死の支配者と六道と   作:バックス

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第4話 虐殺と戦士長

騎士の1人は戦慄した。任務ではこの村を襲撃する際に、四方から村人を追いたてて、広場の中心に集めた。1人残さず虐殺し逃走者を出さないためだ

 

今回の作戦は重要な意味を持つため何度も訓練したし同じように村を3つほど襲った。あとは何時も通り、集めた村人を適当に殺して終わり。あとは任務での結果が出るのを待つだけだった(・・・)

 

 

そう、本来ならそうなるはずだった(・・・)のだ

 

ほんの数分の間に起きた出来事は、今まで自分が生きてきた人生で、どんなことよりも鮮明に思い出せる

 

兵士達の一瞬の隙をつき村から逃げようとした数人の村人を、後ろから斬りつけようとした仲間の一人が、まるでボロ雑巾のように空高く吹き飛び、ゴミのように地面に叩きつけられた

 

その仲間は既に原型を留めていない。巨大な盾と特殊な剣を持った巨体なスケルトンによってグシャグシャのミンチに変えられた。生きていないのは目に見えて明らかだった

 

そしてまだ悲劇は終わらない。有り得ない光景を作り出したのは、まだ1人いたのだ

 

赤い雲をかたどった漆黒の服に身を包み、顔には妙な杭と額当てをつけていて、そして…何より目を引いたのは奴の目だ。あの目、紫色の波紋が浮かぶ目に睨まれると体が恐怖で支配され動くことさえできない!

 

「う、うわぁぁぁあ!!」

 

仲間の一人が悲鳴を上げながら逃げ出す

 

しかし、それに合わせて逃げるものは、一人もいない

 

何故なら

 

「手を煩わせるな【万象天引】」

 

その男の発言とともに逃げ出した仲間はそいつのかざした掌に吸い寄せられ先が尖った黒い棒に刺され、地面に倒れその命が散る

 

最初は斬りかかっていった仲間がいたが奴はただ手をかざしただけで仲間達を吹き飛ばした。今とは全く違う現象だった

 

勝ち目はないと知り、多くの仲間が逃げ出そうとしたが、その度に、謎の吸い寄せる力が発動し黒い棒に刺され全員が地面に倒れていった。奴の武器は的確に心臓を貫いていたのだろう。刺された奴は苦しまずに死に絶えた

 

攻撃しても吹き飛ばされ、逃げようとしても吸い寄せられ殺される

 

仲間達は抵抗を止めいっそのこと命乞いをし助けて貰おうとした。他のやつも一緒のことを思っていた

 

「き、貴様らぁ!あの男を抑えよ!!」

 

誰もが皆で生き残ることを考えているときに、自分だけでも助かろうという魂胆が見え見えの耳障りな声で、部下に命令を下す男がいた

 

ベリュース隊長だ

 

彼は重大な作戦よりも、己の下らない欲望で村の娘に襲いかかり、父親と揉めあって自分の身が危ないと部下に助けを求め、引き離してみれば八つ当たりで何度も父親に剣を突き刺す屑だ

 

国ではある程度の資産家であり、この部隊にも自らに箔を付けるために参加した正真正銘のクソッタレだ。国のために働くなんて一欠片も持ち合わせていない

 

 

「俺は、こんなところで死んでいい人間じゃあない!おまえら、時間を稼げ!俺の盾になるんだぁ!!何してる!?早くせんかぁ!!」

 

 

その割れたような必死な叫び声にその場の者たちの視線を集めた

 

…無論、押さえろと命じた対象の視線も

 

 

その男はベリュース隊長にゆっくりと確実に近付いていく

 

 

「ひぃぃぃ!く、来るな!まま、待て!?お前、冒険者か!?誰かに雇われたんだ!そ、そうだ!金をやる!いくら欲しい?200金貨!いや、500金貨だぁ!」

 

男はピタリとベリュース隊長の前で足を止めた

 

「…金か」

 

「そ、そうだ!見逃してくれれば金をやる!なんなら望んだ金額を出そう!」

 

だが、現実はそれほど甘くはないということを我々は身をもって知る羽目になる

 

瞬間、ベリュース隊長の四肢が一瞬のうちに斬り飛ばされ、頭と胴体のみになった。四肢を切断したのは先ほど兵士達が刺されていた棒だが形状が棒から鋭い剣のようになっていた。アレで四肢を切断したのだろう。ベリュース隊長が地面に落ちる前に男はベリュース隊長の頭を持ち顔の前へと持ち上げた

 

「おぎゃあぁあぁぁあッ!!?」

 

ベリュース隊長の絶叫により希望は打ち砕かれ、その場は再び恐怖と絶望に支配された

 

「1つ聞くが…命乞いをした村人達に耳を傾けたか?…その様子だと無いに等しいか?」

 

「あ、アガが」

 

「お前達のような屑どもの命乞いと尊き村人達の命乞いが同等だと思うな」

 

頭を掴まれていたベリュース隊長は奴が何かを引き抜く動作をすると動かなくなり死んだのが分かった

 

「…国の資産家か。大した情報では無いな」

 

な、何故それを知っている!?ベリュース隊長の事は国のものしか知らない

 

「さて、まだ居るようだな。逃げられると思うな」

 

その言葉を最後に、騎士は男に頭を掴まれ意識は闇の中へと消えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、こんなものか?」

 

