子モンスターの飼育場まで戻って、三人で隠れて様子を伺う。
待っている時間は暇ではあるが、こういった待ち伏せと言うのをした経験がなかったのでエールは楽しそうだった。
「能天気だなー、相手は結構強いはずだし気を引き締めとけよ。俺はいつもの通り後ろで応援するからな!」
そうして待っていると、こそこそと不穏な人影――人影に見えるモンスターの集団が現れた。
嫌がって逃げる女の子モンスター達をどこから手に入れたのか捕獲ロープをもって追いかけまわしはじめている。
エールたちに気が付くとそう言って襲い掛かってきた。
「へへ、珍しい女の子モンスターがいるぜ!」
「横の人間の娘っこも攫っちまえ!」
レアな女の子モンスターを攫うと聞いていたのでかなりの手練れだと踏んでいたのだがエールたちが戦うと、魔物兵や魔物隊長の姿をしていて中身は分からないものの拍子抜けするほど弱い相手だった。
「エールもだいぶ強さが戻ったんじゃね?」
長田君はそういうが、この程度の相手にレアな女の子モンスターたちが負けるとは思えない。
「ケケケケケ!!!」
そう考えていると突如、甲高い不気味な声がした。
「見たことない女の子モンスターに人間の女までいるでちゅ。今日も大量でちゅね!」
声のする方向には見慣れないモンスター、血塗れの包丁を構えてパンツを被っておむつをはいた赤ん坊のようなモンスターが飛んでいた。
エールが反射的に攻撃を加えようとしたが、なぜかその手がピタリと止まった。
「どうした、エール!?」
エールの動きが止まり、そこに包丁の一撃が迫りなんとか避けたもののやはり反撃が出来ない。何回か試してみるが結果は同じ、全く攻撃が出来なかった。
「女殺しだわ」
エールは知らなかったのだが、女殺しというのは人間やモンスター等あらゆる雌の攻撃が利かないという超危険なモンスターであるらしい。
そして女殺しに手が出せないのはエールもそして神であるベゼルアイですら同じである。
エールは女殺しの執拗な包丁攻撃をなんとかしのぎ、かわすが反撃は出来ない。
「しぶとい女でちゅねー!さっさと降参すれば殺さない程度に切り刻むだけですましてやるでちゅ!」
包丁の斬撃は鋭く、エールの体にも次々に傷がつき始めていた。
防戦一方でこのままじゃ危険だとエールが退くことも考えていると
「え、エールに何してんだー!」
長田君必殺のハニーフラッシュが女殺しを吹き飛ばした。
吹き飛ばされて地面に叩きつけられた女殺しが狼狽える。
「な、なんでこんなところにハニーが!?ここは雌しかいないはずでちゅよ!?」
再度ハニーフラッシュが飛んでいくが、今度はかわされていた。
普段は踊ってエールを応援するばかりの長田君だが、そう彼はハニーであり、男である。
「へー……やるじゃない。私も応援するわ」
そう言ってベゼルアイが鼓舞をすると、エールも長田君も不思議と力が湧き出てくるようだった。
エールもヒーリングなどのサポートぐらいはできるだろう、いつもとは逆に長田君を応援する側に回る。
「たかだかハニーなんかに負けるわけないでちゅよ!」
そう言って襲い掛かってくる。
………
……
攻撃力の低い長田君では多少の辛さはあったものの、エールたちのサポートもあってなんとか女殺しを地に伏せさせることができた。
「う、うおおおー……俺もやればできるじゃん!?見た、いまのかっこよくなかった!?」
「中々やるじゃない。足とか震えてたのに」
エールもすごくかっこよかった!と素直に称賛すると、二人に褒められて長田君が照れる。
ともあれ勝利を喜び合った。
「この女殺しどうする?」
エールが近づいて改めて日光で刺そうとするが、やはり寸前で刀が止まってしまう。
「うわー、怖いなこのモンスター。エールでもどうにもできないって……」
エールではとどめを刺せないので、長田君にとどめを刺してもらうことにした。
なんとなく長田君にざくーっとやってもらうのは気が引けるのだが…
「女の子を切り刻むのが趣味とか最悪だしな!」
長田君はどこからともなく取り出したトライデンでぐさっとやった。
エールは意外と容赦ない長田君よりも、長田君がトライデンを持っていたことを初めて知ったので非常に驚いた。
普段はダサいという理由で使っていなかったそうである。
女殺しを始末し、残りのモンスターを全員縛り上げる。
「女殺しがやられただと……」
「ま、待て。こっちには人質がいるんだぞ!こんなことして」
そこまで話しかけたモンスターをざくーっと一刀両断する。
「ひー!?」
「ちょ、エール!?人質がいるって言ってんじゃん!?」
つい切ってしまった、と言って今度は相手の首に日光を突き付けた。
ようは報告されて人質に被害が出る前に解決すればいい、攫った人質はどこにいるのかと目に凄みを利かせるとそのモンスターはあっさりと情報を吐いた。
エールは女殺しを切れなかったのでちょっとイライラしていたこともあり、ざくっととどめを刺す。
「あなた、女の子だけど何となくランス君に似てるわ」
そう言って笑みを浮かべるベゼルアイの中で、父であるランスはいい思い出なのだろう、とエールは何となく嬉しい思いがした。
……‥
「うぽぽぽぽぽぽ」
モンスター聞き出した情報を元に怪しい洞窟に侵入。たどり着いた先にいたのは何か頭のよさそうなおかゆフィーバーだった。
首がまっすぐなのでおそらく突然変異種なのだろう。
