~Fate/grand order epic of Staynight ~ 特異点SN   作:型月でもに

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第1話

 ──どんな物語もいつかは終わる。

 

 人生という物語の終演を目前に、男の脳裏をこの言葉が駆け抜けた。

 振り返ってみれば、それなりに良い人生だったと思う。

 

 両親の愛を受け、友を持ち、青春を駆け抜けた。

 愛する人と寄り添い、子供をもうけた。

 穏やかな日常、その日々を忘れることは年老いてもなかった。

 この人生に点を付けるならば、合格点、という所だろう。

 

 最期の別れも満足行くまで済ませることが出来たのは幸運としか言いようがない。

 

 〝心の贅肉〝まで満たしたのだ。一体これ以上何を望むと言う?

 

 強いて言うならば、妻が〝彼女〝程の完璧美女では無かったくらいだろうか。

 

 誰もいない今なら言えると男はくつくつと笑った。

 

 ここは終着点。生と死の狭間。

 いずれ自分という存在も、風のように消えていく。これが最後の時間というわけだ。

 

 もしも自分が普通の人間ではなく、テレビや映画の世界のヒーローのような、英雄だったならば、もしかすると〝座〝に招かれてこれからも色んな世界を見れたかも知れない。

 

 そんな空想に男は思いを馳せた。

 

 〝赤い外套の男〝のように自らの選択を後悔しながらも前へ進むのだろうか

 〝蒼き槍兵〝のように自らの赴くままに進めるのだろうか

 

 そんな空想に。

 

「あ──」

 

 後悔、と言うよりかは思い残しだろうか。

 今になって出てきたと男は呟いた。

 そうだ、〝彼と彼女〝のものがたりは他紙かに尊いものだったが──私の心の奥底ではそうは想っていなかった筈だ、と。

 

 それは一言で言うと、まるで子供のような我が儘なのだが、最後に本音をぶちまけた所でバチも当たりはしないだろう。

 

 そうして一つ大きく息を吸い込むと、男は万感の思いを込めて吐き出した。

 

 

「それが例え幸せな結末だとしても、終わってほしくない。俺は彼らの行く末をもっと──どこまでも見ていたいんだ」

 

 そうして彼は、どんな物語もいつかは終わると言うほんの少し前に見つけた真理を否定した。

 

 

~Fate/grand order epic of Staynight~ 特異点SN

 

 

 

 

 

 

─────

 

「──起きてください、先輩」

 

「んん……おはよう、マシュ。ちょっと早くない?」

 

「おはようございます、先輩。はい、いつもより30分ほど早い起床です。私ももう少し先輩の寝顔を──いえ、なんでもありません。

 しっかりと休んでいただきたいのは山々なのですが、ダヴィンチちゃんから緊急の召集がかかりまして」

 

「ダヴィンチちゃん? ロマンじゃなくて? 何だか嫌な予感がする……ってマシュ!? 何で俺のベッドに!?」

 

「今頃気付かれたんですか!? 先輩!」

 

 

 

 

 

 

「いやー、おはよう! 藤丸君! マシュ君! 今朝も良い目覚めだったかね!?」

 

「うん、心臓がまだバクバクしてるけど」

 

「せ、先輩……申し訳ありません」

 

 朝からこんなにドキドキしてから身が持ちそうもないと胸に手をやる。

 寝室からブリーフィングルームまでそこそこの距離があったはずなのだが、鼓動が全く収まらない。

 

 爽やかな笑顔を浮かべるダヴィンチちゃんことレオナルド・ダヴィンチを前に、藤丸立香は凡そ人類の行く末を担うマスターのそれとは思えないげっそりとした表情で機械的に頷いた。

 

 ──疲労は溜まったけど嘘は言っていない……うん、嘘は言ってないな

 

 隣で居心地悪そうにモジモジしているいつも通りの眼鏡を掛けた美少女、マシュ・キリエライトをチラリと横目に見て藤丸はもう一度うんうんと頷いた。

 

 多少耐性はついたかも知れないが、朝起きた瞬間マシュのような美少女の顔が目の前にあるというのは、年頃の男としては心臓に悪い。

 更にその……言ってしまえば豊満と言わざるをえないおっぱいが強調される位置にあれば尚更だ。

 

