「新しく赴任しました、葛木宗一郎と言います。
担当科目は主に社会科と倫理です、宜しくお願いします」
ある春の日、私は穂群原学園の教師となった。
同僚となる教員や事務員との挨拶も殆ど済ませた頃
「葛木先生…でしたよね、私、英語を教えている藤村大河です!
私も教師になってまだまだなんですけど…
何か分からないことがあったら何でも聞いてくださいね!」
「ありがとうございます、その時は是非お願いします。」
彼女はとても明るく、そして充実しているようだった。
自らが行っている教師という仕事に充足感を感じているのが分かる
……その時私が抱いた感情は、何だったか
「藤村先生、弓道部の生徒が呼んでいますよ」
「はーい!今行きますー!じゃあ葛木先生、これから頑張って下さいね!」
私とは対象的な人だ。だからこそ、とても良い人物なのだろう。
生徒に真摯に向き合い、自らも成長していく。
…私にはとても、出来そうにないと感じた。
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教会に続く緩やかな坂道を登っていく、
先程まで感じていた空気も、ある程度は緩和されている
雨もある程度落ち着いたようだ。
教会は小高い丘の上にあり、その後ろの山に外人墓地がある。
普段からあまり人が寄り付かない場所ではあるが、手入れはしっかりとされている。
坂を上りきると、教会が見えるようになった、
まず確認するべき事…教会内の灯りは…消えている。
普通ではもう施錠され、消灯されているはずの時間帯である。
だが、教会の外観だけでは判断する事が出来ない。
内部を調べる必要がある…地下を確認することで非常に多くの情報を手に入れる事が出来る。
扉を叩く、一度、二度、三度…返事は来ない。
…人の気配はない、扉は…施錠されている。
想定内だ、私は裏での集団墓地に回り、そこから教会の中庭に繋がる扉を開く。
こちらは錠が掛かっていないのは以前訪れた際に分かった事だ。
中庭には変わった様子は見えない。整った小さな庭である。
人工的な明かりは一切無く、ただ静寂の中、雨音が響く。
濡れた地面であっても足音が生まれないのは、暗殺者故の技か。
中庭の隅にある階段を降りていく。
どのような状態か、私はこれ迄の状況から薄々だが理解していた。
「…やはり、そうか」
地下聖堂は傷もなく、セイバーを拘束していた当時のままであった。
破壊された柱、椅子、傷ついた壁、血痕多くの痕跡が残っている筈の場所は、
厳かな雰囲気を漂わせ神への祈りを捧げる場所として正しく在る。
僅か数日間で内部の破損物を撤去し、修繕するのは、階段も狭く、
この地下スペースでは難しい。
よって現時点では私の記憶は柳洞寺で黄金の男と戦った記憶が正しいと考える事が妥当であると思われる。
だが、私は既に常識が通ずることのない世界を見てしまった、私の知っている常識では不可能だが、キャスターが使っていた「魔術」という面であればもしかすると可能なのかも知れない。
そもそも、何故私は教会で記憶の判別を行おうとしたのか?
柳洞寺も片方の記憶が正しいのならあの黄金の男の襲撃により被害はあった筈だ。
双方の記憶で、柳洞寺は数度襲撃を受けていた。
しかし、先程柳洞寺に訪れた際、屋根が破損していた、周囲を囲む外壁が崩れていたなどの痕跡は無かった。
柳洞寺のあの立地を考慮するに、重機等を持ち込むことは物理的に厳しく
そうすると人力での解体、修繕作業となる。とすると時間的にも不可能だ。
可能だとするならば…やはり、彼女の力である。
(…キャスター。)
私はキャスターの最後の言葉を聞いた場所に視線を落とす。
(…叶っていた…か…)
あの日、この祭壇前は月の光によって照らされていた。
だが、雨の降る夜に光など存在せず、暗い中進む。
一度来た際の感覚と階段からの僅かな光から周囲を把握する。
やはり損害等無く、おそらく襲撃はなかったのだ。そう判断をする他ない。
周囲の確認をしつつ、私の意識は一点に止まっていた。
…その場所からは、教会という神聖さとは正反対の禍々しさを感じる。
…この感覚には覚えがある。
…以前、教会を襲撃した際、逃亡する監督役を使い魔に追わせた後だった。
キャスターは何かに気付き、一人地下へと向かった。
同行するか確認する前にキャスターは私に待機を願った。
その後この地下聖堂に来た際にはこの様な異様な雰囲気は無かったはずだ。
何かが分かるかもしれない。私はその一室の中へと向かう。
書いて暫く寝かせて書き直してとやってたら内容に大きな違和感が