弥彦が去り、村の周辺に展開していた鎧の騎士たちを皆殺しにしたモモンガー改めアインズは、実験を終えて、弥彦のもとに向かっていた。弥彦が去った後、モモンガはエンリ達に自分はアインズ・ウール・ゴウンと名乗った。これはこの世界に自分たち同じユグドラシルのプレイヤーがいないか確認する為、この名を広げようとした結果だ

 

「それにしても、本当に弱かったな。まぁ、お陰で魔法やその他の実験は円滑に進んだから良しとしよう。アルベド、急ぎ弥彦さんのもとへ向かうぞ」

 

「かしこまりました」

 

 

二人は〈飛行(フライ)〉の魔法を唱え、空に浮かび上がる

 

そしてそのまま村の中央に向かい、そこに集まっている村人たちと待機している死の騎士、そしてその場でただ一人立っている黒い外套を纏う男、弥彦の姿を確認した

 

そこで、弥彦に〈伝言(メッセージ)〉の魔法を発動した

 

 

〈お疲れ様です、弥彦さん〉

 

〈…これは伝言、モモンガか?〉

 

〈えぇ。あっ!あの騎士達残してくれましたか?〉

 

〈すまない、1人残らず始末した。数人から魂を引き抜き情報は得たが特に重要なものはなかった。精々下っ端だ〉

 

〈えっ!?魂を引き抜いた!?〉

 

〈…自分の目の能力は後々確認しようとした事だからな。今回はちょうど良かったが後で情報を共有しよう〉

 

〈そ、そうしましょう(魂引き抜くとかこっわ!!)。あ、それと俺、世界征服するに当たって、名前を、アインズ・ウール・ゴウンに変えたいんですけど、大丈夫ですか?〉

 

〈…世界征服だと?聞いてないんだが?〉

 

〈…後々お話しします〉

 

〈まぁ、いい。ひとまず置いておこう。それを名乗るのはお前以外にはいないだろう。反対はしない〉

 

〈ありがとうございます。ではそんな感じで〉

 

「我が友よ、無事かな?」

 

突如、空から軽い声が響く

 

アインズはアルベドとともに、ゆっくりと地上に降り立った

 

弥彦はてっきり歩いてくるものだと思っていたので空から来た時は少し驚いていた。表情は少ししか変化しないため分かりづらいが

 

その後アインズは村長達と話し合い周辺の国々やこの世界での知識を教えてもらった

 

アインズが村長の話を全て聞き終わる頃には、既に空には夕日が浮かんでいた

 

途中、アウラとマーレが率いてきた後詰めの部隊が村を襲撃しようとして慌てて止めさせたこと以外は特に何事もなく終わった

 

 

 

 

 

 

 

 

弥彦とアルベドはアインズが村長達と話をしている間、先ほどのことについて話していた

 

「弥彦様、先ほどは申し訳ありませんでした」

 

「…アルベド」

 

「はっ!」

 

アルベドは先ほど弥彦が騎士達を蹂躙する為、村に行く前に弥彦の怒りを買ってしまったことを謝罪していた

 

「お前には姉のニグレドと妹のルベドがいたな」

 

「はい?それがどうかなさいましたか?」

 

アルベドは不思議に思った。何故今そのようなことを聞くのかと

 

「…俺には妹が2人いたんだ」

 

「弥彦様の妹君ですか?」

 

「…あぁ

 

 

先日亡くなったんだ」

 

「!?」

 

至高の方々のご家族のことはあまり知らなかったアルベド。それは他の守護者達やメイド達も知らぬ事だろう。その御家族が亡くなったと話し始める弥彦様の顔は悲しみであふれているようだった

 

「さっき助けた娘達がいただろう?俺の亡くなった妹達と瓜二つでな。つい重ねてしまい勝手に体が動いていたんだ」

 

実際に弥彦のリアルでは妹が2人とも亡くなっている。死因は殺人だった。すぐ病院に駆けつけた弥彦は変わり果てた姿をした妹達に絶望し泣き叫んだ過去がある

 

エンリ達を見つけた時、弥彦は妹達と瓜二つの姿に戸惑いわ感じたがなんとしても守らねば!と表情などには出さず救った

 

そこにアルベドが排除するなどと言った為、弥彦はアルベドに対して怒った

 

「で、では私は、な、なんということを!弥彦様の妹君達を侮辱してしまっ!?申し訳ありません!!この失態はこの命で償います!!」

 

「…しないでいい」

 

弥彦は己の失態で命を断とうと首に手をやるアルベドを止める

 

「お前は知らなかったんだ。それに誰にだって間違えるんだ。この俺でも間違える。アインズでさえもだ」

 

「アインズ様も…」

 

「そうだ…次からは無いようにな」

 

「っはい!」

 

アルベドにそう言い聞かせ広場に戻ろうとしたらアインズがこっちに来た

 

「ここにいたかアルベド。弥彦さんも。もう、ここですべきことは終わった。撤収しましょう、弥彦さん」

 

「…そうだな。一旦ナザリックに…ん?」

 

弥彦は村のはずれから二十人ほどの騎兵たちが隊列を組み、広場へと進入してくるのを見た。その装備に統一性はなく、まとまりのないものだった

 

先ほどの騎士達の別働隊だろうかと警戒を強める弥彦

 

アインズたちの前で見事な整列をすると、その中からリーダーと思われるガタイの大きい人物が名乗り出てきた

 

「私は、リ・エスティーゼ王国、王国戦士長ガゼフ・ストロノーフ!この近隣を荒らし回っている武装集団を討伐するために、王の御命令を受け、村々を回っているものである!」

 

「王国戦士長…か」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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