 しかしながら、本人には絶対に言えないが役得であることは紛れもない事実であり、爽やかな目覚めであることも否定しがたい。故に、自らの言葉は嘘ではないのだ。

 

「ふーん、まあ健やかな青少年そのものの顔をしてる立香君はいずれ追い付いてくるとして、だ。

 今回の緊急召集はいつもとは一味違うのさ。ネロとエリザベートのゲリラライブを阻止しろとか、月刊カルデアの締切り間近なのにアンデルセンとシェイクスピアが音信不通とか、そんなちゃちなもんじゃない──特異点が発見された」

 

「特異点ですか!?」

 

 突如として真剣な表情に切り替わったダヴィンチにマシュが驚きの声を上げる。

 今まで彼らが解決してきた特異点は6つ。

 ここまでくるのに一体どれだけの苦難を乗り越えてきたことか……それを思えばマシュの反応は当然と言えた。

 

「ああ、けどそこまで大きな反応じゃない。例えるなら新宿とかSE.RA.PHとか、あんな感じの微弱なもんさ」

 

「亜種特異点、と言うことですか」

 

 マシュの答えをダヴィンチは首肯を以て肯定する。

 

「その通り、そして君達には当然攻略に向かってもらう訳だが……少し気になる点がある」

 

ダヴィンチがすっと腕を横に切ると、彼女の後ろにバーチャルの地図が浮かび上がる。

 それは藤丸とマシュ、そして英雄達が駆け抜けてきた道筋。特異点の記録である。

 この中に赤く光る小さな点が一つ。

 

「これは──」

 

「特異点F……俺達の始まりの地と良く似ている?」

 

「先輩? いつの間に──」

 

「そう言うことだ立香君。この特異点は冬木に酷似している……いやあ、ほぼ同じと言って良い。こんなことはこの天才、レオナルド・ダヴィンチを以てしても説明がつかない」

 

 いつの間にか会話に復帰した藤丸の言葉にダヴィンチが同意する。

 彼等の長い旅──藤丸がマスターに、マシュがデミ・サーヴァントに、グランドオーダーの始まり。

 

 特異点Fと呼ばれる、今も尚燃え盛るその地は藤丸やマシュの心に深い爪痕を残している。

 

 

「行こう。どっちにしろ特異点を放っておく訳にはいかない」

 

「先輩──はい! 分かりました! 直ぐにレイシフトの準備を!!」

 

 しかし、今の藤丸達やマシュは当時とは桁違いに成長している。

 一歩を踏み出すことさえ恐ろしかったあの時とは全く違う。

 直ぐ様決断を下し準備に取りかかろうと──

 

「ああ、ちょいまちちょいまち。そう簡単にいかないから緊急なのさ」

 

 機先を制すようにその動きをダヴィンチによって止められた。

 

「なあ君達、なんでこんなときにロマニが音沙汰もないのか不思議には思わないかい? あの小心者のロマニ・アーキマンだぜ? いつもならバカみたいに取り乱して私の説明の邪魔をしてるところだとは思わないかい?」

 

「ああ、そういえば」

 

「それは確かにそうですね……寝坊でしょうか?」

 

「私が言えたことじゃないけどマシュのロマニに対する評価が心配になるね……残念ながらハズレだ。ああ見えてロマニは優秀だ。君達の前で取り乱すときも、実は基本ヤバイことを全て片付けてから出てきてる。

 そのロマニがいないってことは彼の頭脳を以てなお解決しきれない難題に取りかかっているからなのさ」 

 

 ここにきて藤丸とマシュは現状この施設のトップ──完全に名ばかりだが──であるロマニ・アーキマンの存在を思い出した。

 確かに普段ならやたらめったら焦り倒す彼が顔すら見せないとは妙な話である。

 残念な方向に納得する二人を横目に、ダヴィンチはこほん、と咳払いをすると指を二本立てた。

 

「問題は2つ。まず一つ目が、この特異点が発見されてから数名のサーヴァントが霊基の不調を訴えている。とてもじゃないがこのメンバーは今回のレイシフトには参戦できない」

 

