エールが長田君と感動の再会をしている一方。
パステルはそれを冷たい目で見下ろしエールに向けて手をかざして―――その手をリセットが抑えた。
「リセット……」
「お母さん、もうやめて。みんな私の大事な家族なんだから」
真っすぐに自分を見つめる娘の悲し気な瞳。
「それにエールちゃんはみんなを集めて魔王を倒してくれた私達の恩人でもあるんだよ」
落ち着かせるように自らの手を包み込んでくる小さな手。
クラウゼンの手の力を貯めるため、何年も巻かれたままだったその手の包帯は既に無い。
魔王になったあの男に近付きすぎていつか帰って来なくなるのではないかという心配も、もはや無いのだ。
パステルはすっと怒気をおさめた。
「うぅ……なぜこのような事に。リセットが……大事な娘が……」
それと同時に腰が抜けたようにペタンと座り込む。
「妾はご先祖になんと報告したら……やはりそやつを殺して……だがリセットが大事な家族じゃと………うぅっ……」
真っ青になってうずくまるパステルは目に涙を浮かべて震えていた。
エールが長田君との再会をひとしきり喜んだあと、パタパタとパステルに近付く。
茫然としたままのパステルに、さっき言ったリセットの言葉は全て演技です、と得意げにばっと両手を上げてネタばらしをした。
「……なんじゃと?」
その言葉を聞いたパステルは正気に戻って目を見開いた。
「な、ならあの写真や映像は?」
あれも演技でリセットにも協力して貰った、エールが親指をぐっと立てリセットと視線を合わせた。
「そ、そう。もちろんあれは演技だよ!」
リセットは少し目を逸らしながらも、
「お母さんがどうしても呪いを解いてくれなさそうだからどうしたら長田君の呪いを解いてくれるのかなって作戦を考えたの……心配かけてごめんなさい」
ちゃんと説明をしながら謝った。
それを聞いたパステルはふらふらと立ち上がる。
娘のあられもない写真を見て血がのぼってしまったが、落ち着いて考えればやはりあのしっかり者で真面目なリセットがあんなことをしたりされたりするはずがない。
「そ、そうか、偽物だったか……」
騙されてしまった悔しさや情けなさもあるが、娘が毒牙にかけられていなかった事への安堵の方がはるかに大きかった。
一度ぎろりと目の前にいるエールを見返したが、悪気の無さそうなエールの表情を見てパステルは呆れるように長い溜息をついた。
「……妾はシャングリラへ戻る」
「みんな一緒に戻っていいんだよね?」
「好きにしろ」
パステルの言葉を聞いてリセットの顔がぱっと明るくなった。
「リセット。ここの片付けが済んだらここにいる全員を連れて妾の執務室まで来るように」
「え? まだ何か――」
聞き返そうとするが、パステルは振り向かず魔法ハウスを出て行ってしまった。
カラーの警備隊もそれに続き、物々しい雰囲気とともに魔法ハウスを取り囲んでいた気配も消え去る。
「それじゃ、魔法ハウスをしまってシャングリラに行こっか?」
首を傾げるリセットだったが、精いっぱいに明るい声でみんなに話しかける。
「そういえば俺テントだしっぱなしだー! てか、砂まみれでちょっと埋まっちゃっててさ」
「砂まみれなのはてめーもだろうが。砂から掘り出された石器みたいになってんぞ」
ザンスが出土したハニワと言って笑っていた。
抱きついたエールの服も砂だらけだが、ザンスの言葉に笑った。
「笑うなよ、もー! はやく風呂入りたい! ってか、誰か片付けるの手伝ってー―」
ボクが行く、とエールが応えようとしたところで部屋の外からふいに声をかけられた。
「リセット様も皆様も、無事でよろしゅうございました」
カラー達が去った後、入れ替わるようにロナとイアン、さらにその二人の頭の上や脇にわらわらとピグが顔を出している。
「仲直りできてよかったねー」
「ピグちゃん達も、連絡係ありがとね」
「皆様がお泊りになる宿などは私が手配させていただきます。リセット様は皆様とパステル様の所へ」
「テントの片づけは私が参りましょう」
