曹操side
気絶した『絶霧』所有者をホテルの部屋まで運び、目を覚ますのを待つこと数十分。
普段ならば、襲ってきた相手を殺すか半殺しの二択だが、気絶させたり戦わないなどの例外がある。
一つ、神器所有者が暴走状態の時。
二つ、聖書勢力の被害者の場合。
三つ、聖書勢力以外の他神話の場合。
四つ、年端もいかない子供だった場合。
五つ、その日の気分。
最後は、呂布の物だ。若干天然の気があるあいつらしいと言うべきか………。普段から顔色なんて変えず、無表情な呂布から出た言葉とは思えなかった。
極端な人見知りだが、無口な訳ではない。むしろちゃんと会話する奴だ。
師匠の修業に付いていった事で、力だけなら俺よりも強くなった。その事を呂布に言っても謙遜ばかり……いや、もしかしたら自分の強さに気付いていないのか?矢鱈俺の方が強いと言ってるからそうかもしれない。これは……師匠と相談しないといけないだろうな。
今は呑気に小さくなった
「う…此処は……?」
どうやらやっと起きたか。
「近くに在ったホテルの一室だ。取り敢えず、名前を訊かせて貰おうか『絶霧』の所有者」
「………『
ゲオルク・ファウスト?ちょっと聞いたことが無いな。
「……知ってるか?」
「…………………」フルフル
首を横に振ってるから呂布も知らない様だ。まぁ、俺たちのご先祖様も中国周辺にしか知られてないっぽいから……仕方ないだろうな。
そして呂布は喋らなくなった様だ。表情が無いからイマイチ何を考えてるか分からない。その内喋るから良いか。
「すまんな、俺たちにとっては知らない人物だ」
「……まぁ、この辺りでは有名だから良いがな。ゲーテの『ファウスト』とか悪魔メフィストフェレスを召喚した人物とかなら聞き覚えあるんじゃないか?」
「ああ、それなら聞いたことあるな。お前は?」
「…………………」コクコク
「やっぱり、そっちの方が有名か……俺はそのメフィストフェレスが運営する魔法使い組織に所属している。子孫と神器のコネみたいなモノだがな」
「そうか……それで?俺たちを襲った理由は?」
別に暴走した訳ではないし、俺たちだけを狙った的確な攻撃。その理由を聞かないといけないだろう。
「ああ、分かってる。話す前に名前を訊いても良いか?」
「………俺は曹操孟徳の子孫、曹操と名乗ってる。こいつは、呂布奉先の子孫の呂布だ。要は、
「…………………」ペコリ
歴史的に名を残す人物の子孫という境遇の者が三人か……美猴が居れば四人になっていただろうな。
「そうか……。ああ、襲った理由だったな…………二週間前にこの近くで仲が悪い筈の天使、堕天使、悪魔どもが結託して戦い、何者かに全滅させられたとメフィストから連絡があってな……」
ああ、そいつら殺ったの俺と呂布だ……。
「此所んところ、何者かが外道組織の構成員を殺し回ってると言われてたから、使い魔をあっちこっちに飛ばしていたらそれらしい二人組がこの街に向かってると連絡が来て、お前たちが街に着いたと同時に『絶霧』の禁手で創った空間に跳ばした……という事だ」
成る程、それなら警戒されて攻撃されるのも当たり前か……。身から出た錆ってやつか……。そういえば聖書の神の意思が嘆いていたな、天使と堕天使は自分の子供みたいなモノだから仕方ないか……。
「こっちからも訊いても良いか?」
「言える事なら……」
「お前たちは何の目的でこの街に来たんだ?」
「目的か……至ってシンプルさ。世界を回りながら武者修行だ。本来ならまだ師匠の下で修業するつもりだったんだが……三ヶ月前に東ヨーロッパの国境に落とされて、そのまま西に進んで此処に来たのさ」
「……成る程」
「ああ、因みに天使、堕天使、悪魔を殺ったのは俺と呂布だ」
「………は?………はぁぁぁ!?」
やはり驚くか………。襲撃される事が多かったから感覚が麻痺してきたのかもしれない。三ヶ月で二桁は多い筈だし。
「驚くのは分かるがもう少し───」
「────曹操」
静かに、と言おうとしたが、突然の呂布の声に振り向くと手にグラムを握って窓側を視ていた。
そして、魔方陣が現れた。
呂布side
曹操に会話を任せてグラニのブラッシングをする。
この身体はどうして、こう……初めて会う奴と喋れないのだろう……。オレは喋ろうとしているが、口が何故か開かなくなる。
曹操に話し掛ける事なら出来るがゲオルクの方に声を掛けようとしてもダメだ。
一週間一緒に居れば話すことは出来るように成る。
………絶対
時折、曹操の言葉に首を振って応答する。
………ん?この感じって魔力?窓側から感じる。悪魔が使う転移だろうな、きっと。
「────曹操」
うん、曹操を呼ぶぐらいなら出来るな。喋りたいけど、喋れないって結構なストレスになるなぁ。
無意識に取り出したグラムを握って現れた魔方陣を睨む。いつでも動ける様に脱力しておいて、グラニも戦闘態勢になっている。
「───やれやれ、定時連絡が無いから来てみたら捕まってるとはねぇ。幾ら上位の神滅具を持っていても油断しないようにって言ったのにね、ゲオ坊?」
ゲオルクに対しての苦言を言いながら赤と青のオッドアイの悪魔が現れた。