ちなみに魔物から得た情報では目的は女の子モンスターを売買するようなことではなく、女の子モンスターを攫ってハーレムを作るというなんともくだらないものであった。
しかも女殺しを仲間に引き入れたはいいが、せっかく攫った女の子モンスターを傷つけまくるので怯えられ、実はかなり手を焼いているというなんとも情けない話まで聞けた。
「うぽぽ。女殺しが酷い真似をしてすまないうぽ。ユーたちの、大好きなご主人様も一緒うぽ。人間のペットになるよりよっぽど幸せうぽ」
こっそりと話を聞いているだけだとそんなに凶悪な魔物ではなさそうだ。
「ぼくちんがちゃんと介抱してやるうぽ」
そう言いつつ気持ちの悪い触手を下部から伸ばし、女の子モンスターに怪我の介抱ついでによからぬことをしようとしているのが見えた。
「こらー!何してるんだ、お前―!」
エール達がそんなおかゆフィーバーの前に立ち塞がる。
「なんだお前ら、うぽ! ぼくちんの邪魔をするなうぽー!」
そう言ってエールにも気持ちの悪い触手を伸ばしてくる。
エールは眉をしかめてその触手を切り払うと、そのままざくざくと切り刻んで血まみれフィーバーにしてみた。
ボスにしてはあまりにあっけない強さで拍子抜けであったが、エールはいつもより丁寧に日光についた血を拭きとった。
エールたちは捕獲用ロープで縛られていた女の子モンスターを解放していく。
女殺しにやられたであろう深い傷を負っている女の子モンスターにエールがヒーリングを施していると感謝されつつも、ご主人様を助けてと口々に助けを求めてきた。 この子たちは本当に躾が行き届いているな、とエールが少しほっこりとした気持ちになっていると。
「あんっ!」
背後にいた長田君が突然割れた。
何事かとエールがその方向を見てみると行方不明になっていた人間の女性……眼帯をつけている綺麗な黒髪の女性が寝ころんでいた。
「オノハちゃん。無事だった、というわけではなさそうね」
ベゼルアイがそう言って近づいた。
この黒髪の女性が攫われた魔物使いのオノハであるらしいが……
裸になって自分の指をあんなところやこんなところに入れてあへあへのあふんあふんと"大変なこと"になっていた。
「これはおかゆ毒に感染しているわね。女の子モンスターには大したことなくても人間には毒なのよ」
毒ならばと、エールはオノハにヒーリングをかけてみるが効果はない。
ただくちゅくちゅと淫猥な水音と嬌声が聞こえるとエールは顔を赤くさせて固まってしまった。エールはそんな様子の女性を見るのは初めての経験であった。
「治すにはフィーバー下しがあればいいんだけど。 たしかおかゆフィーバーが持ってるはずよ」
固まっているエールを見ながらベゼルアイがそう言った。
エールは血まみれフィーバーにしたおかゆフィーバーにヒーリングをかけて再度、刀を突き付ける。
「そ、それなら奥の部屋にあるうぽ……」
それを聞いたエールと長田君、ベゼルアイの三人で部屋をひっくり返して大探索、エールがフィーバー下しを見つけるころにはおかゆフィーバーはいなくなっていた。
次に会ったらきっちりととどめを刺してやる、とエールは誓った。
「出口で待ってるから、エールとベゼルアイ様はその人に薬飲まして連れてきて!」
長田君は裸を見たら割れるからか、心配そうにしている女の子モンスターを誘導しながら素早く洞窟を脱出していった。
エールはフィーバー下しを飲ませようと嬌声をあげ、周りの言葉も状況も分からないのか、ただ暴れるように快楽に耽っているオノハに恐る恐る近づいた。
意を決して無理矢理にでも薬を飲ませようとエールがオノハの腕を掴むと、それが刺激になったのかオノハの口からは涎が流れ、より大きな嬌声が漏れる。エールはこれ以上触っていいか分からず、頭をぐるぐるしながら慌てまくった。
「私に渡しなさい」
そうしたエールを見かねてたベゼルアイがオノハの頭をポカンと叩いて気絶させるとその口にフィーバ下しをねじ込んだ。
医者である姉のミックスが見たらすごく怒られそうな乱暴なやり方だが仕方がない、エールはベゼルアイに感謝した。
「いいのよ。それより急いで戻りましょう」
ベゼルアイがタオルでくるんだオノハを軽々と担ぎ上げ、エールたちは大急ぎで村へ戻った。
………
……
オノハは診療室のベッドに寝かされた。
薬が効いたのか症状も落ち着いたようで静かに眠っている。
エールは今日のことを思い出していた。
レベルも上がって勘を取り戻しはじめていて、仕事も余裕でこなすつもりだったのが結局女殺しは長田君が倒し、オノハもベゼルアイ任せという結果だった。
強ければ大抵どうにでもなると思い込んでいたのだが、経験不足に知識不足、自分の未熟さに落ち込んだ。
「おつかれー、冒険者っぽい初仕事、大成功じゃね?やっぱ俺達、最強のコンビじゃーん!」
エールの落ち込んだ雰囲気を察したのかそうでないのか、長田君が明るく手をあげてハイタッチを要求した。
エールもそれに答えて手をポンと叩く。
「二人ともお疲れ様。頑張ったじゃない」
ベゼルアイも口元に笑みを浮かべてねぎらいの言葉をかけた。
そんな二人にエールは励まされ、笑顔を浮かべると同時にもっと頑張ろうと気合を入れた。
※ 一度投稿したものを書き直しました
女の子モンスターの飼育場 …………オリジナル設定 リアがランスの従魔を保護していた名残(オノハは自由都市所属ですが)
頭のよさそうなおかゆフィーバー……ランクエにでてきたやつ
女殺し …… GALZOOにでてきたやつ風