「あっ、中にある荷物は俺がまとめるんでー…すんません。助かるっす……」
イアンの言葉に人に優しくされるのも久しぶりな長田君は少し感動していた。
さらに細かい掃除や各種メンテナンスもやってくれるというロナにエールは魔法ハウスを預けることにする。
メイドと執事、頼りになるなぁとエールは一匹のピグを手に乗せながらお礼を言った。
エール達がそうやって出発の準備をしているのと同時刻。
シャングリラまでの帰り道でパステルはどんよりとした空気を背負っていた。
「サクラ、例の物だが言い値で買うから持ってくるようにと伝えよ」
「かしこまりました。……代金はゼスに請求できないか、交渉することに致しましょう」
「うむ。頼んだぞ」
サクラの言葉に、パステルが頷いた。
………
……
「お母さん、みんな連れて来たけど」
リセット達は久しぶりに来たシャングリラの町中でお腹空いたと言ってうろちょろしようとするエールと風呂入りたいと騒ぐ長田君を引っ張りながら、館の都市長執務室前まで来ていた。
ガチャリと部屋の扉を少し開けたところで
「貴様、前に提示してきた金額から随分と値が上がっておるではないか!!」
「そりゃあれから数日経ってますさかい。物の値段も変動するってもんでっしゃろ」
パステルと誰かが言い争っている声がした。
「これは本当にほんとーにレアもレアな逸品のバランスブレイカー、手に入れるのほんま苦労したんでっせ」
対峙している人ではない生物はシャングリラ都市長にしてカラーの女王であるパステル相手に全く怯むことはない。
「あんさんらが探しても手に入れられるとは到底思えまへんな」
「うっぐぐぐぐ……!」
「払えないなら商品は下げさせていただくだけでごわす。次はまたまた値段上がってしまうやろなー」
そう言ってふよふよと部屋から出て行こうとする一匹の謎の青色生物。
エール達はその顔に覚えがあった。
行く先々に現れては使い道のなかった金塊をレアだというアイテムと交換してくれていた、なんでも屋のプルーペットである。
「わ、分かった。払ってやるからそれを寄越すのじゃ!」
出て行こうとしたプルーペットをパステルが引き止める。
「毎度ありー」
苦々しい顔をしたパステルに大して余裕の表情――といっても変化はしないが――でプルーペットが商品を手渡す。
「毎度どーもー。王族のみなさまがぞろぞろと、おひさしぶりでんな」
そして出て行こうとする際にわざとらしく気が付いたようにエール達に声をかけてきた。
「いやいや、何でも魔王を討伐されたとか。ワテの売った商品達もお役に立てたましたん?」
エールは頷いた。
「それは何よりでんな。またいつでも交換受け付けまっせ」
実はほとんどの商品が金塊と釣り合わないようなものばかりだったのだが、エールにその価値の違いなど分かるはずもない。
むしろ金塊なんて持ってても何の役に立たないとすら思っているエールはプルーペットにとってはいい
「用は済んだのならさっさと出て行かんか!」
「はいなはいな。またごひいきにー」
「まったく……して、やっと来たか」
「とっくに来てたわ」
ザンスの物言いにパステルはまたむっとしたが横にリセットを見て気を落ち着かせる。
「……ふん。ゼスの娘、こっちにきて座るが良い」
「え? あっ、わかりました」
パステルはスシヌを椅子に座らせると、見慣れない指輪を指にはめた。
「眩しくなる。目をしっかりと閉じておけ」
スシヌが頷いて目を閉じたのを確認し、パステルはスシヌの顔、眼鏡に手をかざした。
前の時のようにほわんと光ではなく、辺りを覆いつくすような真っ白な光が部屋を覆った。
「まぶしー! 目、目、痛ー!!」
騒ぐ長田君の横で、何をするのかと興味津々にのぞき込んでいたエールも目を開けてはいられない。
「くっ……!」
ただパステルが奮闘しているような声が聞こえる。
しばらくすると光が徐々に薄れ、目も慣れていく。
「これでいいじゃろう。……眼鏡を外してみよ」
