死の支配者と六道と   作:バックス

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第5話 戦士長と鏖殺準備

ガタイの良い男が名乗ると周りからざわざわ…ざわざわ…と村人達のざわめきが起き、村長が「王国戦士長…」と呟いた

 

「…あの人はどのような人物で?」

 

「この村に来る商人達の話では、昔行われた王国の御前試合で優勝を果たした人物で、王直属の精鋭騎士達を指揮する方だとか」

 

「目の前の人物がそれだと?」

 

「いえ、なにぶん私もその話を噂話程度でしか聞いたことがないもので…」

 

モモンガが村長と話している間、俺はくだんの騎士達の鎧の紋章に目を向けていた。ガゼフとか言う男が連れている騎士達の紋章はさっきまで殺していた騎士達の紋章と酷似している。その為、俺は警戒レベルを一段階引き上げた。目線でモモンガにも注意を促す

 

「さて、貴方がこの村の村長だな? 横にいるのは一体誰なのか教えてもらいたい」

 

モモンガを暫く凝視していた戦士長の視線が村長へと向けられる

 

「それには及びません。どうも、はじめまして王国戦士長さん。私の名はアインズ・ウール・ゴウン。しがない魔法詠唱者です。そして私の隣に立って居るのは友人、弥彦です」

 

「弥彦だ、後ろに控えている者は部下のアルべドだ。この村が襲われているの見かけて助けに来た者だ」

 

自己紹介すると、それに対して戦士長はは即座に馬から飛び降りる。そして同じ大地に立った戦士長は重々しく頭を下げる

 

「この村を救っていただき、感謝の言葉も無い」

 

驚いたな。普通なら俺たちのような、いかにも怪しい奴らなら疑ってもおかしくはない筈だ。だが「王国戦士長」という地位がある人間がこうも真摯に頭を下げてお礼を述べるとはな

 

…どうやら悪い人間ではないらしい。警戒してるのがバカバカしくなるな

 

ガゼフとモモンガが話している間、俺はもう一つ気になることを考えていた。あの死の騎士が未だに消えない事だ。ユグドラシルでは役目を果たすか、死ぬか、時間制で消えるのだが奴は一向に消える気配がない

 

もし時間制限が無くなったのなら、そのままナザリックの戦力になるのか。なら俺のあの力も多少変化していると見て間違いないと思ってると俺の方にも話を振ってきた

 

「すまない。弥彦殿、その目は?」

 

「…これか?これは生まれつきでな。気になるか?」

 

「あぁ。ゴウン殿にも話しは聞いたのだが」

 

「毛色の違う相手ほど気味が悪い…か?」

 

その言葉に戦士長とその部下達は皆、顔を顰め気まずそうな顔をした。

 

まあ嘘はついてない。実際、この目を手にした時から周りからは気味悪がられた

 

「…いや、失礼した。不快にさせてしまったのなら謝罪しよう」

 

「謝罪はいらん」

 

こういう自分の失態を素直に認める者は貴重だ。個人的に敵として処理したくはないな

 

「ストロノーフ隊長!!」

 

考えにふけっていると突如ガゼフの部下の兵士が広場に駆け込んできた。兵士は余程慌てていたのか、息が大きく乱れている

 

そして、兵士は大声で緊急事態が起こったことを告げた

 

 

「周囲に複数の人影あり!村を包囲するような陣形で、接近しつつあります!」

 

「なに?」

 

((また厄介事か…))

 

俺もモモンガも考えていることは同じだと思いたい

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なるほど…確かにいるな」

 

この村から見える範囲に、魔法詠唱者と思われる者たちが三人。村の包囲網を狭めるようにゆっくりと近付いてきていた

その三人の傍らには、それぞれ一体ずつ、魔法で召喚されたであろう下位天使たちが付き従ように浮いていた

 

村全体が緊張に包まれるなか、それを全く意に介さないものが2人

 

「弥彦さん。あれは確か」

 

炎の上位天使(アークエンジェル・フレイム)で間違い無いだろうな。現に視界にいるしな」

 

「やっぱり、ユグドラシルと何かしらの関係があるんでしょうか?…それにしても、なんであんな弱い天使を連れているんだ?」

 

「先程、始末した騎士達を見ているとこの世界のレベルを考えた場合、あれでも結構強い部類に入るんじゃ無いか?」

 

「いや、まさかぁ」

 

ガゼフの部下達はこの緊張した場面でなぜそのように落ち着けるのか怪訝な視線を向ける。この妙な魔法詠唱者と忍者らしき者たちはどうしてそんな態度でいられるのか

 

モモンガがガゼフに質問を投げ掛ける

 

「戦士長殿、彼らは一体何者で、狙いはなんなのでしょうか?不謹慎ですがこの村に、それほどの価値があるようには思えません」

 

「…確かに、この村には襲うほどの価値はない。ゴウン殿にも心当たりはない。とすれば、狙いは…恐らく、私だ」

 

「成る程…この村は単なる囮であり餌でもある。本当の狙いは戦士長殿ということですか」

 

「本当に困ったものだ…まさか、この村への派遣自体が私を陥れる罠だったとはな…さて、これだけの魔法詠唱者を揃えることができ、尚且つあの天使まで召喚しているとなれば……恐らくスレイン法国、その中でも神官長直轄の特殊工作部隊、六色聖典のひとつだろう」

 

「スレイン法国?ではこの村を襲った騎士たちも…」

 

「ああ、恐らくスレイン法国の手の者だろうな」

 

話を聞いていた弥彦は鴨がネギを背負って歩いてきたと感じた。あの騎士達の魂ではあまり情報を得られなかった。そのスレイン法国でも有名な部隊ならば、より有益な情報が得られるだろう