「不調……そのメンバーは?」

 

「アルトリア、オルタでもリリィでもなくセイバーのアルトリア、エミヤ、クー・フーリン、メドゥーサ、メディア、ヘラクレス、佐々木小次郎、呪腕のハサン、それとまあ……彼らは不調という訳じゃないんだが、英雄王ギルガメッシュは全員今回の件への介入を拒否した。比較的協力的な子供の方もだ」

 

「アルトリアさんにエミヤ先輩──古株のメンバーの方々ですね。ギルガメッシュさんは珍しいことでもないですが」

 

「ああ、理由は不明。そしてもう一つ、こっちが割りと致命的なんだが──」

 

「……? どうしたのさダヴィンチちゃんらしくもない」

 

 指を一つ折ったダヴィンチが言い淀む。

 良くも悪くもさっぱりしすぎているほどさっぱりしている彼女にしては珍しい光景に思わず藤丸が疑問を呈する。

 

 それを受けてダヴィンチは尚言いづらそうにして口を開いた。

 

「今回の特異点、きっちり補給点を確保してもこちらから送り込めるサーヴァントの数が随分と限られそうなんだ……普段ならマシュを含めれば6人のサーヴァントを送り込めたんだろう?

 けど今回は交代くらいは好きに出来そうだけれども、一度に連れていけるのはマシュとあともう1人が限度だ。さあ、立香君、君はこの難題をどう乗り越える?」

 

 

 

 

 

 

─────

 

「大丈夫かセイバー!?」

 

「ええ、大丈夫ですシロウ! 貴方はリンの側を離れないで!」

 

「凛! これでは埒があかん! 魔力を回せるか!?」

 

「ええい、仕方ない! 持ってきなさいアーチャー!」

 

 第5次聖杯戦争が勃発してから数日、セイバー、アルトリア・ペンドラゴンを召喚した衛宮士郎は窮地に追い込まれていた。

 

 彼等の周りを覆うは黒き英霊達、まるで影のように存在感のないそれらは夜深く静まり返った深山町に音もなく現れる。

 明らかな異常と、市民への被害を危惧した遠坂凛と共に調査に出た士郎であったが、現状はとても良いとは言えないものである。

 

「やっぱりキャスターの使い魔でもない、単体毎に力がありすぎる……!」

 

「ああ、それにこいつらは明らかに一人一人が別の個体だ。キャスターの兵隊とは根本が異なる」

 

 凛がガンドで牽制して足止めした敵を、赤い外套をひらめかせたアーチャー、エミヤが双刀で切り伏せる。

 だが、キリがない。物量によって状況は徐々に悪くなっていた。

 

「くっ……私の宝具さえ使えれば……!」

 

 本来ならばこの状況を打開できる切り札を持っているアルトリアが苦々しく唇を噛む。

 その思いが不可能だと理解しているが故に。

 

 魔力も足りなければ、場所も悪い。この住宅街で聖剣を解き放てる訳もない。

 なら次はどうする? 焦りが感情を支配し始めたその時、一番最初に異変に気付いたのは魔術師としては最も未熟な士郎だった。

 

「え──」

 

「何してるの士郎!──高密度の魔力反応!? この真上!!」

 

「くそ! 頼めるかセイバー!?」

 

「お任せを! シロウ、リン、そこを動かないで! 私が離脱させます!!」

 

 桁違いの魔力放出で加速したアルトリアが異変のど真ん中にいる士郎と凛に向けて文字通りぶっ飛んでいく。

 

 間に合った、二人にたどり着き一気に担ぎ上げて再度飛んだその刹那、その異変は形を為した。

 浮かび上がる魔方陣、その中から3人の人間が飛び出してくる。

 

 

「レイシフト成功!! ──いきなりですが敵性反応です! 先輩!」

 

「なんでこう毎度毎度無茶苦茶な……! 行ける!? マシュ! そして──レオニダス!!」

 

「お任せください!! ムゥアスター!!」

 

 第五次聖杯戦争と、人理を守る戦い。

 重なるはずのない闘いが、今重なった。

 

 

 

 

 

 

 

 




面白そうなネタがあったのでやってみることに

応援お願いします!!
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