スシヌは驚きつつ、言われるままにゆっくりと眼鏡を外してみた。
眼鏡が顔に戻っていく気配はなく、スシヌは眼鏡を完全に外すとそっと膝の上に置いた。
「め、眼鏡が外れるようになった!」
眼鏡をはずしているスシヌはなんだか違和感があるぐらいに長い間見ていなかった。
眼鏡をつけてるスシヌも可愛いが、外しててもやはり美少女である、とエールは思った。
長田君がちょっと少し残念そうなのはやはりハニーだからだろうか。
「あ、ありがとうございますっ」
「スシヌの為にありがとうございます。パステルさん」
スシヌが立ち上がってパステルに深々と頭を下げ、またパセリも一緒に礼を述べる。
その後ろでエールとウズメは小さく拍手をしていた。
「ふん、せいぜい感謝すると良い」
無事に呪いが解けたことでパステルは安堵のため息をつきながら、少し得意げに胸を張った。
「あれー、前は呪い解けなかったのになんで今回は出来るようになってんの!?」
「プルーペットから買ってたその指輪だろ。アイテムで解呪できるならポンコツ村長要らねーじゃねーか」
「アイテムで解呪したわけではないわ! これは妾の力を増幅させる呪術ブースターと言う貴重なアイテム、バランスブレイカーじゃ。……あれだけ法外な値を要求されて一回きりとはな」
パステルは割れた指輪を眺めた。
指輪はまっぷたつに割れていて、もはや使い物にならない。
「お母さん、ありがとう! やっぱりお母さんはカッコいいね!」
自分が居ない間、母はスシヌの呪いを解く方法を探していてくれていたのだ。
リセットはそんな母の優しさが嬉しく、思わず抱きつく。
「う、うむ。妾は偉大なカラーの女王、これぐらい大したことはない」
女王として母親として何とか面目を保てたパステルは口元に笑顔を浮かべて、抱きついてきたリセットの頭を撫でる。
無邪気に抱きついているリセットは可愛く、同時にエールは母クルックーのことを思い出して寂しさを感じた。
エールもまたポンコツ女王だと思ってたところを一気に見直し、だましてしまったことを改めて謝罪し感謝の言葉を述べる。
「お前が男であったらとっくに殺しておるわ」
男だったらリセットにあんなことしません、姉が大好きなのでとエールは笑顔で伝える。
「ふん、素直に礼が言える辺りはあの両親よりは多少マシじゃな。用はすんだじゃろう、出て行くが良い」
エール達ともう話がしたくないのか、それとも照れ隠しなのか、パステルはそう言ってエール達を部屋から追い出す。
「リセット、こやつらがこれ以上何かしでかさないかしっかり見張る様に」
「うん! みんな大事なお客様だもんね。任せて!」
パステルの言葉をもう少し大切な兄弟たちと一緒に居る時間をくれる、と解釈したリセットは嬉しそうに応える。
そしてちょうどいいタイミングでロナが宿の準備が出来たと言って現れる。
風呂に入りたいと騒ぐ長田君を筆頭に、わらわらとエール達は宿に向かって行った。
静けさの戻った執務室。
「パステル、立派だったわよ」
「お母様……」
モダンがふよふよと現れて、優しい表情でパステルの頭を撫でる仕草をする。
「ランスさんが元に戻ってから、リセットってばずっと各国を飛び回っていたもんね。お正月みんなで集まる時ぐらいしかお休みなくて、たまにはお休みさせてあげなくちゃ」
「それはシャングリラの外交官として、次期カラーの女王として仕方のない事。同行を許しているのも、ただあやつらを見張りもなく勝手に動き回らせるわけにもいかないというだけです。あの娘は前にも酒場で暴れておりますし」
「お婆様は楽しそうだったわ。お母様がカラーの皆を助けてくれたって言ってたでしょう? それにリセットもいっぱい助けて貰ったわ」
「それは知っております。だから、その借りを返したでしょう」
カラーの女王として、リセットの母親として。
エールの成した事は紛れもなく英雄的であり、感謝するべきことであった。
「エールちゃんってランスさんに似てるわよね?」
「最悪ですっ!」
そう、エールはランスに似ている。