 

そんなことを考えているとガゼフがこちらに交渉を持ちかけてきた

 

「ゴウン殿、良ければ雇われないか?報酬は望まれる額を約束しよう」

 

「ふむ…」

 

〈どうしますか?弥彦さん?〉

 

〈情報は欲しいところではあるがな。此処は一旦退いといたほうがいいだろう〉

 

〈理由はなんです?〉

 

〈王国戦士長とやらの実力が知りたくてな。お前もそうではないか?〉

 

〈えぇ。彼はこの世界ではなかなか強い人みたいなのでこの世界の人がどれだけ強いのか確認したいです〉

 

〈ならその方向で行こう〉

 

「申し訳ありませんが、お断りさせていただきます。我々は旅の者ですので」

 

「そうか……ならば王国の法を用いる事も考えざるを得ないが?」

 

そう戦士長が言うと周りにいたガゼフの部下達は俺たちを囲むように配置した

 

「それはやめておいた方が良いでしょう、戦士長殿」

 

「その手段をとるなら俺達も抵抗せざるを得なくなる。正確に言えば…死体の山ができるぞ?」

 

「…怖いな。そうなれば我々が敵と会する前に全滅か…」

 

…やっぱりこの戦士長は警戒したほうがいいな。仮に「もしも」敵対する事になったら真っ先に警戒すべき相手かもしれないな

 

モモンガも戦士長に「御冗談を…」と言っているがモモンガも同じことを考えてるだろう

 

「…戦士長殿、行く前にこれをお持ちください」

 

モモンガが渡したアイテムって500円ガチャのハズレアイテム。あれの効果は確か…成程そういうことか、考えたなモモンガ。これなら邪魔もせずに見れるし仮に奴が危なくなっても大丈夫だな

 

「君からの品だ。ありがたく頂戴しよう」

 

 

そして戦士長は部隊を引き連れて出立した

 

この村を巻き込まないよう、村人達を守る為、囮の役目も同時に果たす過酷な任務に赴いた

 

 

さて…おうさつする準備を始めようか

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「俺は王国戦士長だ!この国を愛し、守護するもの!貴様らのような国を汚す者たちに!負けるわけにはいかんのだあぁぁぁあッ!!」

 

彼の魂の叫びは、一時的にとはいえ、間近まで迫っていた天使たちを後退させる気迫が籠っていた

 

しかし、それでこの危機的状況が覆るわけではない

 

「ハッ!そんな夢物語を語ってどうする、ガゼフ・ストロノーフ」

 

敵の指揮官の冷ややかな声が掛かった。その視線は、既に膝をつき剣を支えにしている満身創痍の標的に向けられていた

 

スレイン法国、神官長直轄特殊工作部隊、陽光聖典隊長、ニグン・グリッド・ルーインは下らない理想をのたまう敵に、もはや哀れみさえ感じていた

 

ここまで来ればあとはガゼフ・ストロノーフの息の根を止め、奴が立ち入った村を滅ぼして本国へと帰還する。

 

これで任務完了だ。終わってみれば実に呆気ない

 

「せいぜいたっぷりと後悔して死ぬがいい、ガゼフ・ストロノーフ。そして喜べ。お前を殺した後に、あの村の者たちも皆殺しにする手筈だ。全員仲良く神のもとへと送ってやる。だが、神が貴様らのような愚か者をも受け入れてくださるというのであればの話だがなぁ」

 

「くっ…くっくく…」

 

 

「…何を笑っている。何がおかしい?ハハッ、この期に及んで笑うとは狂ったか? ガゼフ・ストロノーフ」

 

「狂ってなど、いない。お前達の死に様を思ったら滑稽でな…あの村には俺より強い御仁がいる」

 

「ふん、そんなハッタリが何になるというのだ。見苦しいぞ?ガゼフ・ストロノーフ」

 

この近隣にそのようなものがいるはずはない。可能性としては『青の薔薇』と言う冒険者がいるが、奴らは今は王都にいるという連絡を受けている。ならば奴の言うことはハッタリだろう。何も気にすることはない。何も問題はない

 

「天使たちよ、ガゼフ・ストロノーフを殺せ」

 

部下たちが召喚した天使をガゼフに突撃させようとした、次の瞬間だった

 

 

その場にいたガゼフが消え、先程までガゼフがいた場所に、三つの異様な人影が立っていた

 

 

 

 

 

 

 

――そろそろ交代だな。

 

――良くやった

 

 

そんな声が聞こえたと思ったときには、ガゼフは何処かの建物のなかに、横たえるような体勢でいた

 

辺りを見回すと、瀕死の自分の部下たちと、驚いたようにこちらを見詰める村人たちの姿があった

 

「……こ、こは…?」

 

「ここは、村の倉庫です、戦士長殿。アインズ様が魔法でこの倉庫全体に防御を張られています」

 

その声に答えたのは、この村の村長だった

 

「……ゴウン殿たちは…」

 

「そ、それが、戦士長たちと入れ替わるように、姿が掻き消えまして…弥彦様はどこかへ行きました」

 

も、もしや!?

 

ガゼフは戦いに行く前、アインズから貰った彫刻を取り出す。取り出した瞬間、それは瞬く間に崩れ去り、淡い光となって消えた

 

「…そう、か…」

 

「それと気になることがありまして」

 

「気に…なること?」

 

「はい、先程から小規模な地震(・・・・・・)が発生しているのです。地鳴りとも言いますか…幸い危険はないのですが心当たりはありませんか?」

 

「さ…さぁ…な」

 

そこで、戦士長の意識は途絶えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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