DMMORPG,仮想世界で現実にいるかの如く遊べる体感型ゲーム。数多あるDMMORPGの中でユーザーの自由度とその拡張性の幅広さでナンバーワンの人気を博したタイトル
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発売から十二年経った現在、ユグドラシルは様々な人達から親しまれ絶大な人気を誇ったこの世界の、十二年に及ぶ物語に終止符が打たれようとしていた
「もう…終わりか」
そう小さく呟いたのはナザリック地下大墳墓にあるギルド『アインズ・ウール・ゴウン』の長であるモモンガ
彼はアンデッドの最高位種である死の支配者オーバーロードだ。かつてのギルドメンバーが次々にこのナザリックから引退していく中、彼は最後までこの『ユグドラシル』に留まり、拠点たるナザリック地下大墳墓の維持のために奮闘して来た
つい先程までいたアインズ・ウール・ゴウンのメンバーの一人
ヘロヘロさんがログアウトしていくのを見送ったモモンガは、また一人となり、虚しさを覚えていた
「あの頃は楽しかったな。ウルベルトさんとたっちさんが毎回喧嘩していたのが昨日のように感じる」
モモンガは仲間達との思い出に浸り、胸に空いた決して深くはない穴を楽しい思い出や感情で埋めようとするも、一向にその穴が埋まることは無かった
「…クソッ!!」
ダンッ!と思わず握った手をテーブルに叩きつけた
自分でもどうしようもないことだと、仕方がないことだと分かっていても、彼は溢れ出る激情を抑えることは出来なかった
「ふざけるな!ここはみんなで作り上げたナザリック地下大墳墓だぞ!?なんでみんなそんな簡単に切り捨てることができるんだ!!」
恨み言を言ってしまうのは自然な流れであろう。彼は仲間達が次々と去って行く中、一人でナザリックを守って来たのだ。モモンガはかつての仲間達と汗水流し苦労して作り上げたギルド武器を見上げた。これを作るために有給取ったり家族と揉めたりして参加してくれたメンバーもいたほどの思い出が詰まっているアインズ・ウール・ゴウンのギルド武器【スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウン】を手に取り部屋を出る
途中見かけたセバスや戦闘メイドのプレアデス達を最後に働かそうかと思い一緒に連れて行くことにした
「玉座の間で待ってますよ…弥彦さん」
喋ることのできないNPCの誰も反応することなく最後まで残った友への言葉を残して玉座の間へと歩を進めた
「さてと…これは一体どういう状況だ?」
ユグドラシルでのオンラインサービスが本日終了した……筈だったのだが、何故か終了していない
その事に頭を抱えるオレンジ色の髪をした青年。彼は何処からどう見ても只の人間にしか見えないが、実際は“忍者”の上位種にあたる“六道仙人”である弥彦だった
装備はゲームをやめた時のままで、彼のトレードマークである赤い雲をかたどった黒い外套が妙に目立つ。そして彼の顔には無数の杭がピアス感覚でつけられている為、見ているだけで痛そうだ
それに彼の目は紫色の波紋模様をした目が特徴だが、それはなんとワールドアイテムでありその特異な瞳はユグドラシルのコラボイベントをクリアした証で運営が彼に与えた。これのせいで彼は人間種でありながら人間種のプレイヤー達に異業種としてハブられ襲われていたが彼はこれを苦も無く撃退し続けた。良い加減しつこいと感じていたところをモモンガとたっちさんが助けアインズ・ウール・ゴウンに勧誘したという過去がある
そして、彼は最後ということで色々なアイテムを見たり買ったりしていたとこ、もう終了まで時間がなく同じギルドに所属しギルド長であるモモンガに会うために玉座に間に行こうとした所、意識が途絶え目を覚ましてみると、見知らぬ森の中にいた
この時点でおかしいのだが何よりおかしいのが風や匂いを肌で感じることができた。手を握りしめたり開いたりしても肌の質感なども感じ取れた。何れもユグドラシルではあり得ないことだ。何故ならそのような感覚はユグドラシルには無かったから
運営が終了を延期したのか?とも考えたがあれだけ終わると言っていたからそれはあり得ないと結論付ける
試しに地面に生えた草を口に含む
案の定、苦味を感じた
ここで弥彦の脳裏には自分でも馬鹿馬鹿しいと思う考えだった
(…この身体ごと異世界に転移したのか?)
考えにふけっていると茂みが動く音がして、そちらから飛び出して来たものを反射的に腕でカウンターを入れ攻撃した
(…何だ?)
攻撃したのは鋭い歯を持ったネズミのような動物でソコソコの大きさの個体だったが弥彦が感じた違和感はそれではない
「モンスターを倒したのにドロップアイテムが落ちない」
ユグドラシルではモンスターを倒すとモンスターのレベルに応じてアイテムがドロップし霧散して消えるのだがそのモンスターは依然として留まり続けている
「…消えないとこを見ると、やはり異世界に転移したという事で間違いはないか」
ここが異世界だと推測した弥彦は、同じく転移しているかもしれない仲間を探す為に異世界を少し冒険する事になった