浮かべた表情か、瞳や髪の色か、人をバカにするような態度か。
それだけでパステルはエールが苦手だった。
「お母様がエールちゃんが男だったらリセットの婿に考えるのにって言っていたわ。ちょっと残念ね」
「冗談でもやめて下さい! そうだったらリセットに近寄っただけで殺してやります!」
「そうね、少し前に来た時もランスさんったら戻ってきてそうそうパステルの体を借りて一発とか騒いで……やだっ、変な事言っちゃった。と、とにかくカラーはみんな若いままだからハーレムに入れてやるーって」
「次にシャングリラに来たら、今度こそ殺してやりますっ!」
憤るパステルとほんわかとしたままのモダン、母娘はまだまだ一人の男に振り回されていた。
………
……
大きな温泉のある宿、エール達は女四人と幽霊一人で温泉に入っていた。
エールはじゃぶじゃぶと温泉で体を洗い、熱い湯に浸りながら色々と思い出す。
ここははじめてシャングリラに来た時に泊まった高級ホテルである。
支配人のムラクモが出迎え バイタルも問題なく働いているようでエールを見て何度も頭を下げている。
エール達が魔王を討伐した事も知っていて、リセットの客だという事もあって最高級の部屋を使わせてくれるらしい。
「いやー懐かしいなー、ここもさ! エール覚えてる?」
魔王討伐の旅でシャングリラに寄った時は盗難騒ぎで一悶着あったのが懐かしい。
そういえばここで志津香やナギと会ったのだ。
「あん時はここで一気にパーティの潤いが増したんだよなーっ! 今はやっぱ乳的に足りねーわ」
余計な事を言った長田君はエールに叩き割られた。
エールは長田君を割ったばかりの腕を振り回しつつ、ちらっとリセットを見て謎の美少女探偵、と呟いた。
「あ、あれは忘れてっ!」
慌てるリセットとエールと長田君以外は疑問符を頭に浮かべていた。
「写真を出鱈目じゃーって騒ぐパステルさんにラレラレ石を見せた時は凄かったわ。フルちゃんとお友達じゃなかったら私消されちゃってたかも」
温泉に浸りながら、エールはパセリに改めて礼を言った。
作戦は大成功だった。
「いいのよ、スシヌの為でもあるもの」
「ありがとう、エールちゃん、おばあちゃん」
久しぶりにお風呂に入る時でも眼鏡が外せることに視界はぼんやりしている中、スシヌは感動していた。
「怖い呪いだったよ。もうほとんど慣れちゃってかけてるのが当たり前になってたから……意識を変えられちゃうって感じだったの」
呪いの影響でほとんど違和感もなくなっていたところだったのだが、外せるようになるとやはり四六時中つけているというのは負担だったことがわかる。
「流石は最強のハニーと名高いハニーキングの呪いといったところでござるな。それを解いたパステル殿も流石の腕前でござる」
「うん。呪術ブースター使っても、お母さん以外は解けなかったと思う」
リセットは少し自慢げだった。
「解けなかったらウズメの母上殿に解呪方法を探して貰うところでござった」
「そういえば、かなみさんは元気にしているのかしら?」
「暗殺、情報、裏取引、世界中の裏稼業を取り仕切る母上殿に休みはないでござる。いつもキリっとして……」
そこまで話してから、おずおずと本当の事を話し始めた。
「……今だから言える話でござるが、ウズメ、久しぶりの再会で母上殿にたくさん怒られて泣かれたでござる。ウズメに会った時に溜まった疲労が一気に出たのかそのまま倒れてしまったでござるよ」
「だ、大丈夫だったの?」
「いざという時の事も考えていたようで、仕事は母上殿の部下がこなしていたようでござる。それにしてもあんな母上殿はもう見たくないでござるにゃあ……」
そういえば無事だったのだけ知らせて、魔王討伐までずっと連れまわしていたのだ。
無事だった娘が今度は魔王討伐と聞けば心配するのも無理はない、エールはウズメの力が必要だったとはいえ少し悪い事をしたとしょげた。
「いやいや! そんなことはないでござるよ!?」
そんなエールを見てウズメは声を張り上げる。
「そもそも主君殿に助けて貰ってなかったら東ヘルマンで良くて鉄砲玉、悪ければばれて処刑になってたかもでござる。母上殿も本当に感謝してたでござるよ。是非、直接礼を言いたいと。まだ冒険を続けるならぜひ立ち寄って欲しいでござる」
どこにいるのか、エールは尋ねた。
「世界中に支部があるでござるが、母上殿は今はロックアースにいるでござるよ。おっと、これは内密に。敵も多く、常に命を狙われる方ゆえ」
自由都市ロックアース、聞き覚えのない町の名前だが、自由都市には色々と回りたい場所がある。
ミックスのいるシヴァイツァーや、志津香達がいるであろうカスタム、そして母のいるAL教の総本山・カイズも行きたいと思っている。
エールは次の冒険は自由都市にと思っていたところだったので、会いに行きたい、と答えた。
「なら案内はウズメにお任せあれ、母上殿も喜ぶでござる!」
にょほほと笑って、次なる冒険にエールは思いを巡らせた。
その様子を寂しそうに見つめているのはスシヌである。
自分にかけられた呪いは解けた。
自由都市はゼスとは反対の方向になる。
「スシヌちゃん……」
リセットがその様子を察して声をかけようとしたところで、
「それにしてもエールちゃんが男の子だったらきっとモテモテね」
パセリがエールに声をかけた。
そうだろうか?とエールは首を傾げる。
「だってお友達や家族のために一生懸命で、剣に魔法に世界でも有数に強くて、珍しい神魔法の使い手で、えっちな事も上手でしょ?」
エールは褒められてニコニコとしている。
「ああ、でもいっぱい女の子に言い寄られてランスくんみたいにいろんなところで女の子作っちゃいそうかな? エールちゃんってやっぱりランスくんに似てるもの」
父に似ている、というのは良い意味で使う人、悪い意味で使う人、色んな人がいる。
少なくともパセリは純粋にほめてくれているようなのでエールは悪い気はしなかった。
「お父さんに似るのはどうかなぁ?」
リセットは困ったような顔をしていた。
「エールちゃんが男の子だったら絶対にスシヌとの縁談を勧めてぜひ未来のゼス国王にって思うもの。私は別に女の子でもいいのだけどマジックが固いから」
「おばあちゃん! 何てこと言うの!」
真っ赤になってるスシヌを横目にエールはみんなをじーっと見渡す。
「エールちゃん、どうかしたの?」
見渡した後、男の子に生まれていたら可愛いお姉ちゃんばっかりだからいろいろ大変そう、と言った。
「か、可愛いなんて」
「主君殿はそういうことさらっと言うでござるな。本当に男じゃなくて良かったような残念なような」
「みんな、エールちゃんは女の子なの! 失礼でしょ!」
その直後、自分の控えめなサイズの胸に手を当てて深根みたいになれるといいね、とエールはしんみりとつぶやいた。
長田君ではないが、いまの光景には乳成分が足りない。
「エールちゃんも失礼なこと言わないの!」
「主君はなんか胸の大きさすごい気にしてるでござるな」
「小さい胸にもいいところがいっぱいあるのに。私の夫、7人いたけどみんな愛してくれたわよ?」
エールはリセットの小さい体をじーっと見る。
「エールちゃん、今お姉ちゃんはもう伸びないかなって思ってない?」
そう口をとがらせる。
「こほん。今までの私はお父さんが忘れないようにって小さかっただけなんだから、これから大きくなるはずなの。身長だってエールちゃんより大きくなって、スタイルだっておばあちゃんやナギちゃんみたいになるんだからね」
確かにモダンは長田君にクリティカルヒットの抜群のスタイルの持ち主だ。
だが、リセットがそうなるのかといえば全く想像できないことだった。
「でもお姉ちゃんが大きくなっちゃったら、パパとかお兄ちゃんはすごく心配するだろうね」
「パステルさんもね」
ボクも心配だからリセットはそのままでいいよ、とエールが言うと
「絶対、絶対育つのー!」
姉の可愛い声が温泉に響き渡る。
エール達は楽しそうに笑い合った。